退職金制度の作り方 【第2回】 「退職金制度の種類」 なりさわ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士 成澤 紀美 退職金制度を導入する場合、制度そのものをどのような仕組みにすべきか、考えなければならない。 具体的には、勤続年数だけで支給額を決定するのか、一定の人事評価基準を影響させるのかなど、いくつかの方法がとられている。 基本給連動型(退職時給与×支給係数) 退職時の給与額(基本給)に勤続年数に応じた支給係数を乗じる方式で、最も多くの企業で採用されている方法である。 この方法は退職金額を計算しやすいものの、将来の給与額まで想定できず、勤続年数が長いほど退職金額が多額になってしまう恐れがある。また、給与額が下がると想定退職金も減額となるため、給与額の引下げが難しく賃金設計が自由に行いにくいという問題もある。 定額型(勤続年数による定額) この方法は、勤務年数に応じた退職金額をあらかじめ定めておくものである。例えば、勤続5年で30万円、10年で100万円、20年で400万円など一定額になる。 給与と退職金額との連動がなく、勤続年数に応じた退職金額が予め想定しやすいものの、基本的には勤務年数のみを基準とするため、在職中の貢献度合いを退職金に反映しにくいという側面もある。 ポイント型(勤続年数、職責ポイント×支給単価) 毎年、職責や役職ごとに予め設定されているポイントを付与し、付与された総ポイントにポイント単価を乗じて計算する方法である。入社1年目~3年目は毎年5ポイント、役職者は役職ごとに20ポイント~50ポイントと付与していく。 この方法は、給与との連動をなくし、毎年の貢献度合いを退職金に反映させることができる一方で、中小企業では毎年のポイント付与を正確に管理していくのが難しいため、大手企業に比較すると積極的な導入がされにくいものとなっている。 またポイント単価の変更(減額)は、労働者の不利益変更につながるため、取扱いに注意が必要でもある。 別メニュー型(退職時の役職に応じた定額×勤務年数別の支給係数) 退職時の役職に応じて退職金額を定額で定め、これに勤務年数別の支給係数を乗じる方法で、定額方式と同じように、給与と退職金額との連動をなくし、さらに在職中の貢献度合いを反映させようというものである。 定額型のデメリットを改善した方法とされるが、退職時点での役職で貢献度合いを判断することとなるため、在職中の貢献度合いを正確に反映できないという欠点もある。 ◆ ◆ ◆ いずれの方法にも一長一短があるのは否めないが、貢献度合いを盛り込むべきか、金額を固定化するかなど、退職金を支給する意味・目的に見合った方法を検討していくべきである。 * * * 次回は、退職金の積み立て方法をお伝えしたい。 (了)
年金制度をめぐる 最新の法改正と留意点 【第4回】 (最終回) 「年金強化法等における改正事項(その2)」 特定社会保険労務士 佐竹 康男 1 短時間労働者への適用拡大(平成28年10月1日施行) (1) 短時間労働者の適用拡大(適用除外の明確化) 一定の短時間労働者は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入することができなかったが、社会保険の適用除外者を明確にすることにより、短時間労働者の適用拡大が図られる。 現在、1日又は1週間の所定労働時間及び1月の所定労働日数が通常の労働者(正社員)の所定労働時間及び所定労働日数の4分の3以上である短時間労働者は、原則として被保険者として取り扱われているが、平成28年10月1日以降、通常の労働者に比べて1週間の所定労働時間又は所定労働日数が4分の3未満の者のうち、次の①から④までの要件に該当するものは、社会保険の被保険者になる。 ただし、当分の間、常時501人以上使用する事業所(特定適用事業所という)においてのみ、適用拡大が図られることになった。 (2) 実務上の留意点 〈厚生年金保険法第12条(適用除外)に次の第五号が追加される〉 2 年金機能強化法におけるその他の改正(施行日はすべて平成26年4月1日) (連載了)
