公開日: 2014/01/20
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《速報解説》 公益法人等に寄附をした場合の譲渡所得等の非課税制度(措置法40条)の見直し~平成26年度税制改正大綱~

筆者: 木村 浩之

 《速報解説》

公益法人等に寄附をした場合の

譲渡所得等の非課税制度(措置法40条)の見直し

~平成26年度税制改正大綱~

 

弁護士 木村 浩之

 

1 はじめに

平成26年度税制改正大綱では、個人所得課税に関する改正として、公益法人等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税の特例について、一定の要件の見直し等の措置が講じられることになった。

本稿では、現行制度の概要を解説するとともに、主な改正の内容について概説することとしたい。

 

2 現行制度の概要

個人が不動産や株式などの現物資産を法人に寄附した場合、その寄附をした時点において時価で譲渡されたものとみなされ(みなし譲渡)、譲渡所得税が課されるのが原則である(所法59①一)。

これに対して、公益法人等(公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的として事業を行う法人)に財産を寄附した場合は、一定の要件の下で国税庁長官の承認を受けることにより、譲渡所得税を非課税とする特例が認められている(措法40)。

ただし、公益法人等が寄附財産を他に移転するなどして、公益目的に使用しないことになる場合には、承認の取消しがなされて、その公益法人等を個人とみなして譲渡所得税が課されることになる(いわゆる「取戻し課税」)。

今回の改正では、寄附財産が他に移転したとしても、この取戻し課税を受けない場合が拡充されるなど、承認(の取消し)に関する要件が整備されることになる。

 

3 主な改正の内容

(1) 株式交換等が行われた場合の非課税特例の継続

公益法人等が寄附財産を他に譲渡した場合でも、それが収容等の一定の事由による譲渡であり、その譲渡対価で代替資産を取得したときは、承認の取消しはなされず、その代替資産について非課税特例が継続するものとされている。

今回の改正では、この一定の事由に株式交換等(税制適格のものに限る)が追加されることになる。これにより、株式交換等によって交付を受けた株式についても、非課税特例の継続対象とされることになる。

なお、この改正は、平成26年4月1日以後に行われる株式交換等について適用されることになる。

(2) 寄附財産が株式である場合の非課税特例の適用

非課税特例の承認を受けるための要件のひとつとして、「寄附者の所得税等を不当に減少させる結果とならないこと」が定められている。これが認められるための具体的な条件として、寄附を受ける公益法人等の公益性が確保されていることといった条件が定められている。

今回の改正では、寄附財産が株式である場合に、上記条件に加えて、公益法人等が株式の2分の1超を保有することにならないという株式保有制限が追加されることになる。

これにより、株式の寄附の場合は、非課税特例の適用を受けるためには、上記株式保有制限に抵触しないように留意する必要がある。

なお、この改正は、平成26年4月1日以後に行われる株式の寄附について適用されることになる。

(3) 買換えや合併等による移転をした場合の非課税制度の継続

公益法人等が寄附財産について一定の要件の下での買換えや合併等による移転をした場合、国税庁長官に事前届出をすることで、非課税特例の継続が認められている。

今回の改正では、この事前届出の便宜を図るために、非課税特例の承認対象財産であるかどうかの確認を申請することができるようになるとともに、合併等による移転の場合に事前届出を欠いていたとしても、承継法人が引き継いだ財産の中に非課税特例の承認対象財産があることを知ってから2ヶ月以内に届出をすることにより、非課税特例の継続が認められることになる。

なお、この改正は、平成26年4月1日以後に行われる申請又は届出について適用されることになる。

〔凡例〕
所法・・・所得税法
措法・・・租税特別措置法
(例)所法59①一・・・所得税法59条1項1号

(了)

 《速報解説》

公益法人等に寄附をした場合の

譲渡所得等の非課税制度(措置法40条)の見直し

~平成26年度税制改正大綱~

 

弁護士 木村 浩之

 

1 はじめに

平成26年度税制改正大綱では、個人所得課税に関する改正として、公益法人等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税の特例について、一定の要件の見直し等の措置が講じられることになった。

本稿では、現行制度の概要を解説するとともに、主な改正の内容について概説することとしたい。

 

