公開日: 2015/03/12 (掲載号:No.110)
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常識としてのビジネス法律 【第21回】「会社法《平成26年改正対応》(その2)」

筆者: 矢野 千秋

常識としてのビジネス法律

【第21回】

「会社法《平成26年改正対応》(その2)」

 

弁護士 矢野 千秋

 

《前回はこちら

【第20回】 会社法《平成26年改正対応》(その1)

第1 総論

第2 株式

1 総論

(1) 株式、株主

(2) 株主平等の原則

2 株式の譲渡制限制度

3 自己株式の取得

(1) 株式の消却の概念の整理

(2) 自己株式の取得手続

4 募集株式発行(持分価値&持分比率)

新株発行は、本来、会社組織の人的物的拡大行為であり、会社の実質的所有者である株主が決定すべき事項であるともいえる。しかし、新株発行は資金調達の意味合いが強く、そのつど株主総会の決議を要求していてはその機動性が阻害される。

そこで会社が発行することができる株式の総数を定款に記載させ、会社が発行する株式総数の差にあたる部分は、公開会社では取締役会(非公開会社では株主総会)の決議によって随時発行できるようにしている。これを授権資本制度といい、定款により授権された新株発行権限の限度枠を授権枠という。

会社法は基本的に商法の4倍という授権枠を引き継いでいる。すなわち、株式会社は、定款を変更して発行可能株式総数についての定めを廃止することができない(113条1項)とし、さらに、定款を変更して発行可能株式総数を増加する場合には、変更後の発行可能株式総数は、定款変更が効力を生じた時における発行済株式の総数の4倍を超えることができない(同条3項)として、授権資本制度の4倍枠を定款変更の面から規定している。

ただし、非公開会社の場合はこの限りでない(同条3項但書)として、やはり商法の閉鎖会社における授権枠の撤廃を非公開会社において引き継ぐ形となっている。会社法でも非公開会社での募集事項の決定は株主総会の特別決議によらなければならないとして(199条1項2項、202条1項3項)、旧株主の持分比率は保護されているからである。

(1) 募集株式発行(新株発行および自己株式処分)の手続

公開会社においては通常株式市場に上場などがなされており持分比率は保護されているので取締役会が募集事項を決定するが(201条1項。199条3項を除く)、第三者に対する有利発行の場合には、旧株式の持分価値が水割り現象を起こすため、持分価値保護のため株主総会の特別決議が必要である(199条3項、309条2項5号)。株主総会の特別決議で株式数の上限と払込金額の下限を定め(持分価値の減少の最大値を総会が承認すれば)、その他の募集事項の決定を取締役会に委任することができる(200条1項)。この場合は株主総会で有利発行が必要な理由を説明せねばならない(200条2項)。

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第1 総論

第2 株式

1 総論

(1) 株式、株主

(2) 株主平等の原則

2 株式の譲渡制限制度

3 自己株式の取得

(1) 株式の消却の概念の整理

(2) 自己株式の取得手続

4 募集株式発行(持分価値&持分比率)

新株発行は、本来、会社組織の人的物的拡大行為であり、会社の実質的所有者である株主が決定すべき事項であるともいえる。しかし、新株発行は資金調達の意味合いが強く、そのつど株主総会の決議を要求していてはその機動性が阻害される。

そこで会社が発行することができる株式の総数を定款に記載させ、会社が発行する株式総数の差にあたる部分は、公開会社では取締役会(非公開会社では株主総会)の決議によって随時発行できるようにしている。これを授権資本制度といい、定款により授権された新株発行権限の限度枠を授権枠という。

会社法は基本的に商法の4倍という授権枠を引き継いでいる。すなわち、株式会社は、定款を変更して発行可能株式総数についての定めを廃止することができない(113条1項)とし、さらに、定款を変更して発行可能株式総数を増加する場合には、変更後の発行可能株式総数は、定款変更が効力を生じた時における発行済株式の総数の4倍を超えることができない(同条3項)として、授権資本制度の4倍枠を定款変更の面から規定している。

ただし、非公開会社の場合はこの限りでない(同条3項但書)として、やはり商法の閉鎖会社における授権枠の撤廃を非公開会社において引き継ぐ形となっている。会社法でも非公開会社での募集事項の決定は株主総会の特別決議によらなければならないとして(199条1項2項、202条1項3項)、旧株主の持分比率は保護されているからである。

(1) 募集株式発行(新株発行および自己株式処分)の手続

公開会社においては通常株式市場に上場などがなされており持分比率は保護されているので取締役会が募集事項を決定するが(201条1項。199条3項を除く)、第三者に対する有利発行の場合には、旧株式の持分価値が水割り現象を起こすため、持分価値保護のため株主総会の特別決議が必要である(199条3項、309条2項5号)。株主総会の特別決議で株式数の上限と払込金額の下限を定め(持分価値の減少の最大値を総会が承認すれば)、その他の募集事項の決定を取締役会に委任することができる(200条1項)。この場合は株主総会で有利発行が必要な理由を説明せねばならない(200条2項)。

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連載目次

「常識としてのビジネス法律」(全30回)

筆者紹介

矢野 千秋

(やの・ちあき)

弁護士

昭和59年 弁護士登録(第二東京弁護士会)
同年 竹内総合法律事務所に入所(主に企業法務一般・知的財産権担当)
平成4年 米国人名辞典 WHO’S WHO IN THE WORLD掲載
平成7年 独立し高輪に法律事務所設立(主に企業法務一般・知的財産権・民事一般)

(現在)
企業系ビジネスセミナー講師(SMBC、三菱UFJ、みずほ、りそな、日経新聞、産業経理協会、経営調査研究会、四国生産性本部、浜銀総研、長野経済研究所、百五経済研究所 等)
「ソフトウェアの著作権」「知的財産権」「会社の日常業務の法律知識」「取締役に必要な法律知識」「監査役に必要な法律知識」「会社法」「手形小切手法」「債権回収の法律実務」「債権回収と民事再生法」「契約に関する法律知識」「会社のトラブル対策」等

矢野総合法律事務所
〒100-0012 東京都千代田区日比谷公園1番3号 市政会館110号室
TEL 03(3501)9161
FAX 03(5501)3186

【専門分野】
民事・商事・知的財産権法や企業法務

【主な著書】
・『よくわかる!知的財産法実務入門〔第2版〕』(民事法研究会)
・『これだけは知っておきたい 会社で役立つ日常業務の法律知識
・『株主総会・取締役会・監査役 会社機関の運営と基礎知識』
・『カンタン解説!新会社法の基礎と重要ポイント』(以上、清文社)
・『手形小切手法提要』
・『手形小切手法ダイヤグラム』
・『会社法提要』
・『会社法ダイヤグラム』(以上、早稲田経営出版)
・『違法営業活動防止ハンドブック」(ダイヤモンド社)

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