会計事務所 “生き残り” 経営コンサル術 【第12回】 (最終回) 「お客様が喜んで下さる本当のコンサルとは」 株式会社 経営ステーション京都 代表取締役 京セラ株式会社 元監査役 公認会計士・税理士 田村 繁和 早いもので、この連載を始めてから1年が経ち、今回で最終回になります。 勝手なことをお話してきまして、たいへん申し訳なく思っております。 お客様と長い間接してきて、本当に感謝されたのは、経営危機の会社が利益を出して立ち直った時でした。 私は、その時の社長の笑顔を見て、「これが本当のコンサルなんだなあ」と思いました。 何度もお話してきましたが、会計事務所向けの会計ソフトを使って簡単にできることがコンサルだと思ってもらっては困るのです。また、デューデリをして経営計画を作ることがコンサルだと思っている人も困ります。 どんなに立派な経営計画書を作っても、実績が目標に達成せずに倒産してしまっては、コンサルしたことにはならないのです。 会社経営をされている社長の願いは、「どんなことがあっても倒産しない会社」をつくることです。 そのためには、全社員が利益に向かって走り出す仕組みをつくることです。 そこで、部門別に利益を出して経営を見ていくことが必要となってきます。 このようなお話をしますと、半分ぐらいの社長が「私どもでは部門別に損益を出しています」と言われます。 そこで、「どうですか。うまくいってますか?」と尋ねますと、ほとんどの方が、「うまくいかなくて経営会議を挫折した」とお答えになるのです。 では、どうして経営会議がうまくいかないのでしょうか。 それにはいくつかの理由があります。 「全社員が売上最大、経費最少に向けて走り出せ」という標語は、世間でよく言われます。しかし、現在の部門別損益計算書には、製造部門に売上はありません。 そのため、社長がこのような話をしても、製造部門の人は「俺たちには売上がないから、売上最大をどうして目指せばいいのか」と不満の声が出てきます。 そして、ここでまず挫折してしまうのです。 そこで、上記のテーマを実現するために、製造部門に売上科目をつくる必要があります。つまり、従来の部門別損益計算書を、ひと工夫加工していく必要があるのです。 さらに、経営会議がうまくいかない第2の理由は、「経営会議をどうしてやっていけばいいのかわからない」ということです。 社員と外注先は、同じように会社からお金をもらって生活しています。外注先の方は必ずと言っていいほど、お金をもらう時に頭を下げます。しかし、社員の人で頭を下げる人はごくわずかです。 これだけみても、外注先の方が経営者意識をもって仕事をしていることがわかります。 そこで、「各部門の責任者」を「外注先の社長」として、経営会議を行っていけばいいのです。 そして、各部門の責任者から、あたかも別会社のように、活気あふれる意見が飛び出してくれば、各部門の利益が生まれてくるのです。 このような経営会議にするためには、経営システムをつくるだけではうまくいきません。社員が「なぜこの会議をやっていくのか」を理解することが必要なのです。 そのためには、経営理念や社訓をつくって、毎朝の朝礼で意思確認をしていくことが大切となってきます。 このように本当のコンサルは、コンピュータソフトを使って簡単にできるものではありません。全社員を巻き込んで、真剣に議論し、全社員と共に、利益に向かって走り出す仕組みをつくることなのです。 私と異なった意見をもってられる方も、たくさんおられると思います。しかし、今までお話してきたことが、京セラの監査役としての経験から学ばせていただいたことなのです。 1年間ご愛読いただき、ありがとうございました。 (連載了)
顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第27回】 「経費管理のKPI (その① 経費処理社内指導)」 株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦 はじめに 前回までは「原価管理」のKPIを取り上げたが、今回から6回にわたり、「経費管理」のKPIを取り上げる。 経費管理の対象となる取引の特徴を仕入・買掛債務管理のそれと比較してみると、個々の取引金額が小さいこと、発生する取引件数が多いこと、社内においてその経費支出に関係している主管部門の数が多いこと、その使途や発生頻度がさまざまで非定型的であること等が挙げられる。 このような取引の特徴から、経費管理においては、僅少な金額の取引も含んだ多種多数の取引の正確性を限られた人員でいかに管理するのかという視点が求められる。 今回は、経費管理の入口において起票の正確性を担保するため経理財務部門が担うべきサービスレベルを評価するKPIを取り上げる。 KPIが設定された業務プロセスの確認 まず、経済産業省スタンダードで整理された業務プロセスを引用しながら、このKPIに対応する業務プロセスを押さえておこう。 経済産業省スタンダードでは、経費管理において、会社が担う一般的な機能を、「年度予算管理」と「日常管理」に分けている。 このうち、「日常管理」を構成する機能は、「通常経費処理」、「仮払決済」、「差額決済」である。 今回解説するKPIは、「日常管理」における「通常経費処理」に関連する業務プロセスにおいて設定されている。 