2 現行制度の概要

個人が不動産や株式などの現物資産を法人に寄附した場合、その寄附をした時点において時価で譲渡されたものとみなされ(みなし譲渡)、譲渡所得税が課されるのが原則である(所法59①一)。

これに対して、公益法人等(公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的として事業を行う法人)に財産を寄附した場合は、一定の要件の下で国税庁長官の承認を受けることにより、譲渡所得税を非課税とする特例が認められている(措法40)。

ただし、公益法人等が寄附財産を他に移転するなどして、公益目的に使用しないことになる場合には、承認の取消しがなされて、その公益法人等を個人とみなして譲渡所得税が課されることになる(いわゆる「取戻し課税」)。

今回の改正では、寄附財産が他に移転したとしても、この取戻し課税を受けない場合が拡充されるなど、承認(の取消し)に関する要件が整備されることになる。

 

3 主な改正の内容

(1) 株式交換等が行われた場合の非課税特例の継続

公益法人等が寄附財産を他に譲渡した場合でも、それが収容等の一定の事由による譲渡であり、その譲渡対価で代替資産を取得したときは、承認の取消しはなされず、その代替資産について非課税特例が継続するものとされている。

今回の改正では、この一定の事由に株式交換等(税制適格のものに限る)が追加されることになる。これにより、株式交換等によって交付を受けた株式についても、非課税特例の継続対象とされることになる。

なお、この改正は、平成26年4月1日以後に行われる株式交換等について適用されることになる。

(2) 寄附財産が株式である場合の非課税特例の適用

非課税特例の承認を受けるための要件のひとつとして、「寄附者の所得税等を不当に減少させる結果とならないこと」が定められている。これが認められるための具体的な条件として、寄附を受ける公益法人等の公益性が確保されていることといった条件が定められている。

今回の改正では、寄附財産が株式である場合に、上記条件に加えて、公益法人等が株式の2分の1超を保有することにならないという株式保有制限が追加されることになる。

これにより、株式の寄附の場合は、非課税特例の適用を受けるためには、上記株式保有制限に抵触しないように留意する必要がある。

なお、この改正は、平成26年4月1日以後に行われる株式の寄附について適用されることになる。

(3) 買換えや合併等による移転をした場合の非課税制度の継続

公益法人等が寄附財産について一定の要件の下での買換えや合併等による移転をした場合、国税庁長官に事前届出をすることで、非課税特例の継続が認められている。

今回の改正では、この事前届出の便宜を図るために、非課税特例の承認対象財産であるかどうかの確認を申請することができるようになるとともに、合併等による移転の場合に事前届出を欠いていたとしても、承継法人が引き継いだ財産の中に非課税特例の承認対象財産があることを知ってから2ヶ月以内に届出をすることにより、非課税特例の継続が認められることになる。

なお、この改正は、平成26年4月1日以後に行われる申請又は届出について適用されることになる。

〔凡例〕
所法・・・所得税法
措法・・・租税特別措置法
(例)所法59①一・・・所得税法59条1項1号

(了)

筆者紹介

木村 浩之

(きむら・ひろゆき)

弁護士

2005年 東京大学法学部卒業
2009年 国税庁(課税部法人課税課源泉国際係長)退官
2010年 弁護士登録
2016年 ライデン国際租税センター国際租税法上級修士課程修了
    ビューレン法律事務所(デンハーグ)に勤務
2017年 KPMGシンガポールに勤務

現 在 弁護士法人 淀屋橋・山上合同
    日本税法学会研究委員
    国際租税協会(International Fiscal Association)会員

【主要著書・論文】
新版 基礎から学ぶ相続法」(清文社・2022年)
「租税条約入門-条文の読み方から適用まで」(中央経済社・2017年)
“An Analysis of the Rules on the Taxation of Investment Income under Japan's Tax Treaties”, Bulletin for International Taxation Volume 71, No 3/4 (2017)
「税務紛争への対応―調査、処分、異議、審査、訴訟、査察、国際課税」(共著・中央経済社・2013年)
「未払い残業代請求をめぐる課税上の問題 −所得区分と帰属時期の問題を中心に−」税法学570号(2013年)
税理士のための 相続実務と民法」(清文社・2013年)

➤弁護士木村浩之の国際税務のページはこちら

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