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《速報解説》 監査基準委員会報告書800「特別目的の財務報告の枠組みに準拠して作成された財務諸表に対する監査」等に係るQ&A(公開草案)について

《速報解説》 監査基準委員会報告書800「特別目的の財務報告の枠組みに準拠して作成された財務諸表に対する監査」等に係るQ&A(公開草案)について   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成26年1月27日付で、日本公認会計士協会(監査基準委員会)は、次の監査基準委員会報告書に関するQ&A(以下「Q&A」という)を公開草案として公表した。 上記①及び②は、「監査基準の改訂について(公開草案)」(平成25年11月19日、企業会計審議会)を踏まえたものであり、平成26年1月14日まで意見募集が行われていた。 Q&Aは、上記①及び②の公開草案の理解に資するため、当該監査基準委員会報告書に含まれている要求事項や適用指針の趣旨、あるいは文例の背景説明についてとりまとめたものである。 意見募集期間は平成26年2月17日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 適用される財務報告の枠組み 「監査基準の改訂について(公開草案)」では、「一般目的の財務諸表」と「特別目的の財務諸表」について述べており、また、従来の適正性に関する意見の表明の形式に加えて、準拠性に関する意見の表明の形式を監査基準に導入している。 Q&Aの「Q2 適用される財務報告の枠組み」では、財務報告の枠組みは次の2つの視点から分類されると述べられている。 財務報告の枠組みが上記のいずれに分類されるかは、監査契約の新規の締結又は更新や監査報告に影響するため重要となる。 2 特別目的の財務報告の枠組みの具体的な例 Q&Aの「Q5 特別目的の財務報告の枠組みの具体的な例」は、特別目的の財務報告の枠組みの具体的な例として、次のものを挙げている。 監査基準委員会報告書800 の付録には、以下の特別目的の財務報告の枠組みに準拠して作成された財務諸表の監査報告書の文例が示されている。 特別目的の財務報告の枠組みを理解するうえで参考になるものと考えられる。 3 財務報告の枠組みの相違と監査プロセス (1) 共通点 Q&Aの「Q11 財務報告の枠組みの相違と監査プロセス ①特別目的の財務諸表」は、財務報告の枠組みの相違にかかわらず、監査人は、財務諸表に全体として重要な虚偽表示がないかどうかの合理的な保証を得て監査意見を表明しなければならず、リスク・アプローチに基づく監査手法により監査を実施することに何ら変わるところはないと述べている。 また、Q&Aの「Q13 財務報告の枠組みの相違と監査プロセス ②準拠性の枠組み」は、一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して行う監査は合理的保証業務であり、財務報告の枠組みが、適正表示の枠組み又は準拠性の枠組みのいずれであるかにより、保証水準に差が生じるわけではないと述べている。 (2) 相違点 Q&AのQ13は、適正表示の枠組みと準拠性の枠組みとの相違は、監査意見の形成の際、準拠性の枠組みに準拠した財務諸表に対する監査の場合は、適用される財務報告の枠組みにおいて要求される事項が遵守されているか否かを検討すればよく、財務諸表が適正に表示されているかどうかの評価、すなわち、財務諸表により提供される情報(例えば、事業体の財政状態や経営成績又はキャッシュ・フローの状況)を、想定利用者が財務諸表から適切に理解できるか否かといった観点に立った俯瞰的な検討を行うことは求められない点にあると述べている。 (3) 留意点 監査人は、特別目的の財務諸表の監査を実施する場合にも、監査基準、法令により準拠が求められる場合は監査における不正リスク対応基準、及び監査基準委員会報告書を含む日本公認会計士協会が公表する監査実務指針のうち個々の監査業務に関連するものはすべて遵守することが求められる。 さらに、特別目的の財務諸表の監査の場合、一般目的の財務諸表の監査と比して、特に、①監査契約の締結及び更新、②監査報告において、特別な考慮事項が必要となると述べられているので、監査契約の受嘱に際しては慎重な対応が必要になると考えられる。 *  *  * 上記のほか、「一般目的の財務諸表」と「特別目的の財務諸表」の考え方、「適正表示の枠組み」と「準拠性の枠組み」の考え方、会社法に基づいて作成された計算書類、「中小企業の会計に関する指針」又は「中小企業の会計に関する基本要領」の取扱いなども述べられており、監査人だけでなく、特別目的の財務諸表等の作成者や利用者にも関係するので、ぜひ、Q&Aをお読みいただきたい。 (了)