〈経済産業省スタンダード:経費管理で会社が担う機能〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より) さらに、経済産業省スタンダードでは、「通常経費処理」に関連する業務プロセスを次のようにまとめている。 〈経済産業省スタンダード:7.3.1処理指導〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より) 経理財務部門は、経費管理の対象となる支出について、支出を行った主管部門に対してその支出内容を確認し、会社の営業目的との関連性を踏まえて、適切な処理方法を指導する。処理方法には、勘定科目、取引日、取引金額、取引先等、経費伝票を作成するために必要なあらゆる入力項目が含まれる。 今回のKPIは、経理財務部門が主管部門から受領する経費伝票を修正する割合に着目し、経理財務部門が行う経費処理社内指導によって達成されている経費処理の正確性を問うものである。 定義を理解する 調査項目の文言から、KPIの定義を確認しよう。以下、KPIの項目を再掲する。 「経費伝票」とは、販売費及び一般管理費の勘定科目に対応する取引を記帳するために作成する伝票をさす。 支払伝票、支払依頼書、振替伝票等、呼称を問わない。 「経費伝票を修正」とは、経費伝票の金額、勘定科目、消費税区分、税務上の取扱の正確性を添付された原始証憑等の入力元資料の内容に照らして判断し、誤りや不適正を訂正することをさす。 KPIの算出式から自明であるが、「経費伝票を修正」する主体は、経理財務部門であり、修正の対象となるのは、経費支出を行った主管部門が作成した経費伝票である。 すなわち、スコアリングモデルでは、経費伝票の起票は、経理財務部門ではなく、主管部門が行うことを想定している。 なお、KPIの算出式の分子にあたる、「直前決算期1年間で経理財務部が修正指摘を行った経費伝票枚数(A)」について、主管部門が入力した時点で、誤りがあれば自動的に修正差し戻しされる情報システムを利用している場合、経費伝票の誤りは主管部門で正され、経理財務部門が訂正することはないので、(A)に0枚と記入する。 KPIの背景にある価値判断 スコアリングモデルでこのKPIを設定したのはなぜか。 このKPIは、経費の発生額及び発生状況を適正に財務諸表に反映するため、主管部門において適正な経費伝票の起票を行うことが望ましいという価値判断に基づいて設定されている。 小規模会社では、経費管理の対象となる社内のあらゆる取引について、経理財務部門が経費伝票を起票し、経費支出にかかる承認権限を行使しているかもしれない。 他方、会社が一定規模を超えて、事業の内容が複雑で社内に複数の部門を抱えるようになると、業務の遂行上その経費支出を必要とする主管部門が支出にかかる承認と経費伝票の起票を担い、経理財務部門は主管部門から回付された経費伝票の正確性を事後的に確認し、最終的な金銭支出を承認する職務分掌が成立していることが多い。 その場合、主管部門の経理や税務の知識の水準によって、起票内容の正確性が損なわれるリスクが高くもなり低くもなる。 このリスクに対する管理のあり方について、経理財務部門が最終的にすべての経費伝票を確認して経費伝票の正確性を担保するという会社もあろう。 しかし、このような経理財務部門による事後的な発見だけに依存し、経費を実際に使っている主管部門が経費伝票の正確性に無関心のままでは、経理財務部門が修正指摘を行う経費伝票枚数は一向に減少せず、経理財務部門の事務処理担当者は増員の一途をたどるだろう。 むしろ、経費伝票の正確性は、一義的にはその経費支出を発生させた源である主管部門が担い、経理財務部門が担う事後的な発見は、これに過度に依存せず、最後の砦と考えるのが、現実的な発想である。 そのためには、規程、教育、情報システムの整備により、社内の情報伝達と意思疎通を増やし、主管部門の経理や税務の知識の水準を上げて、発生源である主管部門が正しく経費伝票を起票するために事前に行う予防を一定程度まで高めることが求められる。 そのような価値判断がなければ、経理財務部門は、その人員規模だけが膨張し、経費伝票確認事務に忙殺され、戦略的機能を果たすことは覚束ないだろう。 そこで、スコアリングモデルでは、主管部門における経費伝票の正確性を比較するため、経理財務部門が主管部門から受領する経費伝票を修正する割合をKPIとした。 割合は%で表されるが、この数値が小さい会社が大きい会社よりも相対的に望ましいと考えている。 