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公的年金制度の“今”を知る 【第1回】「公的年金制度の概要と現状」

公的年金制度の“今”を知る 【第1回】 「公的年金制度の概要と現状」   特定社会保険労務士 大東 恵子     1 公的年金制度とは 公的年金制度とは、個人の予測不能な将来に対し、定期的に一定の金額を給付する制度のもとで、社会全体で備え支え合う仕組みである。老後に備えて個人が貯蓄をするにしても、人は何歳まで生きるのか誰もわからない。また、物価は上昇していくので、貯蓄は将来的に目減りする可能性が拭えない。 そこで、すべての国民が何らかの公的年金制度に加入する「国民皆年金」制度が確立したのは、昭和36年のことである。当時の平均寿命は、男性66.03歳、女性70.79歳。国民年金は原則として65歳から亡くなるまで給付される制度設計である。 また、公的年金を受給するのは、高齢者の「老齢年金」に限定されるわけではない。不慮の病気・事故などにより障害者となった場合は「障害年金」が所得を保障している。また、一家の大黒柱が死亡すれば路頭に迷うことになりかねないが、「遺族年金」はこのようなリスクもカバーし、所得を保障しているのである。   2 現在の公的年金制度 現在、公的年金制度には、次の3つの種類がある。 なお、公的年金制度において、会社員の場合は、国民年金の上に厚生年金が上乗される2階建て構造である。 そして、いずれかの公的年金制度に加入している人を「被保険者」と呼ぶが、この被保険者には次の3つの分類がある。 (※) 厚生年金保険料は労使折半となっており、これと同額を事業主が負担して支払っている。   3 現状の公的年金制度の問題点 現在、高齢者世帯の平均所得の約7割を公的年金が占め、高齢者世帯の6割以上が公的年金だけで生活している。公的年金制度は、国民の高齢期の生活を支える主要な収入源となっている一方で、制度創設時の前提や社会経済の状況等が大きく異なってきた結果、現在の日本の公的年金制度は多くの問題を抱えている。以下に、特に大きな要因3点を紹介する。 (1) 少子高齢化 公的年金制度は、若者が高齢者の年金を支える仕組みとなっている。現役世代の保険料負担で高齢者世代の年金に必要な費用をまかなう世代間扶養の考え方を基本にした「賦課方式」で運営されているからである。 しかし、今日の日本の平均寿命(平成24年)は、男性79.94 歳、女性86.41歳。まだ延びると予測され、とりわけ女性の平均寿命はいずれ90歳を超えると推計されている。年金制度創設当時には想定できなかったほどの長寿社会になった。 このため、現役世代が減る一方、年金を受け取る世代が増加し、制度設計は崩壊寸前と言われている。 (2) 国民年金保険料の未払い問題 国民年金の第1号被保険者の年金保険料の未払いが問題となっている。この原因は、年金保険料の支払いを支える「雇用」という土台が揺らいできたためである。 公的年金制度は、安定的に働いて、保険料を拠出してくれる層がいて初めて成立する制度である。高度経済成長時代には、正社員・終身雇用・年功序列型賃金が前提となり、保険料の拠出も順調であった。しかし、経済のグローバル化で国際競争が激しくなり、企業は非正規労働者を多く雇うようになった。 現在、雇われて働いている人の約38%は非正規労働者である。賃金が低ければ、保険料納付も苦しくなる。非正規労働という不安定な雇用形態で働く人が増えるにつれ、年金保険料収入が落ち込んできたのである。 (3)  マクロ経済スライド 平成16年から年金には「マクロ経済スライド」という制度が導入されている。それまでは、物価の変動とともに年金額を変動させていたが、これからは物価の変動だけではなく、少子高齢化、経済情勢などマクロ経済全体を考慮し年金額を決めるという制度である。ただし、制度は導入されたものの、マクロ経済スライドはこれまで一度も実施されていない。理由は、物価が下落しているときには発動ができないためだ。 マクロ経済スライドには、次のような限定化がなされている。 したがって、賃金や物価が下落する場合、それに応じて年金額を下げるが、それ以上に年金額を下げることはないのである。 *   *   * 上記の3点以外にも、保険料の負担なしで年金を受け取ることができる3号被保険者問題など、日本の年金制度には様々な問題があり、年金の積立金は厚生労働省の想定を上回るスピードで切り崩しが進んでいる。 次回(第2回)は、年金財政の持続可能性の確保のために行われた平成24年の年金改正について、その評価と課題を解説する。 (了)