#No. 53(掲載号)
#阿部 光成
2014/01/28

《速報解説》 使途秘匿金の支出がある場合の課税特例の適用期限撤廃~平成26年度税制改正大綱~

 《速報解説》 使途秘匿金の支出がある場合の課税特例の適用期限撤廃 ~平成26年度税制改正大綱~   税理士 伊村 政代   Ⅰ 制度の確認 この制度は、法人が使途秘匿金と認められる支出をした場合には、その支出をした事業年度の通常の法人税額に、その使途秘匿金の支出額の40%を加算するものである。   Ⅱ 平成26年度改正事項 上記の特例は平成6年4月1日から平成26年3月31日までの間に使途秘匿金を支出した場合において適用されるが、「平成26年度税制改正大綱」において、永続的に適用されることが明らかとなった。   Ⅲ 適用にあたっての留意点 1 適用対象となる支出 法人が交際費、機密費、接待費等の名義をもって支出した金銭でその費途が明らかでないものは、損金の額に算入されない。費途が明らかでない支出は「費途不明金」として別表4において加算調整の対象となる。 なお、上記の費途不明金のうち、相当の理由なく、相手方の氏名又は名称等をその帳簿書類に記載しなかった支出については、「使途秘匿金」としてさらに法人税の追加課税がされる。 2 追加課税額の計算 その事業年度の法人税額に加算される金額は、下記算式のとおり。 3 費途不明金と使途秘匿金 「費途不明金」と「使途秘匿金」は、その範囲に違いがあることに留意しなければならない。 費途不明金は、 として定義されている。 一方、使途秘匿金は、 とされている。 つまり、費途不明金はその費途が明らかでないものであり、使途秘匿金は取引の相手方の情報を、相当の理由なく帳簿書類に記載していないものとなっている。 その他、下記の点に留意が必要である。 (了)

#No. 53(掲載号)
#伊村 政代
2014/01/28

《速報解説》 中小企業者等以外の欠損金の繰戻し還付不適用措置の適用期限延長~平成26年度税制改正大綱~

 《速報解説》 中小企業者等以外の欠損金の繰戻し還付不適用措置の適用期限延長 ~平成26年度税制改正大綱~   税理士 伊村 政代   Ⅰ 制度の確認 この制度は、青色申告書である確定申告書を提出する事業年度に欠損金額が生じた場合(欠損事業年度)において、その欠損金額をその事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度(還付所得事業年度)に繰り戻して法人税額の還付を請求することができる制度である。 ただし、次の欠損金額については、その適用が停止されている。   Ⅱ 平成26年度改正事項 上記Ⅰにおける②の不適用措置の適用期限は、平成26年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額となっているが、「平成26年度税制改正大綱」により、その期限が平成28年3月31日まで2年間延長されることとなった。 つまり、今回の改正によって、中小企業者等以外の法人にあっては、欠損金の繰戻しによる還付制度が適用できる事業年度が2年間先送りとなったのである。   Ⅲ 適用にあたっての留意点 1 適用対象となる法人 欠損金の繰戻しによる還付制度が適用できる法人は、次の各期間に終了する各事業年度によって異なる。 2 還付金額の計算 3 適用の要件 この制度の適用を受けるには、次の要件をすべて満たさなければならない。 (了)

#No. 53(掲載号)
#伊村 政代
2014/01/28

《速報解説》 支払調書等の本店等一括提出制度の創設~平成26年度税制改正大綱~

 《速報解説》 支払調書等の本店等一括提出制度の創設 ~平成26年度税制改正大綱~   公認会計士・税理士 新名 貴則   平成25年12月24日に閣議決定された「平成26年度税制改正大綱」の中で、支払調書等の提出について見直しを行うことが明記された。 ここでは、その内容について解説する。   ■現行の支払調書等の提出 支払調書や源泉徴収票といった支払調書等は、その支払事務を取り扱う事務所や事業所等の所在地を所轄する税務署長に提出する必要がある。 【現行制度のイメージ】   ■平成26年度税制改正の概要 支払調書や源泉徴収票といった支払調書等の提出について、所轄税務署長の承認を受けた場合は、その所轄税務署長以外の税務署長に対して、以下のいずれかの方法により提出できるようにする。 つまり、支店等で扱っている支払いについても、本社がまとめて本社の所轄税務署に提出する、といったことが可能になる。 【改正のイメージ】 (*) 光ディスク等又はe‐Taxによる提出に限る。   ■適用時期 上記の改正は、平成26年4月1日以後に提出すべき調書等について適用される。 (了)

