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『日米租税条約 改定議定書』改正のポイントと実務への影響 【第3回】「徴収共助の拡大」

『日米租税条約 改定議定書』 改正のポイントと実務への影響 【第3回】 「徴収共助の拡大」   税理士法人トーマツ パートナー 税理士 小林 正彦   1 はじめに “徴収共助”とは、異なる国家間における租税債権の徴収に関する相互協力の枠組みをいう。 例えば、外国企業が我が国から撤退する際に税金の滞納をしたままであった場合、我が国の滞納税金の徴収を当該外国企業の所在地を管轄する外国政府に要請し、外国政府が税金を徴収して送金してくれるといったことを可能にする。 相互協力が基本なので、逆に我が国が外国から要請された場合は、国税庁が外国の税金を徴収し、外国政府に送金しなければならない。 現在の日米租税条約にも徴収共助の規定はあるが、対象が租税条約の規定の濫用により発生する租税債権の徴収の場合に限定されているため、実際に行われたという例を聞かない。 改正後は、対象が滞納租税債権一般に拡大されることになるため、実例も出てくるだろう。 例えば、米国法人で日本に支店等を有しない企業に対し国税当局がPEありと認定して法人税を課しても、自主的に納付されない限り、日本国内に資産がないので差押えなどの滞納処分手続を行うことができず、課税しても実際の税収に結び付かないという問題があった。 今回の改正により、こうしたケースで日米間での協力が進むものとみられる。 ただし、懸念される事項もある。 といった問題がある。 今回の改正において、こうした問題がどのように扱われることになったかが注目される。   2 徴収共助規定の内容 (1) 対象となる租税の税目 日本は、所得税、法人税、特別復興所得税、特別復興法人税、消費税、相続税、贈与税が対象となる。 米国は、連邦所得税、連邦遺産税及び連邦贈与税、外国保険業者の発行した保険証券に対する連邦消費税、民間財団に関する連邦消費税、被用者及び自衛業者に関する連邦税が対象となる(議定書13、新条約27④)。 (2) 対象となる租税債権 支援の対象となるのは、次に掲げる租税債権の徴収のみである(新条約27②)。 ただし、条約の恩典を受ける権利のない者が恩典を受けないようにするための租税債権の徴収も支援の対象になる(新条約27③) なお、要請の対象となる租税債権は、要請国の法令の下において「最終的に決定されたものである」ことについての権限のある当局の証明を付する必要がある。 「最終的に決定されたものである」とは、自国の法令に基づき徴収する権利を有し、かつ、納税者が当該租税債権に関する争訟のために行使できる行政上及び司法上のすべての権利が消滅し、又は尽くされていることをいう(新条約27⑤)。 (3) 自国の租税債権との関係 要請が受理された租税債権は、受理されたときに、被要請国の法令に基づき確定した租税債権として取り扱われ、自国の租税債権と同様に徴収される(新条約27⑥)。 (4) 被要請国がとった時効中断等の措置の要請国における効果 支援の要請に従い、被要請国がとった徴収のための措置であって、要請国の法令によれば、要請国が当該措置をとった場合に要請国において租税債権の徴収の時効を停止し、又は中断する効果を有することとなるものは、当該租税債権に関して、要請国の法令の下においても同様の効果を有する。 被要請国は、当該措置について要請国に通報する(新条約27⑦)。 (5) 被要請国の法令による時効の援用の否定 被要請国による支援が行われている租税債権は、被要請国において、被要請国の法令の下で租税債権であるとの理由により適用される時効の対象とされず、かつ、その理由により適用される優先権を与えられない(新条約27⑧)。 (6) 被要請国における行政・司法上の審査を受ける権利の否定 被要請国による支援が行われている租税債権が、自国の租税債権と同様に徴収されるからといって、被要請国において行政上又は司法上の審査を受ける権利を生じさせるものと解してはならない(新条約27⑨)。 (7) 要請国において租税債権を徴収する権利を喪失し、又は徴収を終了する場合 要請国において支援を要請した租税債権が消滅した場合には、要請国の権限のある当局は、徴収における支援の要請を速やかに撤回し、被要請国は、当該租税債権の徴収に係るすべての措置を終了する(新条約27⑩)。 (8) 要請国において自国の法令に従い租税債権の徴収を停止する場合 要請国が自国の法令に従い要請の対象である租税債権の徴収を停止する場合には、要請国は被要請国に速やかに通報し、被要請国の選択により要請を停止し、又は撤回する(新条約27⑪)。 (9) 徴収した額の送金 この条の規定に基づき被要請国が徴収した額は、要請国の権限のある当局に送金される(新条約27⑫)。 (10) 徴収費用の負担 両締約国の権限のある当局が別段の合意をする場合を除くほか、徴収における支援を行うに当たり生じた通常の費用は被要請国が負担し、特別の費用は要請国が負担する(新条約27⑬)。 (11) 被要請国の義務(新条約27⑭) 被要請国に次のことを行う義務を課すものと解してはならない。 (a) 被要請国又は要請国の法令及び行政上の慣行に抵触する行政上の措置をとること (b) 公の秩序に反することとなる措置をとること   (12) 要請国の措置が不十分である場合の被要請国の義務の免除(新条約27⑮) 次のいずれかに該当するときには、被要請国は要請を受理する義務を課されない。 (a) 要請国が支援の要請の対象となる租税債権を徴収するために自国の法令又は行政上の慣行の下においてとることができるすべての適用な措置をとっていないとき (b) 要請国が得る利益に比して被要請国の行政上の負担が著しく不均衡であるとき   (13) 実施方法に関する合意(新条約27⑯) 実際に支援が行われる前に、両締約国の権限のある当局は、以下を含む実施方法について合意する。 ・各締約国に対する支援の程度の均衡を確保するための方法 ・一方の締約国が特定の年において行うことができる支援の要請の数の上限 ・支援を要請することができる租税債権の最低金額 ・この条の規定に基づいて徴収された額の送金に関する手続規則   (14) 支援の程度に不均衡が生じたときの支援の停止 一方の締約国は、他方の締約国の措置により両国の支援の程度において不均衡が生じたと認める場合には、支援を停止することができる。 この場合には、両締約国は、新条約27条16項の規定に整合的となる支援の程度の均衡を回復するため、協議を行うとされている(新議定書14⑮(b))。 (15)適用対象 徴収共助の規定は議定書が効力を生ずる日から適用される(議定書15④)。 具体的には、両国における承認手続が終了し、交換公文が交わされた日から適用されることになる。   3 実務への影響 実際に問題になりそうなケースとして、米国法人が日本に恒久的施設を持たずに投資活動を行っているようなケースが考えられる。 国税当局が米国法人の日本における活動がPEに該当するとして課税を行ったのに対し、米国法人は納得せず税金を納付しようとしない。しかし、日本国内に資産がないために滞納処分もできないといったケースである。 また、個人について問題になりそうなケースとして、日本の居住者が国税の調査で多額の追徴課税を受けたが、税金を納付せずに行方不明になってしまったが、国税は、本人が保有する資産が米国の銀行に預けられていることは把握している、といったケースが考えられる。 これまでは、上記のようなケースで日本の国税が税金を徴収する手段はなかったが、今後はIRSに徴収支援を要請することにより徴収できる道が開かれた。 今回の改正は日米間における徴収協力に限られるが、今後こうした国際間の税務執行協力のネットワークはますます拡大していくことが予想される。 【参考】財務省ホームページ ・「アメリカ合衆国との租税条約を改正する議定書が署名されました」 ・「アメリカ合衆国との租税条約を改正する議定書のポイント」 (連載了)

