日本の企業税制 【第146回】「令和8年度税制改正大綱の決定」
12月19日、自由民主党および日本維新の会の与党は、令和8年度税制改正大綱をとりまとめた。自由民主党税制調査会総会が11月20日に開催されてから、与野党での協議を含めて約50回にもわたる討議を経て、150ページにも及ぶ大綱を決定した。
今回は、高市政権の発足、公明党による与党の離脱のほか、新たに与党となり税制調査会を設置した日本維新の会による議論への参画や、自由民主党税制調査会の幹部及びメンバーの大幅な入れ替えなど、昨年とは大きな変化があったと考えられる。小野寺五典自由民主党税制調査会長が、国民に近い感覚で税制のあるべき姿を政府ともしっかり意思疎通をしながら議論していく姿勢を打ち出し、令和6年12月11日に結ばれた自由民主党、公明党、国民民主党の3党幹事長間での合意に沿って、多岐にわたる論点について結論を得ることとなった。
令和7年分 確定申告実務の留意点 【第1回】「令和7年分の申告に適用される改正事項」~基礎控除の見直し及び特定親族特別控除の創設~
令和7年度税制改正では、物価上昇局面における税負担の調整の観点から、基礎控除及び給与所得控除の見直しが行われ、長く続いたいわゆる「年収103万円の壁」が引き上げられた。また、就業調整対策の観点から、大学生年代の子等を持つ所得者本人に係る新たな所得控除として特定親族特別控除が創設された。これらに加え、同一生計配偶者や扶養親族等の所得要件の引上げも行われている。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例153(法人税)】 「「賃上げ促進税制」の適用に当たり「雇用者給与等支給額」及び「比較雇用者給与等支給額」の欄に誤って「継続雇用者給与等支給額」及び「継続雇用者比較給与等支給額」を記載してしまったため、結果として限度額まで特別控除が受けられなくなってしまった事例」
令和X年3月期及び令和Y年3月期の2期分の法人税につき、「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除」(以下「賃上げ促進税制」という。)の適用を受けるに当たり、別表六の「雇用者給与等支給額」及び「比較雇用者給与等支給額」の欄に誤って「継続雇用者給与等支給額」及び「継続雇用者比較給与等支給額」を記載してしまった。これが国税局からの問い合わせにより発覚し、当初申告で誤記載した「雇用者給与等支給増加額」が更正の請求の上限となってしまい、更正の請求が受けられず、限度額まで特別控除が受けられなくなってしまった。これにより、限度額まで特別控除が受けられた場合との差額につき過大納付が発生し賠償請求を受けた。
学会(学術団体)の税務Q&A 【第24回】「学会における支部の税務上の扱い」
本学会は、全国各地に支部を有しており、支部役員の大学の研究室を支部の連絡先として定めています。このような場合、支部ごとに地方税の税務申告が必要になるのでしょうか。
固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第55回】「医療機器は、基本的にはそれ自体で固有の機能を果たし独立して使用されるものであって、1つの設備を形成し、その設備の一部としての働きをなすものではないから機械及び装置に該当しないとされた事例」
「器具及び備品」と「機械及び装置」を区別するのが難しい場合がある。これらについて税法上は明確に定義されていないので国語辞典により定義を考えることになるが、「器具及び備品」と「機械及び装置」をひとくくりにして定義していない。
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第83回】
税務当局にとって、暗号資産の分散性は、納税者情報が集積する「インフォメーションハブ」や源泉地国の課税権を確保するための「源泉徴収代理人」のような者に依拠できないという、構造的な困難をもたらす。
本稿では、DeFiを中心とする分散型の金融システムにおいては、税務当局が金融機関等の仲介者から利用者の情報を収集するような既存の枠組みが機能不全に陥る可能性に着目する。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第87回】「オウブンシャホールディング事件 (地判平13.11.9、高判平16.1.28、最判平18.1.24)(その3)」~法人税法22条2項の「取引」の解釈~
本件でいう既存株主から移転した価値とは何か。それを「資産」と捉える場合、実現主義による制約を受ける。本件においても、事実上は、含み益に対して課税しているのであるから、それは「資産」であるという理解が一般的ではないか。このような立場からは「株主(旧株主)に帰属していた株式の含み益が株式引受人に移転することになるが、その含み益は、現実に株式を「譲渡」したものではないから未実現ということになる・・・現行の法人税法は、未実現利益に対して課税しないことを前提としていることから、増資時点での旧株主に対する課税は放棄している・・・現行法の下で未実現利益に課税するには、みなし規定か別段の定めが必要であり、そのためには、法改正が必要である。そのような法的手当がない中での課税は、租税法律主義に違背すると考えられる(※5)」という見方になろう。
相続税の実務問答 【第114回】「贈与税が課税されていない相続時精算課税贈与の相続税の課税価格への加算」
私は、平成16年4月に父から、非上場会社であるA社の株式の贈与を受けました。その評価額は、3,000万円と高額であったため、贈与税の申告に当たり相続時精算課税を選択しました。その父が、令和7年3月に亡くなりましたので、父から相続により取得した財産の価額に、相続時精算課税を適用したA社の株式の贈与時の価額3,000万円を課税価格に加算して相続税の申告をするつもりです。
〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第77回】「法人が負担した取締役の損害賠償金と役員給与」
私は中小企業の役員です。このたび、取引先から、より関係性を強固にするため、「当社の役員にも就任してほしい」といわれています。ただし、取引先の経営に関しては口を出さないことを期待されているようで、名目上の役員にとどまるようでした。
この場合において、私は何か責任があるのでしょうか?
国家安全保障から見る令和7年度及び近年の税制改正-防衛特別法人税等の企業への影響- 【第11回】
2025年11月21日、高市政権下の経済対策(「強い経済」を実現する総合経済対策~日本と日本人の底力で不安を希望に変える~、以下、「令和7年経済対策」)が閣議決定された。令和7年経済対策は、日本の目指すべき方向を、「責任ある積極財政」の下で「危機管理投資」と「成長投資」を進め、官民連携を強化し、戦略的な国内投資の拡大を通じて国力の増大を図ることとした。
令和7年経済対策は3本の柱(第1の柱:生活の安全保障・物価高への対応、第2の柱:危機管理投資・成長投資による「強い経済」の実現、第3の柱:防衛力と外交力の強化)を経済対策の基本的枠組みとする。