どの程度の割合が望ましいのかという問題に対しては、各会社が提供したKPIデータ群によって形成されるベンチマークが答を示すわけだが、その割合こそ、経費伝票の正確性について主管部門と経理財務部門が担うチェックアンドバランスの均衡点の現実的な落ち着き所を示すことにもなろう。 顧問先のKPIを測定してみる では、実際にどのような手続でKPIを測定するのか。 まず、読者は、顧問先の経理財務業務を観察し、経理財務部門が経費指導を行う業務プロセスが組み込まれていることを確認していただきたい。 例えば、経理規程、経理通達、社内研修の資料を閲覧し、主管部門の経理や税務の知識の水準を高める仕組みの存在を確認することが考えられる。 それを前提に、例えば、一定期間に主管部門で起票された経費伝票数と経理財務部門が修正した経費伝票数の比率を算出していただきたい。 さて、読者の顧問先において、経理財務部門が主管部門から受領する経費伝票を修正する割合は何%になったであろうか。 * * * 次回も、引き続き「経費管理」を構成する複数のKPIから、経費管理の効率性のサービスレベルを評価するKPIを取り上げる。 (了)
税理士・公認会計士事務所 [ホームページ]再点検のポイント 【第11回】 「ホームページの訪問者を調べてみよう」 データライズ株式会社 代表取締役社長 公認会計士・税理士 河村 慎弥 今回からは、「集客できる」良いホームページへの取り組み方について、実践的に考えていきます。 前回の最後に、「集客できる」良いホームページは、まずホームページの訪問者数が多く、次に訪問者数に対する問合せ件数の比率が高いことが必要だとお話させていただきました。 これらを考えていくにあたり、まずは、ご自分の事務所のホームページへアクセスした方(訪問者)の数がわかる仕組みを用意する必要があります。 このホームページへの訪問者数をカウントすることを「アクセス解析」と呼びます。 まずは、ご自分の事務所のホームページのアクセス解析をできるようにしましょう。 ホームページを制作した時に、何らかのアクセス解析ツールが組み込まれているのなら問題ないのですが、組み込まれていない場合には、新たに組み込む必要があります。 でもご安心ください。それほど大変な作業ではありませんので。 * * * アクセス解析ツールとして多く使われているのは、グーグル・アナリティクス(Google Analytics)というサービスです。 グーグル・アナリティクスは、グーグル社から「無料で!」提供されています。 グーグル・アナリティクスを使うためには、まず、グーグル・アナリティクスのホームページの「アカウントを作成」で、名前などの登録を行う必要があります。 なお、もしグーグル社が提供するジー・メール(Gmail)という無料のメールサービスをご利用中でしたら、改めて「アカウントを作成」して名前などの登録を行うことなく、グーグル・アナリティクスを利用できます。 その上で、ホームページのすべてのページに、訪問者があったことをグーグル・アナリティクスに知らせる簡単なプログラムを埋め込む必要があります。 これは、ホームページ制作会社に依頼すればやってくれるはずです。 作業料金は、ホームページ制作時なら無料が一般的だと思いますが、すでに公開中のホームページの改変の場合は、更新料が必要なことが多いと思います。 これらがすべて完了すると、グーグル・アナリティクスのあなた専用のページに、あなたの事務所のホームページのアクセス状況が表示されるようになります。 ここまでのお話が少しわかりづらいと思われた方は、ホームページ制作会社に「グーグル・アナリティクスが使えるようにしてほしい!」と言ってみてください。 * * * グーグル・アナリティクスでは、ホームページの訪問者は「ユーザー」と呼ばれますが、「ユーザー」に関してどのような情報がわかるのか、みていきましょう。 仮に「過去1ヶ月間」という期間を指定して、以下の情報が表示されたとします。 似たような言葉が並んでいますが、それぞれ以下のようなことを意味しています。 「訪問数:361」は、過去1ヶ月間に、あなたの事務所のホームページが361回訪問されたことを表しています。 そして「ユーザー数:274」は、過去1ヶ月間に、274人が訪問したということを表しています。 同じ人が複数回訪問することもありますので、この2つの数字は一致しません。 さらに、「ページビュー数:1,279」というのは、事務所ホームページ内のすべてのページを対象に、何回見られたかを表します。 例えば、過去1ヶ月の間に、1人のユーザー(訪問者)が2回訪問して、事務所ホームページの3ページ分を閲覧していったら、 ということになります。 次に、以下のような情報も表示されます。 