#No. 12(掲載号)
#小林 正彦
2013/03/28

〔平成25年4月1日以後開始事業年度から適用〕 過大支払利子税制─企業戦略への影響と対策─ 【第4回】「控除対象受取利子等合計額」 及び「関連者純支払利子等の額」

〔平成25年4月1日以後開始事業年度から適用〕 過大支払利子税制 ─企業戦略への影響と対策─ 【第4回】 「控除対象受取利子等合計額」 及び「関連者純支払利子等の額」   アースタックス税理士法人 税理士 中村 武   前回は、本制度による損金不算入額計算の第一段階である「関連者支払利子等の額」に関して、確認すべきポイントを解説した。 今回は第二段階として、その「関連者支払利子等の額」の合計額から控除されることとなる「控除対象受取利子等合計額」及び控除した残額となる「関連者純支払利子等の額」について解説を行う。   1 控除対象受取利子等合計額 「関連者支払利子等の額」の合計額から控除されることとなる「控除対象受取利子等合計額」とは、法人の事業年度の受取利子等の額の合計額を、その事業年度の関連者支払利子等の額の合計額のその事業年度の支払利子等の額の合計額に対する割合で按分した金額として、次の算式により計算した金額をいう(措法66の5の2③、措令39の13の2⑯)。 〈控除対象受取利子合計額〉       〈ポイント1〉 本制度における受取利子等の範囲 本制度の適用対象となる支払利子の範囲には、通常の負債の利子だけでなく負債の利子に準ずるもの及びその他一定の費用又は損失が含まれていることから、控除対象受取利子等合計額の計算対象となる受取利子等についても、その支払いを受ける利子だけでなく、これに準ずるものが含まれる(下記参照)ことに留意が必要である。 また、同様に、特定債権現先取引などに係る支払利子等が本制度の適用対象となる支払利子等の額から除外されていることから、除外対象特定債権現先取引等に係る対応債権現先取引等に係る受取利子等の額についても受取利子等の額の範囲から除外されている。   〈ポイント2〉 関連者等から受ける受取利子等が対象 本制度においては、損金不算入の対象となる支払利子等が関連者等に対する支払利子等の額に限定されているため、純支払利子等の計算において控除対象となる受取利子等についても、関連者等から受ける受取利子に係る部分のみが控除対象となっている。 実務上、支払利子等と受取利子等の紐付き関係を特定することが困難であると考えられるため、①受取利子等の額の合計額を、②その事業年度の関連者支払利子等の額の合計額の、③その事業年度の支払利子等の合計額に対する割合で比例按分することとされている。 〔イメージ図〕   〈ポイント3〉 国内関連者等から受ける受取利子についての特例 本制度による損金不算入額の計算上、受取利子等の額が支払利子等の額から控除されることを利用して、国内関連者等に貸付けを行い利子を受け取ることにより、関連者純支払利子等の額を少なくし本制度の適用を逃れることが可能となる(しかも、その場合には、貸付けを受けた国内関連者等の課税所得の減少をも図ることが可能となる)。 したがって、国内関連者等から受ける受取利子等については、控除対象受取利子等合計額の計算の基礎となる受取利子等の額の合計額への算入を制限する措置が設けられている。 具体的には、国内関連者等ごとに計算した次の①と②のいずれか少ない金額が、法人がその国内関連者等から受ける受取利子等の額となる(措令39の13の2⑯)。 〈具体例〉 上記の場合、適用対象法人が国内関連者等Aから受ける受取利子①120のうち、国内関連者等Aが非国内関連者から受ける受取利子100までの金額(受取利子①120と、受取利子②100とのいずれか低い金額)が、その国内関連者等から受ける受取利子等の額となる。 なお、「国内関連者等」の定義は以下の通りとなっている(措令39の13の2⑯)。 ポイントとしては、所得税法164条1項1号に掲げる非居住者及び法人税法141条1号に該当する外国法人(いわゆる1号PE)が、国内関連者等に加えられている点である。   2 関連者純支払利子等の額 第3回において解説を行った「関連者支払利子等の額」の合計額から、上記1の「控除対象受取利子等合計額」を控除した残額が「関連者純支払利子等の額」となり、その後の損金不算入計算の基礎となる。   *  *  * 以上の通り、前回(第3回)と今回(第4回)により、損金不算入計算の基礎となる「関連者支払利子等の額」、「控除対象受取利子等合計額」及び「関連者純支払利子等の額」の計算までの段階について解説を行った。 次回(第5回)においては、損金不算入額計算の最終段階として「調整所得金額」、実際の「損金不算入額」及び「適用除外」の規定について解説を行うものとする。 (了)

