〈事例から学ぶ〉不正を防ぐ社内体制の作り方 【第12回】「身近な資産を守るための仕組み作り」~不当な売却や幽霊資産を防ぐ工夫~
ものづくりの現場で日常的に用いられる工具や備品のなかには、高価で長期の使用に耐えるものが多くあります。これらは消耗品とは異なり、日常で継続的に用いられる資産として、会社の財務諸表に計上して管理します。また、工具や備品に留まらず、商品や製品については、たとえ破損しても、それが経済的な取引価値を持つ限り、資産として管理することをおろそかにはできません。
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第119回】株式会社北弘電社「特別調査委員会調査報告書(2021年10月15日付)」
北弘電社は、2021年7月、2022年3月期第1四半期決算の確定作業において、工事進行基準を適用している太陽光発電所建設工事に関わる案件について、工事原価総額の見積りを見直したところ、設備の設計変更による工事原価740百万円の増加が見込まれ、また、同年6月25日の外注先との協議では、内訳や金額の妥当性については不明確ながらも、土木工事費総額が予算から792百万円超過する可能性があることが判明したため、同年8月6日、会計監査人である新日本監査法人から、工事原価総額の見積変更の適時性についての疑義(高山案件疑義)が示されることとなった。
〈事例から学ぶ〉不正を防ぐ社内体制の作り方 【第11回】「「内部統制報告書」から学ぶこと」~失敗事例を分析し今後の事業に活かす~
社内体制のなかで起きる不正を防ぐためのさまざまな工夫やルールを事例に基づいて読者の皆さんにご紹介し、まもなく1年が経過しようとしています。不正や誤謬(誤り)を牽制し、より適切な社内体制を構築するためには、成功事例を語るより、むしろ失敗事例を取り上げて検討を加えることの方が、より近道のように考えられます。なぜなら、失敗事例からは多くの学びと教訓が得られると考えられるからです。
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第118回】OKK株式会社「特別調査委員会調査報告書(開示版)(2021年9月17日付)」
OKKは、会計監査人である新日本監査法人から、仕掛品残高の費用処理に関する問題点、具体的には、滞留仕掛品の売上原価による費用処理について、その適正性について検証が必要である旨の指摘を受け、調査を行った結果、仕掛品残高の確定につき、過去の会計処理に誤りがある可能性を確知し、2021年5月21日、会計監査人との協議の上、当該事実の解明については社内調査委員会による調査が必要であると判断し、速やかに専門性を有する有識者からなる社内調査委員会を設置して調査を行った。
〈事例から学ぶ〉不正を防ぐ社内体制の作り方 【第10回】「パンデミック下のIT統制を考える」~社内情報の漏えい防止とアクセス権限管理~
長引くパンデミックの影響から、筆者の周囲には、地方の実家に戻って自然を満喫し、テレワークを続けるといった人も出始めています。こうした生活様式、働き方の変貌を見るにつけ、ITの利便性を実感しますが、他方で相応のリスクも見え隠れしています。
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第117回】アジャイルメディア・ネットワーク株式会社「第三者委員会最終調査報告書(要点版)(2021年6月21日付)」
AMNは、2021年12月期から会計監査人に就任したかなで監査法人による2021年12月期第1四半期レビュー手続の中で、不適切な会計処理があることを指摘されたことを契機として、当該指摘の内容を確認したところ、AMNの取締役であるA氏による資金流用の疑義(本件疑義)を認識するに至った。
〈事例から学ぶ〉不正を防ぐ社内体制の作り方 【第9回】「会社の有効な仕組み作りとトレードオフの関係」
東京オリンピックは今までにないメダルラッシュとなりました。大きな声援が送られた一方で、新型コロナウイルスによるパンデミックがとどまることはなく、残念なことに感染者の増加もみられました。そうしたなか、経済活動と感染予防策について、オリンピック中も繰り返し報道がされていたのは、みなさんご存じの通りです。オリンピックを円滑に運用して成功に導くために、これ以上感染の広がりを防ごうとすれば、酒類の提供を禁止し、営業活動を制限するなどして経済を犠牲にせざるを得ません。
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第116回】株式会社ショーエイコーポレーション「外部調査委員会調査報告書(要約版)(2021年6月18日付)」
本件は、ショーエイの大阪本社営業部長であるs1氏が、2021年3月29日、執行役員であるs2氏に対し、B社から3月末に入金予定であった売掛金が未回収となる報告を行ったことから発覚したものであり、s1氏の報告により、ショーエイは、A社代表取締役a氏が主導する架空循環取引に巻き込まれていたことが明らかになったものである。
ショーエイは、社内における事実確認の結果、ステークホルダーに対して、正確かつ迅速で透明性がある説明を行い、安心と信頼を得るためには、ショーエイと利害関係のない外部専門家の関与により調査の客観性及び信頼性を確保しつつ、本件循環取引の全容解明を期するとともに、類似取引の有無等を把握することが必要と判断して、2021年4月30日、外部調査委員会の設置を取締役会において決議し、調査を開始した。
〈事例から学ぶ〉不正を防ぐ社内体制の作り方 【第8回】「牽制と予防の仕組みの限界を考える」~共謀、非定型的な取引、経営者による内部統制の軽視等への対応~
人は元来、間違う動物です。そのため、日常の業務のなかで起きる判断の誤り、不注意による人為的なミスや不正に対し、牽制や予防をするために、私たちはさまざまな仕組みや手続をデザインして周到に備えています。しかし、あらゆる仕組みや手続には、常に限界が伴います。つまり、本来の機能が有効に働かず、求められている目的を完全に達成できなくなることが起こります。
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第115回】アジア開発キャピタル株式会社「特別調査委員会調査報告書(2021年6月21日付)」
2021(令和3)年4月9日に公表した「第三者委員会設置のお知らせ」で、ADCは、その設置の経緯について、次のように説明していた。
ADCは、子会社であるT7を通じてADC元取締役2名が関係する複数の会社との間に不可解かつ不適切とも思われる取引が多数実在していることを社内調査によって確認したと同時に、会計処理が不適切に行われていたのではないかという疑義も発覚したため、当該不適切会計処理の事実関係解明及びその原因分析、並びにそれに類似する取引の有無の調査を行い、全容解明のために、第三者委員会の設置について決議したものである。