#No. 53(掲載号)
#新名 貴則
2014/01/28

《速報解説》 国税庁『消費税率引上げに伴う資産の譲渡等の適用税率に関するQ&A』の公表について

 《速報解説》 国税庁『消費税率引上げに伴う資産の譲渡等の適用税率に関するQ&A』の公表について   アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩   1月20日付け、国税庁から消費税率引上げに関するQ&Aの第2弾である『消費税率引上げに伴う資産の譲渡等の適用税率に関するQ&A』が公表された。 平成25年4月に公表された第1弾のQ&A(「平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A」)は、施行日以後に旧税率が適用される経過措置の具体的な取扱いに関するものであったが、今回の第2弾については、施行日が近づくにつれてクローズアップされてきた適用税率における実務的な取扱いに関するものである。 今回公表されたQ&Aによる事例は、施行日をまたぐ取引で収益・費用の計上基準が異なる場合の適用税率、経過措置の適用がない事務機器等の保守や管理に関する業務料金における適用税率、短期前払費用の取扱いなど、平成9年の税率改正時にも問題となった取引事例で、法令や通達等においても明確となっていないことから、様々な刊行書籍等でも意見が分かれるところであったが、今回公表された取引事例については、税務当局の方向性を明確に示すこととなり、実務的にはかなり有用なものであると考えられる。 以下では、Q&Aの取引事例のうち特に重要なものについて解説を加えることとする。 ① 【問1】事業者間で収益・費用の計上基準が異なる場合の取扱い 事業者間取引において、出荷基準を採用している事業者が施行日前に出荷した商品につき旧税率にて請求した場合において、検収基準を採用している取引先が、その商品を施行日以後に検収したときの仕入税額控除の適用税率はどうなるのかといった問題については、旧税率にて仕入税額控除を行うことが明記された。 上記のような場合には、資産の譲渡等を行った時期(売上側の計上時期)が施行日前なのか施行日以後なのかという点に着目して適用税率を判断することとなる。 ② 【問2】月ごとに役務提供が完了する保守サービスの適用税率 年間契約をしている事務機器等の保守サービス料金について、毎月作業報告書を作成し、その保守料金を請求している場合における施行日をまたぐ期間に対応する料金については、その役務提供の完了した日の税率が適用されることとなる。 例えば、平成26年3月21日から同年4月20日までの期間に係る料金は、4月20日の税率である8%が適用される。 この取扱いについては、毎月20日締めとしている1ヶ月分の計算期間が一の取引単位であると認められることから、その取引単位ごとに同一の税率が適用されることについても言及しており、これ以外の役務の提供に係る取引事例もこの取扱いが流用できるものと考えられる。 ③ 【問9】短期前払費用として処理した場合の仕入税額控除 法人税法における短期前払費用の特例(法人税基本通達2-2-14)を適用した場合の仕入税額控除の処理方法について、原則的な取扱いとしては、消費税法基本通達11-3-8の規定によりその支出した日の属する課税期間においてすべて支払った時点の税率で処理しなければならない。 しかしながら、その支払ったもののうち施行日以後に係る部分につき新税率にて支払った場合には、その支払った課税期間では仮払金として処理し、施行日以後の課税期間において新税率にて処理する方法が様々な刊行物で紹介されていたが、今回のQ&Aにより課税当局もこの処理方法で取り扱うことにつき認めることを明記した(拙稿「まだある!消費税率引上げをめぐる実務のギモン【第2回】「前払費用の取扱いについて(その2)」」参照)。 なお、平成25年12月に、平成26年1月から12月までの1年間の保守契約を締結し、同月中に1年分の保守料金を支払った場合において、1年分の保守料金について旧税率に基づき仕入税額控除を行ったときは、翌課税期間において、新税率が適用される部分(平成26年4月分から12月分)について5%の税率による仕入対価の返還を受けたものとして処理した上で、改めて新税率の8%に基づき仕入税額控除の処理を行うことができることも公表された。 *  *  * なお、上記以外にも所有権移転外ファイナンス・リース取引、工事の請負、賃貸借契約などに関する以下の項目が取り上げられているが、いずれも具体的な事例を用いて示しており、施行日前に一通り確認し、その内容につき誤った処理とならないように注意されたい。 (了) 最新の連載記事はこちら↓↓