まず「訪問別ページビュー:3.54」は、1回の訪問につき平均3.54ページ訪問者が見ていたということ、「訪問時の平均滞在時間 00:02:24」は、1回の訪問につき平均2分24秒、訪問者がホームページ内に留まっていたことを表しています。 また「直帰率:43.49%」は、最初に訪問したページから、事務所ホームページ内の他のページへ行かずに、事務所ホームページとは別のホームページへ移ってしまった(帰ってしまった)訪問の割合です。 この「訪問別ページビュー」が多く、「訪問時の平均滞在時間」が長いということは、あなた(の事務所)に興味をもってくれている人が多いことを表します。 これに対し、「直帰率」が高い場合には、一目見て興味なしと判断している人が多いことを表します。 また、「訪問数について」の「New Visitor:263(72.9%)」は、新規の訪問数が263(72.9%)であることを、「Returning Visitor:98(27.1%)」は、再訪問数が98(27.1%)であることを表しています。 新規の訪問が多いということは、新たな顧客獲得の可能性が高まっているといえます。 グーグル・アナリティクスでは、これらの他にも、訪問者がどこの都市からアクセスしているのか、パソコン、スマートフォン及びタブレットの何を使って見ているのかという細かな情報までわかります。 さらには、あなたの事務所のホームページの中の各ページをどの順序で見ていったのか、といったこともわかってしまいます。 これらの情報を分析して、ホームページを集客に結びつけるためには、どのページをどう変えなければならないのかを考えていくことになります。 * * * 最後に、グーグル・アナリティクスは無料のサービスのため、使い方の丁寧な説明は、グーグル社からは提供されておりません。 しかし、使い方を分かりやすく解説した第三者によるホームページがいくつも公開されていますし、関連する書籍も発刊されていますので、興味のある人は「グーグル・アナリティクス 使い方」などのキーワードで検索してみるとよいでしょう。 (了)
《速報解説》 「新EDINETの概要とXBRLデータに関する 監査人の留意事項」(公開草案)について 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成25年12月10日、日本公認会計士協会(IT委員会)は「IT委員会研究報告『新EDINETの概要とXBRLデータに関する監査人の留意事項』(公開草案)」を公表した。 公開草案は、監査人の実務の参考に資するため、新EDINETの概要とXBRLデータに関する監査人の留意事項について取りまとめを行ったものである。 意見募集期間は平成26年1月9日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 留意事項 平成25年9月17日から新EDINETの運用が開始され、会社は平成25年12月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書から、新しい技術仕様のXBRL形式で作成し提出することを義務付けられている。 これにより、XBRLの対象範囲が拡大し、財務諸表本表のみから注記を含む財務諸表全体がXBRLの対象となった。特に、XBRLの対象範囲の拡大には独立監査人の監査報告書(中間監査報告書及び四半期レビュー報告書を含む)も含まれていることに注意が必要である。 Ⅲ 公開草案の主な内容 1 公開草案の構成 公開草案の構成は次のとおりである。 2 旧EDINETからの変更点 主な変更点は、次のとおりである。 3 監査人の留意事項 「監査人の留意事項」として、次のことが述べられている。 (了)
《速報解説》 「平成25年3月期有価証券報告書の 法令改正関係審査の実施結果」について 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成25年12月10日、金融庁は「平成25年3月期有価証券報告書の法令改正関係審査の実施結果」を公表した。 これは、平成25年3月29日の「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意事項(平成25年3月期版)と有価証券報告書レビューの実施について」において行った有価証券報告書レビューに関する「法令改正関係審査」の実施結果である。 後述するように、訂正報告書の提出が要請されていることもあり、有価証券報告書の開示については、「企業内容等の開示に関する内閣府令」及び「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」に従って適切に記載するように注意する必要がある。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 審査結果の概要 1 対象 平成25年3月31日を決算日とするすべての有価証券報告書の提出会社(2,788社) 2 審査項目 社外取締役及び社外監査役に関する記載内容 3 審査結果 下記の提出会社に対して、有価証券報告書の訂正報告書を提出するよう要請し、73社すべてから訂正報告書が提出された(重複:計5社)。 4 事例 次の事例について述べられている。 (1) 役員の状況 役員が社外取締役又は社外監査役に該当する場合に、その旨を欄外に注記していない事例 (2) コーポレート・ガバナンスの状況 (了)
