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貸倒損失における税務上の取扱い 【第22回】「判例分析⑧」

貸倒損失における税務上の取扱い 【第22回】 「判例分析⑧」   公認会計士 佐藤 信祐   第21回目においては、大阪地裁昭和33年7月31日判決(行集9巻7号1403頁、税資26号773頁)を紹介し、債権放棄の対象となる債権については、回収不能なものである必要があるという点について解説を行った。 第22回目にあたる本稿においては、回収不能部分についてのみ債権放棄を行った場合についての検討を行う。 (ⅱ) 回収不能部分についてのみの債権放棄 前回、解説したように、法人税基本通達9-6-1(4)の要件を満たすためには、債権放棄の対象となった債権の全額が回収不能であることが必要となるが、実務上は、同一債務者に対する担保付債権と無担保債権の両方を有する場合というのも存在する。 このような場合において、担保付債権の一部について回収をすることができず、かつ、無担保債権の全額について回収することができないことが明らかであれば、無担保債権についてのみ債権放棄を行うということも考えられるが、このような債権放棄について、法人税基本通達9-6-1(4)の適用を認める余地が存在するか否かという点が問題となってくる。 この点につき、森文人氏は、 としており、部分的な債権放棄について、貸倒損失の計上があり得ることを示唆している。 これに対し、大阪高裁平成17年2月18日判決(税資255号順号9936号)においては、納税者が敗訴した事案であるとはいえ、 と判示しているため、例えば、無担保債権や劣後債権のみを抜き出して、その全額が回収不能であるということであれば、その部分についてのみ債権放棄を行うことにより、貸倒損失を計上するということは、十分に認められる余地があると考えられる。 そして、日本興業銀行事件における控訴審判決においても、納税者側の主張を退けたとはいえ、 としており、「債権の回収不能部分が特定されて当該部分の債権が放棄された場合」について、法人税基本通達9-6-1(4)の適用が認められる余地があることを示唆している。 さらに、所得税法の事案であるが、広島高裁昭和57年2月24日判決においては、担保付債権と無担保債権の両方を保有している場合において、担保付債権については一部回収可能であるものの、無担保債権の全額が回収不能であると認められる場合において、無担保債権に対して貸倒れとして必要経費に算入した事案が存在し、日本興業銀行事件においける上告申立て理由においても触れられている内容である。この内容は法人税基本通達9-6-2の判断において重要な内容であり、また、この内容について解説した論文も多いことから、いずれ本連載においても紹介したいと考えている。いずれにしても、法人税基本通達9-6-2において回収不能であると認められる無担保債権を債権放棄したからといって、寄附金として認定されるべき理由は存在せず、法人税基本通達9-6-1(4)を適用することができると考えられる。 これに対し、無担保債権のうち、例えば、30%部分が回収不能であり、70%部分が回収可能であった場合はどのように考えればよいであろうか。大渕博義教授によると、 とされている。 しかしながら、例えば、1億円の無担保債権のうち、30%部分に相当する3,000万円だけ債権放棄をするとした場合において、他の無担保債権者(4億円)が債権放棄をしないのであれば、債権放棄後の無担保債権の総額は4億7,000万円となり、そのうち、1億5,000万円(=5億円×30%)が回収不能というわけだから、債権者間の合意がないかぎり、単純に債権者平等の原則に従えば、残りの70%部分に相当する7,000万円の全額について回収可能であるということにはならず、債権放棄を行った3,000万円についても、その一部は回収可能な債権であったということも考えられる。そうなれば、日本興業銀行事件のように、母体行責任や親会社責任が問われる場合を除き、他の債権者においても債権放棄をしてもらう必要が出てくると考えられる。すなわち、法人税基本通達9-6-1(3)の範疇であり、法人税基本通達9-6-1(4)の範疇ではなくなってくるということになる。 また、担保付債権については、どれだけの回収が行われるか分からないことから、実際には、担保価値については日々変動するため、回収することができないことが明らかな部分だけを抜き出して債権放棄をするというのは難しいことが多いと考えられる。 結局のところ、回収不能部分を明らかにしたうえで、当該回収不能部分についてのみ債権放棄をするというのは、無担保債権や劣後債権のみを抜き出して、その全額が回収不能である場合に限定されてしまうというのが実態であると考えられる。 次回においては、日本興業銀行事件において、法人税基本通達9-6-1(4)の適用をどのように考えるべきかについて解説を行う予定である。 (了)

