monthly TAX views -No.33-「見えない『日本型軽減税率』の行方」
9月10日、財務省が与党税制協議会に提出した「日本型軽減税率」の評判は芳しくない。「国民の7割が反対」という世論調査まである。
おそらくそれを承知で財務省が公表せざるを得なかったのは、以下のような極めて政治的な理由からである。
国境を越えた役務の提供に係る消費税課税の見直し等と実務対応 【第2回】「国境を越えた役務の提供に係る消費税の従来の取扱い」
EU等における付加価値税と同様に、わが国の消費税の課税対象となる取引は前述のとおり、国内取引、すなわち国内において事業者が行った資産の譲渡等である(消法4①)。したがって、国外において事業者が行った取引(国外取引)には消費税が課されない。
ところが近年、このような課税原則では対処できない取引が問題となっていた。それは、海外の事業者が提供する「電子書籍」や「ネット配信」に対して、果たして消費税の課税ができるのかという問題である。
消費税の軽減税率を検証する 【第8回】「日本型軽減税率制度」
平成27年9月10日、「与党税制協議会」の下に設けられた「消費税軽減税率制度検討委員会」(以下「検討委員会」という)は、「日本型軽減税率制度」の発案を受け、議論を再開した。
検討委員会では、軽減税率の導入について、自民党、公明党が合意できる案がまとまらず、5月27日の会議の後は、協議が中断していた。「さまざまな問題を克服できる案を出せ」と投げられた財務省が示したのが「日本型軽減率制度」である。
その後の報道では、与党内において「袋叩き」とさえ表現されているが、本年末の策定を目指す制度案として、生き残ることができるのだろうか。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例30(消費税)】 「特定期間における課税売上高が5,000万円超であったため、簡易課税は選択できないものと誤認し、「簡易課税制度選択届出書」を提出しなかった事例」
設立2期目である平成27年3月期の消費税につき、特定期間の課税売上高が1,000万円超であり、かつ、給与等支給額の合計額が1,000万円超であったため、課税事業者となった。
平成27年3月期は簡易課税が有利であったが、特定期間における課税売上高が5,000万円超であったため、簡易課税は選択できないものと誤認し、期限までに「簡易課税制度選択届出書」を提出しなかった。
このため、不利な原則課税での申告となってしまい、有利な簡易課税と不利な原則課税との差額につき損害が発生し、賠償請求を受けた。
国境を越えた役務の提供に係る消費税課税の見直し等と実務対応 【第1回】「改正前の国内取引の判定基準」
平成27年度の税制改正により、国境を越える役務の提供に係る消費税の課税が大幅に見直されることとなった。当該改正は原則として平成27年10月1日以降において行われる取引について適用されることから、正にこれから実務で問題となり得る項目であるといえる。
そこで本連載では、国境を越える役務の提供に係る消費税の課税に関し、新たに導入されることとなる「リバースチャージ方式」が国内企業の実務に及ぼす影響と対策について検討することとする。
消費税の軽減税率を検証する 【第7回】「適用税率誤りのリスク・事務負担・簡易課税への影響等」
適用するべき税率について疑義がある場合、「その商品の販売価額をどう設定するか?」という問題が生じる。
見切り発車をした結果、軽減税率の適用が誤りであったことが税務調査で明らかになった場合、売上先に対して、遡って取引額を修正し追加の支払いを求めることができるだろうか。
対消費者取引ではほとんど不可能と考えられ、その増差税額(多くの場合、数年分の累計額となろう)は、事業者の負担となり、経営状態を一気に悪化させることになる。
消費税の軽減税率を検証する 【第6回】「執行コストの増大と事業者の優遇措置としての効果」
軽減税率の実施に当たっては、膨大な通達が必要になる。近時、国税庁は新しい制度についてQ&Aを公表するのが常となっており、その策定も求められよう。
そしてこれらは、実務からの要請で見直され、複雑化していくことになる。
消費税の軽減税率を検証する 【第5回】「軽減税率による減収とさらなる標準税率の引上げ」
消費税率の引上げと軽減税率の導入とは、政策論として矛盾する。
軽減税率は、税率の引上げにより増加するはずの税収を侵食し、標準税率をより高く引き上げる必要を生じさせるからである。
与党税制協議会が平成26年6月5日に公表した「消費税の軽減税率に関する検討について」(以下「検討資料」という)には、「検討資料」は、飲食料品分野に軽減税率を適用することを想定して、次の8種類の線引きのパターンを提示し、それぞれの減収額の消費税率換算を示している。
対象品目の8パターンの減収額と財源の規模を一覧表にすると、次のようになる。
消費税の軽減税率を検証する 【第4回】「逆進性対策と低所得者対策」
このように、軽減税率は低所得者対策として効果が低く効率が悪い。この「効率の悪さ」は、軽減税率導入の推進力を加速させる。税制抜本改革法7条1号ハに従って実施された簡素な給付措置は、住民税の非課税世帯を対象としているが、この所得層は全世帯の10%程度であるから、それ以外の90%の世帯はなんらの恩恵に与ることがない。