公開日: 2013/03/21 (掲載号:No.11)
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税務判例を読むための税法の学び方【6】 〔第3章〕法令間の矛盾抵触とそれを解決する原埋(その1)

筆者: 長島 弘

税務判例を読むための税法の学び方【6】

〔第3章〕法令間の矛盾抵触とそれを解決する原埋

(その1)

 

自由が丘産能短期大学専任講師
税理士 長島 弘

 

ある事項について規定した法令が複数存在しながら、それらの規定している内容が異なり矛盾抵触している場合に、そしてこれらの法令のうちの1つを自由に選択することが認められていない場合には、どの法令の規定を適用すべきかが問題となる。

民法第604条第1項には「賃貸借の存続期間は、20年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、20年とする。」とあるが、借地借家法の第3条には「借地権の存続期間は、30年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。」 と規定されている。
借地契約も賃貸借契約であるから、この場合はいずれを適用すべきであろうか。

また税法においても、譲渡所得については、所得税法第33条(譲渡資産の取得費に関しては第37条や第57条の4以下等にも規定がある)に規定があるほか、租税特別措置法第31条から第40条の3までにその特例が規定されている。

また更正の請求に関しては、国税通則法第23条に規定があるが、所得税においても第152条以下に、法人税法においては第80条の2以下に、相続税法においては第32条等に、消費税法においては第54条以下に各別に定められている。このように個別税法の規定が国税通則法や租税特別措置法の規定と抵触した場合に、いずれを適用するのかといった問題がある。

このように複数の規定内容が異なる場合に、いずれを適用すべきかについて、一般に、次の4つの解決原理が挙げられている。

1 所管法令優先の原理(法令の所管事項の原理ともいう)
2 上位法令優先の原理(法令の形式的効力の原理ともいう)
3 特別法優先の原理
4 後法優先の原理

では、以下に、これらを各別に見ていく。

 

1 所管法令優先の原理(法令の所管事項の原理)

法令の種類ごとに所管事項を定め、所管事項以外のことは規定できないこととし(所管事項を越えて規定すれば、それは無効となる)、法令間にはじめから矛盾抵触が生じないようにするという原理である。

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税務判例を読むための税法の学び方【6】

〔第3章〕法令間の矛盾抵触とそれを解決する原埋

(その1)

 

自由が丘産能短期大学専任講師
税理士 長島 弘

 

ある事項について規定した法令が複数存在しながら、それらの規定している内容が異なり矛盾抵触している場合に、そしてこれらの法令のうちの1つを自由に選択することが認められていない場合には、どの法令の規定を適用すべきかが問題となる。

民法第604条第1項には「賃貸借の存続期間は、20年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、20年とする。」とあるが、借地借家法の第3条には「借地権の存続期間は、30年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。」 と規定されている。
借地契約も賃貸借契約であるから、この場合はいずれを適用すべきであろうか。

また税法においても、譲渡所得については、所得税法第33条(譲渡資産の取得費に関しては第37条や第57条の4以下等にも規定がある)に規定があるほか、租税特別措置法第31条から第40条の3までにその特例が規定されている。

また更正の請求に関しては、国税通則法第23条に規定があるが、所得税においても第152条以下に、法人税法においては第80条の2以下に、相続税法においては第32条等に、消費税法においては第54条以下に各別に定められている。このように個別税法の規定が国税通則法や租税特別措置法の規定と抵触した場合に、いずれを適用するのかといった問題がある。

このように複数の規定内容が異なる場合に、いずれを適用すべきかについて、一般に、次の4つの解決原理が挙げられている。

1 所管法令優先の原理(法令の所管事項の原理ともいう)
2 上位法令優先の原理(法令の形式的効力の原理ともいう)
3 特別法優先の原理
4 後法優先の原理

では、以下に、これらを各別に見ていく。

 

1 所管法令優先の原理(法令の所管事項の原理)

法令の種類ごとに所管事項を定め、所管事項以外のことは規定できないこととし(所管事項を越えて規定すれば、それは無効となる)、法令間にはじめから矛盾抵触が生じないようにするという原理である。

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連載目次

税務判例を読むための税法の学び方
(全100回) 

〔第1章〕 法(法源)の種類

〔第1章〕 法(法源)の種類

    • 【1】 〔第1章〕 法(法源)の種類
      はじめに
      1 自然法と実定法
      2 法源
      3 成文法(制定法)と不文法
      4 成文法の種類
      5 不文法の種類
       参考(法源性のない行政機関の内部規律)

