谷口教授と学ぶ
税法基本判例
【第58回】
「「譲渡所得課税の趣旨」法理からの「離脱」とその帰結及び射程」
-土地改良区農地転用譲渡事件・最判平成18年4月20日訟月53巻9号2692頁による譲渡費用概念の拡大-
大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
前回は、判例法理としての「譲渡所得課税の趣旨」法理(学説では増加益清算課税説)の枠内における(譲渡所得の本質的意義(理論[包括的所得概念論]的意義)に基づく)譲渡所得課税❶と(譲渡所得の実定法的意義に基づく)譲渡所得課税❷のうち、後者に係る譲渡所得の金額の計算上総収入金額から控除される取得費(所税33条3項・38条)の概念を借入金利子の取得費算入の可否問題に関して検討したが、今回は、同じく総収入金額から控除される「資産の譲渡に要した費用」(同33条3項。以下「譲渡費用」という)の概念及び範囲を土地改良区農地転用譲渡事件・最判平成18年4月20日訟月53巻9号2692頁(以下「平成18年最判」という)に即して検討する。
その検討について結論を先取りして概略を述べておくと、第55回から前回まで3回にわたって、「譲渡所得課税の趣旨」法理を基軸とする譲渡所得課税問題の司法的解決を検討してきたが、今回は、平成18年最判を、同法理から(実質的に)「離脱」する判断を示したものとみて、その判断を一種の純所得課税の考え方ともいうべき譲渡益課税説(前回Ⅲ1参照)に基づくものとして位置づけた上で、その判断のための一般的基準の適用に当たってその「離脱」の帰結として譲渡費用概念を拡大したものと結論づけた。以下では、まず、平成18年最判の判断内容・構造からみておくことにしよう。
Ⅱ 平成18年最判の判断内容・構造
本件で譲渡費用該当性が争われたのは、新潟県内の三条土地改良区の組合員が同土地改良区内の農地を転用目的で譲渡するに当たり土地改良法42条2項及び同土地改良区地区除外等処理規程に基づき支払った決済金(以下「本件決済金」という)並びに同土地改良区施設等使用規程及び施設等使用負担金徴収規程に基づき施設等使用負担金として徴収され支払った協力金等(以下「本件協力金等」という)であった。
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