特定株主等によって支配された欠損等法人の
欠損金の繰越しの不適用(法人税法57条の2)の取扱い
~「繰越欠損金の使用制限」が形式的に適用される事例の検討~
【第1回】
「欠損等法人の繰越欠損金の使用制限の取扱い」
公認会計士・税理士
税理士法人トラスト パートナー
足立 好幸
1 はじめに
繰越欠損金が使用できなくなる税制として、組織再編税制や連結納税制度以外に「特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用」(法法57の2)という規定があるのをご存じだろうか。
この規定は「休眠会社規制」と呼ばれており、繰越欠損金を持つ休眠会社を買ってきて、そこで新しい事業を開始して節税しようという行為を規制するために設けられている。
そう聞くと、「ウチの会社や顧問先では休眠会社を買収して節税なんてしない」ということで、「そんな規定を知る必要はない」と考える方も多いと思うが、この規定は、繰越欠損金を活用しようという意図がない場合でも形式的に規制がかかってしまうことがあり、「うっかり規制されてしまった」「いつの間にか規制されていた」といったケースが多く、落とし穴のような規定となっている。
そこで、今回、「欠損等法人の繰越欠損金の使用制限の取扱い」(注1)について、その規定の概要と「繰越欠損金を活用しようという意図がない場合でも形式的に規制がかかってしまう事例」を紹介していきたいと思う。
なお、本連載では、単体納税制度を採用している場合の「欠損等法人の繰越欠損金の使用制限の取扱い」について解説したい。
また、本連載の意見に関する部分は、筆者の個人的な見解であることをあらかじめお断りする。
(注1) 筆者は、この取扱いを「休眠会社規制」と表現することが、休眠会社の買収という限定された場面でしか適用されないという思い込みに繋がっていると考えているため、本連載ではその表現を使わないことにする。
2 欠損等法人の繰越欠損金の使用制限の取扱い
欠損等法人の繰越欠損金の使用制限の規定(法法57の2)とは、「内国法人で他の者との間に当該他の者による50%超の支配関係(特定支配関係)を有することとなったもののうち、特定支配関係を有することとなった日(支配日)の属する事業年度(特定支配事業年度)において特定支配事業年度前の各事業年度において生じた繰越欠損金又は評価損資産を有するもの(欠損等法人)が、支配日(特定支配日)以後5年を経過した日の前日までに次に掲げる事由(特定事由)に該当することとなった場合に、その該当することとなった日(該当日)の属する事業年度(適用事業年度)以後の各事業年度において、適用事業年度前の各事業年度において生じた繰越欠損金について、繰越控除ができない」という規定である(法法57の2、法令113の2)。
そして、欠損等法人の繰越欠損金の使用制限の規定(法法57の2)が適用されることになる特定事由とは、次に掲げる事由となる(法法57の2①)(注2)。
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