#No. 93(掲載号)
#大東 恵子
2014/11/06

私が出会った[相続]のお話 【第11回】「税理士の皆さまに求めたい『いざ相続!』前の日常対策」~漏れのない対応が結果として自分を助けることに~

私が出会った[相続]のお話 【第11回】 「税理士の皆さまに求めたい『いざ相続!』前の日常対策」 ~漏れのない対応が結果として自分を助けることに~   財務コンサルタント 木山 順三   〈対応その1〉 「財産明細表」の作成と年に一度の更新を徹底 クライアントは年配になればなるほど、ご自身の財産を管理するのがおっくうになりがちです。 そのような人には、最低限、どこの銀行、どこの証券会社と取引しているのか、貸金庫はどこにあるのか等の「財産のあり場所メモ」だけでも残すようお勧めしています。 と申しますのも、某生活研究所が調査した結果によれば、自分の親が亡くなって「預金している銀行や口座が分からない」といった人が4割を占めているというのです。 現に私も、次のような事態に遭遇した経験があります。 これらの事例のように、せっかくの財産が誰にも知られないまま埋もれてしまうリスクを避ける必要があります。なぜならこれは、社会的な損失だからです。 きちんとした税理士のクライアントについては上記のような事態は少ないと思いますが、常に最新のより詳細な財産明細表を作成するように指導しましょう。 すなわち預入先はもとより、預入の種類、名義、金額、償還日、その他保有資産の保険や不動産の種類、所有者、持分等々を含むすべての財産明細を作成させましょう。 これにより、当家の将来の相続対策や遺言書作成時の資料として、次のような明確な対応をとることができるのです。   〈対応その2〉 財産明細表を分析して税務対策と節税策の提案を 上記〈対応その1〉により詳細な財産明細表を作成することで、例えば以下のようなチェック作業が可能となります。 以上の状況を把握し、将来の相続開始を想定した事前の交通整理を行いましょう。 すなわち、 等々を行い、そのうえで将来の「争族リスク」が予想される場合は、次のように公正証書遺言書作成等を行うよう勧めましょう。   〈対応その3〉 当家は遺言書の作成が必要かどうかを考える 遺言書作成に当たっては、ぜひとも公正証書で作成させてください。仮に税理士が遺言執行者になった場合でも、自筆証書に比較して限りなくリスクが少なく安心です。 また遺言執行者にまで委任されなくとも、立ち合い証人になることで来るべき相続開始の際に相続業務を任されるケースが多く、遺言書作成希望に際しては極力相談に乗ることが望ましいと思います。 もちろんクライアントの中には自筆証書にこだわる人もおられます。この連載の第9回でご紹介した事例などはまさにその通りで、すなわち愛人への遺贈内容などは、公証人役場ではなかなか披露できないものです。 でも万一、要件違反の遺言書になっていたら・・・ 大事な内容であればあるほど、公正証書にすることが大切です。そのことがお世話役としての税理士が、他の相続人から疑念の目で見られなくするための対策でもあるのです。   〈対応その4〉 当家の「家庭状況」を常に把握する 税理士にとって顧客の信頼を得るうえでまず大切なことは、当家の家庭状況を把握することです。そのうえで、事前の交通整理や遺言書作成等のお手伝いを行いましょう。 当家の置かれた状況を十分観察し、現状における実権者は誰か、誰がネックとなるのか等々、常に把握しておかなければなりません。 このことが次へのつながりに結びつき、幅の広い、奥行きのある、息の長い顧客グリップへと発展するのです。 そのうえで、アドバイザーとしての公平を保ち、時に厳しく、時に優しく、クライアントへの指導を行いましょう。 その原点は、『当家のために』という気持ちであり、そのことを忘れずにおけば、自信を持った顧客対応ができるのです。 (了)  

