中小企業経営者の[老後資金]を構築するポイント 【第17回】「役員や従業員への親族外承継」
前回までの親族内承継に続き、今回は第三者承継として、親族外である自社の役員や従業員に対して事業を引き継ぐケースについて確認をしていく。
従業員や役員に対する事業承継については、中小企業経営者が有する自社株式を役員等が買い取ることにより経営権の移譲を行うことが一般的であり、M&Aの一手法としてMBO(Management Buy Out)やEBO(Employee Buy Out)といわれる手法により実行される。
税務争訟に必要な法曹マインドと裁判の常識 【第10回】「法曹マインドを踏まえた税務調査段階における留意点」
今回からは、これまでの連載を踏まえたまとめとして、改めて読者である税理士(会計専門家、さらには会計税務に関わる企業関係者の方)が法曹マインドを理解する意味について確認した上で、税務調査以降の各場面における留意点等について整理してみたい。
〔“もしも”のために知っておく〕中小企業の情報管理と法的責任 【第18回】「営業秘密を他社に開示する際の留意点」
-Question-
他社との協業にあたり、自社の営業秘密である顧客リストを開示することになりましたが、どのような点に留意して開示を行えばよいでしょうか。
「働き方改革」でどうなる? 中小企業の労務ポイント 【第8回】「複雑な労働時間管理が求められる『副業・兼業』」
これまで、多くの会社では「副業・兼業」が禁止されていました。しかしながら、政府は「働き方改革」の柱の1つに、柔軟な働き方の選択肢として「副業・兼業」を掲げ、厚生労働省が提示する「モデル就業規則」においても平成30年1月改正版から「副業・兼業に関する規定」が新設されました。
このような状況の中、自社の「副業・兼業」の取扱いについて見直しを検討する会社が増えてきています。
改正相続法に対応した実務と留意点 【第8回】「遺言執行者に関する留意点」
改正前民法においては、遺言執行者に関して、その法的地位や権限について不明確な点が多いと言われていた。これを受けて改正後民法では、遺言執行者の権限の明確化等が図られることとなった。改正後民法における規定は、「遺言執行者は、遺言の実現のために行動する者である」という、遺言執行者の本質に留意したものと考えられる。
各変更点については、拙稿「改正法案からみた民法(相続法制)のポイント【第5回】」をご覧いただければと思うが、今回は、具体例に基づき「遺言執行者に就任した場合、具体的にどのように行動すべきか」という観点から、その留意点を解説したい。
事例で検証する最新コンプライアンス問題 【第15回】「自動車メーカー会長逮捕事件-経営トップへのガバナンス(下)」
本稿の「上」で述べたとおり、自動車メーカーN社では「会長への人事・報酬を含む権限の集中」が生じていた。この点にガバナンス上の大きな問題があった。
そこで、この点を改善するため、2019年3月27日付のガバナンス改善特別委員会からの報告書(委員会報告書)は、自動車メーカーN社に対して、「指名委員会等設置会社」に移行することを提言した。
M&Aに必要なデューデリジェンスの基本と実務-法務編- 【第9回】「改正民法とM&A契約の関係」
言い換えれば、法務デューデリジェンスの究極目標は、発見された法的問題点(Legal Risk)等(法的問題点に限らず、財務デューデリジェンスやビジネスデューデリジェンスの結果、発見された問題点も含む)をM&A契約においていかに低減させ、成功に導くかという観点が重要であるということになろう。それを達成するツールが「M&A契約」であり、そういう意味では契約が最も重要ともいえる。
一方で、ご存知のとおり、民法のうち債権関係の規定を改正する民法の一部を改正する法律(以下「改正民法」という)が、平成29年6月2日に公布され、令和2年(2020年)4月1日から施行される。そのため、M&A契約における主要な条項のうちいくつかも、改正民法の影響を受けることになる。
本項では、改正民法とM&A契約の関係について、ポイントを絞ってご紹介する。
事例で検証する最新コンプライアンス問題 【第14回】「自動車メーカー会長逮捕事件-経営トップへのガバナンス(上)」
2019年3月27日、自動車メーカーN社が、ガバナンス改善特別委員会からの報告書を公表した(以下「委員会報告書」という)。同報告書は、同社の会長が逮捕されたことを契機に、同社のガバナンス上の問題点を解明し、ガバナンスの改善点等を提言するものである。
ガバナンスという観点から特に注目されるのは、「取締役の報酬に関する問題」と、「経営体制及び株主との関係に関する問題」である。本稿は「上」と「下」の二部構成である。委員会報告書や報道を基礎に、「上」では取締役の報酬という観点を中心に、ガバナンス上の問題を論じることとする。
〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例38】野村ホールディングス株式会社「不適切な情報伝達事案にかかる調査結果と改善策の公表について」(2019.5.24)
今回取り上げる適時開示は、野村ホールディングス株式会社(以下、野村證券株式会社などのグループ会社を含めて「野村」という)が2019年5月24日に開示した「不適切な情報伝達事案にかかる調査結果と改善策の公表について」である。
「不適切な情報伝達事案」とは、東京証券取引所の市場区分の見直しに関する情報が顧客に漏洩したことであり、この開示で、その調査結果と改善策を公表している(別紙として、「特別調査チームによる報告書(要旨)」と「野村證券が今後実施する改善策等の概要について」を添付する形をとっており、以下、「特別調査チームによる報告書(要旨)」を「調査結果」、「野村證券が今後実施する改善策等の概要について」を「改善策」という)。
なお、同社は、この件により金融庁から行政処分を受けており、2019年5月28日に「野村ホールディングスおよび野村證券に対する金融庁による処分について」を開示している。