《税務必敗法》
【第14回】
「電子申告義務の判定を誤った」
公認会計士・税理士 森 智幸
【事例】
株式会社A社は資本金3億円の製造会社である。A社の決算期は3月であり、申告期限は法人税・消費税ともに1か月延長の適用を受けている。なお、A社はグループ通算制度適用法人ではない。
A社は業績不振のため×8年6月24日の定時株主総会で減資することを決議し、減資後の資本金は9,000万円となった。
併せて、税務顧問料節減のため、×8年7月より、税務顧問を準大手税理士法人から地元のX会計事務所へ切り替えた。
しかし、引継ぎに際して、X会計事務所の担当税理士甲は、6月の減資決議を受けて資本金が9,000万円となったA社は大法人ではなくなったと誤認してしまった。
また、X会計事務所はこれまで大法人の申告経験がなかった。税金の申告については電子申告を行っているものの、会計ソフトと申告ソフトが別ベンダーであり、財務諸表については、電子データで作成すると工数がかかるうえ、入力ミスのリスクもあるため、書面で別途郵送する方式を採っていた。
翌×9年6月下旬、A社の定時株主総会終了後、甲は申告期限までに法人税及び消費税の確定申告書を電子申告し、財務諸表は他の顧問先と同様、所轄の国税局の業務センターへ書面で郵送した。
しかし、×9年7月上旬、所轄税務署からX会計事務所に電話があり、以下の内容を告げられた。
「A社は×8年度開始時点で資本金が1億円を超えていましたので、×8年度は電子申告義務対象法人です。今回、財務諸表を書面で郵送いただいていますが、財務諸表も電子提出をお願いします。」
この時点で甲は、A社は×8年度も大法人であり、添付書類も電子提出しなければならないことに初めて気付いた。
甲はA社に対して経緯を説明したうえで謝罪した。すると、A社の経理担当役員から次のようなクレームを受けた。
「無申告扱いにならなかったとはいえ、こういったことは事前に確認できなかったのでしょうか。当社も先生と相互に確認しなかった点に落ち度はあると思います。しかし、『安かろう悪かろう』とは申しませんが、もう少し品質管理を徹底していただきたいと思います。」
その後、A社との顧問契約は継続したものの、翌年の契約更新前、A社から契約解除を告げられた。
1 はじめに
本連載は、税務を行う上で「これをやったら失敗する」という必敗法を紹介するものである。今回は「電子申告義務の判定を誤った」である。
資本金の額等が1億円超の株式会社など一定の内国法人は電子申告が義務化され、電子申告義務がある法人は、申告書だけでなく、財務諸表、勘定科目内訳明細書などの添付書類もすべて電子提出する必要がある。
また、電子申告義務の要件となる資本金の額等は、事業年度開始の時点で判定する。
これらの点は国税庁が2025年7月に公表した「大法人等の皆様!!電子申告義務化に対応できていますか?」というリーフレットにも記載されているので参照されたい。
本稿では、①電子申告義務の判定のタイミングを誤る失敗、②添付書類の電子提出の体制が未整備であることに起因する失敗の2つの視点から論じる。
なお、本稿は私見であることにご留意いただきたい。
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