#No. 78(掲載号)
#佐藤 信祐
2014/07/17

〔しっかり身に付けたい!〕はじめての相続税申告業務 【第26回】 「申告書の作成から添付書類の準備、管轄税務署への提出に当たっての各注意点」

〔しっかり身に付けたい!〕 はじめての相続税申告業務 【第26回】 「申告書の作成から添付書類の準備、 管轄税務署への提出に当たっての各注意点」   税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良   前回まで解説してきた相続人の確定、相続財産の確定・評価、遺産分割のそれぞれの手続、相続税の特例(小規模宅地特例、配偶者税額軽減など)の検討が完了すると、実質的に相続税の計算は完了したことになる。 ただし、最終的に相続税の申告実務を完了させるには、 を完了させる必要がある。 今回はこのうち、「(1)相続税申告書の作成」、及び「(2)相続税申告書(添付書類含む)の管轄税務署への提出(申告)」について見ていくこととする。   (1) 相続税申告書の作成 多くのケースでは、相続税申告書は、税務ソフトを用いて作成することが多いと考えられる。その場合には、相続人の確定、相続財産の確定・評価、遺産分割、相続税の特例検討を行う際に収集した資料・情報をもとに、相続税申告書を作成する税務ソフトに入力していくこととなる。 ただし、税務ソフトを用いて作成する場合においても、必ず、相続税申告書を印刷して(又は、PDFファイルなどPC画面上で)、入力したデータの正確性、相続税申告書間での整合性、計算チェックを、税務ソフトに依存せずに、行う必要があると考える(*1)。 なお、相続税申告書の作成順序は以下の通りである(したがって、チェックもこの順序で行うことになる)。 (国税庁「相続税の申告のしかた(平成25年分用)」p42)   (2) 添付書類の準備 相続税申告書を提出する際には、添付書類を一緒に提出するが、この添付書類は、 に区分することができる。 注意が必要なのは、前者(A)相続税の特例の適用上、提出が必須のものである。 これは、特例の適用上、一定の添付書類の提出が要件とされているものがあり、一定の添付書類の提出を失念すると、最悪の場合、特例が不適用となる恐れがあるためである。 参考までに、小規模宅地特例、配偶者税額軽減について、求められている添付書類を記載すると以下の通りである。 小規模宅地特例(特定居住用宅地等のケース)  ※租税特別措置法施行規則23条の2第7項2号・3号 ① 特定居住用宅地等を被相続人の配偶者が取得するケース 〇遺言書の写し、財産の分割の協議に関する書類(すべての共同相続人及び包括受遺者が自署し、自己の印を押しているものに限る)の写しその他の財産の取得の状況を証する書類(*2) ② 特定居住用宅地等を被相続人の同居親族が取得するケース 〇遺言書の写し、財産の分割の協議に関する書類(すべての共同相続人及び包括受遺者が自署し、自己の印を押しているものに限る)の写しその他の財産の取得の状況を証する書類 〇相続の開始の日以後に作成された住民票の写し(同居親族に関するもの) ③ 特定居住用宅地等と被相続人の配偶者・同居親族が取得する場合で、被相続人が老人ホーム等へ入居していたケース 〇上記②の書類 〇他界日以後に作成された被相続人の戸籍の附票の写し 〇介護保険の被保険者証の写しなどの書類で、被相続人が相続の開始の直前において介護保険法に規定する要介護認定・要支援認定、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に規定する障害支援区分の認定を受けていたことを明らかにするもの 〇被相続人が相続の開始の直前において入居していた住居等の名称及び所在地、並びにこれらの住居等が租税特別措置法施行令第40条の2第2項のいずれの住居又は施設に該当するかを明らかにする書類 配偶者税額軽減  ※相続税法施行規則1条の6第3項 〇遺言書の写し、財産の分割の協議に関する書類(すべての共同相続人及び包括受遺者が自署し、自己の印を押しているものに限る)の写し(印鑑証明書が添付されているものに限る)その他の財産の取得の状況を証する書類   (3) 管轄税務署への提出 今後は変わる可能性があるが、本稿執筆現在においては、相続税申告書について電子申告はできないため、書面で管轄税務署へ提出することとなる。 相続税申告書及び添付書類の管轄税務署への提出方法は、 のいずれかとなる。 注意が必要なのは後者「郵送する」場合である。 郵送・信書便により提出する場合(特に申告期限ぎりぎりの場合)、通信日付印(消印)が申告期限内であれば、期限内申告として取り扱われる(国税通則法22条)。 ただし、郵便・信書便でなく、ゆうパックで送付した場合には、郵便・信書便として取り扱われないため、税務署に到着した日付が申告期限内か否かで、期限内申告か否かが判断されるので、申告期限ぎりぎりで提出する場合には、特に注意が必要である。 (了)