#No. 53(掲載号)
#島添 浩
2014/01/28

《速報解説》 「生産性向上設備投資促進税制」に関する申請書・確認書等、関連資料の公表について

 《速報解説》 「生産性向上設備投資促進税制」に関する 申請書・確認書等、関連資料の公表について   税理士法人オランジェ 代表社員 税理士 石田 寿行   平成26年度税制改正により創設された「生産性向上設備投資促進税制」の具体的な手続に必要となる確認書・申請書等の様式や説明資料について、産業競争力法の施行日である平成26年1月20日付けで、経済産業省のホームページにおいて公表された。 具体的な内容については以下の通りである。   1 「先端設備」の関連資料 (1) ご利用の手引き 生産性向上設備投資促進税制の適用を受けるまでの具体的な手続についてまとめられている。 (3)(4)で記載する通り、事業主(設備ユーザー)が設備メーカーに証明書の発行を依頼し、依頼を受けた設備メーカーが証明書及びチェックシートに必要事項を記入の上、当該設備を担当する工業会等の承認を受けるまでの具体的な手続がQ&A形式で記載されている。 (2) 工業会等リスト 先端設備の仕様等の証明を行う工業会等の団体名、連絡先が設備の種類、用途又は細目ごとに記載されている。 (3) 仕様等証明書サンプル 事業主(設備ユーザー)が設備メーカーに発行を依頼する証明書のサンプルが記載されている。記載内容はあくまでサンプルであり、実際の運用にあたっては当該設備を担当している工業会等が使用する様式を用いる必要がある。 (4) チェックシートサンプル 工業会等は、証明書の発行にあたり、必要に応じて設備メーカーから裏付けとなる資料等を取り寄せ、証明書及びチェックシートの記入内容を確認の上、設備メーカーに証明書を発行する。このチェックシートのサンプルが記載されている。 (3)と同様、記載内容はあくまでサンプルであり、実際の運用にあたっては当該設備を担当している工業会等が使用する様式を用いる必要がある。   2 「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」の関連資料 (1) ご利用の手引き 事業主(設備ユーザー)が投資計画案を立案し、公認会計士、税理士により確認を受け、経済産業局による確認を受けるまでの具体的な手続が記載されている。 (2) 設備投資計画申請書サンプル 事業主(設備ユーザー)が作成する設備投資計画申請書のサンプルが記載されている。 (3) 設備投資計画申請書の詳細別紙サンプル 設備投資計画申請書について、設備投資の内容や年平均投資利益率の適合基準を満たす計画の詳細を説明する場合のサンプルが記載されている。 (4) 公認会計士・税理士による事前確認書面サンプル 事業主(設備ユーザー)は、作成した設備投資計画申請書について公認会計士・税理士による確認を受ける必要がある。 公認会計士・税理士は、申請書が適切な根拠に基づいて作成されていることを確認したうえで、事前確認書を発行する。 この事前確認書のサンプルと具体的な確認内容について記載している。 (5) 経済産業局による確認書サンプル 事業主(設備ユーザー)は作成した設備投資企画申請書と(4)の事前確認書を経済産業局に提出し、経済産業局は申請内容が適切である場合には確認書を発行する。 その確認書のサンプルが記載されている。 (6) 実施状況報告書サンプル (5)の確認書の交付を受けた事業主(設備ユーザー)は、申請書の計画期間内について、申請書の実施状況を、確定決算後3ヶ月以内に、経済産業局に報告しなければならない。 その報告書のサンプルが記載されている。 (7) 設備投資計画変更申請書サンプル (5)の確認書の交付を受けた後、設備の取得前に、申請書に記載された投資利益率の算定にあたって、分母にあたる設備投資取得額が増える場合や分子にあたる営業利益率の減少が見込まれる場合には、変更申請書を経済産業局に提出の上、再度確認書の交付を受ける必要がある。 その設備投資計画変更申請書のサンプルが記載されている。 (8) 申請書記載例 (2)(3)の設備投資計画申請書と詳細別紙について、具体的な数字を加えたものが記載されている。 (了)

