公開日: 2026/08/13 (掲載号:No.681)
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書く論 【第8回】「文才は天才か」

筆者: 編集X

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※本連載は会員以外の方もご覧いただけます。

編集X

〈執筆:編集X〉

書く論

第8回

「文才は天才か」

法律をもとにした難しい内容とはいえ、実務の解説に書かれている文章にも「分かりやすいもの」と「分かりづらいもの」があります。

著者の先生からいただいた原稿を読ませていただき、その流れるような解説にうっとりすることもあれば、「あぁ・・・(これはなかなか大変そうだ)・・・」と、これからの道のりに心を曇らせることもあります。

特に、ほとんど初めて実務の原稿を書いたという方の文章が分かりやすいものだったら、編集者としてはそれだけで「長くお付き合いしたい」(いろんなテーマをご提案したい)とすら考えてしまいます。

原稿を依頼するとき、その人の文章が上手いかどうかは、編集者は、正確には分かりません。過去に著作のある方であったとしても、分かりづらい箇所などは出版に際し手直しされますので、その方の本来の文章(原稿)がそのまま掲載されないケースもあります。このため、発刊された書籍を読ませていただき、その名文に惚れ込んで原稿を依頼した人から、なかなかに読みづらい原稿をいただいたとき、その奥にいる、その書籍の編集者の存在に思いをはせたりします(遠い目・・・)。

また、人前で話すのを得意とされ、数多くのセミナー講師をされている方が、筆力も高いとは限りません。逆に普段から口頭で内容を補足することに慣れておられるせいか、原稿全体がレジュメのように見出しと大きな図で構成されており、文章による解説が圧倒的に不足しているケースもよく見られます。ジャンルに限らず良書とは、ある意味「挫折せず最後まで読み終えることのできる本」とも言えますので、1つ1つの解説を階段とした場合に、その段差が大きい(または階段自体がない)ものは、読者をゴールまで導くのは大変難しい。

ちなみに、これは文章力とは異なりますが、かつて本を出したい(原稿を書きたい)という方の一定数が「普段からブログ(今でいうnote)を書いているので、原稿を書く自信はあります」とおっしゃる方でした。ただ、行間も広くコンテンツごとの内容・分量もシンプルな当時のWeb媒体に比べ、一般的な実務書に求められる文字数の多さと緻密さに、途中で筆が止まることも多かったです。書き上げる「胆力」とでもいうのでしょうか、そういう力も文章力と言えるのかもしれません。

このように文章力は人によって異なるのですが、「努力すれば何とかなる」かというと、これもまた、意外と難しいのです。

真面目で、でも、どうしても分かりづらい文章を書いてしまう方が、何とか目の前にあるご自身の原稿と格闘し、分かりやすくしようとしても、逆にどんどんよく分からない内容に陥ってしまうケースを、何度も目の当たりにしてきました。僭越ながら参考にしてもらえるよう、編集Xが少し手直しさせていただいたとしても、改善される様子は見られず、原稿完成まで長い道のりを歩むこともしばしば。

「・・・。文才って実は、天からの授かりものなのか?」

そういう考えが頭をよぎったこともあります。ただ、それは誤りでした。

あるとき、『○○税理士法人を卒業された税理士さんは、皆さんけっこうな確率で(生まれながらのような?)文章力がある』と気づきました。

そして、複数の方にそれとなく「なぜ先生は、そんなに文章がお上手なのですか」と伺ったところ、「その税理士法人に所属しているときに、『書く』業務を割り当てられ、かつ、文章について先輩から厳しく指導されまして・・・」とのご返事が。

やはり、鍛錬が必要なのだなと、実感した瞬間でした。

じゃあどのようにすれば、文章力が身につくのでしょうか。

おそらくそれは、「自分には文章を書く力が、思ったほどない」と自覚し、法律を学ぶように、「文章の書き方を学ぶ」のを意識することから始めると、よいのではないでしょうか。

なんでもSNSの時代、誰もが手軽に、『著者』になれます。ただし、「自身の書いた文章を公にできる=自分には文章力がある」わけではないのは、意図が伝わらず誤解を与える表現のまま投稿し、燃えてしまうニュースが後を絶たないことから、明らかだと思います。

普段から、実務の解説をよく(×10)読み、その肌感覚を身に付けたうえで、この連載でお伝えしたような

  • 書く分野の内容に(本当に)精通しているか?
  • 読者対象は誰か、細かく把握しているか?
  • 書く内容や順番は決まっているか?
などを意識し、アウトプットを続けていくことが必要なのかもしれません。

最後に、編集X自身も若かりし頃、文章を書くことにコンプレックスがあり、いろいろ修行を重ねていたところ、新聞社の編集委員をされていたSさんにお会いしました。Sさんの「文章には悲しみが必要」という言葉には学ぶべきことが多く、故人となられた今も師と仰いでいます。

(注)この連載に書かれている内容は筆者の私見であり、所属する組織とは一切関係ありません<(_ _)>

(つづく)

