公開日: 2023/11/09 (掲載号:No.543)
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谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第20回】「国税通則法46条(~55条)」-納税の猶予の意義と性格-

筆者: 谷口 勢津夫

谷口教授と学ぶ

国税通則法構造手続

【第20回】

「国税通則法46条(~55条)」

-納税の猶予の意義と性格-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

国税通則法46条(納税の猶予の要件等)

(納税の猶予の要件等)

第46条 税務署長(第43条第1項ただし書、第3項若しくは第4項(国税の徴収の所轄庁)又は第44条第1項(更生手続等が開始した場合の徴収の所轄庁の特例)の規定により税関長又は国税局長が国税の徴収を行う場合には、その税関長又は国税局長。以下この章において「税務署長等」という。)は、震災、風水害、落雷、火災その他これらに類する災害により納税者がその財産につき相当な損失を受けた場合において、その者がその損失を受けた日以後1年以内に納付すべき国税で次に掲げるものがあるときは、政令で定めるところにより、その災害のやんだ日から2月以内にされたその者の申請に基づき、その納期限(納税の告知がされていない源泉徴収等による国税については、その法定納期限)から1年以内の期間(第3号に掲げる国税については、政令で定める期間)を限り、その国税の全部又は一部の納税を猶予することができる。

一 次に掲げる国税の区分に応じ、それぞれ次に定める日以前に納税義務の成立した国税(消費税及び政令で定めるものを除く。)で、納期限(納税の告知がされていない源泉徴収等による国税については、その法定納期限)がその損失を受けた日以後に到来するもののうち、その申請の日以前に納付すべき税額の確定したもの

イ 源泉徴収等による国税並びに申告納税方式による消費税等(保税地域からの引取りに係るものにあつては、石油石炭税法(昭和53年法律第25号)第17条第3項(引取りに係る原油等についての石油石炭税の納付等)の規定により納付すべき石油石炭税に限る。)、航空機燃料税、電源開発促進税及び印紙税 その災害のやんだ日の属する月の末日

ロ イに掲げる国税以外の国税 その災害のやんだ日

二 その災害のやんだ日以前に課税期間が経過した課税資産の譲渡等に係る消費税でその納期限がその損失を受けた日以後に到来するもののうちその申請の日以前に納付すべき税額の確定したもの

三 予定納税に係る所得税その他政令で定める国税でその納期限がその損失を受けた日以後に到来するもの

2 税務署長等は、次の各号のいずれかに該当する事実がある場合(前項の規定の適用を受ける場合を除く。)において、その該当する事実に基づき、納税者がその国税を一時に納付することができないと認められるときは、その納付することができないと認められる金額を限度として、納税者の申請に基づき、1年以内の期間を限り、その納税を猶予することができる。同項の規定による納税の猶予をした場合において、同項の災害を受けたことにより、その猶予期間内に猶予をした金額を納付することができないと認めるときも、同様とする。

一 納税者がその財産につき、震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け、又は盗難にかかつたこと。

二 納税者又はその者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したこと。

三 納税者がその事業を廃止し、又は休止したこと。

四 納税者がその事業につき著しい損失を受けたこと。

五 前各号のいずれかに該当する事実に類する事実があつたこと。

3 税務署長等は、次の各号に掲げる国税(延納に係る国税を除く。)の納税者につき、当該各号に定める税額に相当する国税を一時に納付することができない理由があると認められる場合には、その納付することができないと認められる金額を限度として、その国税の納期限内にされたその者の申請(税務署長等においてやむを得ない理由があると認める場合には、その国税の納期限後にされた申請を含む。)に基づき、その納期限から1年以内の期間を限り、その納税を猶予することができる。

一 申告納税方式による国税(その附帯税を含む。) その法定申告期限から1年を経過した日以後に納付すべき税額が確定した場合における当該確定した部分の税額

二 賦課課税方式による国税(その延滞税を含み、第69条(加算税の税目)に規定する加算税及び過怠税を除く。) その課税標準申告書の提出期限(当該申告書の提出を要しない国税については、その納税義務の成立の日)から1年を経過した日以後に納付すべき税額が確定した場合における当該確定した部分の税額

