M&Aに必要なデューデリジェンスの基本と実務 「むすびに代えて」~「財務・税務と法務との対話と協働」再び~(後編:「『損害』とは何か」を弁護士と会計士が考える)
X社はZ社の発行済全株式をY社から買収することを検討しており、財務・税務アドバイザーとして外部の公認会計士を、法務アドバイザーとして外部の弁護士を起用した。
両事務所はそれぞれZ社の財務・税務デューデリジェンス/法務デューデリジェンスを実施、X社に報告を済ませ、石毛先生が株式譲渡契約書をドラフトしてY社との条件交渉に入ろうという段階である。
松澤先生からもらった宿題に答えるため、高橋氏と石毛先生は松澤先生の事務所を訪れた。
中小企業経営者の[老後資金]を構築するポイント 【第18回】「M&Aによる第三者への承継」
中小企業経営者の事業承継の手法として、前回まで、①親族内承継(自社株の贈与や譲渡)、②親族外承継(自社株を自社の役員・従業員が購入(MBOやEBO))について、老後資金確保の観点から見てきた。今回は全くの第三者への事業承継であるM&A(Mergers and Acquisitions)について確認したい。
M&Aとは「企業の合併・買収」を意味し、具体的には経営者が持つ自社株を第三者に売却し経営権を引き渡すことである。つい先日も、アパレルのオンラインショップ大手の有名経営者がIT企業に自社の株式を譲渡したが、まさにM&Aの一形態といえる。
税務争訟に必要な法曹マインドと裁判の常識 【第11回】「法曹マインドを踏まえた税務争訟における留意点」
前回でも触れたとおり、税務訴訟において当事者双方の主張の根拠となる資料等の収集は、税務調査の段階で、その大半が完結することになる。
この点を踏まえると、税務調査終了段階で税務争訟に移行するかどうかの検討を行うにあたって、まず行うべきは、納税者側及び課税庁側の言い分を対比し、手持ちの資料を突き合わせるなどして、「その時点における争点」を明確化するとともに、その優劣を冷静に比較することである。
〔“もしも”のために知っておく〕中小企業の情報管理と法的責任 【第19回】「営業秘密を取引先に開示する場合の情報漏えいの防止策」
-Question-
他社と取引を始めるに際し、当社の製造上・営業上のノウハウが記載された書類を開示することになりました。
取引先によるこれらの情報の漏えいや不正な利用を防ぐためには、会社として、どのような方策が考えられるでしょうか。
「働き方改革」でどうなる? 中小企業の労務ポイント 【第9回】「『女性』と『シニア層』が生き生きと働ける職場づくり」
ご存知の通り、わが国の人口はすでに減少し始めています。総務省統計局によれば、2010年10月1日現在の日本の人口は1億2,805万人でしたが、2019年9月1日現在(概算値)では1億2,615万人となっており、190万人も減少しています。
一方、総人口は減少している中で、増えているのが「高齢者(65歳以上)人口」と「労働力人口」です。
「高齢者人口」は、2019年9月15日現在、3,588万人と前年(3,556万人)に比べ32万人増加し、総人口に占める割合は28.4%と、前年(28.1%)に比べ0.3ポイント上昇し、人口、割合ともに過去最高となりました。それに伴って、高齢者の就業者も増加しています。2004年以降、15年連続で増加し、2018年の高齢者の就業者は、862万人と過去最多となっています(総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」)。
空き家をめぐる法律問題 【事例17】「台風・強風によって空き家の屋根瓦等が飛散した場合の法的責任」
私は、A市で生活をしていますが、隣のB市に空き家となった実家を所有しています。自宅は、昭和40年代に建築された木造瓦葺の建物です。父は実家の修繕工事をしていたようですが、相当に経年劣化しています。
先日、台風17号(仮称)がB市を縦断し、実家の屋根瓦が一部落下したほか、屋根に残っている瓦も剥がれそうな状態になりました。私は、応急処置としてブルーシートを貼って瓦の落下や雨漏りを防いでいますが、修繕工事の目途は立っていません。天気予報によれば、間もなく大型の台風18号(仮称)がB市を縦断するようです。
もし、この台風によって瓦が飛散して、第三者に損害を与えた場合、私にはどのような法的責任がありますか。
M&Aに必要なデューデリジェンスの基本と実務 「むすびに代えて」~「財務・税務と法務との対話と協働」再び~(中編:弁護士が『違反を知りながら表明保証』させたらどうなるか)
・・・というわけで、松澤先生から、「対象会社の計算書類等には一般に公正妥当と認められた会計基準(GAAP)に合致していない点があり、そのことを買主は財務デューデリジェンスによって知った。それにもかかわらず、買収契約書上、買主が売主に、『すべてGAAPに合致している』という表明保証をさせて、後から『表明保証違反があるじゃないか!』と咎めることが可能か」という宿題をもらってしまいました(詳細は前回を参照)。
石毛先生、教えてください!
今から学ぶ[改正民法(債権法)]Q&A 【第9回】「定型約款(その2)」
前回の解説で、自社の使っている約款が「定型約款」に当たることがわかりました。
定型約款は、事後的に条項を変更する必要性が生じることがありますが、そのような場合の定型約款の取扱いについて教えてください。
M&Aに必要なデューデリジェンスの基本と実務 「むすびに代えて」~「財務・税務と法務との対話と協働」再び~(前編:弁護士はなぜ『計算書類の適正』を表明保証させるのか?)
長きにわたった本連載も、今回からいよいよ最終コーナーに入る。
本連載ではこれまで、「財務・税務デューデリジェンス編」と「法務デューデリジェンス編」とを姉妹編として、両者の協働の重要性、そして両者を繋ぐものとしての依頼者=当事者との協働の重要性をたびたび強調してきた。
そこで本連載の最終テーマとして、こうした協働が、「買収契約書」という1つの「締めくくり」の場面でどう機能するのか、いささか風変わりな趣向ではあるが、「会社担当者と専門家たちとの架空の対話」という形で紹介したいと思う。
〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例39】アスクル株式会社「ヤフー株式会社からの社長退陣要求と、アスクルからの提携解消協議申入れのお知らせ」(2019.7.17)
今回取り上げる適時開示は、アスクル株式会社(以下、「アスクル」という)が2019年7月17日に開示した「ヤフー株式会社からの社長退陣要求と、アスクルからの提携解消協議申入れのお知らせ」である。
アスクルの議決権を45%有するヤフー株式会社(以下、「ヤフー」という)が、8月のアスクルの定時株主総会において、アスクルの岩田彰一郎代表取締役社長(以下、「岩田氏」という)の取締役再任に反対の議決権を行使するというので、アスクルは、ヤフーに対して、ヤフーとの業務・資本提携契約の解消を申し入れることにした、という内容である。
本件に関するマスコミの報道は、どちらかというと、「強引なヤフーに対して、可哀想なアスクル」といった感じで、ヤフーが悪者であるかのような論調が多かったように思われる。しかし、そうした捉え方は正しいのだろうか。