monthly TAX views -No.40- 「パナマ文書~G20で何が話し合われたのか~」 中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹 パナマ文書の一部が5月10日に公表され、タックスヘイブンの話が大いに盛り上がっている。 このような状況の下、4月16日、17日、米国ワシントンDCで20か国財務大臣・中央銀行総裁会議が開催され、最大の議題がパナマ文書問題への対応であった。 会議終了後、G20会合の共同声明が発表された。わが国のマスコミには税の専門家が少なく、この共同声明の中身や意義についてはほとんど触れられておらず、掘り下げた論評もなされていない。 しかし内容をよく読むと、この問題に対する先進国の今後の対応について、極めて重要な事項が話し合われ、合意されていたことがわかる。 そこで、この共同声明を読み説いてみたい。 なお共同声明は、財務省のホームページから英文・仮訳両方で読むことができる。 * * * まずはパラグラフ7について。 「自動的情報交換に係る基準を2017年又は2018年までに実施することにコミットしていない全ての関係する国に対して・・・コミットすること及び多国間条約に署名することを求める。」としている。 自動的情報交換は2017年から始まる(わが国は2018年から参加)が、この合意にパナマ、バヌアツなど4か国は入っていなかった。しかし今回の問題でパナマは参加の意向を表明しており、すでに目に見える成果が上がっている。 その上で、「7月会合までに税の透明性に関する非協力的地域を特定するための客観的基準をつくることを課す。」とされている。 また、「仮にグローバル・フォーラムの評価によって進捗が見られなければ、G20諸国による非協力的地域に対する防御的措置が検討される。」という極めて強い表現もなされている。 つまり、あらゆるタックスヘイブンについて、客観的基準を設けて格付けし、サンクション(制裁)まで設けながら自動的情報交換への参加・協力を求めているのである。 * * * 次に、パラグラフ8である。 「特に法人及び法的取極めの実質的所有者情報に関し、金融の透明性及び全ての国・地域による透明性に関する基準の効果的な実施に付した高い優先性を再確認する。」としている。 キーワードは、「実質的所有者(beneficial ownership of legal persons and legal arrangements)情報」の透明性を求めていることである。 タックスヘイブンに存在するのはいわば「空っぽの箱」であり、その実質的な所有者を突き止めなければこの問題は解決しない。そこで、実質的所有者情報の重要性をあえて強調したのである。 それは、「腐敗、租税回避、テロ資金供与、マネーロンダリングの目的で悪用されることを防止するため」であり、そのためには税だけでなく、「権限ある当局の実質的所有者情報の入手可能性の改善及び権限ある当局間の国際的な実質的所有者情報の交換の重要性を特に強調する。」としている。 わが国でも、すでに金融庁、法務省、警察をも巻き込んだ対応が始まっている。 * * * 最後に、「グローバル・フォーラムに対し、我々の10月会合までに、実質的所有者情報の入手可能性、及びその国際的な交換を含む、透明性に関する国際基準の履行改善のための方法についての初期提案を提示することを求める」としている。 具体案を大いに期待しようではないか。 (了)
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第41回】 「法人税法にいう『法人』概念(その5)」 ~株主集合体説について考える~ 中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦 5 形式的な借用概念論の限界 (1) 統一説を前提とした解釈論 前回の第一のアプローチとは、いわば形式的な借用概念論である。 租税法が法文の中に用いている概念で、それが固有概念であるとはいえず、他の法領域から借用していると思われる概念を理解するに当たっては、当該他の法領域で用いられている概念の意義に合わせてかかる概念を理解しようとする考え方が、通説である。 これは一般的に「統一説」と呼ばれる考え方であり、租税法律主義が要請する予測可能性や法的安定性の見地からは優れた理論であるといわれている。 過去には「独立説」という見解もみられた。これは、他の法領域から借用したと思われる概念であるとしても、そうであるからといって、一度租税法の中に取り込んだ以上は租税法の見地から解釈すべきであって、およそ他の法領域でいかなる意味内容を付与されているかという問題とは切り離すべきだとする考え方である。今日的にこの立場を採用する学説は管見するところ存在しないように思われる。 そこで、前述の統一説が最も妥当な解釈論であると理解されているのであるが、さりとて、他の法領域から借用したとしても(基本的には私法からの借用のみを念頭に置いているが)、私法には私法の法目的があるのであって、かかる法の趣旨や目的から離れたところで概念のみを取り出し、私法における概念の意義に合わせて理解しようとすることには問題があるのではなかろうか。すなわち、統一説が妥当する場面が多いのは確かであるとしつつも、ときには難しい場面があり得るのではないかとする考え方もある。 