収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第7回】
上述(前回参照)のとおり、法人税法22条2項は、収益の計上時期について具体的な基準を定めていないが、あえて、条文から収益の計上時期の決定に関するルールを抽出する作業を試みるとどうなるか。租税法の世界では租税法律主義の原則が存在し(憲法30、84)、租税法規の解釈に当たっては、厳格な文理解釈が要請される。このことを踏まえると、かかる作業を行うことにも理由がある。もちろん、文言のみに捉われた解釈は時に受け入れられない場合があることに注意を要する。
法人税法22条2項は、取引に係る収益の額と規定しているから、取引の発生前に収益が認識されることはないという読み方もありうると思われる。もっとも、取引発生後、具体的にどの時点で収益を認識すべきであるかという点については、やはり判然としない。
さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第49回】「髙野歯科医師事件」~最判平成2年6月5日(民集44巻4号612頁)~
歯科医師Xは、ある年度に関し、社会保険診療報酬について概算経費で経費を計上して所得税の確定申告をした。これは実額経費より概算経費の方が有利と判断したからであったが、実は計算誤りがあって実額経費を少なく算出したために、そのような判断となったのであって、実際には、実額経費の方が有利であった。
その後、Xは、自由診療収入の計上漏れと、上記計算誤りに気付き、自由診療収入を修正し、また、社会保険診療報酬については概算経費ではなく実額経費で経費を計上して修正申告をした。これに対し、Y税務署長は、社会診療報酬の必要経費を概算経費に改めて更正処分をした。そこで、Xは、更正処分の取消しを求めて提訴した。
《速報解説》 中小企業強靱化法の施行日は2019年7月16日で確定~特定事業継続力強化設備等の特別償却適用に必要な事業計画・認定手続等を規定~
令和元年度(平成31年度)税制改正で創設された特定事業継続力強化設備等の特別償却制度(措法44の2、11の4)は、青色申告書を提出する中小企業者(適用除外事業者を除く)が防災・減災を目的とした一定の設備(特定事業継続力強化設備等)を取得等して事業供用した場合に20%の特別償却を受けられるというもの。
《速報解説》 国税庁、定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ(全20問)を公表~新設9-3-5-の2の詳解や契約内容の変更等に係る取扱いを説明~
このほど国税庁は7月8日、ホームページ上で、改正後の通達に関して寄せられた主な質問に対する回答を取りまとめた「定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ」を公表した。
《速報解説》 配偶者居住権、二次相続(配偶者の死亡)での課税関係は生じず、期間中途の合意解除等の場合はみなし贈与課税~財務省が「令和元年度 税制改正の解説」で見解示す~
今月1日より改正相続法が本格的に施行され今後の遺産分割実務への影響も大きいところだが、本改正のうち税理士等からの注目度の高い「配偶者居住権の創設」は、来年(令和2年)4月1日以後開始の相続から適用される。
monthly TAX views -No.78-「一般的否認規定の検討を」
先日、日本経済新聞社から、ソフトバンクグループが修正申告をした件につき、コメント依頼があり、スキームの詳細は知らないという前提で、以下のように答えた。
限られた紙面なので、意が尽くせない部分もあり、以下、もう少し詳しく述べてみたい。
定期保険及び第三分野保険に係る改正法人税基本通達の取扱いとその影響 【第1回】「見直しの契機となった保険商品の特徴」
国税庁は2019年(令和元年)6月28日付けで「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」を公表、同年4月11日から5月10日にかけてのパブリックコメント(意見募集)を経て、かねてから問題視されていた企業向けの保険商品を使った節税策を規制する見直しを行った。
平成31年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第2回】「研究開発税制の見直し(その2:総額型のベンチャー企業に係る見直し)」
控除限度割合が25%から40%に引上げられるベンチャー企業の要件は以下のとおりとなる(措法42の4②、68の9②)。
なお、総額型の控除限度割合は、一定の要件を満たした場合、最大10%が上乗せされるため、ベンチャー企業の要件を満たした場合、総額型の10%上乗せ後の控除限度割合は、最大50%となる。
《相続専門税理士 木下勇人が教える》一歩先行く資産税周辺知識と税理士業務の活用法 【第3回】「税理士が「本当に」認識すべきは問題解決ツールとしての民事信託」
税理士は「民事信託」について聞かれたとき、「課税関係」だけを答えればよいだろうか。筆者は、税理士としては課税関係よりも、民事信託で何ができるのか、つまり、どんな問題解決が可能なのかを知ることが何よりも先決と考える。
そこで今回は、問題解決ツールとしての民事信託の機能のうち「財産管理機能」を取り上げ、各場面に連動する課税関係についてフォーカスしたい。
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例7】「医療用検査機器の機械装置該当性」
私は、東京都内にある臨床検査を行う株式会社に勤務しております。私の勤務する会社では、近隣の病院やクリニックから委託を受けて、様々な臨床検査を行うことを主たる業務としております。その際、各種臨床検査機器を利用することとなりますが、会社の方針として、高額の医療機器は原則リースではなく購入により導入することとしております。
その際、医療機器を扱う商社から、わが社の場合、規模も小さく、法人税法上も中小企業者等に該当するため、導入した検査機器は特別償却の対象となる旨アドバイスを受けました。そこで、わが社の経理担当者はそのような経理処理を行っていたものと聞いていました。
さて、実は先日受けた税務調査で、専門商社から購入し既に事業の用に供している検査機器の特別償却が問題となりました。検査を担当している私も調査官に呼ばれていろいろヒアリングを受けましたが、その最後に、特別償却を適用した検査機器はすべて「器具備品」であって「機械装置」ではないから、適用対象外である、と言い渡されました。