《速報解説》 国税庁、消費税の軽減税率に対応した 確定申告書及び付表の新様式を公表 ~簡易課税準用特例適用、経過措置適用など提出様式の選定に注意~ アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩 5月13日、国税庁ホームページにて軽減税率制度の導入に伴う確定申告書及び各付表の見直しが行われ、新様式の帳票が公表された。 これと同時に、簡易課税制度の届出の特例及び簡易課税制度を準用する特例を適用する場合に提出する届出書や、軽減税率における消費税の計算の特例で使用する軽減売上割合(10 営業日)、小売等軽減仕入割合、小売等軽減売上割合の計算の明細表についてもその様式が公表されている。 なお今回公表されたのは平成29年4月1日以降(簡易課税制度選択届出書はH29.1.1~)に使用される様式であり、平成33年4月1日から予定されているインボイス方式(適格請求書等保存方式)には対応していない。 今回公表された様式は次の通り。適用を受ける特例によって様式が異なるため、提出に当たっては十分注意が必要である。 そこで、以下では、届出書及び各帳票の記載内容について解説し、確定申告書及び付表の記載順序について解説する。 1 届出書関係 (1) 消費税簡易課税制度選択届出書(第1号様式) 消費税法第37条第1項《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》に規定する仕入れに係る消費税額の控除の特例の規定(以下「簡易課税制度」という)又は所得税法等の一部を改正する法律(平成28年法律第15号)(以下「改正法」という)附則第40条第1項《課税仕入れ等を適用税率別に区分することが困難な中小事業者に対する経過措置》に規定する簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書については、従来の「消費税簡易課税制度選択届出書」に代えて、第1号様式における「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することとなった。 この届出書は、簡易課税制度の適用を受けることができない以下のような場合に該当するか否かにつき、各項目を付記する(チェックマークを付す)こととなっており、この項目に平成28年改正の高額特定資産を購入した場合の規定が追加されている。 また、改正法附則第40条における課税仕入れ等を適用税率別に区分することが困難な中小事業者に対する経過措置規定により本届出書を提出する場合にも、各項目を付記(チェックマークを付す)あるいは記載することとなった。 (2) 消費税簡易課税制度を準用する旨の届出書(第2号様式) 中小事業者(基準期間における課税売上高が5,000万以下である事業者)以外の事業者が、改正法附則第43条第1項《課税仕入れ等を適用税率別に区分することが困難な中小事業者以外の事業者に対する経過措置》に規定する簡易課税制度を準用する特例を適用する場合には、第2号様式における「消費税簡易課税制度を準用する旨の届出書(基準期間の課税売上高が5,000万円を超える事業者用)」を提出することとなる。 この届出書についても上記(1)の項目と同様に、簡易課税制度の適用を受けられない場合に該当するか否かの付記事項及び課税仕入れ等を適用税率別に区分することが困難な中小事業者以外の事業者に対する経過措置に関する付記事項を記載することとされている。 2 各帳票の記載内容 (1) 消費税及び地方消費税の(確定、中間(仮決算)、還付、修正)申告書 仮決算をした場合の中間申告書、課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについての確定申告書、還付を受けるための申告書については、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれの様式により提出する。 ① 簡易課税制度の適用を受けない場合(原則課税の場合) いわゆる原則課税の場合には、以下の帳票を提出することとなる。 なお、「消費税簡易課税制度を準用する旨の届出書(基準期間の課税売上高が5,000万円を超える事業者用)」を提出して簡易課税制度を準用する特例を適用する場合にも、この申告書を提出することとなる 今回の見直しで、確定申告書が第一表と第二表に区分され、第一表については従来の申告書とほとんど同じ形式であるが、第二表において課税標準額や消費税額を以下のように区分し、その合計額を第一表へ転記する形式となった。 また、第二表には、返還等対価に係る税額(売上げの返還等対価に係る税額、特定課税仕入れの返還等対価に係る税額)及び地方消費税の課税標準となる消費税額も記載することとなる。 ② 簡易課税制度を適用する場合 簡易課税制度を適用する場合には、以下の帳票を提出することとなる。 簡易課税制度を適用する場合においても原則課税と同様に、申告書第二表を併せて提出することとなった。 なお、第一表については、従来の申告書とほとんど同じ形式であり、第二表は、原則課税と同じ帳票となる。 (2) 原則課税の場合に提出しなければならない付表 原則課税を適用する場合の付表については、以下の区分に応じ、それぞれの付表を提出することとなる。 ① 軽減税率及び標準税率である場合(税率に関する経過措置規定[適用税率が3%、4%、6.3%]の適用がない場合) その課税期間の消費税の計算において、税率に関する経過措置規定が適用される取引がなく、軽減税率及び標準税率が適用される取引がある場合には、以下の付表を添付することとなる。 なお、税率に関する経過措置規定の適用がないことから各付表の区分のX欄の記載は不要である。 ② 税率に関する経過措置規定の適用がある場合 その課税期間の消費税の計算において、税率に関する経過措置規定が適用される取引がある場合には、上記①の付表に以下の付表を追加して添付することとなる。 (3) 簡易課税制度の場合に提出しなければならない付表(簡易課税制度を準用する特例を除く) 簡易課税制度を適用する場合の付表については、以下の区分に応じ、それぞれの付表を提出することとなる。 ① 軽減税率及び標準税率である場合(税率に関する経過措置規定の適用がない場合) その課税期間の消費税の計算において、税率に関する経過措置規定が適用される取引がなく、軽減税率及び標準税率が適用される取引がある場合には、以下の付表を添付することとなる。 なお、税率に関する経過措置規定の適用がないことから各付表の区分のX欄の記載は不要である。 ② 税率に関する経過措置規定の適用がある場合 その課税期間の消費税の計算において、税率に関する経過措置規定が適用される取引がある場合には、上記①の付表に以下の付表を追加して添付することとなる。 (4) 平成29年4月1日以後に開始する課税期間において簡易課税制度を準用する特例を適用する場合に提出しなければならない付表 中小事業者以外の事業者が簡易課税制度を準用する特例を適用する場合において、その課税期間が平成29年4月1日以後に開始するときの付表については、上記(3)と同じ付表を提出することとなる。 ただし、申告書第一表については、「一般用」(第3-(1)号様式)を使用するので注意が必要である。 (5) 平成29年3月31日の属する課税期間(平成29年4月1日をまたぐ課税期間)において簡易課税制度を準用する特例を適用する場合の付表 中小事業者以外の事業者が簡易課税制度を準用する特例を適用する場合において、その課税期間が平成29年3月31日の属する課税期間であるときの付表については、以下の区分に応じ、それぞれの付表を提出することとなる。 ① 平成29年4月1日以後に税率に関する経過措置規定の適用がない場合 その課税期間の消費税の計算において、税率に関する経過措置規定が適用される取引がなく、軽減税率及び標準税率が適用される取引がある場合には、以下の付表を添付することとなる。なお、課税期間の初日から平成29年3月31日までの期間は簡易課税制度を準用する特例の適用がないため原則課税となる。 ② 平成29年4月1日以後に税率に関する経過措置規定の適用がある場合 その課税期間の消費税の計算において、税率に関する経過措置規定が適用される取引がある場合には、上記①の付表に『付表5-2 控除対象仕入税額等の計算表〔経過措置対象課税資産の譲渡等を含む課税期間用〕(簡易用)(第4-(8)号様式)』を追加して添付することとなる。 なお、この場合において、付表3-3については、「Ⅱ 平成29年4月1日から課税期間の末日までに係る計算」を計算し、「Ⅰ 課税期間の初日から平成29年3月31日までに係る計算」との合計額を付表3-2へ転記することとなる。 (6) 軽減税率制度における課税標準の計算等に関する経過措置及び課税仕入れ等に関する経過措置を適用する場合の計算表 消費税法施行令等の一部を改正する政令(平成28年政令第148号)附則第16条第1項《課税標準の計算等に関する経過措置及び課税仕入れ等に関する経過措置の適用に関する手続》に規定する申告書に添付することとされている書類は、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次の様式に記載して提出することとなる。 ① 軽減売上割合を用いる場合 軽減対象資産の譲渡等(税率6.24%適用分)を行う事業者が、適用対象期間中に国内において行った課税資産の譲渡等(免税取引及び旧税率が適用される取引は除く)の税込価額を税率の異なるごとに区分して合計することにつき困難な事情があるときは、軽減売上割合(※)を用いて課税標準額を計算することができるが、この場合には、以下の計算表を提出することとなる。 ⇒ 課税資産の譲渡等の対価の額の計算表〔軽減売上割合(10営業日)を使用する課税期間用〕(売上区分用)(第5-(1)号様式) ② 小売等軽減仕入割合を用いる場合 軽減対象資産の譲渡等(税率6.24%適用分)を行う事業者が、適用対象期間中に国内において行った課税資産の譲渡等(免税取引及び旧税率が適用される取引は除く)の税込価額を税率の異なるごとに区分して合計することにつき困難な事情があるときは、小売等軽減仕入割合(※)を用いて課税標準額を計算することができるが、この場合には、以下の計算表を提出することとなる。 ⇒ 課税資産の譲渡等の対価の額の計算表〔小売等軽減仕入割合を使用する課税期間用〕(売上区分用)(第5-(2)号様式) ③ 小売等軽減売上割合を用いる場合 軽減対象資産の譲渡等(税率6.24%適用分)を行う事業者が、適用対象期間中に国内において行った卸売業及び小売業に係る課税仕入れ又は当該適用対象期間中に保税地域から引き取った課税貨物を税率の異なるごとに区分して合計することにつき困難な事情があるときは、小売等軽減売上割合(※)を用いて課税仕入れ等の税額を計算することができるが、この場合には、以下の計算表を提出することとなる。 ⇒ 課税仕入れ等の税額の計算表〔小売等軽減売上割合を使用する課税期間用〕(仕入区分用)(第5-(3)号様式) 3 各帳票の記載順序 消費税の計算において、確定申告書及び各付表の記載順序については、以下の区分に応じ、それぞれの順序に従って記載する。 なお、消費税の計算において、軽減売上割合、小売等軽減仕入割合、小売等軽減売上割合を使用する場合には、それぞれの計算表も併せて提出する。 (1) 原則課税の場合 (2) 簡易課税制度の場合 (3) 平成29年4月1日以後に開始する課税期間において簡易課税制度を準用する特例を適用する場合 (4) 平成29年3月31日の属する課税期間において簡易課税制度を準用する特例を適用する場合 (了)