このような考え方は、「目的適合説」と呼ばれ、原則的には、統一説の考え方が妥当であるとしながらも、法には法の目的があるから、ときには、私法の目的に租税法の目的が合致しないことがあると考え、そのような法目的の差異に基因して、私法と同様に理解すると問題がある場合には、私法における意味よりもやや狭義に解釈しなければならない、あるいは、やや広義に解釈しなければならないとする考え方である。 我が国の憲法体系下における法的安定性を念頭に置けば、通説である統一説が最も妥当であるということになるであろう。ここで、憲法体系下とは、我が国内の法律全般に係る体系を意味する。 ところで、本件LPS事件や前述のLLC事件は、外国の法律に基づいて組成された組織体が我が国の「法人」に該当するかどうかという問題であった。そうすると、統一説は、我が国の憲法体系下では妥当性を有するかもしれないが、かかる外国の組織体の我が国の「法人」該当性に係る判断局面においても十分な論拠となり得るかという点については疑問も惹起される。すなわち、外国の法律という、我が国の憲法体系から外れる場面においても借用概念論を展開すべきなのかという問題である。 前述の第一のアプローチは、租税法上の「外国法人」該当性(所法2①七)につき、これを借用概念と捉え、上記のとおり通説である統一説の立場から、民法上の「外国法人」概念、とりわけこの場合は、民法35条にいう「外国法人」と同様の意義を有するものとして理解するという構成を採る。 その際、民法35条の「外国法人」を解するに当たっては、民法上の通説的な理解に従い、設立準拠法説が採用され、外国の組織体については、当該地国における法律に従ったところで、「法人」と認識されるべき組織体は、我が国の民法上の「外国法人」と理解するという考え方が採られることになる。 したがって、第一のアプローチによる場合、英米法における法人概念を直截検討の素材とする必要があり、前述したさいたま地裁判決のような構成を採ることになるわけである。ちなみに、さいたま地裁は、以下のような判断要素が英米法における法人該当性要素であるとした上で判断を展開している(再掲)。 このような考え方は、借用概念論を極めてシンプルに捉えたアプローチであり、そうであるがゆえに明確であるばかりでなく、一貫性に優れた理論構成であると思われる。 ここでは、対象となる外国の組織体が、我が国において法人といえるものであるのかどうかを、かかる外国の法体系の下で検討することになる。例えば、所得税法上の配偶者控除適用問題などで、しばしば議論されるところであるが、外国人につき、我が国における配偶者該当性を論じるに当たって、民法の適用のない者の場合には現地法下における判断を展開するという考え方と同じ解釈手法である。 すなわち、その外国法の下で適法に配偶者と判断されるのであれば、所得税法2条1項33号にいう「配偶者」と理解するという考え方である。 一見すると、分かりやすい解釈論ではあるが、そこには、問題がまったくないとはいえない。 (2) 外国における概念と我が国における概念 外国における概念をそのまま我が国の法に持ち込むことに躊躇がないかというと、決してそのようなことはあるまい。 例えば、先の配偶者概念の例を取り上げたとしても、ある国においては、同性婚が許されているとした場合、すなわち、男性の配偶者が男性であるとした場合に、それをそのまま承認し、我が国の男性居住者の配偶者として男性を認めることができるのかという問題に接続する。このことに躊躇を覚える向きは当然にあろう。 なぜなら、国内においては依然として、憲法の要請等の下、同性婚は認められていないため、民法の適用を受ける日本人の同性カップルが自身の配偶者として同性のパートナーについて配偶者控除を受けようとしても認められないのにもかかわらず、外国人の場合にはこれを認めるとすることは妥当なのかという問題が惹起されるからである。 この点は、我が国の所得税法上の配偶者控除の対象となる配偶者は、婚姻届けの提出されている戸籍法上の配偶者をいうと解釈されており(最高裁平成9年9月9日第三小法廷判決・訟月44巻6号1009頁、本連載【第12回】参照)、事実婚による配偶者を認めていないのにもかかわらず、事実婚が認められている外国の国民であれば日本の居住者として所得税法上の配偶者控除の適用を受けることができてしまうという問題も同様である。 かような問題が起こるのは、なぜであろうか。それは、主として統一説による概念論について、いわば概念を単なる記号として捉えているところに問題の根源があるといってもよいと思われる。 すなわち、記号として、用語としての概念論にとどまると解するべきか、あるいは、その実質的内容をも包摂した概念として議論をすべきかという相違がここで頭をもたげるのである。 前述の第一のアプローチと第二のアプローチの違いはまさにここにあるといっても過言ではない。 ひらたく仮定の例を挙げれば、例えば、掲名主義を採用する関税法上に、「きゅうり」という項目があったとする。その際、米国から輸入される「きゅうり」には、関税定率表に掲げられている税率の関税が適用されることになる。 さて、ここで、米国から輸入してきた「もの」が「きゅうり」に該当するかどうかという問題が生ずる。すなわち、米国で「Cucumber(キューカンバー)」として取引されている「もの」が果たして、日本でいう「きゅうり」に該当するのであろうか、という問題である。 少なくとも、日本における「きゅうり」とは、あのカブトムシの匂いを思い出させるみずみずしいそれであるが、米国における「Cucumber(キューカンバー)」は英和辞典によれば、「きゅうり」と訳されているとはいっても、およそ同じ味のもの、同じ触感のものとは思えない。