三 源泉徴収等による国税(その附帯税を含む。) その法定納期限から1年を経過した日以後に納税告知書の送達があつた場合における当該告知書に記載された納付すべき税額

4 税務署長等は、前二項の規定による納税の猶予をする場合には、その猶予に係る国税の納付については、その猶予をする期間内において、その猶予に係る金額をその者の財産の状況その他の事情からみて合理的かつ妥当なものに分割して納付させることができる。この場合においては、分割納付の各納付期限及び各納付期限ごとの納付金額を定めるものとする。

5 税務署長等は、第2項又は第3項の規定による納税の猶予をする場合には、その猶予に係る金額に相当する担保を徴さなければならない。ただし、その猶予に係る税額が100万円以下である場合、その猶予の期間が3月以内である場合又は担保を徴することができない特別の事情がある場合は、この限りでない。

6 税務署長等は、前項の規定により担保を徴する場合において、その猶予に係る国税につき滞納処分により差し押さえた財産(租税条約等(租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律(昭和44年法律第46号)第2条第2号(定義)に規定する租税条約等をいう。以下この項、第63条第5項(納税の猶予等の場合の延滞税の免除)及び第71条第1項第4号(国税の更正、決定等の期間制限の特例)において同じ。)の規定に基づき当該租税条約等の相手国等(同法第2条第3号に規定する相手国等をいう。以下同じ。)に共助対象国税(同法第11条の2第1項(国税の徴収の共助)に規定する共助対象国税をいう。以下この項及び第63条第5項において同じ。)の徴収の共助又は徴収のための財産の保全の共助を要請した場合における当該相手国等が当該共助対象国税について当該相手国等の法令に基づき差押えに相当する処分をした財産及び担保の提供を受けた財産を含む。)があるときは、その担保の額は、その猶予をする金額からその財産の価額を控除した額を限度とする。

7 税務署長等は、第2項又は第3項の規定により納税の猶予をした場合において、その猶予をした期間内にその猶予をした金額を納付することができないやむを得ない理由があると認めるときは、納税者の申請に基づき、その期間を延長することができる。ただし、その期間は、既にその者につきこれらの規定により納税の猶予をした期間とあわせて2年を超えることができない。

8 第4項の規定は、税務署長等が、前項の規定により第2項又は第3項の規定による納税の猶予をした期間を延長する場合について準用する。

9 税務署長等は、第4項(前項において準用する場合を含む。)の規定によりその猶予に係る金額を分割して納付させる場合において、納税者が第47条第1項(納税の猶予の通知等)の規定により通知された分割納付の各納付期限ごとの納付金額をその納付期限までに納付することができないことにつきやむを得ない理由があると認めるとき又は第49条第1項(納税の猶予の取消し)の規定により猶予期間を短縮したときは、その分割納付の各納付期限及び各納付期限ごとの納付金額を変更することができる。

 

1 納税遅滞回避制度の意義と種類

国税を納付する義務(納税義務)は、その納付すべき税額が確定された場合(税通15条1項、16条参照)、その履行すなわち当該税額の納付及び徴収(同第3章)によって、消滅する。このことは、私法上の債務がその履行によって消滅するのと基本的に同じである。ただし、履行内容・条件の変更については私法と税法とで対応が異なる。すなわち、私法上の債務については、履行内容・条件の変更は、契約自由の原則の下、当事者の合意(これを新たな契約の締結と解するか又は和解(民法695条)と解するかは意思表示の解釈の問題である)によって、原則として自由に行うことができるのに対して、納税義務については、履行内容・条件の変更は、合法性の原則の下、税法上の明文の規定に基づいてのみ許容される(金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂・2021年)87頁、拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【38】参照)。

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国税通則法構造手続

【第20回】

「国税通則法46条(~55条)」

-納税の猶予の意義と性格-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

国税通則法46条(納税の猶予の要件等)

(納税の猶予の要件等)

第46条 税務署長(第43条第1項ただし書、第3項若しくは第4項(国税の徴収の所轄庁)又は第44条第1項(更生手続等が開始した場合の徴収の所轄庁の特例)の規定により税関長又は国税局長が国税の徴収を行う場合には、その税関長又は国税局長。以下この章において「税務署長等」という。)は、震災、風水害、落雷、火災その他これらに類する災害により納税者がその財産につき相当な損失を受けた場合において、その者がその損失を受けた日以後1年以内に納付すべき国税で次に掲げるものがあるときは、政令で定めるところにより、その災害のやんだ日から2月以内にされたその者の申請に基づき、その納期限(納税の告知がされていない源泉徴収等による国税については、その法定納期限)から1年以内の期間(第3号に掲げる国税については、政令で定める期間)を限り、その国税の全部又は一部の納税を猶予することができる。