《速報解説》 日本監査役協会、改正会社法・CGコード等に対応し 「監査役監査実施要領」を大幅改定 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年5月20日、日本監査役協会は「監査役監査実施要領」(改定版)を公表した。 監査役の監査活動に関する多くの事項は、実施要領1冊で理解できることを意図しているとのことである。 前回の改定である平成23年7月7日の実施要領は表紙などを含めて381ページであったが、今回の改定後の実施要領は表紙などを含めて479ページに及ぶ大部のものとなっているので、本稿では実施要領に関する特徴と思われる記載について述べることとする。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 主な改定内容は次のものなどである。 1 用語解説 例えば、親会社、親会社等、完全親会社、完全親会社等、最終完全親会社、最終完全親会社等などのように、理解が難しい用語などについて解説されている。 また、「みなす」と「推定する」、「その他」と「その他の」などの用語についても解説されている。 2 序章における監査役の役割等の記載 序章において、次の事項を記載し、監査役の職務全体の理解に資するようにしている。 また、すべての監査役が実施しなければならない事項(会社法において「しなければならない」と規定されている事項)と、監査役が自身の判断で選択して実施することができる事項(会社法において「することができる」と規定されている事項)を明らかにしている。 3 監査役制度の理解 監査役が法制度の趣旨を正しく理解できるように、制度や仕組みの解説、監査役が実施すべき事項の手順などを記載している。 また、記載事項の法的根拠について、会社法、会社法施行規則、会社計算規則、金融商品取引法などの内容を引用し、根拠法令の索引集としての機能を持たせている。 4 企業不祥事発生時の対応及び第三者委員会 企業不祥事発生時の対応及び第三者委員会に関する事項は、「第8章の2 企業不祥事発生の対応」として独立して記載している。 (了)
2016年5月19日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.169を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
日本の企業税制 【第31回】 「組織再編税制の適格要件の見直し」 -平成28年度税制改正事項- 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴 〇はじめに 3月31日に公布された改正法人税法施行令において、平成28年度税制改正における「組織再編税制の適格要件の見直し」の詳細が明らかとなった。これらの改正は平成28年4月1日以降に行われる組織再編について適用される。 〇共同事業を営むための株式交換、株式移転 まず、支配関係のない法人間でのいわゆる共同事業を営むための株式交換、株式移転の2つの適格要件に関して、見直しが行われる。 (1) 役員継続要件 第一は、役員継続要件である。 従来の制度では、適格要件の1つとして、株式交換や株式移転により子会社となる側の法人の特定役員全員の留任(「いずれかが・・・退任・・・をするものでないこと」)が求められていたが、今回の改正により、1人でも留任する特定役員がいればよいこととなった(「全てが・・・退任・・・をするものでないこと」(改正後法令4の3⑱二、(22)二))。 (2) 事業継続要件 第二は、事業継続要件である。 適格要件の1つとして、株式交換や株式移転により子会社となる側の法人の事業が、株式交換後においてもその法人で引き続き営まれることが見込まれていることが求められている。 例えば、株式交換については、「株式交換に係る株式交換完全子法人の子法人事業(親法人事業と関連する事業に限る。)が当該株式交換完全子法人において引き続き営まれることが見込まれていること」とされており、継続が必要な事業は、「親法人事業と関連する事業」に限定されている。 しかし、株式交換あるいは株式移転の後に、第二次組織再編として、子会社となった法人を被合併法人等とする適格合併等が行われることにより、継続が要求されている子法人事業が移転することが見込まれている場合にあっては、改正前においては、 の3つ全てを満たすことが求められていた。 上記のうち③については、従来、必ずしも明確でない部分があった。 第一に、最初の株式交換・株式移転で子会社となった法人は、合併の場合には、法人自体なくなってしまうので、そもそも③を満たせないのではないか、第二に、文言上「子法人事業のうち当該合併等移転子法人事業以外のもの」とされ、継続が求められる子法人事業は親法人事業と関連するものに限られるのか、という疑問が生じていた。 今回の改正では、まず、「当該子法人事業の全部又は一部が移転することが見込まれている場合には」とされ、子法人事業の一部が移転する場合と全部が移転する場合とに場合分けをした上で、全部移転の場合には、「当該子法人事業が当該適格合併等に係る合併法人等において引き続き営まれること」(改正後法令4の3⑱四イ、(22)四イ)のみが要求されることとなり、また、一部移転の場合には、「当該子法人事業が当該適格合併等に係る合併法人等及び当該株式交換完全子法人において引き続き営まれること」(改正後法令4の3⑱四イ、(22)四イ)とされ、第二次再編が予定されていない場合の「子法人事業」を踏まえた文言に変更され、親会社法人事業と関連するものに限定されていることが明確になった。 〇共同事業を営むための合併、分割、株式移転 共同事業を営むための合併、分割及び株式移転に係る適格要件のうち、株式継続保有要件(株主の数が50人未満の場合のみ適用)について、その要件の適用の要否の判定について明確化が図られた。 従来、例えば合併において、被合併法人が複数存在する場合、そのうちの1社でも株主の数が50人以上であれば、株式継続保有要件がまったく適用されなくなるのか、あるいは、全ての被合併法人においてそれぞれの株主の数が50人以上でない限り、株式継続保有要件が適用されるのか、必ずしも明確ではなかった。 今回の改正では、まず、「次に掲げる要件(当該合併に係る被合併法人の全てについてその株主等の数が50人以上である場合・・・には、第一号から第四号までに掲げる要件)の全てに該当するものとする」(改正後法令4の3④柱書)とされ、「全ての」被合併法人のそれぞれの株主の数が50人以上であれば、株式継続保有要件は適用されないことが明らかにされた。 その上で、株式継続保有要件を規定する第五号において、「(その株主等の数が50人以上であるものを除く。以下この号において「特定被合併法人」という。)」との文言が追加されたことから(改正後法令4の3④五)、全ての被合併法人のそれぞれの株主の数が50人以上というわけではない場合でも、個別の被合併法人ごとに、その株主の数が50人以上かどうかを見て、個別の被合併法人単位で、株式継続保有要件の適用の有無を判定することが明らかとなった。 (了)