#No. 78(掲載号)
#根岸 二良
2014/07/17

基礎から学ぶ統合報告 ―IIRC「国際統合報告フレームワーク」を中心に― 【第3回】「「価値」と「資本」の関係」

基礎から学ぶ統合報告 ―IIRC「国際統合報告フレームワーク」を中心に― 【第3回】 「「価値」と「資本」の関係」   公認会計士 若松 弘之   前回は、フレームワークの最も中心となるテーマである企業が持続的に成長させていくべき「価値」について説明しました。 今回は、フレームワークの「基礎概念」を理解するうえで、もう1つおさえておかなければならないポイントである「価値」と「資本」の関係から解説していきます。   1  6つの「資本」 フレームワーク「基礎概念」を理解するうえで、もう1つおさえておかなければならない概念が「資本」です。通常、「資本」といえば資本金に代表される「カネ」を想定しがちです。一方、いわゆる「経営資源」という観点では、「ヒト・モノ・カネ・情報」などが挙げられます。フレームワークでは、どちらかというと「経営資源」に近いイメージで、「資本」の次の6つとして定義づけています。 上記のうち、貸借対照表に計上される資本は①財務資本と②製造資本にとどまります。したがって、③から⑥までの非財務情報としての資本を「統合報告書」において、どのように捉えるかが鍵になります。   2  「資本」と「価値」の関係 また、フレームワークでは、「資本」とは「価値の蓄積」であり、組織の活動とその成果を通じて増減したり、変換されたりするものとしています。これは例えば、従業員の人材育成や研修など積極的な人材投資を惜しまない企業においては、従業員の能力や業務へのモチベーションが向上し、「人的資本」の質が増加する一方、お金がかかりますから「財務資本」は減少します。 すなわち、「財務資本」から「人的資本」に価値が変換されたことを意味します。この変換を通じてトータルの「価値」が増えているならば、結果的に組織の活動は正しかったということになります。   3  「ビジネスモデル」と「価値創造プロセス」 今までの議論を整理すると、企業は組織の内外に存在する「価値の蓄積」である6つの「資本」を利用し、その変換活動を通じて、トータルとしての価値増加を長期的な視点で目指していくことになります。では、その変換活動をもう少し掘り下げて考えていきましょう。 その変換活動において、中核として鍵となるのが「ビジネスモデル」です。 フレームワークでは「ビジネスモデル」を「組織の戦略目的を達成し、短、中、長期に価値を創造することを目的とした、事業活動を通じて、インプットをアウトプット及びアウトカムに変換するシステム」(下線は筆者)と定義しています。 今ひとつ分かりにくいのが、何を「インプット」し、「アウトプット」と「アウトカム」はどう違うのか、という点だと思います。これについては、統合報告の基礎概念を総合的に表現した以下の「価値創造プロセス」イメージ図を見ることが一番だと思います。 (出所:IIRC国際統報告フレームワーク日本語訳) なんとも奇妙なイメージ図ですが、今まで解説してきた内容をうまく表しているのではないでしょうか。順を追って説明しましょう。 ②と③の「アウトプット」と「アウトカム」の関係は少し分かりにくいと思います。事業活動を通じて、直接産み出された製品やサービスを「アウトプット」といい、その製品やサービスを消費することで得られる効果や成果を「アウトカム」といいます。 例えば、今までなかった場所に橋を建設した場合を考えてみましょう。この場合の「アウトプット」は橋(橋の建設)であり、「アウトカム」は橋ができたことにより地域住民の利便性向上であったり、交通渋滞の緩和(発生)や排気ガスの増加であったり、橋を建設した企業の売上高増加であったりします。 この①から④の一連の流れが「ビジネスモデル」であり、この「ビジネスモデル」の良否に影響を与える要素として、「使命とビジョン」「組織概要と外部環境」「ガバナンス」「リスクと機会」「戦略と資源配分」「実績」「見通し」が挙げられています。 これらの要素については、次回詳しく解説していきます。 (了)

#No. 78(掲載号)
#若松 弘之
2014/07/17

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《退職給付債務・退職給付引当金》編 【第5回】「自社積立の退職一時金制度(自社退職金規程に基づく確定給付型)を採用し、かつ、その一部について確定拠出型年金制度を併用している場合」

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領 《退職給付債務・退職給付引当金》編 【第5回】 「自社積立の退職一時金制度 (自社退職金規程に基づく確定給付型)を採用し、 かつ、その一部について確定拠出型年金制度を 併用している場合」   公認会計士・税理士 前原 啓二     1 掛金支出時、退職時及び決算時の仕訳 〈掛金支出時〉 〈退職時の仕訳〉 〈X2年3月31日の仕訳〉 この設例は、退職金規程に基づく確定給付型の退職一時金制度で、かつ、併用している中小企業退職金共済制度からその退職一時金の一部が支給されるケースです。退職一時金の財源を一部だけ外部拠出し、残りを自社が積立てしていきます。中小企業退職金共済制度は、掛金支出後に追加的負担が生じない確定拠出型の退職給付制度です。 このような確定拠出型の退職給付制度における掛金は、費用処理します(中小企業会計指針55)。 当期の退職者の退職金支給額は、次のとおりです。このうち当社からの支給額1,100,000円について、退職時の仕訳が行われます。 この設例では、期末自己都合要支給額から勤労者退職金共済機構より給付される額を除いた金額でもって退職給付債務とする方法を適用します。 前期末の退職給付引当金残高25,000,000円は、前期末自己都合要支給額55,000,000円から同機構より給付される額30,000,000円を差し引いた額と一致しており、当期における退職者への当社からの支払額1,100,000円を差し引いた23,900,000円が、決算整理前の退職給付引当金残高です。 当期末の退職給付引当金残高は、当期末自己都合要支給額60,000,000円から同機構より給付される額34,500,000円を差し引いた25,500,000円なので、決算時に決算整理前の退職給付引当金残高23,900,000円から1,600,000円を増加させます。 退職給付引当金の前期末残高から当期末残高の増減を、退職金規程による期末自己都合要支給額と、勤労者退職金共済機構より給付する退職金試算額に分解して示すと、次のとおりです。 注①は、勤労者退職金共済機構より給付される退職金試算額の当期末金額34,500,000円と前期末金額30,000,000円との差額です。   2 決算書の金額 〈当期損益計算書〉 〈当期末貸借対照表〉   3 損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整 〈当期法人税申告書別表四〉 〈当期法人税申告書別表五(一)〉 税務上は、実際に退職一時金を支給した日の属する事業年度にその支給額が損金算入されます。したがって、当期の退職給付引当金繰入の計上費用1,600,000円を加算・留保します。 一方、当期に退職一時金1,100,000円を当社から支給しているのでこの額を損金に算入できますが、会計上はこの支給額を退職給付引当金の減額で処理し費用計上していないことから、税務上はこの金額を減算調整します。 また、確定拠出型の退職給付制度における掛金については、支出額をその支出した事業年度に損金算入できます(法令135)。会計上もこの支出額を費用計上しているので、税務上の加算・減算調整は不要です。 (了)