それでも、「Cucumber(キューカンバー)」は「きゅうり」として関税法の適用を受けるのであろうか。 そもそも、概念を「きゅうり」という日本語で表現した瞬間に、米国にはそのようなものはないのであるから、「きゅうり」という関税法上の規定は適用をすべき対象を失い、空文化すると考えるべきなのであろうか。 そうであるとすれば、記号だけで概念を理解することにはあまり意味がないのではなかろうか。 すなわち、その「もの」が実際に我が国の「きゅうり」的なものであるかどうかが問題となるのであって、どのように翻訳されているか(記号が付されているか)ということは二の次の問題であるようにも思われるのである。同じ品種であるとか、植物学的分類が同じかといったように内容や実態に踏み込む必要があるのではなかろうか。 このように考えると、第一のアプローチはあまりに形式的すぎているのではないかという疑問が浮かぶのである。 (3) ガーンジー島事件 このような議論に参考となるのが、いわゆるガーンジー島事件である。 これは、損害保険業を営む内国法人である原告(控訴人・上告人)の法人税の申告において、チャネル諸島のガーンジーにおいて設立された原告の子会社が同地で支払った法人所得税につき、税務署長が外国税額控除の対象となる「外国法人税」に該当しないとして行った処分の取消しを原告が求めた事例である。 そこでは、チャネル諸島のガーンジーにおいて支払われた法人所得税が我が国における租税と同じものかどうかが争点とされた。なぜ、そのような法人所得税が我が国における租税といえるかどうかが問題となったかというと、同地における法人所得税は、カフェテリア方式とでもいうべく税率を納税者の選択によって選ぶことができるというユニークな税制であったため、国家が権力的強制的に課する金銭給付という我が国における租税の性質と異なるものともいえるからである。 この事例において、最高裁平成21年12月3日第一小法廷判決(民集63巻10号2283頁)は、次のように説示した。 このような判断は、「外国法人税」という概念の用語のみで判断すべきではなく、それが租税という性質を有するかどうかという点にまで踏み込むべきとの説示であるとみることができよう。 すなわち、第二のアプローチが採用されているといってもよかろう。 (続く)
~税務争訟における判断の分水嶺~ 課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から 【第9回】 「任意組合が行っていた航空機リース事業が終了する際に 組合員が受けた債務免除益等の所得区分を判断した事例」 税理士 佐藤 善恵 (※) ( )内の青色文字は、略称設定であり、以下その略称を使用する。 〔概要等〕 原告(甲)は、他の出資者と共に組合契約を締結して民法上の組合を組成した上、金融機関から金員を借り入れて航空機リース事業を営んでいたが、予定前に航空機を売却して事業を終了することとなった。 その際、①航空機の購入原資の一部となった借入金に係る債務の免除を受けたことによる利益(本件債務免除益)及び、②当該組合の業務執行者に対して支払うべき手数料に係る債務の免除を受けたことによる利益(本件手数料免除益)が発生し、これらの所得区分を巡って争いとなった。 なお、複数の同様の組合事業が運営されていたが、破綻したのは本件の組合事業だけである。 当事者の主張をみてみると、甲は、本件債務免除益も本件手数料免除益も一時所得に該当する旨主張し、他方、課税庁は、本件債務免除益は雑所得に、本件手数料免除益は主位的には不動産所得に、予備的には雑所得にそれぞれ該当すると主張した。 裁判所は、いずれの所得についても一時所得に当たるとの判断を下しているが、ここでは、本件債務免除益についてのみ取り上げる。 〔課税庁の主張理由(要旨)〕 当事者双方ともに、一時所得該当性について、①除外要件(利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得であること)、②非継続要件(営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得であること)、③非対価要件(労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものであること)の3つの要件を充足するものとの解釈に基づき主張している。 甲は、これら3つの要件を満たす(一時所得である)と主張したのに対して、課税庁の主張理由は次のとおりである。 〔東京地裁の判断(要旨)〕 (1) 裁判所が着目した主な事実 ① 本件債務免除益は、あくまで債務免除行為によって発生したものであって、航空機の賃貸自体から発生したものではない。 ② 融資に関してノン・リコース条項は設けられていたが、一定の場合に、銀行が残債務を当然に免除するという条項は設けられていなかった。 ③ 銀行は、航空機の任意売却に同意した上、売却代金の一部を受領しただけで、残債務を免除していることからすると、債務免除行為は、組合事業において、ローン契約やノン・リコース条項に基づいて当然に発生したものではなかった。 (2) 判断 本件債務免除益は、本件組合が行っていた営利を目的とする継続的行為である本件航空機の賃貸自体によって発生したものではなく、また、本件組合事業の終了に伴って当然に発生したものでも、発生が予定されていたものでもなく、本件融資銀行の判断により、一時的、偶発的に発生したものと認めるのが相当であるから、営利を目的とした継続的行為から生じた所得以外の一時の所得に該当する。 (3) 結論 本件の債務免除は、銀行によって偶発的に行われたもので、債務免除益は偶発的に発生したものと認めるのが相当であるから、非継続要件を充足する。 また、甲らが銀行に対して本件債務免除益の対価となるような労務その他の役務を提供したと認めることはできない。したがって、非対価要件も充足する。 よって、本件債務免除益は、一時所得に該当する。 〔判断の分水嶺〕 本件(一時所得該当性)の判断の分水嶺は、債務免除益が本件の組合の業務の一環として当初から予定されていたもといえるのか否かである。すなわち、債務免除益が継続的な業務の一環として発生したといえるのであれば、非継続要件を満たさず、雑所得に傾くのである。 裁判所は、債務免除益が、必ずしもノン・リコース条項に基づいたものではなかったこと、つまり、債務免除行為が必ずしもノン・リコース条項を前提とした法律関係を反映したものではないと認定している。したがって、偶発的であり対価性も認められないということである。そして、その認定に特に影響したと考えられる事実は、上記(1)〔東京地裁の判断(要旨) 〕の②や③(※2)である。 (※2) 本件の特殊事情として、航空機は1,700万ドルで売却されたが、そのうちの1,400万ドルだけがノン・リコースローンの返済に充てられ、その代金の一部が他の債務弁済に充てられている。 〔本判決が示唆するもの〕 そもそも、ノン・リコースローンは、融資銀行が事業に内在するリスクを当初から織り込んでいるはずである。つまり、その破綻リスク等の見返りに、金利が高めに設定等されているのである。この点を強調すると、弁済原資の範囲に限定がないリコースローンの場合はともかく、ノン・リコースローンの債務免除益は、ただちに偶発的に生じたものとはいいがたい。 裁判所が本件の詳細な事実関係を拾い出して、所得区分を判定しようとした判断過程は参考になるが、どのような事実があれば、「ノン・リコース条項という法律関係を反映していない」と認定できるのか。その点が十分に示されていない点で、本件は必ずしも一般化できないと考えられる。 また、判決速報によれば、課税庁が控訴中で本件の結論は確定していないため、留意が必要である。 なお、本件の裁決は公表されており(平成24年3月21日公表裁決)、審判所は、本件債務免除益は雑所得、本件手数料免除益は不動産所得と判断し、納税者の主張を認めなかった。 (了)
包括的租税回避防止規定の 理論と解釈 【第14回】 「不動産関連の事案」 公認会計士 佐藤 信祐 前回は、最高裁昭和52年7月12日判決(山菱不動産株式会社事件)について解説を行った。 本稿では、不動産関連で否認された事案として、東京地裁平成元年4月17日判決、福岡地裁平成4年2月20日判決、福岡高裁平成11年11月19日判決についてそれぞれ解説を行う。 9 不動産関連の事案 (1) 東京地裁平成元年4月17日判決(TAINSコード:Z170-6286) ① 裁判所の判断 ② 評釈 本事件は、原告の所得税の負担を不当に減少させるために、同族会社である不動産管理会社に対して、多額の管理料を支払った行為に対して、同族会社等の行為計算の否認が適用された事件である。 法人税法であれば、同族会社等の行為計算の否認を適用するまでもなく、法人税法37条に規定する寄附金で否認すれば足りるところ、所得税法であるからこそ、同族会社等の行為計算の否認が適用されたのではないかという疑いはある。 たしかに、所得税法の書籍を紐解くと、必要経費に算入することができるか否かの判断として、業務関連性について書かれているものが多いが、対価として相当であるかどうかまで書かれているものはほとんど存在しない。さらに、本事件を受けて、現行法上でも、同族会社等の行為計算の否認が適用されるという見解も存在する。 このように、法人税法に比べて、個別否認規定が適用される対象が狭いという意味で、同族会社等の行為計算の否認が適用される場面が多い可能性は否めないと考えられる。 (2) 福岡地裁平成4年2月20日判決 ① 裁判所の判断 ② 評釈 このように、裁判所は、原告が同族会社に支払った委託料のうち、適正部分を超える部分の金額について、必要経費とは認めなかった。東京地裁平成元年4月17日判決にやや似た判決ではあるが、完全な比準同業者を探すことができないという理由により、個別受託同業者倍率比準方式を採用したという特徴がある。 実務上、完全な比準同業者を探すことができないというのは、課税当局にとっても、適正部分の金額の推定を速やかに行うことができないことから、否認されにくくなる可能性はあり得るものの、実際に適正部分を算定した後は、否認されるリスクの強弱は変わるべきではなく、裁判所の判断は相当であったと考えられる。 さらに、同族会社や親族における法人税又は所得税の増加は、同族会社等の行為計算の否認が適用されるか否かの判断に何ら影響を与えないことが示されており、実務でも参考にすべき判決である。 このような二重課税の問題は、平成18年度税制改正で導入された対応的調整により解決されるべきものであるが、未だ曖昧な部分も多く、本事件のような事案に対して適用されるのか否かについては不透明な部分も多い。この点についても、いずれ本連載において解説を行いたい。 (3) 福岡高裁平成11年11月19日判決(TAINSコード:Z245-8529) ① 原審(福岡地裁平成11年6月29日判決・TAINSコード:Z243-8439)) ② 裁判所の判断 福岡高裁は、福岡地裁の判断をほとんど踏襲している。なお、控訴人が「世上頻繁に行われている」という主張を行っているが、福岡高裁に一蹴されている。 ③ 評釈 本事件は、原告の土地の譲渡に対する譲渡所得を減額するために、事前に同族会社である南原鉄工株式会社に対して地上権を無償で設定させることにより、土地の時価を2,100万円から1,100万円に減額させた事件である。 なお、南原鉄工株式会社は受贈益として1,000万円を益金に算入しており、判決文にはないものの多額の繰越欠損金を有していた可能性がある。 このような、事前の地上権の設定による譲渡所得の減額は、極めて不自然・不合理な行為であり、同族会社等の行為計算の否認が適用されたのはやむを得ないと思われる。 なお、本稿で紹介した事案のほか、酒井克彦著『裁判例からみる法人税法』(大蔵財務協会、平成24年)709-717頁では、借地権に関連する事案につき、法人税法における同族会社等の行為計算の否認が適用された事件がいくつか紹介されているため、興味のある読者は一読されたい。 次回以降では、不当の解釈が争われた事件について解説を行う予定である。 (了)
〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第27回】 「消費貸借に関する契約書①(利率変更契約書)」 税理士・行政書士・AFP 山端 美德 既に締結している金銭消費貸借契約の利率を変更するため、変更契約書を作成しました。この場合の印紙税の取扱いはどうなるのでしょうか。 記載金額のない第1号の3文書(消費貸借に関する契約書)に該当し、印紙税額は200円となる。 [検討1] 課税文書に該当するか 印紙税法上の契約書とは契約証書、協定書など名称を問わず、契約内容の変更の事実を証明する目的で作成する場合も含まれる。 ただし、印紙税法上の契約書に該当したとしても、基通別表2で定める重要な事項以外の事項を変更するものについて、課税文書に該当しない。 事例の場合は、原契約において確定している利率を変更するものあり、利率は第1号の3文書の重要な事項に該当することから、その変更契約書は、同じく第1号の3文書(消費貸借に関する契約書)に該当する。 [検討2] 現在残元金は、記載金額とはならないか 変更契約時における借入残金の記載がされていたとしても、その金額は原契約の契約金額を変更するものではないため、記載金額とはならない。 [検討3] 保証人については13号文書(債務の保証に関する契約書)に該当しないか 第13号文書の債務の保証に関する契約書は、主たる債務の契約書に併記したものは除くこととされている。事例の保証人の事項は主たる債務の契約書に併記したものであるため、第13号文書には該当しない。 ▷ まとめ (了)
さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第13回】 「未登記新築建物固定資産税等賦課事件」 ~最判平成26年9月25日(民集68巻7号722頁)~ 弁護士 菊田 雅裕 (了)
金融商品会計を学ぶ 【第20回】 「ヘッジ会計①」 公認会計士 阿部 光成 「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号。以下「金融商品会計基準」という)及び「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号。以下「金融商品実務指針」という)におけるヘッジ会計について述べる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅰ ヘッジ会計とは ヘッジ会計を理解するには、①ヘッジ会計、②ヘッジ取引、③ヘッジ会計の方法について整理する必要である。 また、ヘッジ対象とヘッジ手段の関係について理解することも重要である。 1 ヘッジ会計の意義 金融商品会計基準は、ヘッジ会計とヘッジ取引を次のように定義している(金融商品会計基準29項、96項)。 ヘッジ対象とヘッジ手段の基本的な関係をイメージで表すと次のようになる。 ヘッジ対象とヘッジ手段の関係のミスマッチ、すなわち、ヘッジ対象に係る相場変動等が損益に反映されず、一方、ヘッジ手段であるデリバティブ取引を時価評価して損益を認識するとした場合には、両者の損益が期間的に合理的に対応しなくなり、ヘッジ対象の相場変動等による損失の可能性がヘッジ手段によってカバーされているという経済的実態が財務諸表に反映されなくなってしまう(金融商品会計基準97項)。 そこで、ヘッジ会計が規定されており、ヘッジ対象及びヘッジ手段に係る損益を同一の会計期間に認識し、ヘッジの効果を財務諸表に反映させる方法が認められている(金融商品会計基準97項)。 2 ヘッジ取引 前述のとおり、ヘッジ取引は金融商品会計基準96項で定義されているが、ヘッジ取引には①公正価値ヘッジと②キャッシュ・フロー・ヘッジがある(金融商品実務指針141項。伊藤眞、荻原正佳編著『改訂8版 金融商品会計の完全解説』(財経詳報社、平成21年7月)303ページ)。 3 ヘッジ会計の方法 ヘッジ会計の方法には、①繰延ヘッジ会計、②時価ヘッジ会計、③合成商品会計の3つがある(伊藤眞、荻原正佳編著『改訂8版 金融商品会計の完全解説』(財経詳報社、平成21年7月)303~304ページ)。 Ⅱ ヘッジ手段とヘッジ対象 企業は一般的に市場リスク、すなわち、事業活動に伴う為替変動、金利変動、価格変動のリスクにさらされている。 ヘッジ会計を適用するためには、ヘッジ対象のリスクを明確にし、これらのリスクに対していかなるヘッジ手段を用いるかを明確にする必要がある(金融商品実務指針143項(1))。 ヘッジ手段とヘッジ対象の関係としては次のものが考えられる(金融商品実務指針143項(1))。 (了)