#No. 93(掲載号)
#木山 順三
2014/11/06

日経新聞(11/2・日)に『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか』の書評が掲載されました。

書籍『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか』の書評が 日経新聞(11/2・日)に掲載されました。   - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。   

#Profession Journal 編集部
2014/11/04

《速報解説》 国税庁、HPに「社会保障・税番号制度について」を設置~平成28年以降活用が開始される個人番号・法人番号についてFAQで解説

《速報解説》 国税庁、HPに「社会保障・税番号制度について」を設置 ~平成28年以降活用が開始される個人番号・法人番号についてFAQで解説   Profession Journal編集部   平成27年10月から通知が始まる個人番号・法人番号は、平成28年1月から順次、社会保障、税、災害対策分野で利用が開始される予定だ。 番号の通知は、来年10月に予定されているが、およそ11ヶ月前となった10月29日、国税庁は、ホームページに「社会保障・税番号制度について」を公表。混乱が予想される番号の扱いなどの番号制度に対して、FAQなどを用いて周知に動き出した。   ◆FAQで国税関係の影響の把握が可能 国税庁のHPの「社会保障・税番号制度について」では、番号制度に関する概要や、「法人番号制度に関するFAQ」「国税分野におけるFAQ」を公開し、国税分野の解説を行っている。 番号制度の導入による税分野のメリットとしては、国税当局に関しては、提出される申告書・法定調書等の税務関係書類に個人番号及び法人番号が記載されることによって、法定調書の名寄せや申告書との突合がより正確かつ効率的に行えるようになるため所得の正確な捕捉が可能になる。他方、納税者にとってのメリットは、次の点を挙げている。 番号は、大きく「個人番号」と「法人番号」に大別されるわけだが、番号法で規定される個人番号は、市町村長により指定され、厳格に用途が定められ、その管理が求められているため、漏えい等が生じた場合には罰則が用意されている。だが、一方の国税庁長官が指定する法人番号は、一般の利用も可能とするなど取扱いは大きく異なっている。   ◆申告の場面でも影響 税務における番号の扱いについては、既に関係省令等の改正が行われており、申告書や法定調書等の税務関係書類に納税者の個人・法人番号を記入することが求められることとなるわけだが、関与先の申告書を提出する場合でも、リスクに対応するために、これまでとは異なる厳格な本人確認が義務付けられている。 申告に当たって、税理士は番号法19条に定める委託者と位置付けられ、申告書等作成のために番号の保有者から個人番号を提供されることが認められているわけだが、税理士が顧客の個人番号を記載した申告書等を提出する際には、代理権、代理人の身元及び本人の番号が確認されることになる。 税理士が、その際に提示を求められるものは、①委任状、②代理人の個人番号カードや運転免許証(身元確認)、③顧客の個人番号カードや通知カードの写しなどだ。 なお、番号法施行規則において、税理士が代理権に基づき申告を行う際は、原則的な方法による身元確認が困難な場合には税理士名簿の確認(身元確認)等による方法も認められている。 番号の申告書等への記載の開始時期だが、所得税については平成28年分の申告書から、法人税については平成28年1月以降に開始する事業年度に係る申告書から、法定調書については平成28年1月以降の金銭等の支払い等に係るものから、申請書等については平成28年1月以降に提出すべきものからとなる。 【参考】 税務関係書類への番号記載時期 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。  (※) 国税庁ホームページより (了)

#No. 92(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2014/10/30

Profession Journal No.92が公開されました!~今週のお薦め記事~

2014年10月30日(木)AM10:30、Profession Journal(プロフェッションジャーナル)  No.92 が公開されました。   - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2014/10/30

