谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第1回】「憲法上の租税概念」-旭川市国民健康保険条例事件・最[大]判平成18年3月1日民集60巻2号587頁-
本連載は、「谷口教授と学ぶ」シリーズとして、昨年(2020年)12月に第50回をもって連載を終了した「税法の基礎理論」に続くものであり、「税法基本判例」と題して税法判例を検討するものである。
とはいえ、通常行われるような判例評釈や判例研究を主たる目的とするものではなく、「税法の基礎理論」と同じく原則1回読み切りの「読み物」として税法判例を検討しようとするものであることから、検討対象の判例が取り扱った論点を網羅的に検討するのではなく、むしろ筆者の問題関心により論点を絞って(内容的には「税法の基礎理論」的思考を重視しながら)検討しようとするものであることを、連載を始めるに当たって予めお断りしておく。
〈判例評釈〉ユニバーサルミュージック高裁判決 【第6回】
一般に、企業グループにおいて、借入金の返済に係る経済的負担を資本関係の下流にある子会社に負担させることを「デット・プッシュ・ダウン」と呼ぶが、その経済的負担をグループ内のどの子会社に負わせるのかについて、判決は、「財務上の観点からは、規模が大きく多額の利益を計上している事業会社に対してより多くの債務を負担させることが合理的」と述べている。
船舶の評価を巡る贈与税決定処分等の取消訴訟において全部取消が認められた事例-東京地裁令和2年10月1日判決(平成28年(行ウ)第413号:贈与税決定処分等取消請求事件)- 【第2回】
裁判所は、まず、「精通者意見価格」をもって船舶の客観的な交換価値であるというためには、少なくとも、当該精通者による船舶の価値の評価が、鑑定の目的に照らして合理的に行われたものであることが前提となるところ、船価鑑定の具体的な手法は精通者の間においても一様ではなく、鑑定方式の選択や価格形成要因の評価等の取扱いが異なっていることに照らせば、その合理性の認定は慎重に行わなければならないと判示した。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例97(相続税)】 「申告期限前に貸付事業をやめてしまったため、「小規模宅地等の特例」の適用が受けられなくなってしまった事例」
被相続人甲の相続税の申告につき、貸駐車場用地を貸付事業用宅地として「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」(以下「小規模宅地等の特例」という)を適用して申告したが、申告期限まで事業継続しなければならない旨の説明をしなかったため、申告期限前に事業供用をやめてしまった。これにより、「小規模宅地等の特例」の適用が受けられなくなってしまい、修正申告をすることになってしまった。
固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第4回】「大学附属病院を建築中の土地の固定資産税は非課税か否かで争われた判例」
固定資産税は、その年1月1日に土地、建物、償却資産を所有している者が固定資産の価格を基に算定された税額をその固定資産の所在する市町村に納付するものである。
しかし、市町村は、国、都道府県、市町村、特別区等に対しては、固定資産税を課することができない(地方税法第348条第1項)。
居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第26回】「生計を一にする親族が転居した日から1年を経過した日以後に譲渡した場合」-生計を一にする親族の居住用家屋の譲渡-
Xは、名古屋にあるX所有の家屋にXの両親と一緒に居住していました。5年前、東京本社へ転勤となったため東京の社宅に転居し、名古屋にある家屋には両親だけが居住していました。転勤後、両親の生活を支えるため毎月送金を続けていましたが、2年前に父が死亡したことから、母を東京の社宅に引き取って、名古屋の家屋は他人に賃貸していました。
本年、名古屋の家屋を売却したところ、多額の譲渡損失が発生し、銀行に新たな住宅ローンを組んで東京に新居を購入しました。
他の適用要件が具備されている場合に、Xは「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を受けることができるでしょうか。
収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第52回】
『平成30年度 税制改正の解説』は、法人税法22条の2第4項の解説の中で、同項でいう「価額」及び「通常得べき対価の額」は幅のある概念であることを正面から認めている。
日本の企業税制 【第90回】「米国バイデン政権の税制改革計画」
米国バイデン政権は4月7日、「メイド・イン・アメリカ税制計画(Made in America Tax Plan)」を発表した。この税制計画の目的は、3月31日に公表された「米国雇用計画(American Jobs Plan)」に盛り込まれたインフラ投資、研究開発、製造業支援等の8年で約2.25兆ドルにも上る支出をまかなうための財源的な手当である。今回の税制計画では15年で約2.5兆ドルの税収増が見込まれている。
船舶の評価を巡る贈与税決定処分等の取消訴訟において全部取消が認められた事例-東京地裁令和2年10月1日判決(平成28年(行ウ)第413号:贈与税決定処分等取消請求事件)- 【第1回】
相続税法第22条は、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、原則として、当該財産の取得の時における時価による旨規定する。そして、この財産の評価に関する基本的な取扱いを定める財産評価基本通達(以下「評価通達」という)は、船舶の価額について、原則として、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価するものとし、これが明らかでない船舶については、同種同型の船舶を課税時期において新造する場合の価額から償却費等を控除した価額によって評価するものとしている(評価通達136)。
かかる船舶の評価が争点となった贈与税決定処分等の取消訴訟において、東京地方裁判所は、令和2年10月1日、原告側の主張を認め、贈与税決定処分等の全部を取り消す判決を下したため、事例判断ではあるが、今後の実務の参考として紹介する(同月16日判決確定)。