Profession Journal » 税務・会計 » 会計 » 解説 » 監査 » 財務諸表監査 » 〔会計不正調査報告書を読む〕【第8回】株式会社クロニクル・ 過去の会計処理の訂正に係る「第三者委員会調査報告書(最終報告)」

〔会計不正調査報告書を読む〕【第8回】株式会社クロニクル・ 過去の会計処理の訂正に係る「第三者委員会調査報告書(最終報告)」

筆者:米澤 勝

文字サイズ

〔会計不正調査報告書を読む〕

【第8回】

株式会社クロニクル・

過去の会計処理の訂正に係る

「第三者委員会調査報告書(最終報告)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝

【概要】
第三者調査委員会設置のお知らせ, 調査委員会の委員選任に関するお知らせ, 大塚和成, 水川聡, 瀬戸山洋介, 第三者委員会の『中間報告書』受領に関するお知らせ, 除外事項を付した限定付結論が記載された四半期レビュー報告書の受領及び第1四半期報告書の提出に関するお知らせ, 証券取引等監視委員会による課徴金納付命令の勧告について, 第三者委員会の調査報告書(最終報告)受領に関するお知らせ

 

【株式会社クロニクルの概要】

株式会社クロニクル(以下「クロニクル」という)は昭和55年、宝石貴金属製品の卸売業者として創業。平成12年から投資事業を開始。その他の事業として子会社においてWEB情報事業を手がける。連結売上高2,108百万円、連結経常損失△697百万円。従業員49名(数字はいずれも2012年9月期)。平成16年12月JASDAQ上場。

 

【報告書のポイント】

1 調査結果により判明した事実

(1) 営業貸付金等
平成20年6月、前代表取締役会長が中心となって進めた会社買収に絡み、契約書を作成することなく、買収予定会社及びその親会社に対して608百万円の貸付金が発生することとなった。

クロニクルは、買収予定会社の株式を親会社が売却した代金300百万円を受け取り、残額を債権放棄することで合意していたにもかかわらず、当該損失を平成21年9月期に計上することを避けるため、日付を遡って金銭消費貸借契約書を作成し、会計監査人からの残高確認依頼に対しては虚偽の返信を行わせた。

その上で、平成23年9月期に貸付金308百万円に対して個別引当で全額につき貸倒引当金を設定すべく、債務免除を依頼する書面を作成させた。

その結果、本来、平成21年9月期に計上すべき債権放棄による損失308百万円が貸付金として計上されたまま、有価証券報告書が作成された。

(2) 営業出資金
前代表取締役会長は、シンガポールにおいて組成したファンドに、クロニクルから出資させ、当該ファンドから自らに資金を流して私的に流用することを計画し、懇意にしていたファンドマネージャーにファンドの組成を依頼し、合計約904百万円の投資をさせた。

ファンドマネージャーは、受け入れた資金について運用を行わず、前代表取締役会長の指定する口座に送金する一方、ファンドの投資内容について定期的に報告書を提出して投資実体があるかのように装い、評価損の計上を免れていた。

クロニクルがファンドへ送金した資金については、営業出資金ではなく、前代表取締役会長に不法に領得されたものであり、ファンドへの送金時点で財産上の損害が生じており、当該年度に損失を計上すべきであった。

(3) 預在庫
子会社における時計販売において委託販売を行っているところ、帳簿上の預在庫として計上されている商品のうち410百万の商品について実在性がないことが判明した。

その原因は、以下のとおり前代表取締役会長が主導したものであるが、実務処理は、現代表取締役社長及び取締役(子会社の代表取締役)が担当していた。

●前代表取締役会長が、預在庫を自ら販売を試みるとして商品を受け取って返却していないにもかかわらず、そのまま預在庫として計上し続けたもの

●簿価未満で商品を売却した場合において、前代表取締役会長が、売却損の計上を防ぐという名目で、売上を計上せず、預在庫の計上を指示する一方、売却代金を受け取ったまま返却していないもの

 