経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第114回】 退職給付会計⑧ 「複数事業主制度」 仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明 〈解 説〉 1 複数事業主制度とは 複数事業主制度とは、複数の事業主が共同して1つの企業年金制度を設立する場合をいい、連合設立型厚生年金基金、総合設立型厚生年金基金及び共同で設立された確定給付企業年金制度等がこれに該当します(退職給付に関する会計基準(以下「会計基準」)第33項、退職給付に関する会計基準の適用指針(以下「適用指針」)第118項)。 2 複数事業主制度の会計処理 複数事業主制度の場合、年金資産を事業主ごとに運用しておらず一括で運用しているため、事業主ごとの年金資産の残高を把握できません。ただし、複数事業主制度は確定給付型の企業年金制度であるため、年金資産等についても合理的な基準により按分できるのであれば、合理的な基準により按分して退職給付費用及び退職給付引当金(退職給付に係る負債)を計上することが望まれます。 そこで、会計基準は自社の負担に属する年金資産の額を合理的に計算できるか否かによって会計処理を定めています。 自社の負担に属する年金資産の額を計算するための合理的な基準としては、次のようなものが考えられます(適用指針第63項)。 例えば、制度全体の掛金累計額が120百万円で、A社の掛金累計額が20百万円であれば、A社の負担に属する年金資産の額は次のように計算されます。 このように計算された自社の負担に属する年金資産の額を用いて、確定給付制度の会計処理を行います。 しかし、実務的には標準掛金等は相互共済的に一律で定められていることが通例であり、また、事業主ごとに未償却過去勤務債務に係る掛金率や掛金負担割合等の定めがなく、全企業に対し掛金が一律に決められていることもあります。 このような場合、上記に示したような自社負担分の合理的な計算ができないため、確定拠出制度に準じた会計処理を行い、当該制度に基づく要拠出額を当期の費用として処理することとなります。 3 複数事業主制度に関する注記 複数事業主制度において確定給付制度の会計処理を行う場合は、注記に関しても確定給付制度で求められている注記を行います(会計基準第33項(1))。 一方、複数事業主制度において確定拠出制度に準じた会計処理を行う場合は、次の2つに関する注記を行います(会計基準第33項(2))。 ②は将来の負担額の見込みに関する目安を開示するために求められているもので、これにより、年金制度全体の財政状況が悪化している状況下で当該制度から脱退等した場合に、事業主にどれだけの費用負担があるか等の予測に資する情報を開示することが可能となります。 具体的には次のような注記を有価証券報告書に行います。 (了) ※6月は引当金を取り上げます。
会社法施行後10年経過に関する 「役員変更登記」の実務 【第1回】 「役員の任期管理を放置した場合のリスク」 司法書士法人F&Partners 司法書士 本橋 寛樹 役員の任期管理を怠る不利益とは 役員の任期が適切に管理されていれば、任期満了に伴って改選決議を行い、その役員変更登記手続を行うことになる。しかし、任期管理を怠ると、役員の任期満了の時期を把握することができず、改選決議や役員変更登記手続に着手できない。一定の期間登記手続をしないと、会社は思わぬ不利益を被ってしまうことになる。 以下は、事業活動を継続する株式会社を対象として、株式会社の役員の任期管理を放置するとどのような事態となるかを考察してみたい。 〈ステージ①〉 過料制裁のおそれ 登記期間は、原則として登記事項に変更の事由が発生してから2週間以内である(会社法915条)。例えば、取締役の任期満了による変更登記の場合、任期満了日から2週間以内に登記手続を行う必要がある。期間を遵守しなかった場合には過料に処せられるおそれが生じる(会社法976条1号)。 登記官が過料に処せられるべき者があることを職務上知ったときには、遅滞なくその事件を管轄裁判所に通知する(商業登記規則118条)。管轄裁判所は、会社の本店所在場所ではなく、登記記録上の代表者個人の住所地である(非訴訟事件手続法119条)。複数の代表者がいる場合には、各代表者の住所地を管轄する地方裁判所に通知する。管轄裁判所からは会社代表者の住所地に過料通知がなされる。 一般的に、登記期間を徒過する期間が長ければ長いほど過料に処せられる可能性が高まり、過料の金額も大きくなる傾向にあるが、その期間や金額の基準は明らかにされていない。なお、過料には時効がないため、登記申請義務を果たさない限り、過料の制裁から逃れることができない。 〈ステージ②〉 みなし解散による事業継続の危機 毎年1回、法務大臣より、株式会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過した株式会社を対象に、2ヶ月以内に「まだ事業を廃止していない旨の届出」がなく、登記手続もされないときには、解散したものとみなされる旨の公告がなされる。