monthly TAX views -No.11- 「日本の巨額な個人貯蓄を活性化させる 日本版IRA」 中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹 アベノミクス第3の矢である成長戦略は、これまでさまざまな個別政策が打ち出されてきたが、どれも決定的なものはない。法人税実効税率引下げの議論も進んでおらず、来年度は復興特別法人税の前倒し廃止が決まる程度であろう。 内外のアベノミクスに対する評価も相当トーンダウンし始めている。 このように感じていたところ、11月9日付日経新聞(朝刊)が一面トップで「非課税の私的年金創設 金融分野で成長 戦略貯蓄から投資促す」と題する記事を掲載した。 わが国には1,600兆円にも及ぶ個人金融資産が貯蓄にクギ付けされており、その1割でもリスクマネーに回れば、わが国経済は相当活性化する。これこそアベノミクスの本命となるのにふさわしい、というのが第一印象である。 日経の記事内容を紹介すると、 (日経電子版より引用) となっている。 このようなことを検討する場として、金融庁と財務省は共同で有識者会議「金融・資本市場活性化有識者会合」(伊藤隆俊東大教授が座長)を立ち上げ、すでに第1回会合が行われている。 筆者も、日本版IRAの導入について、数年来提言してきた。 その具体的な提言の内容は、(例えば)年間120万円という拠出額限度を設け、一定年齢(例えば60歳)以降に引き出す場合には、運用益を含めて非課税とする制度である。金融商品間の中立性を確保する観点から、預貯金、株式、株式投資信託等幅広い投資を認め、その中では損益通算も認めるというものである。 同様な制度として、米国にはIRA(個人退職勘定)があるので、“日本版IRA”と称している(詳細は、ジャパン・タックス・インスティチュートのホームページを参照いただきたい)。 周知のように、わが国の企業年金制度は、大きな課題を抱えている。企業が丸抱えする制度(確定給付)が、米国GMではないが、積立て不足となり、企業経営の足かせとなっている。 リスク回避のため確定給付年金(401k)を導入したものの、加入要件が厳しく個人型401kはほとんど普及していない。また、正規雇用・非正規雇用間の加入の公平性の問題も存在している。 そこで、個人が国(公的年金)や企業(企業年金)に依存せず、自助努力で資産形成する本格的な個人年金を作り、国家が税制で支援することになれば、個人にとって極めて大きな意義がある。また、その資金が直接金融にシフトすれば、経済に与える影響も大きい。 導入に当たっての最大の検討課題は、税制である。 年金税制には、拠出時非課税、運用時非課税、給付時課税のEET型と、拠出時課税、運用時、給付時非課税のTEE型の2種類の課税方法がある。EET型とTEE型の実質的な経済的価値(納税額及び税引き後資産残高)は、適用税率が同じであれば同値である。 米国IRAには2種類の税制優遇がある。通常のIRAは、拠出段階で所得控除、運用段階は非課税、給付段階では全額課税のEET型である。もう1つ、ロスIRAがあり、税引き後の金額を積み立てて運用益給付時は非課税というTEE型である。 一方、わが国の年金税制は、拠出・運用・給付段階ですべて課税されていないEEE型である。拠出時は社会保険料控除、運用段階の特別法人税は凍結中、給付時は公的年金等控除で大部分の年金は非課税と、わが国の所得税の課税ベースに大きな穴を開けている。 そこで、新たに導入する年金(日本版IRA)は、税制の優遇度を落として、欧米型の年金税制に合わせる必要がある。つまり、日本版IRAの税制は、EET型かTEE型かのどちらかにすることが、日本型IRAを導入する際の現実的な選択肢となる。 税引き後の資金を積み立てるTEE型のメリットは、基本的に貯蓄に対する税制として簡素で明瞭であること、受け取った税引き後所得の中から拠出するため拠出額をコントロールしやすいこと、制度導入時の財政負担が軽くなるため、わが国の財政状況を考えると魅力的な選択肢となることなどである。 これに対し積立時所得控除のEET型は、積立時に減税となり年金受取時には勤労所得はなく適用税率が低くなるという優れた点がある。しかし、新たに所得控除を設けることは、税制当局の理解を得にくいだろう。 筆者は、TEE型の課税方式(拠出時課税、運用・給付時非課税)で日本版IRAを提言している。こうすれば、来年から始まるNISA(少額投資非課税制度)と将来的な統合も視野に入れることができる。 来年度税制改革には間に合わないが、まずは導入をコミットし、早急な検討に入るべきだ。アベノミクスの成長戦略を絵に描いた餅にしないためにも。 (了)
