組織再編税制における不確定概念 【第9回】「損失の二重利用①」
法人税法上、損失が二重に利用できるケースが存在し、実務においても活用されるケースが多い。
損失の二重利用を行うためだけにストラクチャーを組むことは少ないが、事業目的のために選択したストラクチャーの結果として、損失が二重に利用できてしまうケースも少なくない。
そこで本連載では、第9回目と第10回目の2回に分けて、このような損失を二重に利用するケースについて、租税回避行為として認定されるか否かについて解説を行う。
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載21〕 合併に伴い合併法人の役員報酬を増額した場合の取扱い
当社は、当期の10月1日に、A社との間で当社を合併法人とする適格合併を行うことを予定しており、この合併で、A社の資産・負債等の他、すべての役員及び従業員を引き継ぐこととなります。
A社の役員の報酬水準は、当社の役員の報酬水準よりも年間でおよそ1,200,000円高くなっています。
このため、当社は、役員間での公平を期するため、合併後は、当社の役員の報酬水準を引き上げざるを得ず、10月支給分から月当たり100,000円を増額して支給することを検討しています。
この当社の役員に対する報酬の増額改定は、法人税法上、「臨時改定事由」(法令69①一ロ)によるものとして認められるのか、ご教示下さい。
なお、合併後も、当社及びA社の役員の役職及び職務内容に大きな変更はありません。
「生産等設備投資促進税制」適用及び実務上のポイント 【第1回】「制度の全体をおさえる」
この「生産等設備投資促進税制」は、該当すると税効果のインパクトがかなり大きくなるケースが想定される。
ただし、設備投資を前提とする減税措置ということは、当然、事前に周到な計画が必要になる。また、適用事業年度の前事業年度の設備投資も、本税制の適用にあたって大きく影響する。
専門家としては、今後、相談やアドバイスを求められる場面が増えると予想されることから、適用要件等をしっかり把握し、的確に助言することが必須となる。
交際費課税Q&A~ポイントを再確認~ 【第1回】「交際費の範囲」
平成25年度税制改正により、中小企業の交際費課税の特例が拡充された。
この特例拡充により、実務の現場において交際費等に係る判断及び処理を行うケースが増えると予測されることから、本連載では、今回の改正に係るポイントだけでなく、改正前から存在する交際費課税に係るさまざまな論点についても、Q&A形式で改めて確認していくこととする。
中小企業のM&Aでも使える税務デューデリジェンス 【第2回】「具体的な調査項目とは」
買い手にとっては、オーナー株主が所有する中小企業(買収対象会社)の買収に際して、その買収の形態次第では買収対象会社の税務リスク(将来税務調査で追徴課税を受けるリスク等)を承継してしまうため、税務デューデリジェンスにより買収対象会社の税務リスクを予め特定・把握し、買収を行うか否かの判断に活用させることが有効といえる。
また、税務リスク額を試算し買収価額へ反映させることで、高値買いを避けるためにも有効な手続であるといえる。
また売り手にとっては、買い手との交渉のための事前準備として、自社の税務リスクを把握しておくことが効果的であるといえる。
自社に係る税務の話とはいえ、過去に戦略的かつ網羅的に検討していないケースが一般には多いと考えられるため、買い手の視点から改めて検討しておくことが有効といえる。
雇用促進税制・所得拡大促進税制の実務 ~要件・手続の確認から両制度の適用比較まで~ 【第4回】「両制度の比較による選択適用上のポイント」
ここまで、雇用対策のための2つの税制である「雇用促進税制」(第1回・第2回)及び「所得拡大促進税制」(第3回)の概要及び適用手続について解説を加えてきた。
これらの税制は、いずれかを選択適用するという関係にある点を踏まえ、今回は、それぞれの税制の概要について比較形式で再度整理するとともに、適用に当たり検討すべきポイントについて解説する。
雇用促進税制と所得拡大税制の概要について、あらためて対比しつつ整理すると、下表の通りとなる。
分割の後に合併があった場合の分割承継法人及び合併法人における試験研究費の特別控除
当社は、数年前よりA社及びB社の発行済株式の100%を有しています。
A社は、従来から2つの商品の研究開発事業を行ってきましたが、経営の効率化のため、平成24年8月1日に、当社との間で当社を分割承継法人とする適格分割を行い、P1商品の開発事業を当社に移転しました。
その後、平成25年10月1日に、A社とB社との間でB社を合併法人とする適格合併が行われ、A社は解散し、P2商品の開発事業がB社に移転されました。
当社及びB社においても、従来から、それぞれ独自に商品の研究開発事業を行っていましたが、当社及びB社がそれぞれ当期(平成25年4月1日から平成26年3月31日まで)に試験研究を行った場合の法人税額の特別控除の適用を受けるに当たって、A社から移転を受けた研究開発事業に係る試験研究費の額や売上調整年度の売上金額の取扱いが分かりませんので、ご教授下さい。
組織再編税制における不確定概念 【第8回】「適格合併における繰越欠損金の利用②」
前回(第7回目)においては、支配関係が生じてから5年経過するまで待つ場合、みなし共同事業要件を形式的に充足させる場合についてそれぞれ解説を行った。
第8回目の本稿においては、さらに発展させた論点として、繰越欠損金を利用するための企業買収と適格合併、繰越欠損金飛ばしスキームについてそれぞれ解説を行う。
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載19〕 債務超過の適格分割型分割を行った場合の資本金等の額と利益積立金額の計算
債務超過の適格分割型分割を行った場合の資本金等の額と利益積立金額の計算は、どのように行うのでしょうか。
中小企業のM&Aでも使える税務デューデリジェンス 【第1回】「買収の形態により異なる税務の取扱い」
昨今、オーナー株主が保有する中小企業に対して、M&A(合併と買収)の話が持ち上がるケースが非常に多い。
その際、買収の手法・形態ごとの税務上の取扱いを予め理解しておくことで、不測の納税が生じてしまう等のリスクを回避・軽減することができる。
また、その買収形態並びに買収価額については、いわゆる「税務デューデリジェンス」の結果に基づき決定されることが多いため、その手続や考え方を理解しておくことも非常に有用である。
税務デューデリジェンスとは、資料の閲覧・計算チェックや税務責任者やマネジメントへの質問を通じて、買収対象会社の過年度における税務の状況を把握・検討・分析し、税務リスク(将来の税務調査で追徴課税を受けるリスク)を洗い出す手続である。
そこで本連載では、現在の中小企業が遭遇する様々なM&Aのケースにおいて、この税務デューデリジェンスの手法を有効に活用する方法と考え方について解説することとする。
まず第1回では、税務デューデリジェンスの具体的な内容を解説する前に、買収の各形態の内容及びその税務上の取扱いやポイントについて、事例を交えて解説する。