#No. 78(掲載号)
#前原 啓二
2014/07/17

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第50回】金融商品会計⑥「満期保有目的債券の評価」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第50回】 金融商品会計⑥ 「満期保有目的債券の評価」   仰星監査法人 公認会計士 大川 泰広   〈事例による解説〉 〈会計処理〉 ① A社債取得時(X1年4月1日) ② 利息の受取時(X2年3月31日) (*1) 額面10,000×クーポンレート4%=400 ③ 償却原価法の適用(X2年3月31日) (*2) (額面10,000-取得価額9,500)÷5年=100 〈会計処理の解説〉 満期保有目的債券とは、企業が満期まで所有する意図をもって保有する債券のことをいいます。 満期保有目的債券は、取得原価をもって貸借対照表価額とします。これは、満期保有目的債券は、満期まで保有することによる約定利息及び元本の受け取りを目的としているため、満期までの間の価格変動を認識する必要がないと考えられるためです。 ただし、取得価額と額面金額に差があり、当該差額が金利の調整と認められる場合には、償却原価法に基づいて算定された価額を貸借対照表価額とします。 金利の調整についてもう少し解説しましょう。 本事例において、A社債のクーポン(毎年受け取ることができる約定利息)は年利4%です。ここで、A社債と額面・満期日が同じでクーポンレートが5%のB社債があったとしましょう。 一般的に考えれば、クーポンレートが4%のA社債より、5%のB社債の方が、投資としての魅力が高いため、投資家はB社債を購入するでしょう。そこで、社債を購入してもらうために、A社は社債を額面よりも安く発行します。この額面金額と発行価額との差額が「金利の調整」と呼ばれるものです。 本事例におけるA社債の額面金額10,000と発行価額9,500との差額500は、B社債との金利を調整するために発生したものであるため、これを取得日から満期日までの期間に応じて、受取利息として処理し、同額を投資有価証券として処理します。 このような会計処理を「償却原価法」といいます。 ところで、満期保有目的債券は時価評価をする必要がないため、含み損を適時に認識する必要がなく、恣意的な会計処理を行うことができる余地があります。例えば、満期まで保有する意思のない債券を、とりあえず満期保有目的債券に分類しておいて、時価評価を免れるような行為が考えられます。 そのため、会社が有価証券を満期保有目的債券に分類するに当たっては、厳格な要件を満たすことが求められます(金融商品会計に関する実務指針69項)。 会社が満期保有目的債券を取得する場合、取得時点において、償還期限まで所有するという積極的な意思が求められます。保有期間が漠然と長期であると想定し、保有期間をあらかじめ決めていない場合や、将来の不確定要因の発生いかんによっては売却が予想される場合は、満期まで所有する意思があるとは認められません。 また、会社には当該債券を償還期限まで所有する能力が求められます。満期までの資金繰計画等、あるいは法律等の障害により継続的な保有が困難と認められる場合には、満期まで所有する能力があるとは認められません。 〈満期保有目的債券の減損処理〉 これまで述べてきたとおり、満期保有目的債券は時価があったとしても時価評価を行いません。しかし、その他有価証券、子会社株式及び関連会社株式と同様、時価が著しく下落した場合においては、満期保有目的債券であっても減損処理を行わなければなりません。 また、時価のない債券(あるいは時価を把握することが極めて困難な債券)であっても、発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときには減損処理が必要となります(具体的な判定の手順等は前々回、前回の解説をご参照ください)。 *   *   * 次回は、ゴルフ会員権の評価について解説します。 (了)

#No. 78(掲載号)
#大川 泰広
2014/07/17

国際出向社員の人事労務上の留意点(日本から海外編) 【第3回】「国際出向社員の各種法律における身分関係③(労働基準法)」

国際出向社員の人事労務上の留意点 (日本から海外編) 【第3回】 「国際出向社員の各種法律における身分関係③(労働基準法)」   社会保険労務士 平澤 貞三   (1) 原則 労働基準法は国内法であり、日本にある事業所に対してのみ効力を発する。そのため、原則として海外の事業所に勤務する社員は労働基準法の適用を受けない。したがって、海外赴任者の時間外労働の割増率や有給休暇の付与条件などは、赴任先国のルールに合わせても法的な問題はない。 ただし、例えば、日本で10年間の勤務実績があり、有給休暇も年間20日ほど付与されている社員が、海外赴任先では新入社員だからという理由で10日ほどの有給休暇しか与えられないようでは、感情的な問題やモチベーション低下に繋がってしまうことになる。 そこで、実際には、給与や有給休暇については最低でも赴任前の条件を保証する契約で海外赴任させるケースが一般的である。   (2) 例外 海外に管理、指揮命令を行う独立した事業所がないところへ赴任させる場合は、その事業に対して労働基準法が適用されるので注意が必要である(昭25.8.24 基発第776号)。   (3) 出張と出向の違い 出張に対する法律上の定義はないが、一般的には「業務のために、通常の勤務地とは異なる場所に出向く行為」と解されている。したがって、出張先企業との間に雇用関係や指揮命令関係はないのが通常である。 長期出張と出向の違いについても法的な定義はなく、あくまでも企業が定義することであるが、海外と日本の事業所の関係では、一般的に、居住者・非居住者に分かれる1年を目安として分けている企業が多いようである。   (4) 法律だけでは解決できない矛盾例における考察 労働基準法第9条では、労働者を以下のように定義している。 〔考察1〕 海外企業から出向で来日し、日本で勤務する社員は、労基法上の労働者にあたるのか? ◆使用される者かどうか →日本の事業所で指揮命令環境(業務の内容、遂行の仕方、勤務場所、勤務時間等の拘束性)により判断される。多くの場合、「使用される者」に該当する可能性が高い。 ◆賃金を支払われる者かどうか →誰(日本企業または海外企業)が直接賃金を払うかはケースによって異なるが、本人は賃金を受けているので、「賃金を支払われる者」に該当する。 〔考察2〕 では、労基法上の労働者に該当するとして、次のケースではどう考えるべきか? つまり、国際出向社員においては、労基法の原則論だけでは解決できない問題があるのである。 このような労基法だけでは解決できない問題を未然に防ぐためには、民事上の紛争を考慮して、三者間(海外企業、日本企業、本人)の取り決めをしっかり行うことが非常に重要である。赴任時の就労条件を記した契約書を作成し、条件について本人に十分な説明を行ったうえでサインを取っておくのがベストである。 (了)

