公開日: 2026/01/15 (掲載号:No.652)
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〈適切な判断を導くための〉消費税実務Q&A 【第16回】「ハンドキャリーによる輸送品についての輸出免税の適用」

筆者: 石川 幸恵

〈適切な判断を導くための〉

消費税実務Q&A

【第16回】

「ハンドキャリーによる輸送品についての輸出免税の適用」

 

税理士 石川 幸恵

 

【Q】

当社は美術工芸品の販売業を営んでいます。海外であるA国に居住するB氏に対し、美術工芸品を販売しました。本件では商品の破損を避ける目的もあり、担当者がこの美術工芸品を手荷物として航空機に持ち込み(いわゆるハンドキャリー)、現地でB氏に直接引き渡しました。代金は現地で現金により受領しています。

この場合における消費税に関する注意点を教えてください。

【A】

ハンドキャリーによる輸出であっても消費税の輸出免税の適用を受けることは可能ですが、実際に相手国で商品を引き渡した事実があるとしても、その事実のみをもって直ちに輸出免税が認められるものではありません。

出国の際に税関長から「輸出証明書等」の交付を受け、輸出取引等を行った日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、納税地又は事務所等の所在地に保存する(消規5①)ことが必要です。

また、令和8年10月1日以後は、現金により輸出取引の代金を受領したものについては、輸入国における輸入許可書等の保存も必要となる予定です(令和8年度税制改正大綱)。

さらに、外国から100万円を超える現金を持ち込む際には税関に「支払手段等の携帯輸出・輸入申告書」の提出が必要となる点にも留意が必要です。

◆ ◆ 解 説 ◆ ◆

取引の実態が海外で消費・使用されるものであれば、輸出免税を受けられると考えがちであるが、輸出免税の適用には政令等で定める方法による輸出証明が要件(消法7②)とされている。

本解説ではハンドキャリー取引が争われた裁決事例を取り上げ、輸出証明のどこが問題とされたのかを確認する。

 

1 美術工芸品のハンドキャリー取引(令和4年1月26日関東信越国税不服審判所、TAINSコード:F0-5-352)

(1) 取引の概要

美術工芸品の販売業等を営む法人は、日本国内で仕入れた美術工芸品を中国上海市に居住する者に販売した。商品の引渡しは、当該法人の代表者が上海に渡航する際に、手荷物として航空機に持ち込む方法(ハンドキャリー取引)により行われていた。

(2) 問題点

本件では、当該取引が輸出取引等に該当するか否かが争われた。具体的にはハンドキャリーによる輸出について、税関長から輸出許可書等の交付を受けていない点が問題とされている。

納税者は、本件ハンドキャリー取引は「本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け等(消法7①一~四)に類するものとして政令で定めるもの(消法7①五)」に該当すると主張したが、裁決はハンドキャリー取引を消費税法第7条第1項第1号の輸出取引そのものと整理した上で、輸出許可書等の交付を受けていない以上、輸出免税の適用要件を満たすものとはいえないと判断している。

これにより、納税者が輸出証明になり得ると主張していた金銭の受取記録や渡航記録はいずれも勘案されなかった。

 

2 魚介類のハンドキャリー取引(平成30年1月11日東京国税不服審判所、TAINSコード:F0-5-227)

(1) 取引の概要

食料品輸出業を営む法人は日本国内で仕入れた魚介類等をタイ王国に所在するA社に譲渡していた。商品の輸送については、A社のスタッフにより旅客手荷物として飛行機に持ち込まれる方法(ハンドキャリー取引)により行われていた。

(2) 問題点

本件でも、当該取引につき輸出許可書等の交付を受けていないことから、消費税の輸出免税の適用要件を満たしているかについて争われた。

納税者は日本の水産庁が発行した「産地証明書」によりタイ王国において本件商品の輸入の許可を受けており、産地証明書は税関長証明書類に代わるものであることから、輸出免税規定の適用は認められる旨主張した。しかし、裁決では、産地証明書は財務省令に規定する輸出証明書(消規5)とは異なるものであり、これを同視する旨の法令上の規定もないことから、輸出免税規定の適用は認められないと判断している。

海外で消費・使用されるものに日本の消費税を課さないというのが輸出免税の趣旨であるが、輸出免税の適用は実態や事情を事後的に積み上げることによって判断されるものではない。

本稿で紹介した裁決事例からは受取記録や渡航事実、さらには公官庁が発行した証明書であっても、消費税法が求める輸出証明に代替し得ないことが明確に示されている。

なお、ハンドキャリーにより海外に持ち出す場合も、輸出許可書の交付を受けることは可能である。詳しくは税関のホームページ等を参照するか、税関に問い合わせてほしい。

【参考】 税関ホームページ
「手荷物として輸出する場合の手続」

 

〔凡例〕

・消法・・・消費税法

・消規・・・消費税法施行規則

(了)

次回は2/12に公開予定です。

〈適切な判断を導くための〉

消費税実務Q&A

【第16回】

「ハンドキャリーによる輸送品についての輸出免税の適用」

 

税理士 石川 幸恵

 