〈平成26年分〉おさえておきたい年末調整のポイント 【第1回】「注意しておきたい最近の改正事項」

〈平成26年分〉 おさえておきたい 年末調整のポイント 【第1回】 「注意しておきたい最近の改正事項」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子     (1) 給与所得控除の上限設定 平成24年度の税制改正により、給与所得控除に上限が設定され、給与等の収入金額が1,500万円を超える場合の給与所得控除額は、一律245万円となった(所法28③六)。この改正は、平成25年分以後の所得税について適用されている。 詳しくは、拙稿「〈平成25年分〉おさえておきたい年末調整のポイント【第1回】「(1) 給与所得控除の上限設定」」(本誌No.41掲載)をご覧いただきたい。 なお、平成26年度の税制改正により、給与所得控除の上限をさらに段階的に引き下げることが決まっているが、当該改正は平成28年分以後の所得税に対して適用されるため、今年及び来年分の年末調整には影響しない。 (※) 給与所得控除に関する平成26年度改正については、拙稿「《速報解説》 給与所得控除の見直し(縮小)~平成26年度税制改正大綱~」(2013年12月18日公開)をご確認いただきたい。   (2) 復興特別所得税の創設 平成25年1月1日から平成49年12月31日までの各年においては、所得税と併せて復興特別所得税が課される(復興財確法9①)。平成26年度の税制改正により、復興特別法人税は1年前倒しで廃止されたが、復興特別所得税には改正が行われていない。よって、復興特別所得税は、平成26年分以後も平成25年分と同様に課税される。 復興特別所得税の額は、基準所得税額(その年分の所得税の額)の2.1%相当額であり、源泉徴収及び年末調整において所得税とともに徴収、精算される(復興財確法28①、30①)。 詳しくは、拙稿「〈平成25年分〉おさえておきたい年末調整のポイント【第3回】「復興特別所得税(その1)」」(本誌No.43掲載)及び「〈平成25年分〉おさえておきたい年末調整のポイント【第4回】「復興特別所得税(その2)」」(本誌No.44掲載)をご覧いただきたい。   (3) 生命保険料控除の改組 平成22年度の税制改正により、平成24年分以後の生命保険料控除に、新たに介護医療保険料控除が加わった。改正後の生命保険料控除は、一般の生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護医療保険料控除の3本立てとなっている(所法76①②③)。 控除額を算出するための計算式は、保険契約の締結時期が平成24年1月1日以降(新契約)か、平成23年12月31日以前(旧契約)かによって異なる。また、適用限度額は、3つの控除の合計で12万円である(所法76④)。 改正内容の詳細や控除額の計算式及び計算例は、拙稿「平成24年分 おさえておきたい年末調整のポイント①今年度適用となる改正事項」(本誌創刊準備2号掲載)及び「〈平成25年分〉おさえておきたい年末調整のポイント【第2回】「生命保険料控除について」」(本誌No.42掲載)をご覧いただきたい。   (4) 扶養控除の見直し 平成22年度の税制改正では、扶養控除の見直しが行われた。この改正は、子ども手当の創設及び高等学校の実質無償化に伴い、従来の扶養控除の一部を廃止するものであり、平成23年分以後の所得税に適用されている。 改正点は、次の2つである。 改正後の扶養控除額を一覧にすると、〈図1〉のとおりとなる。 〈図1〉 年齢別の扶養控除額 (※) 参考:国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(平成22年4月)」   (5) 同居特別障害者加算措置の改組 平成22年分以前の所得税においては、控除対象配偶者又は扶養親族が同居特別障害者である場合には、扶養控除の額が35万円上乗せされていた。この取扱いが、平成22年度の税制改正により、扶養控除ではなく、障害者控除の額に35万円上乗せする方法に変更された。 この改正は、上記(4)により、年少扶養親族に対する扶養控除が廃止されたことに伴うものであり、平成23年分以後の所得税に適用されている。 改正により、扶養親族のうち特別障害者である者が、所得者、その所得者の配偶者もしくはその所得者と生計を一にするその他の親族のいずれかと同居している場合には、障害者控除の額が75万円(特別障害者である場合の障害者控除40万円に、同居特別障害者としての35万円を加算した額)となった(所法79③)。 なお、年少扶養親族が障害者である場合、扶養控除の適用はないが、障害者控除(一般の障害者27万円、特別障害者40万円、同居特別障害者75万円)を受けることはできるので注意が必要である(所法79①②)。 【参考】 年少扶養親族(6歳未満)が障害者に該当する場合の控除額   *  *  * 次回は所得税法施行令の一部改正(平成26年10月17日公布)に伴う「通勤手当の非課税限度額の引上げ」について解説を行う予定である。 (了)

