組織再編税制における不確定概念
【第10回】
「損失の二重利用②」
公認会計士 佐藤 信祐
前回(第9回目)では、子会社株式の譲渡と適格合併を利用して損失を二重に利用するケースについて解説を行った。
これに対し、第10回目では、包括的租税回避防止規定が適用された事案として、パチンコ店約40グループが適格組織再編成を繰り返すことにより、損失を二重、三重に利用した事案についての解説を行う。
1 基本的な取扱い
適格分社型分割を行った場合には、分割法人が保有する資産及び負債が分割承継法人に対し、簿価で譲渡されることになる(法法62の3)。すなわち、分割承継法人は資産及び負債を簿価で取得したものとみなされ(法令123の4)、分割承継法人に移転した簿価純資産価額が、分割法人が取得する分割承継法人株式の取得価額となる(法令119①七)。
その結果、分割法人における移転資産の含み損益は分割承継法人株式の含み損益に振り替えられることになる。
すなわち、移転資産に含み損がある場合には、分割法人においては分割承継法人株式の含み損に振り替えられ、分割承継法人においては移転資産の含み損として認識することになるため、含み損が二重に発生するという問題がある。
さらに、グループ内の適格分社型分割の判定においては、分割時点だけでなく、分社型分割後においてもグループ関係が維持されることが見込まれている必要があるが、直接保有だけでなく、間接保有を含めた上で、当該グループ関係の判定を行うことになるため、適格分社型分割に該当する場合であっても、グループ間で子会社株式を譲渡することにより、子会社株式に係る譲渡損益が実現するケースは十分に考えられる。
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