#No. 78(掲載号)
#平澤 貞三
2014/07/17

会社ができるメンタルヘルス《事前・事後》対策 【第2回】「職場復帰支援」

会社ができるメンタルヘルス 《事前・事後》対策 【第2回】 「職場復帰支援」   アクタスマネジメントサービス株式会社 社会保険労務士 筒井 恵美子   休職している労働者が円滑に職場復帰するためには、職場復帰プログラム(職場復帰支援についてあらかじめ定めた会社全体のルール)の策定や関連規程の整備等により、休職から復職までの流れをあらかじめ明確にしておくことが必要である。 今回は職場復帰支援について解説したい。   1 職場復帰までに行う支援のステップ 休職している労働者が職場復帰するまでに会社が行うべき支援内容は、次のような手順となる。 〈第1ステップ〉 休職中のケア 休職期間中、休職者に接触することが望ましい結果をもたらすこともある。 接触する場合は、精神的な孤独、「復職できるか」という不安、今後のキャリア等で本人が不安に感じていることに関して、十分な情報提供をすることが重要である。 情報提供の内容としては、次のような項目があげられる。   〈第2ステップ〉 主治医による職場復帰可能の診断 休職中の労働者から職場復帰の意思が伝えられると、会社は労働者に対し、主治医による職場復帰可能の判断が記された診断書の提出を求める。診断書には、就業上の配慮に関する主治医の具体的な意見を記入してもらうことが望ましい。 ただし現状では、主治医による診断書の内容は、日常生活における症状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限らないことに留意すべきである。また、労働者や家族の希望が含まれている場合もある。 そのため、主治医の判断と職場で必要とされる業務遂行能力の内容等について、産業医等が精査した上で採るべき対応を判断し、意見を述べることが重要となる。 また、職場復帰の時点で求められる業務遂行能力はケースごとに多様なものであることから、あらかじめ主治医に対し、職場で必要とされる業務遂行能力の内容や社内勤務制度等に関する情報を提供した上で、就業が可能であるという回復レベルで復職に関する意見書を記入するよう依頼することが、円滑な職場復帰支援を行う上で望ましい。   〈第3ステップ〉 会社による職場復帰の可否判断及び職場復帰支援プランの作成 安全でスムーズな職場復帰を支援するため、最終的な決定の前段階として、必要な情報の収集と評価を行った上で職場復帰できるかを適切に判断し、職場復帰を支援するための具体的なプランを準備しておくことが必要である。   〈第4ステップ〉 最終的な職場復帰の決定 〈第3ステップ〉における職場復帰の可否判断及び職場復帰支援プランの作成を経て、会社として最終的な職場復帰の決定を行う。 なお、職場復帰の最終決定は、労働者にとって極めて重要なものであり、また、私法(契約法)上の制約を受けることにも留意の上、社内手続に従い、適正に行われるべきである。 この際、産業医等が選任されている会社においては、産業医等が職場復帰に関する意見及び就業上の配慮等についてとりまとめた「職場復帰に関する意見書」等をもとに、関係者間で内容を確認しながら手続を進めていくことが望ましい。 手順をまとめると、以下のとおりである。   〈第5ステップ〉 職場復帰後のフォローアップ 心の健康問題には様々な要因が複雑に重なり合っていることが多いため、〈第3ステップ〉で実施した職場復帰の可否判断や職場復帰支援プランの作成には、多くの不確定要素が含まれることが少なくない。また、たとえ周到に職場復帰の準備を行ったとしても、実際には様々な事情から当初の計画通りに職場復帰が進まないこともある。 そのため職場復帰支援においては、職場復帰後の経過観察とプランの見直しも重要となってくる。 職場復帰後は、管理監督者による観察と支援の他、事業場内産業保健スタッフ等による定期的又は就業上の配慮の更新時期等に合わせたフォローアップを実施する必要がある。 フォローアップのための面談においては、下記の(ア)から(キ)までに示す事項を中心に、労働者及び職場の状況について労働者本人及び管理監督者から話を聞き、適宜職場復帰支援プランの評価や見直しを行っていく。 さらに、本人の就労意識の確保のためにも、あらかじめ、フォローアップには期間の目安を定め、その期間内に通常のペースに戻すように目標を立てること、また、その期間は、主治医と連携を図ることにより、病態や病状に応じて、柔軟に定めることが望ましい。 なお、心の健康問題は再燃・再発することも少なくないため、フォローアップ期間を終えた後も、再発の予防のため、就業上の配慮についての慎重な対応(職場や仕事の変更等)や、メンタルヘルス対策の重要性が高いことに留意すべきである。   2 職場復帰可否の判断基準について 職場復帰可否について定型的な判断基準を示すことは困難であり、個々のケースに応じて総合的な判断を行わなければならない。 労働者の業務遂行能力が職場復帰時には未だ病前のレベルまでは完全に改善していないことも考慮した上で、職場の受入れ制度や態勢と組み合わせながら判断する。   3 職場復帰後における就業上の配慮 職場復帰は、元の慣れた職場へ復帰させることが原則である。 ただし、異動等を誘因として発症したケース等においては、配置転換や異動をした方が良い場合もあるため、留意すべきである。 また、復帰後は労働負荷を軽減し、段階的に元へ戻すなどの配慮が重要である。 職場復帰後の具体的な就業上の配慮の例としては、以下のようなものが考えられる。   おわりに 休職者による職場復帰は、会社や労働者とその家族にとっても、極めて重要な課題である。 会社の状況や労働者の症状に合わせながら、労働者の心の健康問題の予防から職場復帰に至るまで、適切な対策を講じることが望まれる。 (連載了)