企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)の制度解説 【第1回】 「国税・地方税にまたがる税額控除の仕組み」 辻・本郷税理士法人 税理士 安積 健 1 はじめに 平成28年度税制改正により地方創生応援税制が創設された。いわゆる「企業版ふるさと納税」である。 地方から東京圏への一極集中が続く中、地方を活性化し、人口の減少に歯止めをかけるため、安倍政権は2014年9月以降、「地方創生」をキーワードに、地方対策に取り組んでいる。本制度は、地方への本社機能の移転や拡充を税制面から支援する昨年度の地方拠点強化税制に続く措置と考えることができる。 本制度により、次のような効果が期待されている。 2 制度の概要 本制度は、青色申告法人が改正地域再生法の施行日である平成28年4月20日から平成32年3月31日までの間に認定地方公共団体に対して特定寄附金を支出した場合に、一定の税額控除を受けることができるとするものである。 税額控除は、国税(法人税)と地方税(法人事業税、法人住民税)から控除を受けることになる。しかし、本制度は地方活性化のための措置であるため、地方税から優先して税額控除し、地方税から引ききれない場合(正確には、法人住民税法人税割から控除しきれない場合)のみ法人税から税額控除することが認められる。 本制度の創設前より、地方公共団体に対する寄附は法人税法上、優遇されてきた。すなわち、法人税法上、寄附金については損金算入限度額の範囲内で損金に算入することが認められているが、国又は地方公共団体に対する寄附は損金算入が制限される寄附金からは除外されており、その支出額の全額の損金算入が認められるところである(下図参照)。 その結果、寄附した金額の実効税率相当額(約3割)の、法人税、法人事業税、法人住民税の税額軽減効果を得ることができる。 3 税額控除額の計算 本制度の創設により、地方公共団体に対する寄附のうち特定寄附金に該当するものについては、上述した全額損金算入による軽減効果とは別に、下記の通り税額控除を受けることが可能となる。 (1) 法人事業税の税額控除 〇平成29年3月31日までに開始する事業年度 控除税額=当該事業年度に支出した特定寄附金の額の合計額×10% (当該事業年度の事業税額×20%が限度) 〇平成29年4月1日以後に開始する事業年度 控除税額=当該事業年度に支出した特定寄附金の額の合計額×10% (当該事業年度の事業税額×15%が限度) (2) 法人住民税(道府県民税・市町村民税)の税額控除 (ア) 道府県民税 〇平成29年3月31日までに開始する事業年度 控除税額=当該事業年度に支出した特定寄附金の額の合計額×5% (当該事業年度の道府県民税法人税割額×20%が限度) 〇平成29年4月1日以後に開始する事業年度 控除税額=当該事業年度に支出した特定寄附金の額の合計額×2.9% (当該事業年度の道府県民税法人税割額×20%が限度) (イ) 市町村民税 〇平成29年3月31日までに開始する事業年度 控除税額=当該事業年度に支出した特定寄附金の額の合計額×15% (当該事業年度の市町村民税法人税割額×20%が限度) 〇平成29年4月1日以後に開始する事業年度 控除税額=当該事業年度に支出した特定寄附金の額の合計額×17.1% (当該事業年度の市町村民税法人税割額×20%が限度) (3) 法人税の税額控除 控除税額は次の①と②のいずれか少ない金額(当該事業年度の調整前法人税額×5%が限度)。 * * * (1)~(3)の通り、特定寄附金の額の1割を法人事業税から、2割を法人住民税からそれぞれ控除することになる。法人税については、法人住民税から控除しきれない場合に、特定寄附金の額の1割を限度として控除されることになる。つまり、特定寄附金の額の3割が地方税及び国税から控除されることになる。 前述した地方公共団体に対する寄附金の損金算入による税額軽減と併せて、特定寄附金の額の約6割の税額軽減効果が期待され、下図のとおり、法人の実質的な負担は特定寄附金の額の約4割に留まる。 4 適用を受けるための手続 (1) 地方税(法人事業税・法人住民税) 法人事業税、法人住民税ともに提出する申告書に、①控除の対象となる特定寄附金の額、控除を受ける金額及び当該金額の計算に関する明細を記載した書類、及び②当該書類に記載された寄附金が特定寄附金に該当することを証する書類の添付がある場合に限り、適用される。 (2) 国税(法人税) 法人税の確定申告書等に、①控除の対象となる特定寄附金の額、控除を受ける金額及び当該金額の計算に関する明細を記載した書類の添付があり、かつ、②当該書類に記載された寄附金が特定寄附金に該当することを証する書類を保存している場合に限り、適用される。 上記の通り、特定寄附金に該当することを証する書類については、法人税では添付の必要はなく保存で構わないとされているのに対し、地方税では添付が必要となる点に留意が必要である。 (了)
