公開日: 2015/06/04 (掲載号:No.122)
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〈検証〉IFRS適用レポート~IFRS導入企業65社の回答から何が読み解けるか?~ 【第4回】「決算日統一・決算早期化への対応」

筆者: 大木 和俊

〈検証〉IFRS適用レポート

~IFRS導入企業65社の回答から何が読み解けるか?~

【第4回】

「決算日統一・決算早期化への対応」

 

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
CFO サービスユニット シニアマネジャー
大木 和俊

 

(当該記事は執筆者の私見であり、執筆者が所属する組織の公式見解ではない旨、ご了承いただきたい。)

1 IFRS適用の負担

IFRS適用における決算早期化というと、拙著『新版・成功する!IFRS導入プロジェクト(清文社 著者:デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)でも述べているが、決算報告日統一や追加的なIFRS組替作業に伴って必要となる取組みであると考えるのが一般的だろう。

IFRS適用レポート68ページに記載されている、IFRSへの移行に伴うデメリット、実務負担の増加という項目を読むと、IFRS適用企業から次のような意見が出ているという。

《一時的な実務負担の増加》 グループ会計方針書の作成 報告日(決算期)の統一 《継続的な実務負担の増加》 複数帳簿管理 開示量の増加 日本基準との並行開示 監査法人との協議の増加

「一時的な実務負担の増加」とは、IFRS導入のための取組みにおける負担増、「継続的な実務負担の増加」とは、IFRS導入後の実務における負担増のことを、それぞれ述べているものと思われる。

ここにある「報告日(決算期)の統一」には、決算早期化が含まれていると考えてよいだろう。報告日(決算期)が異なるグループ会社は、自社の報告日(決算期)に応じて最大3ヶ月前の財務情報を連結すればよく、親会社への報告まで余裕のある準備期間を得ていたものが、そのような余裕がなくなるためである。

この取組みに対する負担は、報告日が異なるグループ会社が多いほど、また業務標準化ができていない企業グループほど、大きくなる。

 

2 何のためのIFRSか?

こうした負担増を考えると、決算早期化が必要だとしても、とりあえず現状の決算作業や開示の所要日数を維持すべきという考えに陥りやすい。

ここで改めてIFRS適用のメリット、つまり「何のためにIFRSを適用するのか?」について考えてみたい。

IFRS適用レポートにおいては、「経営管理への寄与」「(同業他社との)比較可能性の向上」「海外投資家への説明の容易さ」等を目的とする企業が多かったと述べている。

【IFRSの任意適用を決定した理由又は移行前に想定していた主なメリットとして1位に順位付けした項目別の回答数】

(出所「IFRS適用レポート」27ページ

 

そして、実際のメリットとしても、同じような項目が上位にあがっている。

【IFRSへの移行による主な実際のメリットとして1位に順位付けした項目別の回答数】

(出所「IFRS適用レポート」66ページ

各社のコメントを見ると、IFRSという「統一的なモノサシ」を適用すること自体がこうしたメリットにつながると解される。

しかし、経営管理やIRの高度化を目的とするのであれば、IFRS適用により自然発生するメリットを狙った「受動的」な対応だけでなく、より積極的にメリットを享受するための「能動的」な取組みが必要である、と筆者は考える。

ここで、経営管理やIRを高度化する施策は様々なものが考えられるが、今回は「決算早期化」というキーワードに焦点を当ててみよう。

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〈検証〉IFRS適用レポート

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【第4回】

「決算日統一・決算早期化への対応」

 

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
CFO サービスユニット シニアマネジャー
大木 和俊

 

(当該記事は執筆者の私見であり、執筆者が所属する組織の公式見解ではない旨、ご了承いただきたい。)

1 IFRS適用の負担

IFRS適用における決算早期化というと、拙著『新版・成功する!IFRS導入プロジェクト(清文社 著者:デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)でも述べているが、決算報告日統一や追加的なIFRS組替作業に伴って必要となる取組みであると考えるのが一般的だろう。

IFRS適用レポート68ページに記載されている、IFRSへの移行に伴うデメリット、実務負担の増加という項目を読むと、IFRS適用企業から次のような意見が出ているという。

《一時的な実務負担の増加》 グループ会計方針書の作成 報告日(決算期)の統一 《継続的な実務負担の増加》 複数帳簿管理 開示量の増加 日本基準との並行開示 監査法人との協議の増加

「一時的な実務負担の増加」とは、IFRS導入のための取組みにおける負担増、「継続的な実務負担の増加」とは、IFRS導入後の実務における負担増のことを、それぞれ述べているものと思われる。

ここにある「報告日(決算期)の統一」には、決算早期化が含まれていると考えてよいだろう。報告日(決算期)が異なるグループ会社は、自社の報告日(決算期)に応じて最大3ヶ月前の財務情報を連結すればよく、親会社への報告まで余裕のある準備期間を得ていたものが、そのような余裕がなくなるためである。

この取組みに対する負担は、報告日が異なるグループ会社が多いほど、また業務標準化ができていない企業グループほど、大きくなる。

 

2 何のためのIFRSか?

こうした負担増を考えると、決算早期化が必要だとしても、とりあえず現状の決算作業や開示の所要日数を維持すべきという考えに陥りやすい。

ここで改めてIFRS適用のメリット、つまり「何のためにIFRSを適用するのか?」について考えてみたい。

IFRS適用レポートにおいては、「経営管理への寄与」「(同業他社との)比較可能性の向上」「海外投資家への説明の容易さ」等を目的とする企業が多かったと述べている。

【IFRSの任意適用を決定した理由又は移行前に想定していた主なメリットとして1位に順位付けした項目別の回答数】

(出所「IFRS適用レポート」27ページ

 

そして、実際のメリットとしても、同じような項目が上位にあがっている。

【IFRSへの移行による主な実際のメリットとして1位に順位付けした項目別の回答数】

(出所「IFRS適用レポート」66ページ

各社のコメントを見ると、IFRSという「統一的なモノサシ」を適用すること自体がこうしたメリットにつながると解される。

しかし、経営管理やIRの高度化を目的とするのであれば、IFRS適用により自然発生するメリットを狙った「受動的」な対応だけでなく、より積極的にメリットを享受するための「能動的」な取組みが必要である、と筆者は考える。

ここで、経営管理やIRを高度化する施策は様々なものが考えられるが、今回は「決算早期化」というキーワードに焦点を当ててみよう。

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連載目次

◆ ご 案 内 

任意適用範囲の拡大、グローバル化の進行などにより、再び盛り上がるIFRS導入プロジェクト。その開始のみならず再開・決算日統一・決算早期化に至るまで、さらなる効果的・効率的な実務が満載した究極の1冊。

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筆者紹介

大木 和俊

(おおき・かずとし)

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
CFO サービスユニット シニアマネジャー

デロイト トーマツ コンサルティング入社後、10年以上にわたってCFO並びに経理・財務部門向けにコンサルティングサービスを提供している。主として財務会計領域を専門としており、総合商社・通信業界を中心に、IFRS導入支援の他、連結・単体経営管理基盤整備、決算早期化、内部統制対応などのコンサルティングサービスに従事し、各種講演や専門誌等への寄稿も多く行っている。

【主著】
・『新版 成功する!IFRS導入プロジェクト』(共著・清文社)
他多数

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