#No. 78(掲載号)
#筒井 恵美子
2014/07/17

事例で検証する最新コンプライアンス問題 【第1回】「顧客情報流出事件-教育事業会社の場合」

事例で検証する最新コンプライアンス問題 【第1回】 「顧客情報流出事件-教育事業会社の場合」   弁護士 原 正雄     1 事件の公表 大手教育事業会社B社は、2014年7月9日、お客様情報が約 760 万件、外部に漏えいしたこと、場合によっては約 2,070 万件に及ぶ可能性があることを公表した。 流出した情報の多くは、子ども向け教材に関するものである。世帯ごとに1件とカウントしているため、場合によっては、被害者が4,000万人以上となる可能性さえある。 個人情報の流出事件としては、過去最大級のものである。   2 情報流出の経路 B社は、2010年、サービスごとに分かれていた顧客情報のデータベースを統合した。その結果、情報件数が100万件単位から1,000万件単位となった。 B社は、データベースの保守管理を、グループ内のS社に委託していた。委託先のS社は、さらに外部業者に再委託し、その外部業者にデータベースへのアクセス権限を付与していた。 その外部業者の派遣社員が、2013年末、B社のデータベースに不正アクセスし、顧客情報を大量にコピーして持ち出したとのことである。   3 B社の対応 B社の社長は、7月9日の記者会見で「持ち出したのは当社グループ社員ではない」と説明した。他方で、警察の捜査に支障が出る可能性があるため、詳細については開示を控えるとした。 おそらく、この時点で、再委託先の外部業者の派遣社員が疑わしいことを事実上把握していたのだろう。 ただし、グループ内か、グループ外かは、被害者である情報対象者からすると全く問題にならない。個人情報保護法は、個人情報の取扱いを外部に委託する場合、委託者に管理監督責任がある旨を明示している(同法22条)。 言ってみれば、流出の犯人がグループ外の再委託先であるということは、内々の事情にすぎない。外部への情報開示の場である記者会見において「持ち出したのは当社グループ社員ではない」と主張することは、本来、許されない。 B社は、委託先S社がISMS(情報セキュリティマネージメントシステム)を取得していることを指摘している。確かに、委託先がISMSを取得していることは重要な要素かもしれない。しかし、その事実をもって、委託元の管理監督責任が免責されるわけではない。 委託先から情報が流出した事案は、過去多数存在する。特に、個人情報が再委託される場合には、委託元が、再委託先の管理監督体制についても確認する必要がある。例えば、本件では、再委託先の派遣社員にデータベースへのアクセス権限が付与されていた。委託元であるB社は、本来、こうした事態も把握し、是正すべきであった。   4 流出した情報の内容 今回の事件で流出した顧客情報は、郵便番号、氏名(親子)、住所、電話番号、生年月日、性別などとのことである。 B社は、7月9日の記者会見の時点では「クレジットカード番号・有効期限、金融機関の口座情報、成績情報などのセンシティブ情報は、流出していない」として金銭補償を否定している。 もっとも、流出したのは、子どもの情報である。不安を抱えている保護者は多数に上るだろう。また、電話番号や生年月日などをパスワードとしてしまっている場合、パスワードが解明されてしまう等のリスクもあり得る。   5 情報を取得利用した業者の対応 B社から流出した顧客情報は、複数の名簿業者を経て、J社の手に渡った。 J社は、名簿業者から257万3,068件のデータを購入している。その際、名簿業者との間で、当該顧客情報が適法公正に入手したものであることを契約の条件としたとのことである。 他方、最終的には、データの出所を明らかにしないまま、契約を締結したとある。J社は、リリースにおいて「B社から流出した情報と認識したうえで利用した事実はない」としている。 個人情報保護法は、確かに、一定の場合には、名簿業者などが第三者に個人情報を提供することを認めている(同法23条2項)。しかし、その前提として、そもそも、当該個人情報が第三者提供を認めていた必要がある。そして、個人情報保護法は、原則としては、本人の同意なしに個人情報を第三者へ提供することを禁止している(同法23条1項)。 したがって、名簿業者から個人情報を取得する場合、単に、名簿業者から「適法公正に入手した」との説明を受けるだけでは足りない。当該個人情報の取得経路を確認し、対象となる個人が第三者提供に同意しているのかを、厳格に確認すべきである。   6 事件発覚後の経緯 B社の顧客情報を取得したJ社は、6月下旬、取得した顧客情報をもとにダイレクトメールの発送を開始した。その直後の6月26日以降、B社に顧客からの問合せが急増した。B社は、この時点で、顧客情報流出の可能性を把握した。 2013年末の外部流出から、すでに半年が経過していた。 B社では、ちょうど6月21日に株主総会が開催され、新社長が就任し、新体制となったばかりであった。翌27日、報告を受けた新社長は、ただちに調査の開始を命じた。 28日に緊急対策本部を設置するとともに、調査会社に調査を依頼した。30日には、警察や、監督官庁である経済産業省にも報告、相談した。そうしたことの結果、7月4日には、B社顧客情報を扱っている名簿業者を把握し、7日には情報が流出したデータベースを特定したとのことである。 以上の対応は、迅速なものであったと評価できる。 J社は、7月7日、B社から面会要求を受けているが、拒否したとある。実際は、J社はこの時点で面会に応じ、両社一致して善後策を講じるべきであった。B社は、J社が面会を拒否したことから、J社及び名簿業者に対して、内容証明郵便で警告書を発送している。 以上を踏まえて、B社は、7月9日、リリースとともに、記者会見を実施した。 記者会見では、DM、テレビ広告を2週間~1ヶ月の予定で停止することや、担当役員2名の引責辞任を公表した。翌10日、B社は、株価が前日終値比6.4%安となり、J社に至ってはストップ安となった。同日、経済産業省は、B社に対して、個人情報保護法に基づく報告を要請した。 7月11日、J社は「全データを削除することに致しました」と公表した。これに対してB社は、「全データの削除は、今後の調査の必要性から望ましくない」と批判した。 個人情報保護法上の問題を指摘された場合、企業としては一日も早く該当情報を削除したいと望むであろう。 しかし、優先すべきは、対象個人の被害回復である。その前提として、実態を調査することは不可欠であり、該当情報の削除は望ましくない。   7 まとめ 上記のとおり、個人情報を保有することには大きなリスクがある。 保有する事業者は、その管理に遺漏があってはならない。また、事業者は、第三者から個人情報を取得する場合、その来歴を慎重に確認しなければならない。 また、万一情報が流出した場合、事業者は、迅速に事態を把握し、適切に公表しなければならない。被害回復にも全力を尽くさなければならない。対応を誤ると、さらに事件は拡大することになる。 (了)