#No. 53(掲載号)
#石田 寿行
2014/01/27

《速報解説》 国税不服審判所「公表裁決事例(平成25年4月~6月)」~注目事例の紹介~

 《速報解説》 国税不服審判所「公表裁決事例(平成25年4月~6月)」 ~注目事例の紹介~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   国税不服審判所は、1月16日、「平成25年4月から6月分までの裁決事例の追加等」を公表した。 今回追加されたのは表のとおり、全16件の裁決であり、最近の公表裁決事例同様、国税不服審判所によって課税処分等が全部又は一部取り消された事例が11件を占め、棄却された事例は5件に止まっている。税目としては所得税が8件、相続税が2件、法人税、登録免許税が各1件、手続法から、国税徴収法3件、国税通則法1件となっている。 本稿では、今回公表された16件の裁決事例のうち、注目事例をいくつか紹介したい。 【公表裁決事例(平成25年4月~6月)の一覧】 ※本稿で取り上げた裁決   1 不納付加算税(正当な理由)・・・① 最初の事例は、国税通則法67条1項に規定する不納付加算税について、例外的に不納付加算税が課されない場合として同項ただし書に規定する「正当な理由」があるかどうかが争われた審判において、国税不服審判所沖縄事務所が、課税庁による不納付加算税賦課決定処分を取り消したものである。 裁決では、請求人が、賃借する不動産の賃貸人が非居住者となった日以後に支払った賃借料についての源泉徴収に係る所得税を法定納期限後に納付したことついて、不動産の賃貸借等において、賃借料の支払いの都度、居住者・非居住者の別を確認することを義務付けた明文の規定はないこと、請求人は、賃貸人が非居住者に該当することになったことを直ちに知り得る状況になかったことから、源泉所得税の納付が法定納期限後となった原因は、当該賃貸人からの連絡が遅れたためであると認め、請求人には、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があったというべきであり、源泉所得税を法定納期限までに納付しなかったことについて、正当な理由があると認められる場合」に該当するとするのが相当である、とした。 所得税の源泉徴収義務は、給料や不動産の使用料を支払う者に課された義務とはいえ、納税者に過大な負担をかけることを法は要請していないという判断に基づく裁決であり、不納付加算税の賦課決定処分に対する異議理由として、参考となるものであろう。   2 所得税の推計課税・・・⑨ 次の事例は、所得税法156条に規定する推計課税の方法をめぐって、東京国税不服審判所が、原処分庁が主張する推計課税の方法ではなく、請求人(納税者)が主張する方法に合理性があると判断し、処分の対象となった各年分の全部又は一部の取消しを命じたものである。 請求人は、ソフトウェア等の開発業務を請け負う個人事業者であるが、各年分の収支状況を明らかにする記帳をしておらず、提示した領収証以外の外注先及び支払金額等を明らかにしないが、進行年(平成23年)分については、預金口座に請負代金の振込みがあった都度、その振込金額の9割を超える金額を引き出して外注工賃の支払いに充てられていることは調査によって判明していた。 原処分庁は、請求人の進行年分を指標に、一般経費を推計し、これに実額(実際に提示された領収証に基づく金額)による外注工賃の額を加算した上で、請求人の本件各年分の事業所得の金額を算定することを主張した。 一方、不服審判所は、請求人の業務は、個人のみで行うことができないと認められ、預金口座に請負代金の振込みがあった都度、その振込金額の9割を超える金額を引き出して外注工賃の支払に充てられたことが進行年分の調査によって裏付けられていることなどから、進行年分以外の各年分においても、外注工賃を支払っていたと推認することができる、として、本件各年分の本件業務に係る事業所得の金額の算定に当たっては、進行年分の外注工賃を考慮した所得率(総収入金額に占める一般経費及び外注工賃等差引後の所得金額の割合)を用いるのが、請求人の真実の所得の近似値を算定するに最も合理的な推計方法であるというべきである、と判断した。 ここまで証憑書類を保存していない納税者もいかがなものかとは思うが、預金の引出し=外注工賃の支払いである、という事実を進行年分の調査で把握しておきながら、過年度にそれを類推適用しないという原処分庁の主張は、請求人の業務の実態を見ようとしないものであると批判されても仕方のないものであろう。 審判所が常識的に裁決をした事例であり、「真実の所得の近似値を算定する」ことが推計課税を定めた法の趣旨であり、懲罰的な課税をすることを法が求めているわけではないことをあらためて確認したい。   3 その他 青色事業専従者給与の適正給与相当額が争点となった事例(③)では、同時に、税理士である請求人が本件請求より前に課税当局との間の訴訟に関連して支出した弁護士費用が必要経費に該当するかどうかについても審判が下されており(棄却)、士業における必要経費を検討するうえでも、参考になるものと思料する。 また、国税徴収法の第二次納税義務に関して取消しを求めた請求人の主張を棄却した裁決が2件公表されており(⑮・⑯)、前者は滞納法人の破産手続が異時廃止となった場合という特殊な状況下において、後者は吸収合併による債務の承継に関して、それぞれ、第二次納税義務の成立を認めたものである。 ご承知のとおり、本来は全件公表すべき裁決であるが、実際には国税不服審判所によって公表事例が恣意的にあるいは作為をもって決められており、こうした裁決を2件同時に公表することは、国税の徴収に関する不服審判所の毅然とした姿勢を示したものと考えられるのではないだろうか。 (了)