災害義援金等に係る「ふるさと納税」適用上の留意点 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 平成28年熊本地震の発生を受け、4月20日、総務省より各都道府県に対して、『災害義援金等に係る「ふるさと納税」の取扱いについて(通知)』が発せられた。 税理士にとっても必要となる情報であることから、本稿ではその内容について解説を行う。 1 「ふるさと納税」の対象となる義援金等の範囲 災害が起こったとき、支援の方法としてすぐに思い浮かぶのは、被災地に対する寄附金や義援金(※)であろう。 (※) 「寄附金」は、被災地の復興支援を目的として地方公共団体に支出されるものであり、「義援金」は、被災者の生活支援や再建を目的として被災者に直接届けられるものである。 個人が、寄附金や義援金を支出した場合には、それらが「特定寄附金」に該当するものであれば、寄附金控除の適用を受けることができる(所法78①②)。「ふるさと納税」は、特定寄附金のうちの「地方公共団体に対する寄附金」に該当する。 寄附金控除の詳細については、下記拙稿をご参照いただきたい。 今回の通知では、募金活動を行う団体(日本赤十字社や共同募金会など、地方公共団体以外の団体)が収受した義援金等も、一定の場合には「ふるさと納税」に係る寄附金に該当することが確認されている。 「ふるさと納税」についての詳細は、下記拙稿をご参照いただきたい。 2 募金活動を行う団体が収受した義援金等の場合 「ふるさと納税」に係る寄附金に該当し、寄附金控除の対象となる義援金等は、当該募金団体に対する義援金等が最終的に被災地方公共体又は義援金配分委員会等に拠出されることが募金要綱、募金趣意書等で明らかにされているものである(所基通78-5)。 3 申告手続 募金団体を通じて義援金等を寄附した人も、確定申告書の「住民税に関する事項」の部分に拠出した義援金等の額を記載し、義援金を支出したことが確認できる書類を確定申告書に添付(または提示)することにより、「ふるさと納税」としての取扱いを受けることになる。 しかし、募金団体を通じた寄附の場合には、地方公共団体が義援金等を直接受領していないため、地方公共団体が発行する受領書を入手することはできない。 この場合の寄附金額の確認書類は、地方公共団体が発行する受領書に代えて、次のいずれかによることができる。 なお、被災した自治体の事務負担を軽減するため、「ふるさと納税」に係る寄附金の受付業務を代行する自治体も増えている。この代行受付を利用した場合には、実際に寄附金を受け付けた自治体から寄附金控除の適用に必要な受領書等が発行される。 4 注意点 平成27年4月1日以降に行う寄附から、一定の要件を充たした場合に確定申告を行わなくても税の軽減が受けられる「ワンストップ特例制度」を適用することができるが、募金団体を通じた義援金等については、その適用はない。 したがって、募金団体を通じた寄附に「ふるさと納税」の制度の適用を受ける場合には、原則通り確定申告書の提出が必要となる点に注意が必要である。 なお、「ワンストップ特例制度」についての詳細は、下記拙稿をご参照いただきたい。 (了)
裁判例・裁決例からみた 非上場株式の評価 【第7回】 「募集株式の発行等⑥」 公認会計士 佐藤 信祐 前回は、東京地裁昭和52年8月30日判決、東京地裁昭和56年6月12日判決について解説を行った。 【第7回】に当たる本稿では、大阪地裁平成2年2月28日判決、京都地裁平成4年8月5日判決について解説を行うこととする。 8 大阪地裁平成2年2月28日判決・判時1365号130頁 (1) 事実の概要 本事件は、額面株式で株主割当を行った際に、代表取締役が失権株式を額面金額で引き受け、従業員に譲渡したことにつき、有利発行に該当するものとして、取締役の損害賠償責任を追及した事件である。 (2) 裁判所の判断 (3) 評釈 このように、従業員の経営参加意識の増進や対象会社の慣例などが持ち出されているが、結局のところ、株主割当で失権株が生じなかった場合(すなわち、全員が新株の引受申込をした場合)と比較して、旧株主が何ら損害を受けていないことが最大の理由となっているように思われる。 すなわち、第三者割当で従業員持株会に対して額面金額で発行した場合には、旧株主に直接的に損害が生じるのは明らかであり、そのことまでは認めた判決であるとは言い難い。その意味では、株主割当の失権株のみが対象となっている事件であり、第三者割当には射程が及ばないと考えるべきであると考えられる。 しかしながら、いずれこの連載でも解説するが、配当還元方式による第三者割当を有利発行に該当しないと判示した判決があり(東京地裁平成6年3月28日判決・判時1496号123頁)、どのような場合に有利発行に該当するのかという点については慎重な検討が必要になろう。 9 京都地裁平成4年8月5日判決・判時1440号129頁 (1) 事実の概要 本事件は、会社を支配する目的で有利な発行価額で第三者割当を行ったところ、既存株主が取締役の損害賠償責任を追及した事件である。なお、本連載は、非上場株式の評価についての連載であるため、ここでは損害額の計算についてのみ解説を行うこととする。 (2) 裁判所の判断 (3) 評釈 このように、裁判所は、原告が主張する総資産額(おそらくは、純資産額の間違い)と類似業種比準方式の折衷方式を退け、被告が新株発行無効訴訟で自白していた3,907円を採用した。【第5回】でも解説したように、時価純資産方式が割高であると裁判所が認識していたからであると思われる。この点について、いずれこの連載でも明らかにしていくが、最近の裁判例と傾向が異なる点である。 本判決について触れるとすれば、3,907円を下らないと考えていたのであれば、原告が算定した類似業種比準価額3,562円の相当性を検討すべきであったようにも思える。 次回では、東京地裁平成4年9月1日判決及び東京地裁平成6年3月28日判決について解説を行う予定である。 (了)