#No. 92(掲載号)
#篠藤 敦子
2014/10/30

有料老人ホームをめぐる税務上の留意点 【第5回】「老人ホームに入居していた場合の小規模宅地等の特例」

有料老人ホームをめぐる 税務上の留意点 【第5回】 (最終回) 「老人ホームに入居していた場合の小規模宅地等の特例」   税理士 齋藤 和助   1 はじめに 平成25年度税制改正では、基礎控除の縮減、税率の見直し等とともに、小規模宅地等の特例に係る大幅な見直しが行われた。 具体的には、 特定居住用宅地等の面積制限の330㎡(改正前240㎡)への拡充 特定事業用等宅地等と特定居住用宅地等の限度面積までの完全併用(最大730㎡) 二世帯住宅及び老人ホームに入居している場合の適用関係 などである。 本連載の最終回となる今回は、被相続人が老人ホームに入居していた場合の小規模宅地等の特例の改正点を確認し、その留意点をみていく。   2 改正前の取扱い 国税庁はホームページで(事例1)入院により空家となっていた建物、(事例2)老人ホームへの入所により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例について、それぞれ質疑応答事例を公表している。 (事例1) 入院により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例 (事例2) 老人ホームへの入所により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例 したがって、(事例1)入院により空家となった建物の敷地は原則として被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当し、(事例2)老人ホームへの入所により空家となっていた建物の敷地は上記4要件((1)~(4))を満たせば、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当する。   3 改正後の取扱い 上記(事例1)については、平成25年度改正による変更はなく、今までどおり被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当する。 上記(事例2)については、(2)と(4)の要件が廃止され、老人ホームに入所するまで居住の用に供していた宅地等は、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地等とされる。具体的には次の2つの要件に該当するものが認められる(措令40の2②③)。 なお、改正前は上記要件(1)において「介護を受ける必要があるため、老人ホームへ入所することとなったもの」とされ、入居の際に介護が必要であることが要件となっていたが、改正後は「要介護認定又は要支援認定を受けていた被相続人が有料老人ホーム等に入所等していたこと」とされ、相続開始時点で判定することとなるため、入所等前にこれらの認定を受けている必要はない。 (連載了)