あわせて本店所在場所を管轄する登記所から法務大臣による官報公告が行われた旨の通知が送付される。 2ヶ月の期間内に登記所に「まだ事業を廃止していない旨の届出」をするか、又は登記手続をしない限り、登記官の職権によりみなし解散の登記がなされる(会社法472条)。「12年」の年数は、株式会社にあっては、役員の任期を最長の10年に伸長したとしても少なくとも10年に1回は登記手続をしなければならないことに起因する。 なお、登記所からの通知は、登記記録上の本店所在場所に「普通郵便」でなされる。対面受取ではないため、他の郵便物と紛れてしまうなど、見過ごすおそれがある。また、当該通知が何らかの理由で届かない場合であっても、不着を理由に届出期間の伸長はされない。 特に登記記録上の本店所在場所が実際の本店機能を備える場所と異なっている場合には、郵便物の管理に注意を要する。 一方で、「まだ事業を廃止していない旨の届出」をし、又は役員変更等の登記手続をした株式会社については、みなし解散を回避できるが、登記官が裁判所に過料事件の通知をすることとなるため、過料の制裁は免れない(商業登記規則第118条)。 〈ステージ③〉 会社継続の是非 みなし解散の登記がなされたが、事業を継続する場合には、みなし解散の登記後3年以内に限り、株主総会の特別決議によって、会社を継続することができる(会社法473条)。 ただし、会社継続をしても、将来に向かって会社を解散前の状態に復帰させるのであって、みなし解散の経過は登記記録に残ることになる。また、解散前の取締役が当然に復帰するわけではなく、会社継続を決議する株主総会において取締役を選任しなおさなければならない。 一方で、みなし解散後3年経過すると、会社継続さえもできなくなるため、清算に関する範囲を超えて事業活動をすることができなくなる。 まずは役員の任期の確認を 以上のとおり、適法な時期に適法な登記手続をしない期間が経過すればするほど、過料の負担や登記記録上の公示上の問題、会社の事業活動が制限されるといった様々な不都合が生じる。 特に任期を伸長して前回の登記手続から日が経っている株式会社は、自社の役員の任期が満了する時期がいつであるのか、それともすでに役員の任期が満了しており、改選とその登記手続をする必要があるのかを確認すべきである。 もし役員の任期が満了し、改選とその登記手続を行う場合、会社法・商業登記規則の改正による事項もあわせて検討する必要がある。 次回(5/19公開)は、自社で行う役員改選の登記のポイントについて確認していく。 (了)
〔誤解しやすい〕 各種法人の法制度と 税務・会計上の留意点 【第2回】 「一般財団法人」 司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎 公認会計士・税理士 濱田 康宏 ▷ 法制度について 1 一般財団法人とは 一般財団法人は、一般社団法人と同じく「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(以下、「一般法人法」という)の規定に基づき設立された、構成員に対して剰余金または残余財産を分配しないという性質を有する非営利の財団法人である。 一般財団法人には構成員となる社員が存在しないため、ここでいう非営利とは、設立者に対して利益を分配しないことを意味する。 一般財団法人が、「公益社団法人及び公益財団法人の認定に関する法律」(以下、「認定法」という)に基づき公益認定を受けると、公益財団法人となる。これは前回取り上げた一般社団法人と公益社団法人の関係と同様である。 2 一般財団法人誕生の背景 一般財団法人は、一般社団法人と同じく、いわゆる公益法人制度改革によって、誕生した法人である。一般社団法人と同様に、平成25(2013) 年11月30日までの移行期間の間に、定款を一般法人法に合致するものに変更したうえで、認定法の要件を満たして公益財団法人に移行する認定を受けるか、公益認定を受けずに一般財団法人へ移行する認可を受けなければ、移行期間満了と同時に解散となることとされた。 つまり現在存在する一般財団法人には、従来の民法法人が一般財団法人化した法人と一般法人法に基づき新規に設立された法人が存在する。 3 準則主義 一般財団法人は、一般社団法人と同じく、登記によって成立する(一般法人法163条)。設立自体に許認可が必要となるのではない。 主な流れは次のとおりである。 なお、一般財団法人は遺言により設立することができる。遺言者が遺言に定款の内容を記載し、遺言の効力が生じた後に遺言執行者がこれを定款にした上で認証を受けることになる(一般法人法152条2項)。一般財団法人の目的は、一般社団法人と同様に、法令上特に制限はない。 一般財団法人の設立に際して、設立者が拠出する財産の最低限度額は300万円を下回ってはならないとされている(一般法人法153条2項)。 設立後においても純資産額300万円を維持しなければならず、2期連続で純資産額300万円を下回った場合には、解散することとなる(一般法人法202条2項)。 なお、一般財団法人には「基本財産」という概念があるが(一般法人法172条2項)、これは一般財団法人が事業を行うために不可欠なものとして任意に定款に定めるものである。設立時に拠出された財産や存続のために確保すべき純資産が当然に「基本財産」に該当するものではない。 4 定款の変更 一般財団法人は、評議員会の決議によって、設立後に定款を変更することができる。