#No. 78(掲載号)
#原 正雄
2014/07/17

事例でわかる消費税転嫁対策特別措置法のポイントQ&A 【第16回】「総額表示の特例と誤認防止措置〔②税込価格を表示する場合〕」

事例でわかる消費税転嫁対策特別措置法のポイントQ&A 【第16回】 「総額表示の特例と誤認防止措置〔②税込価格を表示する場合〕」   のぞみ総合法律事務所 弁護士 大東 泰雄 弁護士 山田 瞳     1 総額表示義務と誤認防止措置 本連載の前回(第15回)の1(2)で述べたとおり、消費税転嫁対策特別措置法は、現に表示する価格が税込価格であると消費者に誤認されないための誤認防止措置を講じることを条件として、小売店における販売など総額表示義務の対象となる取引においても、税込価格を表示することを要しないとした。 前回は、この特例措置により、消費税率引上げ後、税抜価格表示に移行する場合に必要となる誤認防止措置の具体例を述べたが、他方で、消費税転嫁対策特別措置法は、消費者にわかりやすい表示に配慮する観点から、この法律が失効する平成29年3月31日までの間であっても、特例措置により税込価格を表示しない事業者に対して、できるだけ速やかに税込価格を表示するよう努めなければならないという努力義務を課していることには注意が必要である(10条2項)。 そこで、今回は、消費税率8%への引上げ後も、引き続き税込価格表示を続ける場合、あるいはこれに伴い、旧消費税率5%と新消費税率8%の税込表示が混在する場合に必要となる誤認防止措置等について述べることとする。   2 消費税率8%に基づく税込価格表示による値札等への貼り替えが完了した場合の表示 例えば、ある小売店において、税抜価格1,000円の商品について、新たにの値札への貼り替えがなされているなど、消費税率8%に基づく税込価格表示による値札等の貼り替えが全商品について完了している場合には、法律上は、誤認防止措置などの対応は特段必要とされない。 もっとも、5において述べるとおり、消費税率引上げに伴い、各小売店が自由に価格表示を選択できるようになった現状からすると、上記のような貼り替え後の値札を目にする消費者が、この値札だけを見て、この価格が、消費税率8%に基づく税込価格なのか、あるいは、税抜価格であるのに誤認防止措置を怠っているものなのか、判断に迷うことがあり得る。 このような場合には、せっかく消費者に分かりやすいよう消費税率8%に基づく税込価格の表示を行ったにもかかわらず、「さらに消費税が加算されるのではないか」という消費者の誤解を招き、購入をためらわせてしまうこととなる。 そこで、法律上必要とされるものではないが、上記のような値札を用いる場合であっても、と記載したり、別途、消費者が商品を選択する際に目に付きやすい場所に、明瞭に、 等と掲示したりするなど、税込価格であることを明示することが、消費者にとって親切であるといえよう。   3 消費税率8%に基づく税込価格表示による値札等への貼り替えが未了の場合の誤認防止措置(*1) (*1) 「総額表示義務の特例措置に関する事例集(税抜価格のみを表示する場合などの具体的事例)」国税局課税部 消費税室 (1) 旧税率5%に基づく税込価格のままになってしまっている場合 値段の貼り替えが間に合わなかった等の事情により、未だ新税率8%に基づく税込価格表示による値札等への貼り替えに着手できておらず、旧税率5%による税込価格の表示のままになってしまっている場合(例えばの値札のままになっている場合)でも、次のような誤認防止措置を講じれば、旧税率による税込価格の表示のままであることは問題とされない。 なお、上記2つのような場合には、誤認防止措置を講じる限り、法律上は問題とされないが、やはり消費者の誤解を完全に防ぐことは困難ではないかと思われる。消費者の誤解を招くことは、企業の評価を落とすことにもつながりかねない。 そこで、速やかに、新税率8%による税込価格表示に切り替えるか、誤認防止措置を講じた上での本体価格表示への切り替えを行う方が望ましいといえるだろう。 (2) 新税率8%適用後も一時的に一部の商品について旧税率5%に基づく税込価格の表示が残っている場合 値段の貼り替えが間に合わない等の事情により、新税率8%適用後においても一時的に、一部の商品等について旧税率5%に基づく税込表示が残るために、旧税率5%による税込表示と新税率8%による税込表示とが混在する場合が考えられる。 この場合、次のような誤認防止措置を講じれば、旧税率に基づく税込価格の表示が残っていることは問題とされない。 つまり、設例の前段のような場合には、次のような誤認防止措置を講じるよう、表示上気を付けなければならないことになる。   