#No. 92(掲載号)
#齋藤 和助
2014/10/30

交際費課税Q&A~ポイントを再確認~ 【第10回:2014年10月改訂】「法人税申告書[別表15]記載のポイント」

交際費課税Q&A ~ポイントを再確認~ 【第10回:2014年10月改訂】 (最終回) 「法人税申告書[別表15]記載のポイント」   公認会計士・税理士 新名 貴則   1 交際費課税の改正と別表15の様式変更 ① 平成25年度税制改正後 【中小法人の特例のイメージ】 ② 平成26年度税制改正後 平成26年度税制改正における交際費課税の改正ポイントは次のとおりである。 【接待飲食費の50%損金算入のイメージ】 これに伴い、法人税申告書別表15「交際費等の損金算入に関する明細書」の様式も変更されている。 平成26年4月1日以後終了事業年度分の別表15の様式は、次のとおりである。 厳密には、平成26年度改正後の交際費課税制度が適用されるのは平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する各事業年度であるが、平成26年4月1日以後に終了する事業年度からは、この別表15を使用することになる。 例えば、平成25年9月1日から平成26年8月31日までの事業年度であれば、平成26年度改正前の交際費課税が適用されるが、別表15は新様式を使用することになる。 【別表15「交際費等の損金算入に関する明細書」】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイル(国税庁ホームページ)が開きます。   2 別表15のケーススタディ 次の事例に基づいて、別表15の記載上の留意点を解説する。 ◆ケース Ⅰ ◆ 資本金5億円の場合 資本金が1億円を超えているため、中小法人の特例(年間800万円まで全額損金算入)は適用されない。しかし、平成26年度税制改正による交際費課税の適用後であれば、接待飲食費の50%損金算入が適用される。 ① 平成26年3月31日までに開始した事業年度の場合 この場合、接待飲食費の50%損金算入は適用されないため、交際費等10,000,000円の全額が損金不算入となる。 (別表15の記載例①) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ② 平成26年4月1日以後に開始した事業年度の場合 この場合、接待飲食費の50%損金算入が適用されるため、接待飲食費6,000,000円の50%に相当する3,000,000円が損金に算入される。この結果、交際費等10,000,000円のうち7,000,000円が損金不算入となる。 (別表15の記載例②) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。   ◆ケース Ⅱ ◆ 資本金1億円の場合 (資本金5億円以上の大法人の完全子会社ではない) 資本金が1億円以下であるため、中小法人の特例(年間800万円まで全額損金算入)が認められる。また、平成26年度税制改正による交際費課税の適用後であれば、接待飲食費の50%損金算入が適用され、中小法人の特例との選択適用が可能である。 ① 平成26年3月31日までに開始した事業年度の場合 この場合、接待飲食費の50%損金算入は適用されないため、中小法人の特例を適用し年間800万円までが全額損金に算入される。 したがって、交際費等10,000,000円のうち2,000,000円が損金不算入となる。 (別表15の記載例③) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ② 平成26年4月1日以後に開始した事業年度の場合 この場合、接待飲食費の50%損金算入が適用される。これを適用した場合、接待飲食費6,000,000円の50%に相当する3,000,000円が損金に算入される。この結果、交際費等10,000,000円のうち7,000,000円が損金不算入となる。 ただし、中小法人の特例も選択適用することが可能であり、こちらを選択すると①の場合と同様、損金不算入額は2,000,000円となる。したがって、通常はこちらを選択することになる。 (別表15の記載例④) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (連載了)