理由付記の不備をめぐる事例研究 【第11回】 「寄附金と貸倒損失」 ~立替金債権の放棄が貸倒損失ではなく、寄附金に該当すると判断した理由は?~ 中央大学大学院商学研究科 博士後期課程 (酒井克彦研究室所属) 泉 絢也 今回は、青色申告法人X社に対して行われた寄附金の損金不算入に係る法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた東京地裁平成19年9月27日判決(税資257号順号10792。以下「本判決」という)を取り上げる。 1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注) 素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。 2 本件理由付記から読み取ることができる関係図 3 本判決の判断 本判決は、次のとおり、本件は、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当するとした上で、理由付記に不備はないと判断した(この判断は、控訴審である東京高裁平成20年3月6日判決・税資258号順号10912でも維持されている)。 (1) 求められる理由付記の程度 (2) 理由付記の十分性 4 私見 (1) 関係法令等の確認 本件更正処分は、X社が計上した貸倒損失について、貸倒損失を計上すべき事実はなく、立替金債権の放棄に経済合理性があるとは認められないので、B社に対する寄附金に該当するとして、損金算入を否認するものである。 そうすると、根拠条文は、第一次的には、各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額として「当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの」を掲げる法人税法22条3項3号と、寄附金の損金不算入を定める同法37条であるといえる。 ア 貸倒損失の損金算入 法人税法には貸倒損失に関する特別の規定はないが、金銭債権の貸倒損失を「当該事業年度の損失の額」(法法22③三)として当該事業年度の損金の額に算入するためには、当該金銭債権の全額が回収不能であることを要すると解されている。そして、その全額が回収不能であることは客観的に明らかでなければならないところ、そのことは、債務者の資産状況、支払能力等の債務者側の事情、債権回収に必要な労力、債権額と取立費用との比較衡量、債権回収を強行することによって生ずる他の債権者とのあつれきなどによる経営的損失等といった債権者側の事情、経済的環境等も踏まえ、社会通念に従って総合的に判断されるべきものであると解されている(最高裁平成16年12月24日第二小法廷判決・民集58巻9号2637頁)。 課税実務上の取扱いをみると、法人税基本通達9-6-1は、金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れが損金の額に算入される場合について定めており、例えば、更生計画認可の決定等があった場合において、これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額は損金の額に算入する旨などを定めている。本件との関係では同通達(4)が、「債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額」も貸倒損失として損金の額に算入するものとしていることを確認しておく必要がある。 なお、上記通達のほか、法人税基本通達9-6-2は、法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる旨、同通達9-6-3は、一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れについて、法人が一定の経理処理を行うことにより損金経理することを認める旨を定めている。 イ 寄附金の損金不算入 法人が支出した寄附金とは、金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与であり、いわば事業関連性の有無を問わず、対価を伴わない支出であると解されている(法法37⑦)。ただし、そのような支出であっても、広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものは、寄附金の額から除かれている(法法37⑦括弧書)。 さらに、直接的・個別的な対価を伴わない支出で、かつ、形式上、寄附金の額から除かれる上記広告宣伝費等の費用に該当しないものであっても、当該支出を行うことにより、①対価的意義を有するものと認められる経済的利益の供与を受けている場合又は②営利法人としてこれを受けることなくその支出相当額の利益を手離すことを首肯するに足りる何らかの合理的な経済目的等がある場合には、寄附金の額に含まれないと解されている(大阪高裁昭和53年3月30日判決・高民集31巻1号63頁、東京地裁平成24年11月28日判決・税資262号順号12098及びその控訴審である東京高裁平成26年6月12日判決・訟月61巻2号394頁等参照)。 したがって、子会社等の整理・再建に際し、相当の理由(経済的合理性)がある場合の当該子会社等に対する債権放棄が寄附金ではなく、そのまま損金の額に算入されるという法人税基本通達9-4-1、9-4-2の取扱いの合理性は裁判例において認められている。 (2) 求められる理由付記の程度 本判決も述べるとおり、本件更正処分は、X社による本件立替金債権の放棄は貸倒損失に当たらず、これが法人税法37条の寄附金に当たるものであるとの法的評価を加えることにより、損金不算入となる金額を所得金額に加算するものであるから、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当すると考える(ただし、例えば、B社の債務超過に関する書類が保存されているような場合には帳簿書類の記載自体を否認して更正する場合に該当するという議論もあり得よう)。 