#No. 12(掲載号)
#中村 武
2013/03/28

平成26年1月から施行される「国外財産調書制度」の実務と留意点【第8回】

平成26年1月から施行される 「国外財産調書制度」の実務と留意点 【第8回】   税理士法人トーマツ パートナー 税理士 小林 正彦   (第2章 制度の詳細な内容) 2-7 不提出・虚偽記載・質問検査に対する不答弁等に対する罰則 次の行為をした者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処するとされている。 ただし、②については情状により刑を免除することができることとされている。   2-8 国外財産調書の作成上の留意点 (1) 納税義務がなくても提出する必要がある 所得税の申告や相続・贈与税の申告義務がなくても、国外財産を5,000万円以上保有していれば提出義務がある。 (2) 税務調査を意識して作成する必要がある 国外財産調書の内容は、国税職員による質問検査権の行使の対象となる。 通常、所得税又は相続税・贈与税の調査が開始された後において、調査官から調書の内容の説明や証拠書類の提示・提出を求められることが多いと考えられるが、調書の内容自体も質問検査の対象となる。 国外財産調書の内容に不審な点がある場合の税務署の対応としては、文書による「お尋ね」によって疑問点をチェックする方法と、いきなり所得税や相続税の調査を開始する方法があると思われる。 例えば、前年の国外財産調書に掲載されていた外国の土地が今年は記載されていないけれども、譲渡所得の申告もなければ相続や贈与の申告もないという場合、その土地がリストから消えた理由について、書面による「お尋ね」を出して申告義務がないかどうか確認することもあるだろう。 金額が大きい場合や、国税当局が別の情報源から入手した情報と突き合わせると、多額の申告漏れが想定されるような場合には、ただちに実地の調査に着手することもあるだろう。 文書の「お尋ね」の法的意味だが、「お尋ね」が質問検査権の行使による「調査」である場合には、その旨を明らかにする文言が「お尋ね」に記載されているはずである。 もし、「質問検査権に基づく調査です」という文言が記載されている場合、不答弁や虚偽答弁は罰則の対象となる。 「お尋ね」の回答を税務署で検討した結果、さらに調査が必要と判断されると、実地の調査に移行することになる。 (3) 初回提出分でも過去年分の調査の資料となる 国外財産調書としては平成26年3月が初めての提出であっても、所得税や相続税・贈与税の調査の資料として用いられた場合には、実質的に過去5年間遡及(隠ぺい・仮装がある場合には7年間遡及)して内容が検討される可能性があるため、注意が必要である。 例えば、平成26年3月の国外財産調書に記載された個々の財産の形成過程が、税務調査の過程で調査されることになる。 その点を考慮して、初回の提出時においては、平成25年12月末現在の保有資産をリストアップすることと同時に、過去5年分の財産の移動状況もチェックして、過去の申告や海外送金の実績と照らし合わせた場合に整合的な説明が可能か、申告漏れがないか、といった観点から確認しておくことが望ましいといえる。 例えば、外国不動産を有していて、国外財産調書に不動産が夫婦の共有であるとの記載があった場合に、妻に所得がないと、税務署は、「贈与」ではないかという仮説を立て、それを確認するために、購入資金の出所等についての「お尋ね」の文書を送るかもしれない。 それに対して、「妻に資金を貸して共有にした」と回答しても、金銭消費貸借契約がきちんと作成されていない場合には「贈与したもの」と認定される可能性がある。 口頭の説明だけでは調査官の主張を崩せないことも多々あるため、万が一の対応として、不服申立てや訴訟に移行することも視野において、証拠書類を作成・保管しておくことが望ましいといえる。 また、外国の所有権に関する法制度は我が国とは違うことも多く、その点の理解の度合いが低いと、調査の際にトラブルの原因になる可能性があるため、法制度についてはしっかり押さえた上で、国外財産調書を作成する必要がある。 (4) 国内財産の移動状況も調査の対象になる 調査の際には、国外に財産を保有するに至った経緯や資金の出所が問われるため、国外財産の原資が国内財産である場合には、国内財産の移動についても説明する必要が出てくるだろう。 したがって、国内財産の移動についても、国外財産との関連がある場合には整理しておく必要がある。 (5) 税務当局は独自の情報を持っている可能性がある 国外財産調書を作成するにあたって、税務当局サイドでも独自に情報を入手するルートを持っていること、さらに、どのようなル-トを持っているかを認識しておくことは有意義である。 国外への送金の場合、1回に100万円以上送金すると、国外送金調書が金融機関から送金者の納税地の所轄税務署に送付される。 また、外国法人から利子や配当が支払われた場合、その国と日本との間に租税条約が締結されている場合には、支払いに関する情報が寄せられることがある。 税務署はそのような情報をすべて“KSKシステム”というオンライン・データベースに入力しており、個々の納税者やその親族、関連会社のデータが一発で入手できる。そうした情報と説明の内容を照合し、整合的な説明であるかどうかが調査される。 つまり、国税当局が調査に来る場合は、何らかの国外財産に関する資料情報に基づいて調査対象に選定されている可能性がある。 国税当局にとって海外の財産に関する情報を入手する範囲は限定的ではあるが、国税当局が情報を入手しているといないとにかかわらず、取引を適切に記録・管理し、正しい税務申告を行い、調査があった場合には証拠をもとにクリアに説明することで、申告是認通知を獲得するというのがスマートな対応といえる。 (6) 財産の移動に関する税務処理については税務専門家に相談 財産の移動に係る税務には意外な落とし穴があるので、本人も気づかないうちに、多額の申告漏れをしていたということもあり得る。 そうした結果を避けるためには、財産の移動がある場合には、税務上の問題がないかどうか、税務の専門家にチェックしてもらうことが望ましい。 (7) 税理士にとっての留意点 税理士が個人のクライアントから所得税申告又は相続・贈与税申告等に関する相談を受けた場合には、国外財産の保有状況を質問し、総額が5,000万円を超える場合には国外財産調書の提出の必要があることをアドバイスし、必要に応じて、作成方法についてアドバイスをすることが、専門家としての職責を果たすことであると考える。 (連載了)