#No. 92(掲載号)
#新名 貴則
2014/10/30

貸倒損失における税務上の取扱い 【第29回】「判例分析⑮」

貸倒損失における税務上の取扱い 【第29回】 「判例分析⑮」   公認会計士 佐藤 信祐   本事件についての第一審判決の内容は第28回で解説した通りである。本稿においては、控訴審判決、最高裁判決について触れたうえで、低利貸付けについての法人税法上の考え方について考察を行うこととする。 (2) 控訴審・名古屋高裁金沢支部平成14年5月15日判決(税資252号順号9121) 第28回で解説した第一審判決の内容に一部修正を加えたうえで、控訴審判決の判決文が書かれているものの、それほど大きな内容の変化があるものではなく、概ね第一審判決とほぼ同じ判断が下されている。 (3) 最高裁平成14年10月15日判決(税資252号順号9213) 上告理由が民事訴訟法に規定する事由に該当しないことから、不受理となった。 (4) 本事件についての評釈 ① 概要 このように、本事件については、債権放棄を行った場合には法人税基本通達9-6-1(4)、9-4-2を適用することができない事案について、「増資払込み+株式譲渡」というスキームを選択したとしても、そもそもの有価証券の取得価額を構成せず、寄附金として処理されてしまうことから、法人税法上、有価証券譲渡損は発生せず、損金の額に算入することはできないことが明らかにされた事案である。 しかしながら、本事件において、このようなスキームが選択された理由としては、そもそも法人税基本通達9-4-2のハードルが高く、容易に認められるものではないという点が挙げられる。そこで、本稿では、まず、法人税基本通達9-4-2に関する他の判例を紹介することにより、法人税基本通達9-4-2の適用可能性について検討を行うこととする。 ② 法人税基本通達9-4-2の適用 法人税基本通達9-4-2においては、「例えば業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので合理的な再建計画に基づくものである等その無利息貸付け等をしたことについて相当な理由があると認められるとき」には、債権放棄等により生じた損失について、寄附金として処理しないものとしている。また、法人税基本通達9-4-2の内容については、国税庁のHPにおいて、「No.5280 子会社等を整理・再建する場合の損失負担等に係る質疑応答事例等」が紹介されている。しかしながら、実務上、そのハードルはかなり高く、実際に認められている事例はそれほど多くはない。 過去の判例においても、第一審においては法人税基本通達9-4-2の適用が認められたものの、控訴審、上告審においてそれを否定された事例も存在する(第一審大阪地裁平成15年10月15日判決、控訴審大阪高裁平成17年2月18日判決、上告審平成18年1月26日判決)。大阪地裁平成15年10月15日判決(税資253号順号9454)においては、債務超過の状態が継続しているものとは認めながらも、 として、法人税基本通達9-6-1(4)の適用を認めなかった。しかしながら、法人税基本通達9-4-2の適用については、「必要性」と「相当性」の2つの要件を挙げたうえで、「必要性」については とし、「相当性」のうち、債権放棄額の相当性については、Bの貸借対照表上の債務超過額が1億9,443万3,963円であり、債権放棄額が2億円であることから、その額について合理性があり、かつ、Bが保有している資産に含み益があるといっても、 としている。さらに、単独で債権放棄を行っているという点については、 として、法人税基本通達9-4-2の適用を認めている。 これに対し、大阪高裁平成17年2月18日判決(税資255号順号9936)においては、 として、債権放棄の「必要性」がないという理由により法人税基本通達9-4-2の適用を否定している。 そして、東京地裁平成19年6月12日判決においては、子会社に対する原告の債権が、子会社が新たに投資を行うための障害になっていたために債権放棄を行ったという経営判断を認めながらも、 と判示しており、法人税基本通達9-4-2の適用については、かなり厳格な判断が必要になってくることが分かる。 さらに、法人税基本通達9-4-2に該当するか否かの立証責任については、 としている。この点につき、品川芳宣教授は、法人税法22条3項において損金の規定が定められており、別段の定めである法人税法37条の寄附金の規定により損金性が否定されることを理由として、 と述べられている。私見ではあるが、債権放棄を行った場合には、別段の定めである法人税法37条に該当するのが原則であり、その例外として法人税基本通達9-4-2が存在するというのが実務的な考え方であり、裁判所の判断はそれに沿ったものであるため、基本的な立証責任は納税者に課されているとみるべきと考えられる。さらに、法人税基本通達9-4-2の議論を税務調査等で課税当局の方々と行うと、他の条文と比べて奇妙なくらいに判断が厳しいという実態があり、理論上はともかくとして、裁判所の判断通りの実務が行われているとみることができる。 このように、法人税基本通達9-4-2を適用するためのハードルは極めて高いと言わざるを得ないと考えられる。この点につき、立替金債権の放棄が経済的な利益の無償の供与(寄附金)に当たるとした事例(東京地裁平成19年9月27日判決)に対する評釈として、税理士の竹村仁志氏が、 と述べられているが、まさに同感である。 なお、本事件において寄附金の認定がなされたものの、資本等取引であるとして債務免除益の認定はなされなかった。次回においては、債務免除益の認定可能性について解説を行う予定である。 (了)