したがって、理由付記の程度としては、更正通知書記載の更正の理由が、そのような更正をした根拠について帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示するものでないとしても、更正の根拠を更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り、法の要求する更正理由の付記として欠けるところはないことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (3) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものであると考える。 本件理由付記は、B社に対する本件債権放棄が貸倒損失として認められないこと及びその理由として、B社の純資産価額を計算するとB社は債務超過の状況にはなく、立替金の全額が回収不能とは認められず、他に貸倒損失を計上すべき事実は発生していないことを記載している。また、B社の倒産を防止するためにやむを得ずに行われたものである等の事実もないことから、B社に対して経済的利益を供与することについて経済合理性が存するものとは認められないことを記載している。 そうであれば、本件理由付記は、その記載内容から法令上の根拠が明らかになるものであり、かつ、法令上の要件に対応する具体的な事実を記載するものであり、これによって課税庁の判断過程が明らかとなるものであるから、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという理由付記の趣旨目的に適うものであると考える。 ただし、本判決が示した という理解には、次のとおり議論の余地があることを指摘しておく。 つまり、実際に、ある法人が債務超過であるか否かを判断する際には、当該法人の資産を時価評価するなどの作業を要するものであるが、これには手間と困難が伴うこともあり、また、そもそも、同一の資産であっても評価者、評価方法等により時価評価額が異なる場合もあり、課税庁による評価が唯一ないし最も合理的なものであると説明することには困難を伴う。 このことに加えて、本件とは事案が異なることは明らかであるものの、次に掲げる参考裁判例の存在を考慮すると、このような手間と困難を嫌う課税庁が安易かつ恣意的に債務超過の判断を行うことがないよう、また、評価金額、評価方法等を争う納税者の不服申立ての便宜に資するよう、債務者の資産及び負債の具体的な積算過程を一定程度、理由付記すべきであるという主張もあり得る。 * * * 次回は、営業権の譲受代金債務と貸付金債権の相殺を行ったことについて、営業権の譲受代金ではなく、貸付金を免除する目的で贈与された寄附金に該当するものとした法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)
税務判例を読むための税法の学び方【82】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む (その10:「租税法律主義の意義③」(最判昭30.3.23)) 立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘 7 裁判所調査官解説による問題点の指摘 前回見てきたこの最高裁判決においては、田中真二裁判所調査官が解説を「最高裁判所判例解説昭和30年民事編」27頁以下及び「金融法務事情72号」4頁に著しているが、以下のように問題点を指摘している。 (1) 最高裁判所判例解説昭和30年民事編 (2) 金融法務事情72号 ここに記されている最高裁昭和30年4月15日第二小法廷判決は、以下で裁判所ホームページにて公開されている。 この事案は、ここに記されているように、地方税法(昭和23年法律110号)第10条の適用を第53条2項で除外しているが、物納の結果、非課税客体になったことから、物納後の税額について返還を求めたものである。 8 固定資産税に関する関連裁判例 上記昭和30年4月15日判決の他、固定資産税に関連する著名な判決として、最高裁昭和47年1月25日第三小法廷判決がある。その他、ここ数年に固定資産税に関する最高裁判決が続けて出されており、ここに紹介する。 (1) 最高裁昭和47年1月25日第三小法廷判決 高裁判決にある「固定資産の所有者は、その所有権の譲渡にあたって、右を見越し、その対価を定める等適当な処置をとり得る」ことに関する判断としての判決である。 以下で裁判所ホームページにおいて公開されている。 この判決は、不動産の真の所有者でない者が、登記簿上その所有者とされていることから当該不動産に対する固定資産税を課せられ納付した場合には、真の所有者に対して、この納付税額に相当額を不当利得として返還請求することができる旨、判示したものである。 (2) 最高裁平成26年9月25日第一小法廷判決 賦課期日(1月1日)に登記簿又は家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されていないにもかかわらず、後から賦課期日に当該不動産を所有していたことが明らかになった場合に、固定資産税等の納税義務があるとして賦課決定処分がなされた事案であり、この処分を適法と認めたものである。 以下で裁判所ホームページにおいて公開されている。 (3) 最高裁平成27年7月17日第一小法廷判決 固定資産税の賦課期日における納税義務者の特定につき、租税法律主義の点から租税法を厳格に解すべきとして、同法343条2項後段の類推解釈を否定したものである。 ただし、納税者とされた者と課税処分権者である地方公共団体(堺市)の争いではなく、市の住民が、市が固定資産税及び都市計画税の賦課徴収を違法に怠ったために市に損害が生じたとして、市が元市長らに対して損害賠償請求をすること等を求めた住民訴訟である。 しかしその判決の中で、「租税法規はみだりに規定の文言を離れて解釈すべきものではないというべきであり、このことは、地方税法343条の規定の下における固定資産税の納税義務者の確定においても同様」とした上で、「納税義務者を特定し得ない特殊な事情があるためにその賦課徴収をすることができない場合が生じ得るとしても変わるものではない」としている。 以下で裁判所ホームページにおいて公開されている。 9 むすび この判決は、租税法律主義及び公共の福祉と租税立法に関する初期の最高裁判決として学術的に重要な位置を占めるものであり、また固定資産税の賦課期日等に関する重要な判例の一つである。 * * * 次回は、一時所得の計算における所得税法34条2項の「その収入を得るために支出した金額」の範囲(最高裁平成24年1月13日判決)について取り上げます。 (続く)