#No. 12(掲載号)
#小林 正彦
2013/03/28

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載12〕 配当優先の限界

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載12〕 配当優先の限界   税理士 掛川 雅仁   税務上、配当優先株式の優先配当は、どの程度まで認められるのか。また、認められる金額を超えた部分の課税関係は、どのようになるのか。本稿では、これを検討する。   Ⅰ 会社法上の規制 1 財源規制 まず、会社法上の配当上限には、分配可能額の範囲内であることという財源規制がある(会461)。 この財源規制は、株主と債権者との間の利害調整事項であり、本稿の検討における当然の前提である。 2 配当に関する株主平等の原則 種類株式である配当優先株式を発行している場合には、財源規制に加えて、配当優先株主と普通株主(配当劣後株主)との種類株主間での利害調整が必要になってくる。 この点に関して、会社法は、配当決議は株主の有する株式の数に応じて配当財産を割り当てることを内容とするものでなければならないと規定し、まず、株主平等の原則を示している(会454③)。 3 配当種類株式がある場合の配当に関する株主平等の原則 次に、会社法は、配当財産の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行う定めがある場合には、各種類の株式の数に応じて配当財産を割り当てることを内容とするものでなければならないと規定して、配当に関する種類株式がある場合の配当に関する株主平等の原則は、その種類株式毎の株主平等の原則であることを示している(会454③かっこ書)。 このことは、配当財産の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行う定めがある場合は、既にその定めを定款に置いた時点で配当種類株主間の調整は完了しているとの考え方によるものであろう。 4 会社法における配当種類株主間の調整 会社法においては この配当種類株主間の調整は、次のように行われる。 会社法は、まず、定款に配当財産の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行う定めを置く場合には、種類株式の内容と発行枠(発行可能種類株式総数)を決定する定款変更に関する株主総会の特別決議を要すると定めている(会108②③、466、309②十一)。 さらに、株式の種類の追加や株式の内容の変更により、種類株式である配当優先株式を発行する場合において、ある種類株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときには、その種類株主の権利を保護するために、通常の株主総会決議だけでなく、その種類株主総会の決議が必要であると定めている(会322①)。 つまり、配当種類株主間の調整は、こうした株主総会の特別決議や種類株主総会の決議によって担保されているとの考え方である。 なお、既発行株式の一部の内容を変更して、普通株式から配当優先株式に変更する場合において、株主全員の同意が得られたときには、組合法理により、上記のような種類株主総会の決議は不要である。 これも、株主全員の同意が得られているのであるから、配当種類株主間の調整は完了しているとの考え方であろう。 5 配当に関する属人的株式の場合 ところで、公開会社でない株式会社(株式のすべてが譲渡制限株式である会社(会2五))では、定款に規定することにより、特定の株主の保有する株式の次の権利の事項について、他の株主と異なる取扱いとすることも可能である。 この取扱いは、旧有限会社法においても認められていたものであるが、種類株式のように株式自体の属性を変更するものではなく、特定の株主の保有する株式を種類株式のように取り扱うもので、普通株式しか発行していない場合でも、①の剰余金の配当を受ける権利について、他の株主と異なる取扱いをすることにすれば、その株式を配当優先株式と同様に取り扱うことが可能である。 なお、属人的株式についての規定を定款に追加する場合には、定款変更が必要で、この定款変更は、旧有限会社法において認められていたものを会社法にも導入したことから、特別決議ではなく、特殊決議(総株主の半数以上、かつ、総株主の議決権の4分の3以上の多数決)によらなければならない。 この場合でも、配当種類株主間の調整は、こうした株主総会の特殊決議によって担保されているとの考え方である。   Ⅱ 税法の考え方 以上のように、会社法においては、利害の対立する種類株主間の調整は、株主総会における特別決議や特殊決議、種類株主総会決議で担保していると考えている。 これに対して、税法においては、利害の対立する種類株主間の調整よりも、むしろ、株主間の利害が一致することの多い非上場同族会社においては、株主等との間においても経済的な衡平が維持されているかどうかに関心がある。 1 法人税法・所得税法における考え方 例えば、株式割当等の場面ではあるが、法基通2-3-8や所基通23~35共-8においては、いわゆる株式の有利発行となっていないか否かの判定は、会社法322条《ある種類の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合の種類株主総会》の種類株主総会の決議があったか否かのみをもって判定するのではなく、その発行法人の各種類の株式の内容や割当ての状況などを総合的に勘案して、その株主等とその内容の異なる株式を有する株主等との間においても経済的な衡平が維持されているかどうかをもって判断するとしている。 配当優先株式の優先配当に関しても、ここで示された考え方と同様に、各種類の株式の内容や割当ての状況などを総合的に勘案して、その株主等とその内容の異なる株式を有する株主等との間においても経済的な衡平が維持されているか否かを判定することになろう。 2 相続税法上の考え方 また、これも募集株式引受けの場面ではあるが、相基通9-4においては、同族会社が新株の発行をする場合において、当該新株に係る引受権(募集株式引受権)の全部又は一部が会社法206条各号《募集株式の引受け》に掲げる者(その同族会社の株主の親族等に限る)に与えられ、その募集株式引受権に基づき新株を取得したときは、原則として、その株主の親族等が、その募集株式引受権をその株主から贈与によって取得したものとして取り扱われる。 ただし、その募集株式引受権が給与所得又は退職所得として所得税の課税対象となる場合を除くものとされている。 配当優先株式の優先配当に関しても、ここで示された考え方同様に、同族会社の株主が優先配当収受権をその親族等に取得させたと認定された場合には、その取得させた優先配当額に関しては、その株主の親族等が、その株主から贈与によって取得したものとして取り扱われることがあり得ると考えられる。 3 具体的な課税関係 次に、具体的な課税関係がどうなるかを検討する。 例えば、株主X(親)と株主Y(子)の2人しか株主がいない非上場同族会社A社において、発行済株式総数4株で、それぞれの持株数が株主X(親)普通株式3株と株主Y(子)配当優先株式1株だったとする。 また、A社の資本金等の額が2,000、利益積立金額が8,000、資産には含み損益はないものとする。 A社は、株主X(親)に2,000、株主Y(子)に6,000の配当をした。 なお、残余財産請求権や議決権については、株主X(親)と株主Y(子)の持株数に応じた割合であるとする。 この場合の株主の課税関係は、どうなるか。 所得税法でも、法人税法でも、法人が株主等に対しその株主等である地位に基づいて供与した経済的な利益が含まれる(所基通24-1、法基通1-5-4)。 したがって、株主X(親)と株主Y(子)とがそれぞれ受け取った2,000と6,000は配当所得として課税されるのが原則である。 しかし、配当受取後の両者の株式に係る持分価値は、次のように4,000だけ移転している。 この課税関係も考慮しなければ、適正な課税を維持できない。 そこで、持分価値が移転している4,000については、株主Y(子)に対して相続税法9条のみなし贈与として課税し、所得税と贈与税の二重課税とならないよう、その分、株主Y(子)の所得税法上の配当所得を4,000だけ減じて、2,000として課税することが考えられる。 ところで、株主Y(子)が所有する優先株式をその100%出資法人であるB社が所有するという間接保有であったなら、課税関係は、どうなるであろうか。 B社が受け取った6,000の全部が配当として課税されるとの考え方もあるだろうが、上記個人間の課税関係との平仄を考えると、やはり、持分価値が移転している4,000については、次のように株主X(親)からの受贈益と認定されることとなると考えられる。 なお、この受贈益4,000が生じることによって、株主Y(子)が所有するB社株式の価値が増加する。 これは、相基通9-2《株式又は出資の価額が増加した場合》の「(1)会社に対し無償で財産の提供があった場合」に該当し、その財産を提供した親から子へのみなし贈与として、贈与税が課税されることとなると考えられる。 4 税法上の配当優先の許容範囲 では、税務上、配当優先株式の優先配当部分は、すべてみなし贈与(受贈益)として課税されるのだろうか。 配当優先株式は、無議決権と結び付けて、ベンチャー企業や上場企業のファイナンス手法として利用されてきた歴史がある。 したがって、優先配当額が、必要事業資金の調達コストとして、合理的と認められる場合は、みなし贈与(受贈益)課税を行うことは困難であろう。 なお、無議決権株式に関しては、議決権の有無を考慮せずに評価することを原則とするが、一方では、議決権の有無によって株式の価値に差が生じるのではないかという考え方もあることを考慮し、同族株主が無議決権株式を相続又は遺贈により取得した場合には、納税者の選択により、原則的評価方式により評価した価額から、その価額に5%を乗じて計算した金額を控除した金額により評価するとともに、その控除した金額を当該相続又は遺贈により同族株主が取得した当該会社の議決権のある株式の価額に加算した金額で評価することができる、という取扱いがある(国税庁「種類株式の評価について(情報)」(平成19年3月9日付))。 この考え方を敷衍すれば、配当優先株式について、無議決権として株式評価額の5%ダウンを想定するが、その分、優先配当額を増額させれば、株式評価額が増加することになる。 例えば、発行会社が財産評価基本通達上の大会社であれば、類似業種比準方式により評価する場合には、財産評価基本通達183《評価会社の1株当たりの配当金額等の計算》の(1)に定める「1株当たりの配当金額」については、株式の種類ごとに計算して評価することから、普通株式の2割5分増の配当優先額であれば、それによる株式評価額の増加と無議決権として株式評価額の5%ダウンとが相殺されて、配当優先株主と普通配当株主との間の価値移転は生じないと考えることもできるであろう なお、従業員持株会に配当優先株式を持たせる場合があるが、同族株主ではない従業員にとっての税法上の時価は、特例的な評価額である配当還元価額とされているので、上記3で検討した持分価値の移転は認識しないでよいと考えられる。 【参考文献】 ・国税庁「種類株式の評価について(情報)」(平成19年3月9日付) ・増井良啓「有限会社の利益配当と所得税」『税務事例研究』Vol.78 (了)