〔第2章〕 法令の解釈方法

〔第2章〕 法令の解釈方法

〔第3章〕 法令間の矛盾抵触とそれを解決する原埋

〔第3章〕 法令間の矛盾抵触とそれを解決する原埋

〔第4章〕 条文を読むためのコツ

〔第4章〕 条文を読むためのコツ

〔第5章〕 法令用語

〔第5章〕 法令用語

〔第6章〕 判例の見方

〔第6章〕 判例の見方

〔第7章〕 判例の探し方

〔第7章〕 判例の探し方

  • 【54】 〔第7章〕 判例の探し方(その1)
    1 判例の検索方法
     ① 基礎的な検索項目
     ② 事件番号とは
  • 【55】 〔第7章〕 判例の探し方(その2)
    2 判例集の紹介と蔵書検索
     ① 公的(準公的)な判例集・裁判集
     (1) 『最高裁判所判例集』:『最高裁判所民事判例集』『最高裁判所刑事判例集』
     (2) 『最高裁判所裁判集』:『最高裁判所裁判集刑事』『最高裁判所裁判集民事』
     (3) 『最高裁判所民事判例特報』
     (4) 『最高裁判所刑事判決特報』
     (5) 『高等裁判所判例集』:『高等裁判所民事判例集』『高等裁判所刑事判例集』
     (6) 『裁判所時報』
  • 【56】 〔第7章〕 判例の探し方(その3)
     (7) 『高等裁判所刑事裁判速報』『高等裁判所刑事裁判速報集』
     (8) 『高等裁判所刑事判決特報』
     (9) 『高等裁判所刑事裁判特報』
     (10) 『東京高等裁判所刑事判決時報』『東京高等裁判所判決時報』
  • 【57】 〔第7章〕 判例の探し方(その4)
     (11) 『第一審刑事裁判例集』
     (12) 『下級裁判所刑事裁判例集』
     (13) 『刑事裁判月報』
     (14) 『下級裁判所民事裁判例集』
     (15) 『高等裁判所地方裁判所簡易裁判所民事裁判例特報』(『高等裁判所、地方裁判所、簡易裁判所民事裁判例特報』または『高等裁判所・地方裁判所・簡易裁判所民事裁判例特報』)
  • 【58】 〔第7章〕 判例の探し方(その5)
     (16) 『家庭裁判月報』
     (17) 『労働関係事件判決集』『労働関係民事行政裁判資料』『労働関係民事裁判例集』
     (18) 『労働関係民事事件裁判集』
     (19) 『無体財産権関係民事・行政裁判例集』『知的財産権関係民事・行政裁判例集』
  • 【59】 〔第7章〕 判例の探し方(その6)
     (20) 『行政裁判月報』『行政事件裁判例集』
     (21) 『訟務月報』
     (22) 『税務訴訟資料』
  • 【60】 〔第7章〕 判例の探し方(その7)
     (23) 『大審院刑事判決録』『明治前期大審院刑事判決録』
     (24) 『大審院民事判決録』『大審院民事商亊判決録』
     (25) 『大審院判決録』
  • 【61】 〔第7章〕 判例の探し方(その8)
     (26) 『大審院民事判決録』
     (27) 『大審院刑事判決録』
  • 【62】 〔第7章〕 判例の探し方(その9)
     (28) 『大審院民事判例集』
     (29) 『大審院刑事判例集』
     (30) 『行政裁判所判決録』
  • 【63】 〔第7章〕 判例の探し方(その10)
     ② 企業や諸団体等から発行されている定期刊行物
     (1) 『判例時報』『判例評論』
     (2) 『判例タイムズ』『判例年報』『〇〇年主要民事判例解説』
     (3) 『労働判例』
     (4) 『別冊中央労働時報』『労働委員会速報』『中央勞働委員會速報』
  • 【64】 〔第7章〕 判例の探し方(その11)
     (5) 『労働経済判例速報』
     (6) 『金融・商事判例』『週刊金融判例』『週刊金融・商事判例』
     (7) 『金融法務事情』『旬刊金融法務事情』
     (8) 『シュトイエル(Steuer)』
     (9) 『判例地方自治』
     (10) 『交通事故民事裁判例集』

〔第8章〕 判決を読む

〔第8章〕 判決を読む

〔第9章〕 代表的な税務判例を読む

〔第9章〕 代表的な税務判例を読む

筆者紹介

長島 弘

(ながしま・ひろし)

立正大学法学部准教授
税理士

神奈川県横須賀市出身
中央大学商学部会計学科卒
横浜市立大学大学院経営学研究科修士課程修了
会計事務所勤務後、短大専任講師や大学院大学客員教授等を経て、現職。
現在 租税訴訟学会理事、日本租税理論学会常任理事、日本税法学会理事

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