〔経営上の発生事象で考える〕 会計実務のポイント 【第5回】 「子会社における不正発覚の場合」 仰星監査法人 公認会計士・税理士 上村 治 1 子会社で不正が行われていた場合の検討事項 子会社で不正が行われていた場合、まず、子会社で行われていた不正の内容を把握し、適切に会計処理を修正する必要がある。そのうえで他の決算に影響を与える事項の検討を行う。 次に子会社の決算修正が親会社の単体決算に影響を及ぼす事項を検討する必要がある。また、修正した子会社の単体決算に基づき連結財務諸表を再度作成し、他に与える影響を検討する。 過去から不正が行われていた場合には、過去に提出した有価証券報告書に重要な事項の変更を行う必要がある場合には有価証券報告書の訂正報告書を提出する必要がある。 2 子会社決算に与える影響の検討 《解説》 ① 子会社で行われていた不正会計の内容把握と修正 子会社で不正が行われていた場合には、まず当該子会社で行われていた不正の内容を詳細に把握し、正しい会計処理に修正する必要がある。 事例では、「意図的に工事原価総額の見積り変更を行わなかったことによる売上高の過大計上や工事損失引当金の未計上による不正が行われていた」とされている。 工事進捗度の計算として工事原価比例法を採用しており工事原価総額の増額の見積り変更が行われた場合には、変更前に比べて進捗度が低く計算されることになり、売上高が少なく計算されることになる(【表1】参照)。また、工事原価総額が工事収益総額を超過することが見込まれる場合には、工事損失引当金の計上が必要になるケースがある。 【表1】 工事原価総額の見積り変更により計算される売上高 このように売上高が少なく計算されてしまうことや工事損失引当金の計上を回避するために、あえて工事原価総額の見積り変更を行わないことが考えられるが、不正な処理であり正しく修正されるべきものである。 ② その他の項目に与える影響の検討 不正が行われていた場合、直接的に不正を行っていた項目の修正だけでなく、他の項目に影響を与える事項についても把握し適切に修正しなければならない。 具体的には、不正により赤字決算だったものを黒字に見せかけていたような場合には、固定資産の減損の兆候が識別されていないことが考えられる。そのため、修正された後の状態で再検討を行い、必要に応じて固定資産の減損損失の計上を行う必要がある。 また、黒字を赤字に修正することにより多額の繰越欠損金が発生する場合には、繰延税金資産の回収可能性の判断における企業分類の変更が必要になることが考えられる。この検討の結果、繰延税金資産の計上額が減少するケースがある。 3 親会社決算に与える影響の検討 《解説》 子会社株式は取得原価をもって貸借対照表価額とするとされている(金融商品会計基準17)が、当該株式の発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額を行い、評価差額は当期の損失として処理(減損処理)しなければならない(金融商品会計基準21)。 事例では、B社において不正が発覚し、正しい決算を行うことにより債務超過となっている。そのため、B社株式の実質価額が著しく低下しており、債務超過である以上、実質価額はゼロである。また、財政状態の回復の見込みが不明であることから、A社はB社株式取得原価全額の減損処理を行う必要がある。 4 連結財務諸表に与える影響の検討 《解説》 子会社の不正が発覚し過年度の決算が修正された場合には、連結財務諸表作成の基礎となる子会社財務諸表が修正されている以上、それをもとに連結財務諸表を作成する必要がある。 また、親会社の個別財務諸表上、子会社株式を減損処理したことにより、減損処理後の簿価が連結上の子会社の資本の親会社持分額とのれん未償却額(借方)との合計額を下回った場合には、株式取得時に見込まれた超過収益力等の減少を反映するために、子会社株式の減損処理後の簿価と、連結上の子会社の資本の親会社持分額とのれん未償却額(借方)との合計額との差額のうち、のれん未償却額(借方)に達するまでの金額についてのれん純借方残高から控除し、連結損益計算書にのれん償却額として計上する必要がある(連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針 32)。 A社ではB社株式取得原価全額の減損処理を行うことになるため、連結上B社に係るのれんの未償却残高がある場合には、そのすべてについてのれん償却を行う必要がある。 5 訂正報告書の提出の検討 過去から不正が行われていた場合には、過去の決算を修正再表示する必要がある(過年度遡及会計基準21項)。そのため、当該影響を前期損益修正として発覚した期の特別損失で処理することはできない。 金融商品取引法上は有価証券報告書に記載すべき重要な事項の変更を発見した場合には、訂正報告書の提出が求められていることから、過去の誤謬を当期の財務諸表の一部を構成する比較情報の中で前期数値を修正再表示することだけで解消することはできないと考えられる。したがって、上場会社では不正の影響が重要である場合には、有価証券報告書の訂正報告書を提出する必要がある。 事例では「A社としても当該不正による影響が大きく、過去の決算を修正する」としていることから、過去に提出した有価証券報告書の訂正報告書を提出する必要がある。 【検討事項のチェックリスト】 ~子会社における不正発覚の場合~ ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (了)