#No. 12(掲載号)
#掛川 雅仁
2013/03/28

「平成24年版 中小企業の会計に関する指針」の主な改正点と留意点 【第2回】「各論における改正事項『有価証券・棚卸資産』」

「平成24年版 中小企業の会計に関する指針」の 主な改正点と留意点 【第2回】 「各論における改正事項 『有価証券・棚卸資産』」   税理士 永橋 利志   前回は「平成24年版 中小企業の会計に関する指針」(以下「中小会計指針」)における改正の経緯について主に述べたが、今回より各論における改正の留意点について確認する。   1 有価証券に係る留意点 (1) 有価証券の範囲 有価証券は、保有目的の観点から、売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式・関連会社株式及びその他有価証券に分類され、それぞれの区分に応じた評価を行うこととしている。 中小会計指針では、それぞれの区分ごとに貸借対照表に計上すべき金額(以下「貸借対照表価額」という)と評価差額が計算された場合の取扱いを規定している。 まず、有価証券を区分する場合に、注意すべきは、売買目的有価証券の取扱いであり、その具体的内容について確認する。 (2) 売買目的有価証券の留意点 売買目的有価証券とは、時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券であり、期末に売買目的有価証券を保有している場合には、時価をもって貸借対照表価額とする。その結果、評価差額がある場合には、当期の損益として営業外損益に計上する。 ここで、注意すべきは、単に上場株式等を短期間所有しているのみでは、売買目的有価証券に該当せず、頻繁に売買取引を行い、短期間の価格差によるより大きな利益を獲得することを目的としたものを売買目的有価証券としている点である。 具体的には、銀行や証券会社等のトレーディング目的の有価証券がこれに該当すると考えられている。 また、法人税法においても、売買目的有価証券は、①トレーディング目的の専門部署を設置している場合に、その目的のために取得した有価証券で、②短期売買目的で取得たものである旨を帳簿書類に記載したもので、③金銭の信託のうち信託財産として短期売買目的の有価所見を取得する旨を他の金銭の信託と区分して帳簿書類に記載したものをいうとしており、中小企業が一般に所有する有価証券を考えた場合、子会社株式や関連会社株式に該当しないのであれば、その他有価証券に該当すると考えられる。 (3) その他有価証券の留意点 その他有価証券は、売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券をいい、様々な所有目的の有価証券が混在することとなる。 具体的には、長期的な価格の変動を利用して利益を得る目的の株式や取引先等との業務上の関係から長期保有する有価証券等が含まれる。 また、その他有価証券のうち市場価格のあるものについては、時価をもって貸借対照表価額とするが、評価差額は、当期の損益とするのではなく、洗替方式に基づき、全部純資産直入法又は部分純資産直入法により処理する旨が規定されている。 ただし、市場価格のあるその他有価証券を所有している場合でも、それが多額でないときには、取得原価をもって貸借対照表価額とすることができる。この「多額でないとき」とは、総資産に対する有価証券の占める割合や、評価差額の重要性等、有価証券の保有が企業の財政状態に与える影響等を総合的に勘案して判断することとなる。 なお、その他有価証券について、市場価格のないものは、取得原価をもって貸借対照表価額とする。 (4) 有価証券の減損処理 売買目的有価証券以外の有価証券で、市場価格のあるものについて、時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額を当期の損益として処理しなければならない旨を規定している。 この場合の「時価が著しく下落したとき」とは、少なくとも個々の銘柄の時価が、取得原価に比べて50%程度以上下落した場合をいう。 市場価格がある場合には、時価の下落を認識することも容易にできるが、市場価格のない株式については、市場価格を確認することもできないので、発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときに、相当の減額を行い、評価差額を当期損失として計上しなければならないとしている。 この場合にも、「著しく低下したとき」について、株式の実質価額が取得原価に比べて50%程度以上低下した場合としている。 また、「財政状態の悪化」とは、一般に公正妥当と認められる会計基準その他の企業会計の慣行に従って作成した計算書類を基礎に、原則として、資産等の時価評価に基づく評価差額を加味して算定した1株当たりの純資産額が、当該株式の取得時と比較して、相当程度下落している状態をいう。 なお、有価証券の減損処理について、法人税法に定める処理によった場合に比して、重要な差異がないと見込まれるときは、法人税法の処理に従うことが認められているので、実際に会計処理を行う場合も法人税法の規定によることで概ね対応できる。   2 棚卸資産に係る留意点 (1) 評価基準の留意点 棚卸資産は、取得原価を貸借対照表価額とすることを原則としているが、期末の時価が帳簿価額より下落し、かつ、金額的重要性がある場合には、時価をもって貸借対照表価額とすることとしている。 なお、①棚卸資産について災害により著しく損傷したとき、②著しく陳腐化したとき、③ ①②に準ずる特別の事情が生じたときには、その事実を反映させて帳簿価額を切り下げなければならないとしている。 この場合の「時価」とは、正味売却価額をいい、資産の時価(通常は、売却市場において観察可能な市場価格をいうが、市場価格が観察できない場合には、合理的に算定された価額が時価となる)から処分費用見込額を控除して算定される金額となる。 また、棚卸資産について、上記の事実が生じたことによる帳簿価額の切下げを行う場合には、上記1の有価証券で確認したように「50%程度以上下落」という割合が具体的には示されていない。 これは、棚卸資産は、その種類や市場の状況等の特性を勘案して、個別に判断すべきものと考えられているからである。 (2) 最終仕入原価法を採用する場合の留意点 棚卸資産の評価方法は、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、売価還元法等が一般的に認められている。 なお、法人税法上の法定評価方法である最終仕入原価法は、最終仕入分がごくわずかでも、その単価が期末棚卸数量のすべてに適用されることになり、最終仕入原価法による評価を単に取得原価主義に属する方法と解することはできないとする考え方がある。 中小会計指針もその点を踏まえ、最終仕入原価法を採用する場合には、期間損益の計算上著しい弊害がない場合に、最終仕入原価法を用いることができることとし、期間損益に与える影響に留意すべきこととしている。 【参考】 日本税理士会連合会ホームページ ・「「中小企業の会計に関する指針(平成24年版)」の公表について」 ・「中小企業の会計に関する基本要領」 (了)