#No. 53(掲載号)
#米澤 勝
2014/01/27

《速報解説》 個人事業者に対する債務免除益課税の見直し(個人事業者に係る事業再生税制の創設)~平成26年度税制改正大綱~

 《速報解説》 個人事業者に対する債務免除益課税の見直し (個人事業者に係る事業再生税制の創設) ~平成26年度税制改正大綱~   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   1  はじめに 平成25年12月24日に閣議決定された「平成26年度税制改正大綱」は、特に、いわゆるアベノミクスの第三の矢である「民間投資を喚起する成長戦略」の達成を税制面から支えるという関係にある点が特徴的であり、民間投資を喚起するための措置として、各種の投資促進税制の創設や所得拡大促進税制の拡充などが盛り込まれているところである。 こうした民間投資の喚起のための税制措置とは少し観点が異なるが、今回の税制改正大綱には、様々な事情から窮境に陥っている個人事業者に対し、事業再生や再チャレンジ等を促進することを通じて地域経済の活性化を図るために、個人事業者に対する債務免除益課税の見直し措置が盛り込まれている。 これは端的には「個人事業者に対する事業再生税制の創設」と呼べるものである。 そこで本稿では、この「個人事業者に対する債務免除益課税の見直し措置」について取り上げることとしたい。   2 現行制度における個人の債務免除益課税の概要 個人が負う債務について免除を受けたときは、原則として、その債務免除を受けた年分の各種所得の金額の計算上収入金額又は総収入金額に算入される(所法36①)。 ただし、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合における債務免除益については、各種所得の金額の計算上、収入金額又は総収入金額に算入しないこととされている(所基通36-17)。 このことは、一定の企業再生局面において債務免除益課税についての特例が定められている法人税務とは対照的である。   3 個人事業者に対する債務免除益課税見直しの必要性 2に記載したとおり、個人事業者に対する債務免除益は、所基通36-17の要件を満たさない限り課税されることとなる。特に、事業再生等のために一定の個人資産を手元に留保している場合には、「資力の喪失」が生じていないとして同通達の要件に合致しない可能性が高いと考えられる。 このような状況下では、たとえ債務免除を受けたとしても債務免除益に課税される結果、事業再生等に本来必要となる個人資産が納税資金として流出し、事業再生等を阻害するおそれがあり、個人事業者の事業再生等へのインセンティブが薄れてしまう等の弊害が考えられる。 このような背景を踏まえ、金融庁及び経済産業省より、平成26年度税制改正に関する要望事項として債務免除益課税の見直しが含められたものである。   4 改正の概要 (1) 合理的な再生計画に基づき債務免除益が発生した場合における資産の評価損の必要経費算入措置 個人事業者が「一定の要件を満たす私的整理」における合理的な再生計画に基づき債務免除を受ける場合において、その再生計画の手続に従い減価償却資産及び繰延資産等の評定を行っているときは、これらの資産の評価損の額に相当する金額は、その免除を受けた日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、それぞれの所得金額の範囲内において必要経費に算入する特例が創設されることとなった。 これにより、一定の資産の評価損と債務免除益を相殺することが可能となり、結果として税負担の軽減に繋がるものと考えられる。 法人税務においては従前より「一定の要件を満たす私的整理」を法的整理(民事再生)に準じて取り扱うこととし、整理手続の過程で行われる財産評定に伴う評価損について損金算入できることとされているが(法法33④、法令68の2①②)、この取扱いを個人事業者に対しても導入したものと考えられる。 ここで「一定の要件を満たす私的整理」の範囲が問題となる。 この点については、国税庁より法人税に関する質疑応答事例「企業再生税制の対象となる私的整理とそれ以外の私的整理における税務上の取扱いの違い」において、合理的な再建計画に該当するものとして以下を列挙しており、これが参考になると考えられるが、個人事業者に対する適用可否については現時点では明らかではなく、今後の政省令等の整備が待たれる。 (2) 法的整理による債務免除益の非課税措置 個人が、破産法の規定による免責許可の決定や再生計画認可の決定等、資力を喪失して債務の弁済が著しく困難であると認められる事由により債務免除を受ける場合に生じる債務免除益については、各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入しないこととされた。 この取扱いは、現行の所基通36-17において定められている内容を所得税法において明確化するものである。 (了)