〈平成26年1月から適用〉 延滞税等に関する改正事項のおさらい 税理士法人オランジェ 代表社員 税理士 石田 寿行 1 延滞税等の概要 延滞税及び利子税(以下「延滞税等」という)は、滞納を防止し、期限内に納付した納税者との間の税負担の公平を確保する観点から設けられたもので、債務不履行に対する遅延利息的なものである。 その延滞税及び利子税について、平成25年度税制改正により、平成11年度の税制改正以来、14年ぶりの税率引下げが行われた。併せて国からの還付金等に付される還付加算金についても引下げが行われ、地方税の延滞金、還付加算金についても同様の措置がとられる。今回の改正の背景には、低金利の時勢や納税者の負担軽減という狙いがある。 延滞税等が課税されるケースとしては、以下のような事例が挙げられる。 2 改正の概要 平成26年1月1日以後の期間に対応する延滞税等について、以下のように改正される。 上記の内容を改正前と改正後で図表にすると、以下のようになる。 〈改正前〉 (※2) 「年7.3%」と「前年の11月30日の公定歩合+4%」のいずれか低い割合となる。平成24年11月30日現在の公定歩合が0.3%のため、特例税率は4.3%。 〈改正後〉 3 具体例 [ 事 例 ] A社(3月決算5月末申告期限)は期限内に法人税の申告を行ったが、資金繰りの都合上、法人税1,155千円を8月末に納付した。 この場合の延滞税の金額を〈改正前〉と〈改正後〉に区分して以下計算する。 ※貸出約定平均金利を1%と仮定する。 〈改正前〉 ① 6月から7月までの延滞税 ② 8月末までの延滞税 ③ ①+②=22,500円(100円未満切捨て) 〈改正後〉 ① 6月から7月までの延滞税 ② 8月末までの延滞税 ③ ①+②=14,800円(100円未満切捨て) 上記の事例では、改正前と改正後で7,700円の延滞税が軽減されることになる。 4 地方税(延滞金等)について 地方税の延滞金等についても、平成26年1月1日以後、以下のように改正される。 〈改正前〉 〈改正後〉 (了)
居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第9問】 「共有家屋と共にその共有敷地を譲渡した場合」 -居住用財産の範囲- 税理士 大久保 昭佳 Q XとYは、鉄筋3階建ての家屋及びその敷地を共有(各人の持分1/2)しています。 家屋の1階部分は第三者に貸し付けており、2階部分はX、3階部分はYが、それぞれ居住の用に供しています。 このほど、XとYは、建物と共にその敷地の全部を譲渡しました。 なお、この建物の1階部分、2階部分及び3階部分の各床面積はすべて同じです。 この場合、XとYそれぞれについて「3,000万円特別控除(措法35)」の適用対象となる居住用財産の範囲はどこまででしょうか? A XとYは共に、自己の持分に係る家屋と敷地のうち3分の2に相当する部分(全体の3分の1(1/2×2/3)に相当する部分)について「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることができる。 〈解説〉 家屋については、 ① その家屋のうち、その居住専用部分がその家屋全体に占める割合(以下「居住用専用割合」という)がその者の共有持分の割合に等しいか、それより大きい場合には、その共有持分に係る家屋の全部が「3,000万円特別控除」の特例適用対象となり、 ② その者の居住用専用割合が共有持分の割合に満たない場合には、その者の共有持分に係る家屋のうち、次の算式により計算した割合に相当する部分が特例適用対象となる。 次に、敷地についても上記と同様に、 ① その者の居住専用割合が土地の共有部分の割合に等しいか、それより大きい場合には、その共有持分に係る土地の全部が「3,000万円特別控除」の特例適用対象となり、 ② その者の居住用専用割合が共有持分の割合に満たない場合には、その者の共有持分に係る土地のうち、次の算式により計算した割合に相当する部分が特例適用対象となる。 (了)