理由付記の不備をめぐる事例研究
【第11回】
「寄附金と貸倒損失」
~立替金債権の放棄が貸倒損失ではなく、寄附金に該当すると判断した理由は?~
中央大学大学院商学研究科 博士後期課程
(酒井克彦研究室所属)
泉 絢也
今回は、青色申告法人X社に対して行われた寄附金の損金不算入に係る法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた東京地裁平成19年9月27日判決(税資257号順号10792。以下「本判決」という)を取り上げる。
1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記)
更正の理由
貴法人備え付けの帳簿書類を調査した結果、所得金額等の計算に誤りがあると認められますから次のように申告書に記載された所得金額等に加算して更正しました。
(寄附金の損金不算入額 〇〇〇円)
貴法人は、有限会社B(現法人名:株式会社B)に対して、×年2月21日現在有する立替金△△△円の債権放棄を×年3月30日付けの債権放棄通告書により通知し、×年2月21日にその全額を貸倒損失として計上しています。しかしながら、同社の純資産価額を計算すると同社は債務超過の状況にはなく、当該立替金の全額が回収不能とは認められず、他に貸倒損失を計上すべき事実は発生していません。
また、貴法人が当該立替金を債権放棄したことは、同社の倒産を防止するためにやむを得ずに行われたものである等の事実もないことから、同社に対して経済的利益を供与することについて経済合理性が存するものとは認められませんので、貴法人が債権放棄した△△△円は寄附金に該当します。
したがって、当該金額を含めて寄附金の損金算入限度額の再計算をした結果、〇〇〇円が損金不算入となるため、当該金額を当事業年度(×年3月期)の所得金額に加算しました。
(注) 素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。
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