「書く論」は、不定期の掲載となります。

※本連載は会員以外の方もご覧いただけます。

編集X

〈執筆:編集X〉

書く論

第8回

「文才は天才か」

法律をもとにした難しい内容とはいえ、実務の解説に書かれている文章にも「分かりやすいもの」と「分かりづらいもの」があります。

著者の先生からいただいた原稿を読ませていただき、その流れるような解説にうっとりすることもあれば、「あぁ・・・(これはなかなか大変そうだ)・・・」と、これからの道のりに心を曇らせることもあります。

特に、ほとんど初めて実務の原稿を書いたという方の文章が分かりやすいものだったら、編集者としてはそれだけで「長くお付き合いしたい」(いろんなテーマをご提案したい)とすら考えてしまいます。

原稿を依頼するとき、その人の文章が上手いかどうかは、編集者は、正確には分かりません。過去に著作のある方であったとしても、分かりづらい箇所などは出版に際し手直しされますので、その方の本来の文章(原稿)がそのまま掲載されないケースもあります。このため、発刊された書籍を読ませていただき、その名文に惚れ込んで原稿を依頼した人から、なかなかに読みづらい原稿をいただいたとき、その奥にいる、その書籍の編集者の存在に思いをはせたりします(遠い目・・・)。

また、人前で話すのを得意とされ、数多くのセミナー講師をされている方が、筆力も高いとは限りません。逆に普段から口頭で内容を補足することに慣れておられるせいか、原稿全体がレジュメのように見出しと大きな図で構成されており、文章による解説が圧倒的に不足しているケースもよく見られます。ジャンルに限らず良書とは、ある意味「挫折せず最後まで読み終えることのできる本」とも言えますので、1つ1つの解説を階段とした場合に、その段差が大きい(または階段自体がない)ものは、読者をゴールまで導くのは大変難しい。

ちなみに、これは文章力とは異なりますが、かつて本を出したい(原稿を書きたい)という方の一定数が「普段からブログ(今でいうnote)を書いているので、原稿を書く自信はあります」とおっしゃる方でした。ただ、行間も広くコンテンツごとの内容・分量もシンプルな当時のWeb媒体に比べ、一般的な実務書に求められる文字数の多さと緻密さに、途中で筆が止まることも多かったです。書き上げる「胆力」とでもいうのでしょうか、そういう力も文章力と言えるのかもしれません。

このように文章力は人によって異なるのですが、「努力すれば何とかなる」かというと、これもまた、意外と難しいのです。

真面目で、でも、どうしても分かりづらい文章を書いてしまう方が、何とか目の前にあるご自身の原稿と格闘し、分かりやすくしようとしても、逆にどんどんよく分からない内容に陥ってしまうケースを、何度も目の当たりにしてきました。僭越ながら参考にしてもらえるよう、編集Xが少し手直しさせていただいたとしても、改善される様子は見られず、原稿完成まで長い道のりを歩むこともしばしば。

「・・・。文才って実は、天からの授かりものなのか?」

そういう考えが頭をよぎったこともあります。ただ、それは誤りでした。

あるとき、『○○税理士法人を卒業された税理士さんは、皆さんけっこうな確率で(生まれながらのような?)文章力がある』と気づきました。

そして、複数の方にそれとなく「なぜ先生は、そんなに文章がお上手なのですか」と伺ったところ、「その税理士法人に所属しているときに、『書く』業務を割り当てられ、かつ、文章について先輩から厳しく指導されまして・・・」とのご返事が。

やはり、鍛錬が必要なのだなと、実感した瞬間でした。

じゃあどのようにすれば、文章力が身につくのでしょうか。

おそらくそれは、「自分には文章を書く力が、思ったほどない」と自覚し、法律を学ぶように、「文章の書き方を学ぶ」のを意識することから始めると、よいのではないでしょうか。

なんでもSNSの時代、誰もが手軽に、『著者』になれます。ただし、「自身の書いた文章を公にできる=自分には文章力がある」わけではないのは、意図が伝わらず誤解を与える表現のまま投稿し、燃えてしまうニュースが後を絶たないことから、明らかだと思います。

普段から、実務の解説をよく(×10)読み、その肌感覚を身に付けたうえで、この連載でお伝えしたような

  • 書く分野の内容に(本当に)精通しているか?
  • 読者対象は誰か、細かく把握しているか?
  • 書く内容や順番は決まっているか?

などを意識し、アウトプットを続けていくことが必要なのかもしれません。

最後に、編集X自身も若かりし頃、文章を書くことにコンプレックスがあり、いろいろ修行を重ねていたところ、新聞社の編集委員をされていたSさんにお会いしました。Sさんの「文章には悲しみが必要」という言葉には学ぶべきことが多く、故人となられた今も師と仰いでいます。

(注)この連載に書かれている内容は筆者の私見であり、所属する組織とは一切関係ありません<(_ _)>

(つづく)

「書く論」は、不定期の掲載となります。

連載目次

筆者紹介

編集X

(へんしゅう・えっくす)

実務書の編集業務に携わって約30年。
老眼歴長め。

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