【Q】

当社は美術工芸品の販売業を営んでいます。海外であるA国に居住するB氏に対し、美術工芸品を販売しました。本件では商品の破損を避ける目的もあり、担当者がこの美術工芸品を手荷物として航空機に持ち込み(いわゆるハンドキャリー)、現地でB氏に直接引き渡しました。代金は現地で現金により受領しています。

この場合における消費税に関する注意点を教えてください。

【A】

ハンドキャリーによる輸出であっても消費税の輸出免税の適用を受けることは可能ですが、実際に相手国で商品を引き渡した事実があるとしても、その事実のみをもって直ちに輸出免税が認められるものではありません。

出国の際に税関長から「輸出証明書等」の交付を受け、輸出取引等を行った日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、納税地又は事務所等の所在地に保存する(消規5①)ことが必要です。

また、令和8年10月1日以後は、現金により輸出取引の代金を受領したものについては、輸入国における輸入許可書等の保存も必要となる予定です(令和8年度税制改正大綱)。

さらに、外国から100万円を超える現金を持ち込む際には税関に「支払手段等の携帯輸出・輸入申告書」の提出が必要となる点にも留意が必要です。

◆ ◆ 解 説 ◆ ◆

取引の実態が海外で消費・使用されるものであれば、輸出免税を受けられると考えがちであるが、輸出免税の適用には政令等で定める方法による輸出証明が要件(消法7②)とされている。

本解説ではハンドキャリー取引が争われた裁決事例を取り上げ、輸出証明のどこが問題とされたのかを確認する。

 

1 美術工芸品のハンドキャリー取引(令和4年1月26日関東信越国税不服審判所、TAINSコード:F0-5-352)

(1) 取引の概要

美術工芸品の販売業等を営む法人は、日本国内で仕入れた美術工芸品を中国上海市に居住する者に販売した。商品の引渡しは、当該法人の代表者が上海に渡航する際に、手荷物として航空機に持ち込む方法(ハンドキャリー取引)により行われていた。

(2) 問題点

本件では、当該取引が輸出取引等に該当するか否かが争われた。具体的にはハンドキャリーによる輸出について、税関長から輸出許可書等の交付を受けていない点が問題とされている。

納税者は、本件ハンドキャリー取引は「本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け等(消法7①一~四)に類するものとして政令で定めるもの(消法7①五)」に該当すると主張したが、裁決はハンドキャリー取引を消費税法第7条第1項第1号の輸出取引そのものと整理した上で、輸出許可書等の交付を受けていない以上、輸出免税の適用要件を満たすものとはいえないと判断している。

これにより、納税者が輸出証明になり得ると主張していた金銭の受取記録や渡航記録はいずれも勘案されなかった。

 

2 魚介類のハンドキャリー取引(平成30年1月11日東京国税不服審判所、TAINSコード:F0-5-227)

(1) 取引の概要

食料品輸出業を営む法人は日本国内で仕入れた魚介類等をタイ王国に所在するA社に譲渡していた。商品の輸送については、A社のスタッフにより旅客手荷物として飛行機に持ち込まれる方法(ハンドキャリー取引)により行われていた。

(2) 問題点

本件でも、当該取引につき輸出許可書等の交付を受けていないことから、消費税の輸出免税の適用要件を満たしているかについて争われた。

納税者は日本の水産庁が発行した「産地証明書」によりタイ王国において本件商品の輸入の許可を受けており、産地証明書は税関長証明書類に代わるものであることから、輸出免税規定の適用は認められる旨主張した。しかし、裁決では、産地証明書は財務省令に規定する輸出証明書(消規5)とは異なるものであり、これを同視する旨の法令上の規定もないことから、輸出免税規定の適用は認められないと判断している。

海外で消費・使用されるものに日本の消費税を課さないというのが輸出免税の趣旨であるが、輸出免税の適用は実態や事情を事後的に積み上げることによって判断されるものではない。

本稿で紹介した裁決事例からは受取記録や渡航事実、さらには公官庁が発行した証明書であっても、消費税法が求める輸出証明に代替し得ないことが明確に示されている。

なお、ハンドキャリーにより海外に持ち出す場合も、輸出許可書の交付を受けることは可能である。詳しくは税関のホームページ等を参照するか、税関に問い合わせてほしい。

【参考】 税関ホームページ
「手荷物として輸出する場合の手続」

 

〔凡例〕

・消法・・・消費税法

・消規・・・消費税法施行規則

(了)

次回は2/12に公開予定です。

連載目次

〈適切な判断を導くための〉消費税実務Q&A

筆者紹介

石川 幸恵

(いしかわ・ゆきえ)

税理士・第一種情報処理技術者
アスエミヲ 石川幸恵税理士事務所(https://as-emiwo.com)

名古屋大学大学院 生命農学研究科 博士前期課程修了。
金融系のIT企業に就職後、お金の流れや儲けの仕組みに興味を持ち、税理士業界へ転職。

平成29年 税理士登録・開業。

法人税はもちろん、個人事業者から法人までの消費税を専門的にサポートし、越境EC、非居住者へのサービスなど海外取引に関わる消費税についても相談を受ける。

【著書】
・『気になるギモンを解消!小さな会社の消費税Q&A』(清文社、2024年)

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