#No. 53(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2014/01/27

Profession Journal No.53 公開のお知らせ

2014年1月23日(木)AM10:30、Profession Journal  No.53 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。 Web情報誌 Profession Journalは、プロフェッションネットワークのプレミアム会員専用の閲覧サービスです。 Profession Journalについての詳細はこちら。 バックナンバー一覧はこちら。

#Profession Journal 編集部
2014/01/23

日本の企業税制 【第3回】「企業の公的負担」

日本の企業税制 【第3回】 「企業の公的負担」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 阿部 泰久   1 はじめに 法人実効税率の引下げが重要な課題となっている。 確かに法人税負担を比較する指標として、実効税率は明快である。 しかし、実効税率は法人の課税所得に課せられる法人所得課税の「表面税率」でしかない。 政策税制による減免だけでなく、企業会計上の当期利益(これは、国によって大きな違いはない)から課税所得を導くまでの「課税ベース」の計算方法が異なれば、実効税率だけを比べても意味はない。 〈法人実効税率の国際比較〉 (財務省資料より)   また、法人の税負担は所得に対する課税だけではない。 固定資産税・都市計画税等の資産課税や、事業所税、不動産取得税、登録免許税など、企業活動に対して課される税金は多種多様である。 さらに「公的負担」全体を見るならば、社会保障負担(日本では社会保険料の事業主負担)は税金以上に重要である。 企業の負担を考える上で、これら多様な要素をすべて考慮に入れながら、望ましい姿を考えていくことが必要であることは言うまでもない。   2 税率か課税ベースか 法人税減税が議論される際には、必ず「課税ベースの拡大」と「税率の引下げ」がセットで論じられる。 そして、課税ベース拡大の最初に位置付けられるのが、政策税制の縮減である。 ただし正確には、政策税制のうち課税ベースに関わるのは、特別償却・割増償却等の減価償却制度の特例や、準備金等の期間損益の調整、益金不算入、所得控除等であり、税額控除制度は課税ベースとは関係のない、絶対的な減税である。 政策税制は、税率引下げと同様に法人税負担を軽減する確かな方法であり、業態などの事情によっては、税率以上に重要なこともある。現に、平成15年度改正で法人税減税が議論になった際には、税率引下げよりも政策税制の拡充が優先課題とされ、IT投資減税や人材投資減税が創設された経緯がある。 むしろ、日本経済の持続的成長を考えるのであれば、研究開発税制や各種投資減税、海外からの受取配当や使用料に対して優遇措置を講ずることで競争力を強化すべき方が望ましいケースもある。 仮に、これらを廃止して得た財源で税率を引き下げるならば、国際競争に直面する企業の税負担を増加させ、一方で、国際競争とは無縁の企業を優遇することにしかならない。 さらに、課税ベースについては、租税特別措置法で規定される政策税制以上に、法人税本法の減価償却制度や欠損金の扱いが重要であることは、平成23年度税制改正の経緯をみれば明らかであろう。 しかし、これらについては、23年度改正で可能な限りの見直しをしており、これ以上に深掘りすることには無理がある。 例えば、減価償却制度の定率償却割合の縮小や法定耐用年数の延長、欠損金の制限の拡大などは、多くの企業にとっては税率引下げによる減税を大きく上回る増税となりかねない。 経団連としては、もし課税ベースの拡大で得られる財源の範囲内のみで税率引下げを行う「税収中立」ならば、まったく無意味であると考える。 