一 次に掲げる国税の区分に応じ、それぞれ次に定める日以前に納税義務の成立した国税(消費税及び政令で定めるものを除く。)で、納期限(納税の告知がされていない源泉徴収等による国税については、その法定納期限)がその損失を受けた日以後に到来するもののうち、その申請の日以前に納付すべき税額の確定したもの

イ 源泉徴収等による国税並びに申告納税方式による消費税等(保税地域からの引取りに係るものにあつては、石油石炭税法(昭和53年法律第25号)第17条第3項(引取りに係る原油等についての石油石炭税の納付等)の規定により納付すべき石油石炭税に限る。)、航空機燃料税、電源開発促進税及び印紙税 その災害のやんだ日の属する月の末日

ロ イに掲げる国税以外の国税 その災害のやんだ日

二 その災害のやんだ日以前に課税期間が経過した課税資産の譲渡等に係る消費税でその納期限がその損失を受けた日以後に到来するもののうちその申請の日以前に納付すべき税額の確定したもの

三 予定納税に係る所得税その他政令で定める国税でその納期限がその損失を受けた日以後に到来するもの

2 税務署長等は、次の各号のいずれかに該当する事実がある場合(前項の規定の適用を受ける場合を除く。)において、その該当する事実に基づき、納税者がその国税を一時に納付することができないと認められるときは、その納付することができないと認められる金額を限度として、納税者の申請に基づき、1年以内の期間を限り、その納税を猶予することができる。同項の規定による納税の猶予をした場合において、同項の災害を受けたことにより、その猶予期間内に猶予をした金額を納付することができないと認めるときも、同様とする。

一 納税者がその財産につき、震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け、又は盗難にかかつたこと。

二 納税者又はその者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したこと。

三 納税者がその事業を廃止し、又は休止したこと。

四 納税者がその事業につき著しい損失を受けたこと。

五 前各号のいずれかに該当する事実に類する事実があつたこと。

3 税務署長等は、次の各号に掲げる国税(延納に係る国税を除く。)の納税者につき、当該各号に定める税額に相当する国税を一時に納付することができない理由があると認められる場合には、その納付することができないと認められる金額を限度として、その国税の納期限内にされたその者の申請(税務署長等においてやむを得ない理由があると認める場合には、その国税の納期限後にされた申請を含む。)に基づき、その納期限から1年以内の期間を限り、その納税を猶予することができる。

一 申告納税方式による国税(その附帯税を含む。) その法定申告期限から1年を経過した日以後に納付すべき税額が確定した場合における当該確定した部分の税額

二 賦課課税方式による国税(その延滞税を含み、第69条(加算税の税目)に規定する加算税及び過怠税を除く。) その課税標準申告書の提出期限(当該申告書の提出を要しない国税については、その納税義務の成立の日)から1年を経過した日以後に納付すべき税額が確定した場合における当該確定した部分の税額

三 源泉徴収等による国税(その附帯税を含む。) その法定納期限から1年を経過した日以後に納税告知書の送達があつた場合における当該告知書に記載された納付すべき税額

4 税務署長等は、前二項の規定による納税の猶予をする場合には、その猶予に係る国税の納付については、その猶予をする期間内において、その猶予に係る金額をその者の財産の状況その他の事情からみて合理的かつ妥当なものに分割して納付させることができる。この場合においては、分割納付の各納付期限及び各納付期限ごとの納付金額を定めるものとする。

5 税務署長等は、第2項又は第3項の規定による納税の猶予をする場合には、その猶予に係る金額に相当する担保を徴さなければならない。ただし、その猶予に係る税額が100万円以下である場合、その猶予の期間が3月以内である場合又は担保を徴することができない特別の事情がある場合は、この限りでない。