#No. 92(掲載号)
#佐藤 信祐
2014/10/30

経理担当者のためのベーシック税務Q&A 【第20回】「貸倒引当金の繰入れ」

経理担当者のための ベーシック税務Q&A 【第20回】 「貸倒引当金の繰入れ」   仰星税理士法人 公認会計士・税理士 草薙 信久     1 貸倒引当金制度の適用対象法人 平成24年4月1日以後に開始する事業年度から、貸倒引当金を繰り入れることのできる法人は、次の法人に限定されています(法法52、法令96)。 また、貸倒引当金制度の適用対象外となる法人については、平成24年4月1日から平成27年3月31日の間に開始する事業年度について、改正前の規定により計算した繰入限度額に以下の表中の割合を乗じた金額を繰入限度額とする経過措置が設けられています(平成23.12改正法附則13①)。   2 貸倒引当金制度のあらまし 企業会計では、将来における債権の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を貸倒引当金として計上します。 一方、法人税法では、回収不能見込額を合理的に算定することは非常に難しいことなどから、一定の繰入限度額の範囲内で、損金経理を要件に貸倒引当金繰入額の損金算入を認めています(法法52)。 貸倒引当金の繰入限度額の算定に際しては、金銭債権を個別評価金銭債権と一括評価金銭債権に区分し、各々に繰入限度額を算定します。また、個別評価金銭債権については、債務者毎に繰入限度額を算定することが必要です。   3 個別評価による貸倒引当金の繰入限度額 個別評価金銭債権とは、事業年度末において、その一部に貸倒等による損失が見込まれる金銭債権をいいます。 個別評価金銭債権は、次の(1)から(4)の区分に応じ、各々の金銭債権の債務者毎に、繰入限度額の計算方法が定められています(法法52①、法令96①)。 【設問の場合】 A社に対する債権は、債務超過の状態が相当期間継続し事業好転の見通しが立っておらず、金銭債権の全額について回収の見込みがないと認められるため、実質基準による個別評価金銭債権に該当します。したがって、対象金銭債権の額から、A社の代表者による債務保証による回収可能額を除いた金額が繰入限度額となります。 また、B社に対する債権は、当事業年度中において民事再生法の申立手続をしているため、形式基準による個別評価金銭債権に該当します。実質的に債権とみられない金額や担保権の実行により取立て等の見込みのある金額もありませんので、対象金銭債権の50%相当額が繰入限度額となります。 したがって、個別評価金銭債権にかかる繰入限度額は、2,000,000円+2,500,000円=4,500,000円となります。   4 一括評価による貸倒引当金の繰入限度額 一括評価金銭債権とは、売掛金、貸付金等の金銭債権で、個別評価金銭債権を除いたものをいいます(法法52②、法基通11-2-16~18)。 貸倒引当金の設定対象となるものは、例えば、次のように整理されます。 【設問の場合】 貸付金として50万円を計上していますが、これは従業員に対する前払給料であり、将来精算される費用の前払いとして一時的に仮払いしたものであり、金銭債権に該当しませんので、貸倒引当金の設定対象とはなりません。 (1) 実績繰入率による繰入れ 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額は、貸倒実績率により算定します(法令96⑥)。 また、貸倒実績率は、過去3年間の貸倒損失の額に基づき、次のように算定します(法令96⑥)。 (2) 法定繰入率による繰入れ 期末における資本金の額が1億円以下の中小法人は、一括評価金銭債権について、主たる事業ごとの法定繰入率と実績繰入率の選択適用が認められています(措令33の9④)。 また、実績率による繰入れと法定繰入率による繰入れは、事業年度毎に有利な方法を選択することができます。 【設問の場合】 過去に債権が貸し倒れたことはないとのことですので、過去3年間の貸倒損失の額に基づいて算定される貸倒実績率は0となります。ただし、資本金額1,000万円の法人ですので中小法人に該当し、法定繰入率を用いることができます。お尋ねの場合、食料品製造業を営んでいますので、法定繰入率は1000分の8となります。 C社に対しては売掛金450万円と買掛金50万円があります。C社に対する債権債務は事業年度末時点において相殺適状にありますので、買掛金50万円は、実質的に債権とみられない金額として、一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額から控除する必要があります。 E社から受け取った手形100万円は売掛金の回収として受け取ったものであり、財務諸表に割引手形として注記していますので、貸倒引当金の設定対象に含めます。 一括評価金銭債権の金額は、次のとおりにまとめられます。 したがって、一括評価金銭債権にかかる繰入限度額は、10,000,000円×8/1000=80,000円となります。 (了)

#No. 92(掲載号)
#草薙 信久
2014/10/30
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