また、法人事業税の外形標準課税や法人住民税の均等割等、所得に対する課税以外の分野の拡大を財源とするならば、みかけの実効税率は下がっても、税負担自体の軽減とはならず、多くの欠損法人を窮地に追い込むことになりかねない。   3 企業の「公的負担」とは何か 当然のことながら、企業の税負担は法人税(法人所得課税減税)のみではない。 本来であれば、事業活動に関わるすべての税負担を考えることが必要である。 特に、わが国では固定資産税・都市計画税等の資産に対する課税のウエイトが大きく、先進諸外国ではまれな償却資産に対する課税さえなされている。 平成26年度与党税制改正大綱では、法人税減税の財源として法人税の課税ベース拡大と共に「他税目による増収」が明示されているが、法人税の減税分を、企業活動に関わる他の税目で補うのであれば、企業全体の税負担を軽減することにはならない。 さらに企業は、税金以外にも様々な「公的負担」を負っている。 その中で最も重要であるのは、社会保険料の事業主負担である。 かつて、財務省は法人所得課税と社会保険料の合計額を企業の「公的負担」として国際比較を行い、「日本は、法人実効税率は諸外国に比して高いが、公的負担全体としては、先進国の中で決して高くない」と主張していた。 確かに日本の「公的負担」は先進国の中ではアメリカ、イギリスよりは高く、ドイツ並みであり、フランスや北欧諸国に比べれば低いが、そもそも社会保障制度の水準の違いを無視して、負担の軽重を論じること自体が無意味である。 また、既に日本企業の社会保険料負担は法人税額を遥かに超え、将来に向けてさらに増大していく。早急に制度改正を行わないならば、仮に法人実効税率が10%ポイント引き下げられたとしても、その分は数年で、社会保険料負担の増大で覆ってしまうことになる。 〈企業の公的負担の国際比較〉 (経済産業省資料) 〇社会保険料(決算ベース)を含めた公的負担を企業利益に対するウエイトで比較 また、PwCが公表している「総合的財政貢献調査・平成22年度分」の結果によれば、回答企業41社の公的負担のうち、社会保険料事業主負担は39.4%であり、法人所得課税27.3%を大きく上回っている。また、固定資産税・都市計画税は17.3%に達している。   4 何が優先課題なのか―中長期展望を 平成26年度与党税制改正大綱は、「わが国経済の競争力の向上のために様々な対応を行う中で、法人実効税率を引き下げる環境を作り上げることも重要な課題である。」として、法人実効税率の引下げを具体的な課題として明示した。 また安倍政権は、かねてより成長戦略の実現のために法人税率引下げを重要視しており、経団連としても、これを平成27年度税制改正における最大のテーマとして臨んでいく。 しかし、税率10%ポイント分の引下げには約4兆円の財源を必要とし、税率引下げに向けた検討とは、すなわち減税財源の検討に他ならない。 繰り返すが、法人税の課税ベース拡大や、企業活動に関わる他の税目の増税でその大部分を賄うのでは、企業の税負担の軽減とはならない。 法人税減税が、経済を活性化させ、企業収益を拡大させることで税収が増大する「自然増収」は期待できるとしても、あらかじめ減税財源としてカウウントすることはできない。 であれば、段階的に税率を下げていくこと法定化した上で、法人税収が前期を下回る場合には、それ以上の引下げを停止する等の工夫も必要となる。 当然、法人税以外の税負担、とりわけ平成27年度改正が3年ごとの見直しの機会となる固定資産税等の軽減も、法人実効税率と同じくらいに重要である。 さらには、社会保険料負担を合わせた公的負担全体の適正な水準をどのように考えるのか。 何が真っ先に解決すべき優先課題であり、何がやや中長期を要するのかを見極めながら、現実的な対応を図り、企業の全体としての公的負担を引き下げていくことが最大の課題である。 (了)  

#No. 53(掲載号)
#阿部 泰久
2014/01/23
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