2 関係者に対する厳しい処分の提言

最終報告書は「第4 改善策」の冒頭において、関係者に対する厳しい処分を提言している。

クロニクルの会計処理の訂正を要する可能性がある事象については、いずれも、平成23年8月3日に死亡した、前代表取締役会長が主導して行ってきたものであり、現任の取締役4名も平成23年12月に就任した1人を除いて、その行為に加担又は実務処理を行い、前代表取締役会長の行為に異議を唱えたり、止めたりすることはなかったものである。

前代表取締役会長の行為の一部には、業務上横領罪又は特別背任罪が成立しているものもあると考えられ、同人に対する損害賠償請求権が発生しているが、同人はすでに死亡し、死亡時点においての正味財産はなかったものと推察されることから、損害賠償請求権に対する未収入金は現時点では計上せず、請求金額の実現可能性が高まった時点での認識を行うことが妥当であると考えられる。

〔関係者の処分の提言内容〕

 

3 会計監査に対する問題点の指摘

会計監査人は、以下の対応を実施すべきであったとし、「会計監査が調査対象事項のような事象への抑止力につながらなかったこと自体は否定しない」として、問題点を指摘した。

●営業貸付金について、平成20年9月期の監査において、金銭消費貸借契約書が作成されていないことについて書面にて指摘事項を提出すること

●ファンドへの出資当時の監査において、投資の詳細な情報が入手されていないこと等について書面にて指摘事項を提出すること

●特に期末監査時の海外営業出資金に対しての評価の妥当性の監査手続については、追加の手続の実施(なお、各会計監査人は、口頭にて追加の資料の提出を依頼していたが、対象会社からの追加の資料の提出はなかった)

 

4 調査報告書の特徴

現任の取締役4名のうち3名、監査役3名全員に対して、「辞任のうえ報酬の自主返納」を迫る非常に厳しい報告書が公表された事案である。

また、3月26日には、証券取引等監視委員会が、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、クロニクルに対し6,443万円の課徴金納付命令を発出するよう勧告を行った。

法令違反の事実は、以下の「重要な事項につき虚偽の記載がある」有価証券報告書等を、関東財務局長に対し、提出したものである。

●複数の海外ファンドに対する出資金を資産計上していたが、これらのファンドについては、いずれも運用実態がなく、使途不明金として損失を計上すべきであったこと

●債務免除をしていた貸付金があるにもかかわらず、当該債務免除を行った時点において、これに係る損失を計上していなかったこと

証券取引等監視委員会が虚偽記載と認めた事実は、調査委員会の報告とも一致しており、クロニクルも異議を申し立てていないことから、有価証券報告書等の虚偽記載は事実として認めているようである。

そうすると、第三者調査委員会が提言を行った「関係者の処分」についても、クロニクルの見解が出されるべきではないかと思料するのだが、本稿執筆時点においては、調査委員会の提言に対する反論はもちろん、辞任するかどうかも含めて、何らコメントは出されていない。

一方、訂正報告書をめぐっては、監査法人との間で協議がまとまらず(3月14日付リリース)、その後、会計監査人の異動が発表され(4月5日付リリース)、「早急に提出する予定で作業を進めて」いる(4月19日付リリース)ということであるが、こちらも本稿執筆時点においては、訂正報告書は出されていない。

(了)

「会計不正調査報告書を読む」は、不定期の掲載となります。

連載目次

会計不正調査報告書を読む

第1回~第50回 ※クリックするとご覧いただけます。

第51回~

このエントリーをはてなブックマークに追加

筆者紹介

  • 米澤 勝

    (よねざわ・まさる)

    税理士・公認不正検査士(CFE)

    1997年12月 税理士試験合格
    1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
    1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
    2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
    2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

    【著書】

    ・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

    ・『架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2011)

    ・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

    【寄稿】

    ・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

    ・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

    【セミナー・講演等】

    一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
    「会計不正の早期発見
    ――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

    公益財団法人日本監査役協会主催
    情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

    株式会社プロフェッションネットワーク主催
    「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

関連書籍

Profession Journal » 税務・会計 » 会計 » 解説 » 監査 » 財務諸表監査 » 〔会計不正調査報告書を読む〕【第8回】株式会社クロニクル・ 過去の会計処理の訂正に係る「第三者委員会調査報告書(最終報告)」

Copyright ©2012- Profession Network Co.,Ltd. All Rights Reserved.

Scroll to top
Go to home