ただし、一般財団法人の目的と評議員の選任、解任の決議については原則として変更できない(一般法人法200条1項)。社員総会の決議があれば、特に制限なく定款変更が可能な一般社団法人とは異なる特徴である(一般法人法146条)。 これは、一般財団法人が遺言でも設立可能とされていることに見てとれるように、設立者の死後においても一般財団法人が存続することが想定されていることと関連する。 つまり、設立者の設立当初の意思が永年にわたり維持されるために、設立の目的や運営を支える評議員に関する定めは容易に変更できないこととされているのである。 5 機関構成 一般財団法人の場合、(ⅰ)評議員3人、(ⅱ)すべての評議員で組織する評議員会、(ⅲ)理事3人、(ⅳ)すべての理事で組織する理事会、(ⅴ)監事1人が最低限必要な機関である(一般法人法170条1項)。 一般財団法人は、構成員が存在しないため、より厳密な管理体制を置くことが必要であるから、一般社団法人のように簡素な機関設計を採用することはできない。 定款の定めにより、会計監査人を設置することができる(一般法人法170条2項)。最終の事業年度の貸借対照表上の負債の部の計上額が200億円以上である大規模一般財団法人(一般法人法2条3号)は、会計監査人を設置しなければならない(一般法人法171条)。 一般財団法人の理事および監事は、評議員会の決議により選任され(一般法人法177条・63条)、評議員は設立者が定款に定めた方法によって選任される(一般法人法200条1項ただし書)。これらの者の任期は、おおむね理事が2年、監事が4年、評議員が4年、会計監査人が1年である(一般法人法177条・66条・67条1項・69条1項・174条)。会計監査人には、みなし再任規定の適用がある(一般法人法177条・69条2項)。 設立に最低限2人存在すれば設立可能な一般社団法人と比較すると、一般財団法人は設立に際して、財産の拠出も必要であり、多くの人員を必要とする。実務的な実感としては、資産管理法人のように私的な法人として活用するような場合には、一般社団法人を選択することが多い印象がある。 一般財団法人は、奨学金制度のように財産額も多額で、設立者の死後においても厳格に財産の運用をさせたい場合には向いているといえる。 ▷ 税務・会計について 1 一般社団法人と一般財団法人の処理は基本的に同じ 一般社団法人と一般財団法人の会計・税務の処理は、基本同様である。 違いは2点であり、1つは、基金制度が存在しないことである。基金制度は、一般社団法人においてのみ、定款で設定可能とされたものである。 もう1つの違いは、公益法人会計に準拠している場合に生じる基本財産の表示である。つまり、一般社団法人には存在しない基本財産を、定款で定めた場合には、これを貸借対照表上で区別することが要求されている。 これら以外は、特に大きな処理の違いはない。前回の一般社団法人における説明を参照していただきたい。 2 税務(法人税) 一般社団法人の回で説明した通り、公益認定を受けた場合あるいは非営利型法人に該当すれば、法人税では、34業種の収益事業課税のみが行われることになる。この非営利型法人は、特別の利益供与を受けないことや理事の同族3分の1以下要件などが求められている。規制されているのは、あくまでも理事であり、社員や評議員の数については、税務上の規制がない。 非営利型法人は、さらに、その内容が、「公益法人の卵」というべき非営利徹底型法人と、一般的な共益型組織を念頭に置いた共益型法人の2通りに分けられる。その際に求められる要件は、共通する部分と、若干異なる部分がある。 実務的に注意すべきは、定款に定めるべきあるいは定めた内容によって、要件に該当するしないの違いが生じることである。 例えば、非営利徹底型の場合には、法人税法施行令3条1項にあるように、剰余金の分配を行わない旨や残余財産帰属先の定めが必要になる。その上で、残余財産帰属先は、国・地方公共団体・公益認定を受けた一般社団法人あるいは一般財団法人であることを明記する必要がある。 これに対して、共益型の場合には、同条2項で求められる要件を充たすことになるが、非営利徹底型と異なり、剰余金の分配を行う定めが定款にないことなどを求めている。定款に記載していなければダメではなく、定款で特定の内容を記載していないことを求めているのである。 共益型の場合には、さらに注意すべき点がいくつかある。共益目的であることや、収益事業を主にしていないことなどは当然である。 最も注意すべきは、会費負担額の決議を社員総会もしくは評議員会の決議により定める旨を定款に書き込む必要がある点である。 インターネット上で、各法人の定款を検索すると、社員総会・評議員会の決議ではなく、理事会決議によるとしているものが多数見受けられる。これは、共益型の要件を充たさないことになり、非営利徹底型に該当しない限り、非営利型法人には該当しないことになる。その結果、法人税法においては、普通法人として、34業種の収益事業に限られず、株式会社同様に、全所得課税の法人となる。 一般社団法人・一般財団法人の定款ひな形として、会費負担額の決議を理事会決議としているものが広く出回っているようなので、法人設立時には特に注意されたい。 なお、上述の通り一般財団法人の場合、理事数3名以上は必須であるが、一般社団法人の場合は前回述べたように、理事数1名の法人設立も可能となる。ただしこの場合、当初から、非営利型法人になることはあり得ず、普通法人となる。この点も法人設立時に関係者が注意すべき点である。 (了)