公開日: 2017/12/20
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《速報解説》 所得拡大促進税制、改組により要件を大幅見直し~平成30年度税制改正大綱~

筆者: 鯨岡 健太郎

 《速報解説》

所得拡大促進税制、改組により要件を大幅見直し

~平成30年度税制改正大綱~

 

公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎

 

〔2017/12/20追記〕
中小企業における改正内容において、設立事業年度における取扱いに関する追記を行いました。

1 はじめに

平成29年12月14日、与党(自由民主党・公明党)より平成30年度税制改正大綱が公表された。現在の政権与党はこれまで一貫して、デフレ脱却と経済再生の達成を主軸とした税制改正を進めており、今回の税制改正大綱も大きな流れとしては従来の考え方を踏襲したものといえる。

そのなかで、デフレ脱却と経済再生に向け、生産性向上のための設備投資と持続的な賃上げを強力に後押しする観点から、平成25年度税制改正によって創設された「所得拡大促進税制」が大幅に改組され、設備投資と賃上げの双方を同時に促進する税制として措置されることとなった。

本稿では、平成30年度税制改正大綱により示された、所得拡大促進税制の改組について、関連の改正事項と合わせて概観する。なお文中、意見にわたる部分は筆者の私見である。

 

2 現行の所得拡大促進税制の概要(措法42の12の5①)

青色申告法人が平成25年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、一定の要件を満たすときは、雇用者給与等支給増加額に基づき計算される一定額を法人税額から控除する。ただし、控除税額は法人税額の10%(中小企業者については20%)を上限とする。

【適用要件(中小企業者たる法人とそれ以外の法人で異なる)】
適用要件 中小企業者 中小企業者以外 ① 雇用者給与等支給増加額が「増加促進割合」以上であること 増加促進割合3% 増加促進割合は事業年度により異なる。 (H28.4.1以後開始事業年度)4% (H29.4.1以後開始事業年度)5% ② 雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額以上であること 同 左 同 左 ③ 平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を超えること 同 左 単に超えるだけではなく、平均給与等支給額が比較平均給与等支給額から2%以上増加していることが必要である。

【控除税額(ア+イ)】

(ア) 雇用者給与等支給増加額(※)× 10%

(※) 雇用者給与等支給増加額=雇用者給与等支給額-基準雇用者給与等支給額

(イ) (雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)× 上乗せ控除率(下表)
中小企業者 中小企業者以外 12% ※平均給与等支給額が比較平均給与等支給額から2%以上増加している場合に限る。 2%

 

3 中小企業者以外の法人における平成30年度税制改正の内容

(1) 適用要件の改正

① 従来の適用要件(基準雇用者給与等支給額・比較雇用者給与等支給額)の廃止

従来の所得拡大促進税制で定められていた適用要件のうち2つ(基準雇用者給与等支給額からの増加要件及び前年度からの増加要件)が廃止され、平均給与等支給額に係る要件のみが残されることとなった。

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 《速報解説》

所得拡大促進税制、改組により要件を大幅見直し

~平成30年度税制改正大綱~

 

公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎

 

〔2017/12/20追記〕
中小企業における改正内容において、設立事業年度における取扱いに関する追記を行いました。

1 はじめに

平成29年12月14日、与党(自由民主党・公明党)より平成30年度税制改正大綱が公表された。現在の政権与党はこれまで一貫して、デフレ脱却と経済再生の達成を主軸とした税制改正を進めており、今回の税制改正大綱も大きな流れとしては従来の考え方を踏襲したものといえる。

そのなかで、デフレ脱却と経済再生に向け、生産性向上のための設備投資と持続的な賃上げを強力に後押しする観点から、平成25年度税制改正によって創設された「所得拡大促進税制」が大幅に改組され、設備投資と賃上げの双方を同時に促進する税制として措置されることとなった。

本稿では、平成30年度税制改正大綱により示された、所得拡大促進税制の改組について、関連の改正事項と合わせて概観する。なお文中、意見にわたる部分は筆者の私見である。

 

2 現行の所得拡大促進税制の概要(措法42の12の5①)

青色申告法人が平成25年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、一定の要件を満たすときは、雇用者給与等支給増加額に基づき計算される一定額を法人税額から控除する。ただし、控除税額は法人税額の10%(中小企業者については20%)を上限とする。

【適用要件(中小企業者たる法人とそれ以外の法人で異なる)】
適用要件 中小企業者 中小企業者以外 ① 雇用者給与等支給増加額が「増加促進割合」以上であること 増加促進割合3% 増加促進割合は事業年度により異なる。 (H28.4.1以後開始事業年度)4% (H29.4.1以後開始事業年度)5% ② 雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額以上であること 同 左 同 左 ③ 平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を超えること 同 左 単に超えるだけではなく、平均給与等支給額が比較平均給与等支給額から2%以上増加していることが必要である。

【控除税額(ア+イ)】

(ア) 雇用者給与等支給増加額(※)× 10%

(※) 雇用者給与等支給増加額=雇用者給与等支給額-基準雇用者給与等支給額

(イ) (雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)× 上乗せ控除率(下表)
中小企業者 中小企業者以外 12% ※平均給与等支給額が比較平均給与等支給額から2%以上増加している場合に限る。 2%

 

3 中小企業者以外の法人における平成30年度税制改正の内容

(1) 適用要件の改正

① 従来の適用要件(基準雇用者給与等支給額・比較雇用者給与等支給額)の廃止

従来の所得拡大促進税制で定められていた適用要件のうち2つ(基準雇用者給与等支給額からの増加要件及び前年度からの増加要件)が廃止され、平均給与等支給額に係る要件のみが残されることとなった。

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連載目次

〈平成30年度改正対応〉
賃上げ・投資促進税制(旧・所得拡大促進税制)の
適用上の留意点Q&A

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筆者紹介

鯨岡 健太郎

( くじらおか・けんたろう )

公認会計士・税理士
税理士法人ファシオ・コンサルティング パートナー

1998(平成10)年公認会計士試験合格後に大手監査法人に入社。主に国内上場企業に対する法定監査業務及び株式公開支援業務に従事。2002(平成14)年に公認会計士登録。
その後、2003(平成15)年に大手税理士法人に転籍し、主に国内外の法人に対する税務コンプライアンス業務及び税務コンサルティングサービスに従事したほか、M&Aにおける税務デューデリジェンス業務、ストラクチャリング業務等のM&Aアドバイザリー業務にも関与。2005(平成17)年に税理士登録。

2008(平成20)年に独立開業。現在は税理士法人のパートナー税理士として、中小企業の経営支援業務や連結納税導入支援業務等に従事している。

【著書】
賃上げ促進税制の実務解説』2022年、清文社
中小企業の判定をめぐる税務』2021年、清文社

 

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