令和8年度税制改正における
『グループ通算制度』改正事項の解説
【第1回】
公認会計士・税理士
税理士法人トラスト
足立 好幸
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~はじめに~
令和8年度税制改正では、グループ通算制度独自の税制(※1)についての改正が行われている。また、単体制度(※2)及び通算制度に共通の税制(※3)について、グループ通算制度特有の取扱いの改正が行われている。(※1) グループ通算制度独自の税制とは、損益通算、欠損金の通算、通算承認に係る時価評価、通算承認に係る繰越欠損金の切捨て、通算承認に係る特定資産譲渡等損失額の損金算入制限、投資簿価修正など単体制度に存在しない税制を意味している。
(※2) 単体制度とは、グループ通算制度を適用しない法人(以下、「単体法人」という)の課税制度をいう。
(※3) 単体制度及び通算制度に共通の税制とは、研究開発税制、外国税額控除、特定税額控除規定の不適用措置等を意味している。
令和8年度のグループ通算制度に係る改正事項は次のとおりとなる。
Ⅰ 研究開発税制(既存制度)の見直し
〔改正内容〕
既存の研究開発税制の拡充及び延長として、以下の見直しが行われている。
1 一般試験研究費の税額控除制度(一般型)について、①税額控除率の見直し、②控除上限率の見直し、③海外委託費の見直しが行われている。
2 中小企業技術基盤強化税制について、「繰越税額控除制度(3年間)」を創設するとともに、増減試験研究費割合に応じた控除率等の上乗せについて、時限措置の3年間の延長を行っている。
3 特別試験研究費の税額控除制度(オープンイノベーション型)についても、手続き合理化や高度研究人材の活用の拡充と公募要件の緩和が行われている。
グループ通算制度を適用している場合、研究開発税制については、通算グループ全体で税額控除限度額を計算する仕組みであるが、同様の見直しが行われている。
Ⅱ 戦略技術領域型の研究開発税制の創設
〔改正内容〕
国家として戦略技術分野の試験研究を促進する観点から、新たに「重点産業技術試験研究費に係る税額控除制度(戦略技術領域型)」を創設し、産業技術力強化法の改正法の施行日から、令和11年3月31日までの間に産業技術力強化法の認定を受けた計画に基づく対象分野への試験研究費について、既存制度とは別枠で税額控除の措置を講じている。
「戦略技術領域型」についても、グループ通算制度を適用している場合、通算グループ全体で税額控除限度額を計算する仕組みとなっている。また、その計算の仕組みは、オープンイノベーション型と同様となっている。
Ⅲ 租税特別措置の不適用措置の見直し
〔改正内容〕
収益が拡大しているにもかかわらず、賃上げにも投資にも消極的な大企業に対して、研究開発税制等の一部の租税特別措置の税額控除(特定税額控除規定)の適用を停止する措置について、その期間を令和10年度末まで延長するとともに、要件について以下の見直しが行われている。
(1) 特定税額控除規定に、研究開発税制のうち「重点産業技術試験研究費に係る税額控除制度(戦略技術領域型)」(繰越税額控除制度を除く)を加える。
(2) 継続雇用者給与等支給額に係る要件の厳格化を行う。
(3) 地域未来投資促進税制、カーボンニュートラル投資促進税制の税額控除ついて、継続雇用者給与等支給額に係る要件(積極的に賃上げする要件)及び国内設備投資額に係る要件(積極的に国内設備投資する要件)のいずれにも該当しない場合に不適用とする取扱いを、継続雇用者給与等支給額に係る要件又は国内設備投資額に係る要件のいずれかに該当しない場合に不適用とする取扱いに変更する。
(4) 戦略分野国内生産促進税制の税額控除(当該税制内に同様の規定を措置)についても、上記(2)(3)の見直しが行われている。また、特定生産性向上設備等投資促進税制(即時償却を含む)についても、租税特別措置の不適用措置を同様に設けている(当該税制内に同様の規定を措置)。
グループ通算制度を適用している場合、通算特定税額控除規定(研究開発税制)の適用可否を通算グループ全体で判定することとなるが、上記(1)(2)と同様の改正が行われている。
なお、特定税額控除規定(地域未来投資促進税制、カーボンニュートラル投資促進税制の税額控除)、戦略分野国内生産促進税制の税額控除、特定生産性向上設備等投資促進税制(即時償却を含む)の適用可否の判定については、グループ通算制度を適用している場合も各社単独で判定し、グループ通算制度を適用していない場合と同じ取扱い(上記改正を織り込んだ取扱い)となる。
Ⅳ 投資簿価修正制度の見直し
〔改正内容〕
投資簿価修正における資産調整勘定等対応金額の加算措置について、通算完全支配関係発生日以前に離脱法人株式の譲渡をした場合の資産調整勘定対応金額等の減額調整の対象となる「譲渡」から、全部取得条項付種類株式の取得決議による完全子法人化の際における離脱法人株式の「譲渡」が除外されることとなった。
Ⅴ 特定生産性向上設備等投資促進税制の創設
〔改正内容〕
危機管理投資・成長投資による「強い経済」を実現するため、国内における高付加価値の設備投資を促進する観点から、大胆な設備投資の促進に向けた税制(特定生産性向上設備等投資促進税制)が創設されている。
特定生産性向上設備等投資促進税制(当該税制内に措置された租税特別措置の不適用措置を含む)については、グループ通算制度を適用している場合も、各社単独で適用し、グループ通算制度を適用していない場合と同じ取扱いとなる。
本稿では、令和8年度税制改正における『グループ通算制度』に係る改正事項について次回以降詳しく解説する。
なお、本稿の意見に関する部分は、筆者の個人的な見解であることをあらかじめお断りする。
〔凡例〕
措法・・・租税特別措置法
措令・・・租税特別措置法施行令
措規・・・租税特別措置法施行規則
法法・・・法人税法
法令・・・法人税法施行令
地法・・・地方税法
地方法法・・・地方法人税法
防確法・・・我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法
令8改所法等附・・・所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)附則
令8改措規附・・・租税特別措置法施行規則の一部を改正する省令(令和8年財務省令第21号)附則
(例)措法42の4①・・・租税特別措置法第42条の4第1項
(続く)
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