#No. 12(掲載号)
#永橋 利志
2013/03/28

対談 管理会計を学ぶ 【第2回】

管理会計を学ぶ 【第2回】 (対談日:2013年2月18日)         (連載了) おすすめ書籍のご案内 『崖っぷち女子大生あおい、チョコレート会社で会計を学ぶ。』 林 總、山本 宣明 著 清文社・2013年2月発行・定価:1,575円(税込) ※プロフェッションネットワークの書籍販売ページでは、会員優待価格でご購入いただけます。

#No. 12(掲載号)
#林 總、秦 美佐子
2013/03/28

税効果会計を学ぶ 【第6回】「対象となる税金と一時差異等」

-お知らせ- 適用指針等を織り込んだ最新版の『税効果会計を学ぶ』が好評連載中です。   税効果会計を学ぶ 【第6回】 「対象となる税金と一時差異等」   公認会計士 阿部 光成   前回までの「税効果会計を学ぶ」において、一時差異等から始まり、繰延税金資産の回収可能性の判断、繰延税金資産及び繰延税金負債等の表示方法並びに注記事項までという一連のプロセスを解説した。 今回は、一時差異等に戻り、関連する事項について解説を行う。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 税効果会計の対象となる税金 法人税等とは、法人税、都道府県民税及び市町村民税(以下「住民税」という)並びに事業税(収入金額その他利益以外のものを課税標準とする事業税を除く)である。外国法人税等も法人税等に含まれる(「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第10号。以下「個別税効果会計実務指針」という)3項)。 税効果会計の対象となる税金をまとめると、次のようになる(個別税効果会計実務指針36項)。   Ⅱ 一時差異 税効果会計は、企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額の相違に着目して、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に対応させることを目的とする手続である。 課税所得計算上の資産及び負債の金額とは、貸借対照表上の資産の額及び負債の額に税務上の加算額又は減算額を調整した後の資産の額及び負債の額をいう(個別税効果会計実務指針5項)。 一時差異とは、貸借対照表及び連結貸借対照表に計上されている資産及び負債の金額と課税所得計算上の資産及び負債の金額との差額をいう(「税効果会計に係る会計基準」(以下「税効果会計基準」という)第二、一、2)。 財務諸表上、一時差異は次のケースで発生する(税効果会計基準、第二、一、2)。 ①「収益又は費用の帰属年度の相違」に係る一時差異には、法人税申告書別表四の留保欄に計上され、別表五(一)に転記の上、翌期以降に繰り越されるものが含まれる(個別税効果会計実務指針5項)。   Ⅲ 将来減算一時差異と将来加算一時差異 一時差異には、当該一時差異が解消するときにその期の課税所得を減額する効果を持つものと、当該一時差異が解消するときにその期の課税所得を増額する効果を持つものとがある。 前者を将来減算一時差異といい、後者を将来加算一時差異という(税効果会計基準、第二、一、3。個別税効果会計実務指針8項、10項)。   Ⅳ 一時差異等 税効果会計基準は、将来の課税所得と相殺可能な繰越欠損金等についても、一時差異と同様に取り扱うものと規定している(税効果会計基準、第二、一、4)。 一時差異と繰越欠損金等を総称して「一時差異等」という。 繰越欠損金等には、繰越外国税額控除や繰越可能な租税特別措置法上の法人税額の特別控除等が含まれる(個別税効果会計実務指針11項~13項)。   Ⅴ 一時差異等に該当しない差異 税務上の交際費の損金算入限度超過額、損金不算入の罰科金、受取配当金の益金不算入額のように、税引前当期純利益の計算において、費用又は収益として計上されるが、課税所得の計算上は、永久に損金又は益金に算入されない項目がある(個別税効果会計実務指針14項)。 これらの項目は、将来、課税所得の計算上で加算又は減算させる効果をもたないため一時差異等には該当せず、税効果会計の対象とはならない。 (了)

