事業年度中の消費税率引上げに関する企業対応
消費税の税率は、2019年10月1日に10%(※1)となる。
これまで、消費税法の施行、3%から5%への税率引上げ、5%から8%への税率引上げは、下記のように、その施行日がすべて4月1日であった。したがって、3月末決算法人は、事業年度(※2)の途中で消費税の税率を変更した経験がない。
山本守之の法人税“一刀両断” 【第52回】「消費増税を考える」
2019年度(平成31年)の税制改正は、同年10月から消費税率が10%に増税となることが予定されているため、その改正を下支えする税制に重点が置かれています。
2014年度に税率を5%から8%に引き上げた際、増税後の4~6月期の個人消費は、実質ベースで前期比年度率17.2%減となり、景気回復まで4年近くを要しました。この反省から、2019年度の税制改正では、消費増税前の駆け込み需要とその反動による消費消え込みを抑えることが最大のテーマとなり、今回は特に住宅、自動車の消費冷え込み対策に力を入れることになります。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例67(消費税)】 「当初申告において合同会社の持分譲渡を誤って不課税売上として計算し、一括比例配分方式有利で申告したが、修正申告において非課税売上に修正したところ、課税売上割合が著しく減少し、個別対応方式が明らかに有利となった事例」
平成X9年3月期の消費税につき、課税売上高が5億円超であり、全額控除ができないが、当初申告における課税売上割合が100%に限りなく近かったことから、一括比例配分方式で申告を行った。その後、依頼者の指摘により、課税売上割合の計算上、合同会社の持分譲渡を非課税売上に計上すべきところ、誤って不課税売上に計上していることが判明し、修正申告することになった。
日本の企業税制 【第60回】「消費税率の引上げに向けた対策」
10月15日、安倍首相は臨時閣議で、来年(2019年)10月1日に消費税率を、法律で定められたとおり、現行の8%から10%へ引き上げることを表明した。
今回の引上げ幅は2%であるが、前回5%から8%へ3%引き上げた際には、引上げ後の実質GDPが2四半期連続でマイナス成長となり、その大きな要因として、GDPの6割を占める個人消費が4-6月期及び7-9月期に前年同期比で2%以上減少したことが指摘されていた。
monthly TAX views -No.69-「消費増税の準備はなぜ進まないのか?」
2019年10月からの消費税率10%への引上げまで1年をきったが、事業者の準備が進んでいない。
今回の引上げの特色は、わが国で初めての8%の軽減税率が飲食料品などに導入されるという点である。軽減税率の導入に際しては、食料品などを販売する小売店や外食関連の店は、8%と10%という2つの税率に対応したレジへの切り替えや価格表示、さらには経理事務が必要となる。
租税争訟レポート 【第39回】「消費税の適正な転嫁と課税庁による外注費の給与認定」
本稿では、免税事業者に対しても税率引上げ後の消費税額等の適正な転嫁を推進する中小企業庁/公正取引員会の取組みと、外注費等について給与認定を行うことによって課税仕入れに該当しないものとして取り扱い、仕入税額控除を否認すると同時に、源泉所得税の徴収洩れに伴う納税告知処分を行っている税務調査の現場と、これを認容する国税不服審判所の判断を参照しながら、免税事業者と消費税について、論考を行いたい。
〔Q&A・取扱通達からみた〕適格請求書等保存方式(インボイス方式)の実務 【第4回】「適格請求書等保存方式の下での税額計算」
適格請求書等保存方式における売上税額については、原則として、課税期間中の課税資産の譲渡等の税込金額の合計額に110分の100(軽減税率の対象となる場合は108分の100)を掛けて計算した課税標準額に7.8%(軽減税率の対象となる場合は6.24%)を掛けて算出する(総額割戻し方式)。
また、これ以外の方法として、交付した適格請求書及び適格簡易請求書の写し(電磁的記録により提供したものも含む)を保存している場合に、そこに記載された税率ごとの消費税額等の合計額に100分の78を乗じて計算した金額とすることもできる(適格請求書等積上げ方式)。
〔Q&A・取扱通達からみた〕適格請求書等保存方式(インボイス方式)の実務 【第3回】「適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件」
任意組合の共同事業として課税仕入れを行った場合に、幹事会社が課税仕入れの名義人となっている等の事由により各構成員の持分に応じた適格請求書の交付を受けることができないときにおいて、幹事会社が仕入先から交付を受けた適格請求書のコピーに各構成員の出資金等の割合に応じた課税仕入れに係る対価の額の配分内容を記載したものは、その他の構成員における仕入税額控除のために保存が必要な請求書等に該当するものとして取り扱われ、その保存をもって、仕入税額控除のための請求書等の保存要件を満たすことになる。
〔Q&A・取扱通達からみた〕適格請求書等保存方式(インボイス方式)の実務 【第2回】「適格請求書発行事業者の義務等」
適格請求書の様式は、法令で定められていない。
したがって、適格請求書として必要な次の事項が記載されていれば、名称を問わず適格請求書に該当する(手書きの領収書でも可)。
(イ) 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
(ロ) 課税資産の譲渡等を行った年月日
(ハ) 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
(ニ) 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
(ホ) 税率ごとに区分した消費税額等
(へ) 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例64(消費税)】 「特定期間で課税事業者になっていたことに気づかず、建物売却に係る消費税の納付が発生してしまった事例」
税理士は、学校法人である依頼者より事前に校舎2棟を売却する予定を聞いていた。平成X8年9月に1棟目のA校舎を売却したため、「特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例」により、平成Y0年3月期は課税事業者となった。しかし、税理士はこれに気づかず、消費税について何のアドバイスもしなかったため、依頼者は課税事業者となった平成X9年4月に2棟目のB校舎を売却した。これにより、B校舎売却に係る消費税の納付が発生した。