「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例112(贈与税)】 「新築マンションの購入につき、贈与年の翌年3月15日までに引渡しを受けていないとして住宅取得資金贈与の非課税特例の適用が受けられなくなってしまった事例」
令和X年分の贈与税につき、「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」(以下「住宅取得資金贈与の非課税特例」という)の適用をして申告したが、所轄税務署より、「購入した新築マンションについて贈与年の翌年3月15日までに引渡しを受けておらず、要件を満たしていない」との指摘を受け、暦年課税で修正申告することになってしまった。これにより、修正申告となった贈与税額につき損害が発生し、賠償請求を受けたものである。
〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第46回】「被相続人以外の者が建物を所有している場合の特定同族会社事業用宅地等の特例の適否」
被相続人である甲の相続発生に伴い、甲の所有していた土地建物を長男乙が取得した場合には、乙が適用できる特定同族会社事業用宅地等に係る小規模宅地等の特例の適用面積は何㎡でしょうか。
乙は甲と生計を一にしていた者に該当し、A社(相続開始の直前において100%の株式を乙が保有しています)の代表取締役として飲食店を経営しています。
固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第19回】「固定資産税の課税標準である土地の価格は収益還元法に基づくか否かで争われた事例」
固定資産税の課税標準となるものは、土地の場合は、賦課期日における価格で土地課税台帳もしくは土地補充課税台帳に登録されたものとするとされている(地法349①)。
固定資産の価格は、固定資産評価基準によって決定しなければならないとされている(地法403①)。つまり、「固定資産評価基準は、一種の委任立法であり、補充立法である」(※1)。
(※1) 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂、2021年)794頁。
収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第83回】
〈Q8〉平成30年度改正前は、権利確定主義のほかに、法人税法における収益の計上基準として、利得が利得者の管理支配の下に入った場合に所得として実現したものとする管理支配基準が採用されているという見解があった。この管理支配基準と引渡基準との関係はどのように考えるべきか。
日本の企業税制 【第105回】「ストックオプション税制の見直し」
6月24日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」では重点投資に係る4分野として、①人への投資、②科学技術・イノベーションへの投資、③スタートアップへの投資、④GX(グリーントランスフォーメーション)及びDX(デジタルトランスフォーメーション)への投資、が掲げられている。これら4分野、いずれも今後の税制改正に関連する課題を含むものである。
〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第40回】「いわゆる黄金株を有する役員の『退職の事実』」
当社は、現事業年度において代表取締役が退任するため、役員退職給与を支給する予定です。ここで、当該代表取締役は、いわゆる黄金株を有する株主でもあるため、退職後も、本人の意思次第では拒否権を行使する形で経営に関与することも考えられます。
この場合において、役員退職給与を支給して、損金算入することは可能でしょうか。
基礎から身につく組織再編税制 【第42回】「適格現物出資があった場合の特定資産譲渡等損失の損金算入制限」
今回は、適格現物出資があった場合の特定資産譲渡等損失の損金算入制限について解説します。
適格現物出資があった場合には、現物出資法人の有する資産は、現物出資法人の帳簿価額で被現物出資法人に引き継がれます。したがって、現物出資法人から移転を受けた資産の含み損を実現させ、被現物出資法人の所得と相殺する、あるいは、現物出資法人から移転を受けた資産の含み益を実現させ、被現物出資法人の含み損と相殺するといった租税回避行為が可能となります。
このような租税回避行為を防止する観点から、一定の適格現物出資があった場合に、その後に含み損を実現したときは、その損失を損金の額に算入しないという規定が設けられています。
相続税の実務問答 【第73回】「相続時精算課税適用者が養親である特定贈与者と離縁した場合」
私は、今から10年前に、A社の創業社長である甲と養子縁組を行いました。その後、私は、A社の専務取締役としてA社の経営に従事し、甲からも私の仕事ぶりを評価してもらい、後継者候補とまでいわれるようになりました。
A社の発行済み株式は20,000株で、そのうちの18,000株は甲が、残りの2,000株を甲の弟乙が保有していましたが、3年前に、私は甲からA社の株式1,000株の贈与を受けました。私が甲から贈与を受けたA社の株式1,000株の評価額は3,000万円になりますが、相続時精算課税を選択しましたので、100万円の贈与税の負担で済みました。
ところが、ある出来事が原因で甲との養子縁組を解消することとなりました。
相続時精算課税制度を適用した贈与については、その贈与者に相続が開始した時には、その贈与財産の価額を相続税の課税価格に含めて相続税を計算し、算出された相続税を納付しなければならないと聞きました。しかしながら、私の場合には、贈与者である甲との間の養子縁組を解消し、甲との親族関係はなくなりますので、相続時精算課税の選択を撤回したいと思いますが、いかがでしょうか。
〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第45回】「会社の代表者が親族外である場合の特定同族会社事業用宅地等の特例の適用の可否」
被相続人である甲(令和4年7月13日相続発生)は金属製品製造業であるA株式会社の代表者で100%の株式を所有していました。甲は、令和3年10月に親族外である役員乙に代表権を移譲し、退職金を受け取り、その後は、非常勤取締役の会長として勤務していました。株式については、生前に承継せずに100%保有したまま相続が発生しています。
酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第109回】「節税商品取引を巡る法律問題(その3)」
節税商品取引を抽出して検討する第二の理由は、節税商品の特殊構造ゆえ、一般的金融商品取引とは別に説明義務が検討される必要があるということである。
これは①商品の二重構造性、リスクの二重構造性、商品の新規性という「特殊構造」や、②節税商品取引における説明内容の二重構造性から、特有の説明義務が要請される必要があるということ。更には、③説明義務者の専門的知識の欠如の問題にも節税商品取引に係る特有な問題が介在するということである。
これら節税商品取引の説明義務に係る特殊構造から、他の一般的金融商品取引に係る投資者保護の議論とは異なる捉え方が必要となるのである。