#No. 12(掲載号)
#阿部 光成
2013/03/28

〔会計不正調査報告書を読む〕【第6回】ネットワンシステムズ株式会社・元社員による不正行為「特別調査委員会調査報告書」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第6回】 ネットワンシステムズ株式会社・ 元社員による不正行為 「特別調査委員会調査報告書」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【概要】   【ネットワンシステムズ株式会社の概要】 ネットワンシステムズ株式会社(以下「NOS」という)は東京都に本店を置くネットワーク関連企業で、特定のメーカーの系列にはない。連結売上高157,633百万円、連結経常利益15,470百万円。従業員2,023名(数字はいずれも2012年3月期)。東証1部上場。   【報告書のポイント】 1 元社員と共犯関係にある者の所属会社との共同調査 NOSでは、国税局による税務調査をきっかけに、社員Aが、取引先である金融機関の行員B、システム会社の社員Cと共謀して、金融機関との商談の原価として、NOSに対し、架空外注費を支払わせ、これを騙取した疑いが生じた。外部の弁護士も参加したNOS調査チームは、社内調査だけでは限界があると判断し、金融機関に共同して調査を進めることを申し入れて、調査を進めた。 その結果、NOSが調査結果を公表した日に、株式会社十六銀行(以下「十六銀行」という)は、自行の元行員が関与していることを認めるリリースを出し、ITホールディングス株式会社は、子会社であるTIS株式会社の元社員が関与していたことを認め、どちらも特別調査委員会により調査中であるとコメントしている。   2 第三者委員会ガイドラインに準拠した調査 社内調査の段階で、内部通報制度の外部窓口を担当している弁護士2名が参加していることから、特別調査委員会は、ガイドラインが規定する「第三者委員会」には該当しない可能性があるが、独立した調査の実質を確保するために、「第三者委員会ガイドライン」に準拠して調査を行うことを確認する契約書を取り交わしたうえで、調査を実施している。 今後も、内部通報を受けた外部窓口の弁護士を中心に社内調査を進め、ある程度、不正の存在の確証を得てから、第三者委員会へ移行をする必要が生じるケースは増えることが予想されるので、本件は、そうした事案の先駆けとなるものである。   3 調査結果により判明した事実 (1) NOSから金銭を騙取するに至った事情 NOS元社員Aは、十六銀行でBと共にシステム部門に属していた。発注先の一つであるTISのCは業務を通じて両者と親密さを深め、Aが十六銀行在籍時から、十六銀行が発注し、TISが直接又は間接に受注する案件において、不正行為を行っていた模様である(詳細はNOS特別調査委員会では把握できていない)。 2000年10月、AがNOSに入社し、2004年4月部長、2006年4月本部長と、NOS社内の発言力を強めていく中で、十六銀行が発注し、NOSが直接又は間接に受注する案件についても、不正を重ねていく(NOSにおける最初の不正は2005年4月であった)。 不正の手口としては、TIS元社員Dが設立したZ社を架空の発注先として使い、Bが不正行為の原資となる商談を銀行内で確実に実行させるよう手を尽くし、AがNOS社内手続を行わせて、Z社に対して架空発注と支払いを行わせ、Cが騙取した金銭を現金化して配分する役目を分担していた。 特別調査委員会が認定したZ社への支払金額は、7億8,900万円余りであった。 (2) 元社員Aに対する社内の特別扱い 元社員Aは、NOSに入社以来、金融機関のネットワークビジネスに詳しい「優秀な営業マン」として評価を高め、中部支店から東京に転勤となってからも、十六銀行との商談では転勤前と変わらない役割を果たし、大きな売上・利益をもとに強い支配力を持つに至った。 周囲は、Z社の実態に疑問を抱きつつも、「治外法権の聖域化」している十六銀行との商談については、「ハンコを押すだけ」の役割に徹し、あるいは意見を言えないまま、思考停止状態に陥っていた。 (3) 国税局による税務調査 2012年2月から国税局による税務調査が始まり、Z社に対する外注費に実態がない(原価性が認められない)のではないかという疑いが争点となった。 元社員Aは、対応に当たる財務経理部門、中部支店の営業担当者に対し、シナリオに沿った回答をするよう指示し、自らは、Z社が納入した「成果物」と称するDVDを捏造し、変換ソフトを用いてファイルのプロパティを書き換えることにより、Z社が納入したものであるかのように偽装して提出した。 長引く税務調査の重大性を経営陣が認識したのは同年11月、税務調査対応メンバーではない業務管理グループの担当者が、強い懸念を担当役員に報告したことをきっかけに、外部弁護士を加えた調査チームが設置されることとなった。   4 原因分析と責任の所在 (1) 機能していない購買部門による統制 購買部門によるチェックは、外注先が登録されているかどうか、書類に整合性があるかどうかを確認する形式的なものであり、営業手配の外注に対する牽制としては不十分であった。 登録時に「多額の仕入はリスクあり」とされたZ社であるが、業者登録には承認基準がなく、いったん承認されれば更新も行われないため、継続的な発注が可能であった。外注管理規程には一定の牽制効果がある条項が定められていたが、Z社への発注については規程に基づく管理は行われておらず、規程自体も2001年以降改正されていないなど、有名無実化していた。 (2) 社風 現社長は、就任後、個人商店的発想(属人的な企業風土)や過度の営業重視などの古い企業体質に危機意識をもって、行動指針を策定、企業風土の変革に取り組んでいる。 しかし、調査委員会のヒアリングでは、こうした行動指針は単なる「タテマエ」に過ぎない実態が残ってしまっており、それは本件について「内部通報制度」が機能していなかったことにもつながっている。 (3) 内部監査 2011年7月、Z社との異常取引を発見して、問題点を把握し、調査に着手した時点までの内部監査部門の対応は適切であったが、元社員Aが準備したDVDの検証も不十分なまま、その説明を鵜呑みにして監査を終了させたことには大いに疑問が残るところだ。 まして、信用調査で「代表1名、売上高約5,000万円」という情報を事前に得ておきながら、Z社を訪問すらしていない点、元社員Aの存在がいかに聖域になっていたとはいえ、監査部門の対応としては不十分であった。   5 調査報告書の特徴 報告書自体の読みやすさ、興味を惹く記述に驚かされる。時系列に沿った事件の解明、差し挟まれる従業員の肉声。まるでノンフィクション作品を読んでいるかのようであり、これまで数多くリリースされてきた調査報告書とは一線を画するものとなっている。 また、元社員Aの税務調査対策の模様もリアルに描かれている。 口裏合わせのための打合せ。証拠の捏造。中でも出色だったのは、元社員Aが、国税局の調査において自らの意に沿わない経理財務部門の関係者を恫喝し、「おまえたちを殺すことなど、おれは何とも思わない。」とか「駅のホームでおまえたちに何かあっても気づく人はいない。」と脅迫した場面である。 元銀行マンで、営業担当の本部長という要職を占めている人の発言とも思えないが、こうした発言にただうつむく管理職ばかりで、発言を諌める人、こうした行為を経営トップに伝える人が社内にいなかったことが、最大の問題であったように感じる。 ただ、調査報告書の最後に「NOS社員の大多数は、このような真面目な社員であることを付言しておく」というコメントを入れたことについて、筆者は、違和感を禁じ得ない。そのようなことは言うまでもないことであり、連結経常利益150億円以上、東証1部上場企業に対するコメントとしては、かえって失礼なものではないだろうか。 (了)

#No. 12(掲載号)
#米澤 勝
2013/03/28

改正高年齢者雇用安定法の実務上の留意点 【第4回】「継続雇用制度の対象者を雇用する企業範囲の拡大」

改正高年齢者雇用安定法の 実務上の留意点 【第4回】 「継続雇用制度の対象者を雇用する 企業範囲の拡大」   社会保険労務士 平澤 貞三   グループ企業の範囲 これまで継続雇用対象者の受入企業の範囲は、親子会社までとなっていたが、今回の改正により、特殊関係事業主(当該事業主の経営を実質的に支配することが可能となる関係にある事業主その他の当該事業主と特殊の関係のある事業主として厚生労働省令で定める事業主)まで拡大された。 この特殊関係事業主の範囲を整理すると、以下のようになる。 (東京労働局ホームページ「改正高年齢者雇用安定法の概要」より)     グループ企業で継続雇用させる場合の留意点 元の雇用主、継続雇用対象者、及びその対象者が継続雇用されるグループ会社との関係性が重要となるが、厚生労働省のホームページでは、今後想定される質問・相談について「高年齢者雇用安定法Q&A」として問答集を公開している。 いくつか重要と思われる点について整理すると、以下のようになる。 (連載了)