4 新税率8%に基づく税込価格に、税抜価格(本体価格)を併記する場合(*2) (*2) 「総額表示義務に関する消費税法の特例に係る不当景品類及び不当表示防止法の適用除外についての考え方」消費者庁 (1) 新税率8%に基づく税込価格の表示を行うにあたり、税抜価格(本体価格)を併記することの可否と限界 新税率8%による税込価格の表示に税抜価格の表示を併記することは可能であるが、この場合であっても、例えば、 というように表示した場合には、税込価格が一応表示されているとはいえ、税抜価格の方が過度に協調されて表示されているため、これを見る一般消費者が、9,800円が新税率8%に基づく税込価格であると誤認してしまう可能性がある。 このような場合には、一応税込価格表示されているから、総額表示義務違反にはならないものの、価格に関して一般消費者に誤認を与えるものとして、不当景品類及び不当表示防止法(いわゆる景品表示法)が禁止する表示(同法4条1項2号・有利誤認)にあたり、違法となる可能性がある。 他方で、税込価格に税抜価格(本体価格)を併記する場合でも、税込価格が明瞭に表示されている場合には、一般消費者に誤認を与えることにはならないから、景品表示法違反とはならず適法である。消費税転嫁対策特別措置法11条は、このような場合には、景品表示法の有利誤認禁止規定の適用を受けないことを確認的に規定した。 つまり、税込価格が明瞭に表示されているといえる限度では、税込価格に税抜価格を併記して、税抜価格を強調することも許される。 (2) 税込価格が明瞭に表示されているか否かの判断基準 税込価格に税抜価格を併記する場合に、税込価格が明瞭に表示されているといえるか否かの判断基準は、本連載第15回の1(3)イで述べた誤認防止措置といえるための明瞭性の要件の判断基準と同じである。 すなわち、税込価格の表示について など、一般消費者に見えづらく、税抜価格の表示を税込価格であると誤認させてしまうような場合には、税込価格が明瞭に表示されているとはいえない。   5 価格表示における経営戦略 本連載第15回の1(2)においても触れたとおり、消費税転嫁対策特別措置法によって総額表示義務の特例が認められたことにより、小売店等の事業者は、税率引上げ後も従前と同じく税込価格の表示を続けるか、誤認防止措置を講じた上で税抜価格による表示に移行するかを選択できるようになった。 つまり、消費者目線でわかりやすい価格表示を目指すのであれば税込表示を選択することになるだろうが、この場合、この表示を目にする消費者は、税抜表示を採用する他店舗と比べると「高い」という感覚をもつかもしれない。 他方で、消費者が感じる値頃感や、2段階の消費税率引上げに伴う値札の貼り替えの手間を軽減することを重視するのであれば税抜表示を選択することになるだろうが、平成29年3月31日に消費税転嫁対策特別措置法が失効した時点で税込表示に戻す時には、消費者は大幅に値上げしたという感覚をもつかもしれない。なお、同法の失効前であっても、できるだけ速やかに税込価格を表示すべき努力義務があることは、1において述べたとおりである。 したがって、設例後段に対する回答としては、消費税転嫁対策特別措置法の下で認められる様々な選択肢を比較検討し、個々の事業者において、自社の取扱商品やサービスの特性、顧客の属性、取引の状況、値札貼り替えにかかるコスト等を総合的に勘案して、戦略的に検討・決定すべきであるといえよう。 なお、3において述べたとおり、税込価格に税抜価格を併記し、税込価格が明瞭に表示されているといえる限りで税抜価格を強調することは許されるから、このような方法で、消費者に値頃感をアピールすることも1つの工夫といえるであろう。 (了)

#No. 78(掲載号)
#大東 泰雄、山田 瞳
2014/07/17

女性会計士の奮闘記 【第19話】「適用できなかった『あの制度』も、あきらめずに最新情報を追いかける!」

女性会計士の奮闘記 【第19話】 「適用できなかった『あの制度』も、 あきらめずに最新情報を追いかける!」   公認会計士・税理士 小長谷 敦子     平成26年度税制改正を受けた 「所得拡大促進税制」の適用について 平成26年度税制改正後のこの制度は、平成26年度4月1日以降に終了する事業年度について適用されます。 そのため、平成25年4月1日以降に開始し、かつ平成26年4月1日より前に終了した事業年度については、改正前の制度を適用して申請を行うことになります。 以下の要件を参照にして、適用の可否を確認してください。 平成25年度の給与等支給増加額は5%未満であっても 上記①から③をすべて満たしていれば・・・ 平成26年度(適用2年目)において、平成25年度について改正後の規定を適用して算出される税額控除額を、上乗せして控除できます。 ◆ワンポントアドバイス◆ 税制は、国の施策と密接に関係しています。 申告期限が過ぎていても、遡って適用できる場合や、上乗せ措置等が講じられる場合があります。 国税庁や財務省だけではなく、経済産業省や厚生労働省などのホームページでも、最新の情報をチェックしておきましょう。 その上で、お客様に適用できるものがないかどうか、しっかり検討しましょう。 (了)

#No. 78(掲載号)
#小長谷 敦子
2014/07/17
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