6 税務署長等は、前項の規定により担保を徴する場合において、その猶予に係る国税につき滞納処分により差し押さえた財産(租税条約等(租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律(昭和44年法律第46号)第2条第2号(定義)に規定する租税条約等をいう。以下この項、第63条第5項(納税の猶予等の場合の延滞税の免除)及び第71条第1項第4号(国税の更正、決定等の期間制限の特例)において同じ。)の規定に基づき当該租税条約等の相手国等(同法第2条第3号に規定する相手国等をいう。以下同じ。)に共助対象国税(同法第11条の2第1項(国税の徴収の共助)に規定する共助対象国税をいう。以下この項及び第63条第5項において同じ。)の徴収の共助又は徴収のための財産の保全の共助を要請した場合における当該相手国等が当該共助対象国税について当該相手国等の法令に基づき差押えに相当する処分をした財産及び担保の提供を受けた財産を含む。)があるときは、その担保の額は、その猶予をする金額からその財産の価額を控除した額を限度とする。

7 税務署長等は、第2項又は第3項の規定により納税の猶予をした場合において、その猶予をした期間内にその猶予をした金額を納付することができないやむを得ない理由があると認めるときは、納税者の申請に基づき、その期間を延長することができる。ただし、その期間は、既にその者につきこれらの規定により納税の猶予をした期間とあわせて2年を超えることができない。

8 第4項の規定は、税務署長等が、前項の規定により第2項又は第3項の規定による納税の猶予をした期間を延長する場合について準用する。

9 税務署長等は、第4項(前項において準用する場合を含む。)の規定によりその猶予に係る金額を分割して納付させる場合において、納税者が第47条第1項(納税の猶予の通知等)の規定により通知された分割納付の各納付期限ごとの納付金額をその納付期限までに納付することができないことにつきやむを得ない理由があると認めるとき又は第49条第1項(納税の猶予の取消し)の規定により猶予期間を短縮したときは、その分割納付の各納付期限及び各納付期限ごとの納付金額を変更することができる。

 

1 納税遅滞回避制度の意義と種類

国税を納付する義務(納税義務)は、その納付すべき税額が確定された場合(税通15条1項、16条参照)、その履行すなわち当該税額の納付及び徴収(同第3章)によって、消滅する。このことは、私法上の債務がその履行によって消滅するのと基本的に同じである。ただし、履行内容・条件の変更については私法と税法とで対応が異なる。すなわち、私法上の債務については、履行内容・条件の変更は、契約自由の原則の下、当事者の合意(これを新たな契約の締結と解するか又は和解(民法695条)と解するかは意思表示の解釈の問題である)によって、原則として自由に行うことができるのに対して、納税義務については、履行内容・条件の変更は、合法性の原則の下、税法上の明文の規定に基づいてのみ許容される(金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂・2021年)87頁、拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【38】参照)。

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連載目次

谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」

筆者紹介

谷口 勢津夫

(たにぐち・せつお)

大阪学院大学法学部教授

1956年高知県生まれ。京都大学法学部卒業、同大学大学院法学研究科博士後期課程単位修得退学。甲南大学法学部教授、大阪大学大学院高等司法研究科教授を経て2022年4月より現職。大阪大学名誉教授。ほかに大阪大学大学院高等司法研究科長・大阪大学法務室長、アレクサンダー・フォン・フンボルト財団奨励研究員(Forschungsstipendiat der Alexander von Humboldt-Stiftung)・ミュンヘン大学客員研究員、日本税法学会理事長、租税法学会理事、IFA(International Fiscal Association)日本支部理事、資産評価政策学会理事、司法試験考査委員、公認会計士試験試験委員、独立行政法人造幣局契約監視委員会委員・委員長、大阪府収用委員会委員・会長、大阪府行政不服審査会委員・会長、公益財団法人日本税務研究センター評議員・同「日税研究賞」選考委員、公益財団法人納税協会連合会「税に関する論文」選考委員、公益社団法人商事法務研究会「商事法務研究会賞」審査委員、近畿税理士会・近畿税務研究センター顧問など(一部現職。ほか歴任)。

主要著書は『租税条約論』(清文社・1999年)、『租税回避論』(清文社・2014年)、『租税回避研究の展開と課題〔清永敬次先生謝恩論文集〕』(共著・ミネルヴァ書房・2015年)、『税法の基礎理論』(清文社・2021年)、『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)、『基礎から学べる租税法〔第3版〕』(共著・弘文堂・2022年)、『税法創造論』(清文社・2022年)、『税法基本判例Ⅰ』(清文社、2023年)など。
 
  

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