#No. 12(掲載号)
#平澤 貞三
2013/03/28

会社が取り組む社員の健康管理【第4回】「健康の保持増進対策と安全衛生教育の実施」

会社が取り組む 社員の健康管理 【第4回】 「健康の保持増進対策と 安全衛生教育の実施」   社会保険労務士 佐藤 信   1 はじめに 高齢化社会の到来、就業意識や働き方の変化に伴い、定期健康診断の有所見率は増加し、仕事に関して不安やストレスを感じている労働者の割合が高い水準で推移している。 職場における労働者の心身の健康問題に対処するためには、健康の保持増進を図ることが重要である。 今回は、健康の保持増進へ向けた対策及び労働者の安全衛生教育について触れていくこととする。   2 健康の保持増進策 (1) 健康保持増進対策の概要 労働者の健康の保持増進には、労働者が自主的、自発的に取り組むことが重要である。 しかし、職場には労働者自身の力だけでは取り除くことができない健康障害要因、ストレス要因などが存在するため、労働者の自助努力に加えて、事業者の行う健康管理の積極的推進が必要である。 労働者の健康を保持増進するための具体的措置として、次のものがある。 これらの事項は、それぞれに対応したスタッフの緊密な連携により推進していきたい。 スタッフは、それぞれの専門分野における十分な知識・技能を有していることが必要であると同時に、労働衛生、労働生理などについての知識を有していることが不可欠であるが、事業規模によっては、すべての該当者を確保することが困難なケースも多いと思われる。 その場合は、外部の労働者健康保持増進サービス機関に委託して実施することが適当であろう。 【参考】 中央労働災害防止協会ホームページ ・都道府県別労働者健康保持増進サービス機関リスト (中央労働災害防止協会は、事業主の自主的な労働災害防止活動の促進を通じて、安全衛生の向上を図り、労働災害を絶滅することを目的として労働大臣(現:厚生労働大臣)の認可により設立された公益目的の法人。事業主の自主的な労働災害防止活動を促進し、労働者の安全と健康を確保するための総合的活動が行われている。)   (2) 健康保持増進措置の内容 会社は、次に掲げる項目を実施し、労働者の個別の要請に基づき相談に応ずるように努めることが必要である。 ① 健康測定 健康測定とは、原則として産業医が中心となって行い、労働者の健康状態を把握し、運動指導、保健指導等を行うために実施される生活状況調査や医学的検査等のことをいう。疾病の早期発見に重点をおいた従来の健康診断とは、その目的が異なる。 健康測定後は、その結果に基づき各労働者の健康状態に応じた指導票を作成し、指導票により、以下に述べる②運動指導、③メンタルヘルスケア、④栄養指導、⑤保健指導等の健康指導を行う。 ② 運動指導 健康測定の結果及び産業医の指導票に基づいて、運動指導担当者が労働者個人について、実行可能な運動プログラムを作成し、運動実践を行うに当たっての指導を行う。 労働者が自主的、積極的に取り組むよう配慮することが必要である。 ③ メンタルヘルスケア 健康測定の結果、メンタルヘルスケアが必要と判断された場合又は問診の際に労働者自身が希望する場合には、心理相談担当者が産業医の指示のもとにメンタルヘルスケアを行う。 ※メンタルヘルスについては、当連載の第6回目において予防等を中心に再度触れる予定である。 ④ 栄養指導 健康測定の結果、食生活上問題が認められた労働者に対して、産業栄養指導担当者が、健康測定の結果及び産業医の指導票に基づいて、栄養の摂取量にとどまらず、食習慣や食行動の評価とその改善に向けて指導を行う。 ⑤ 保健指導 勤務形態や生活習慣からくる健康上の問題を解決するために、産業保健指導担当者が、健康測定の結果及び産業医の指導票に基づいて、睡眠、喫煙、飲酒、口腔保健等の健康的な生活への指導及び教育を、職場生活を通して行う。   3 安全衛生教育 労働者の健康を維持するには、会社の実施する健康診断や健康保持増進措置だけではなく、労働者自身も正しい知識を持ち、自ら努力しなくてはその効果が期待できない。 そこで、労働者に対する教育を行いながら、疾病の予防や健康保持増進を労使双方の協力により実施していきたい。 安全衛生教育は、年間計画を立て、対象者に応じた具体的な教育内容を定めながら実施していくことが望ましい。 計画の立て方の例は、次のとおりである。 (1) 対象者の選定 まずは、教育の対象者の選定から始める。対象者により教育の内容、教材、講師などを決めていくこととなる。 なお、対象者については「臨時の労働者」を含むか否かに注意を要する。 当連載第2回、第3回で取り上げた「一般健康診断」は、常時使用する労働者が対象とされ、臨時の労働者(1年以上使用されることが見込まれる者を除く)については実施しない場合であっても法令違反とならない点を触れた。 一方「安全衛生教育」は、安全・健康障害の防止のために、臨時の労働者であっても対象者から除かれておらず、雇入れ又は作業内容の変更等を行ったときは教育を実施しなければならない。 (2) 教育内容 労働安全衛生法による安全衛生教育のうち、雇入れ時や作業内容変更時の教育内容を例に掲げると、次の項目が定められている。 ※上記項目のうち、①~④については安全衛生法施行令2条3号に該当する事業場では省略をすることができる。 ※上記項目の全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項についての教育を省略することができる。 例えば、長時間の屋外作業による熱中症その他労働者の健康障害を引き起こす可能性がある作業については、上記「⑤ 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防」など安全衛生教育が行われていることで重大な事故・健康障害を回避することにつながることもある。 逆に、これらの措置がとられていないために労働者が傷病を患った場合は会社の安全配慮義務違反が問われ、労働安全衛生法の罰則のみならず、被災者又は遺族から損害賠償を請求されるおそれもあるため、おろそかにすることはできない。 なお、安全衛生法に定められた教育以外のものであっても、職場の働き方に応じたものや現に生じている健康障害を回避するため必要なものがあるときは積極的に講じていくことが望ましい。 (3) 教育時間 雇入れ時や作業内容変更時の教育について何時間費やすかは、教育対象者や教育事項に応じ決めていくこととなる(法令の定めなし)。 ※危険有害業務や職長教育については、確保する教育時間の定めがある。 安全衛生教育は所定時間内に行われるのが原則であり、教育時間は労働時間と解され賃金の支払いを要する。また、法定時間外に行われた場合には割増賃金を支払わなければならない。 ※この点も一般健康診断とは扱いの異なる点である(前回述べたように、一般健康診断の時間は賃金の支払いを義務付けられていない)。   (4) 講師・教材の選定 講師の選定は、事業場内に適切な人材がいる場合はその者とし、適任者不在のときや専門的な知識を要する場合は外部講師を招く等の方法がある。 教材については市販の教材の活用をしていくことのほか、各職場独自の危険・健康障害防止のため、職場内の写真やビデオを活用した視覚的な教育を行っていくと、より効果的であろう。 教育したことを業務の中で活かしていくためには、実施後のフォローも重要である。 正しい手順や方法で行われていない場面に遭遇したときは、指摘、是正しながら重大な災害・健康障害に発展することを防いでいきたい。 次回は快適な職場環境作りについて触れていくこととする。 (了)

#No. 12(掲載号)
#佐藤 信
2013/03/28
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