公開日: 2026/08/06 (掲載号:No.680)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例88】「親会社の貸倒引当金計上を回避するために行われた子会社に対する債権放棄の損金性」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例88】

「親会社の貸倒引当金計上を回避するために行われた
子会社に対する債権放棄の損金性」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、近畿地方のとある県庁所在地に本社を置き、旅客自動車運送事業を営む株式会社X(資本金5,000万円で3月決算)において、経営企画部長を務めております。

わずか数年前は、わが国のインバウンド向け観光業(運輸、宿泊、飲食業など)はコロナ禍で深刻な打撃を受け、青色吐息でしたが、コロナ禍明け後は急速に回復し、わが社のテリトリーである近畿地方でもここ数年は非常に好調に推移しております。わが社の主力事業は、乗車定員10人以下の自動車を貸し切って旅客を運送する一般乗用旅客自動車運送事業、いわゆるタクシー事業です。現在のわが国におけるタクシー事業を取り巻く環境は、政府・国土交通省がいうところの、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスである、モビリティのサービス化(Mobility as a Service, MaaS)や自動運転分野の発展を背景に目まぐるしく変化しており、また、乗務員の不足感が強まっていることから、いかにその確保を行うかが厳しい業界内競争を勝ち抜く上でのカギとなっております。

さて、そのような中、わが社は先日から定例の税務調査を受けております。そこで現在問題となっているのは、経営不振の子会社に対して有する債権を放棄した場合、その金額が損金に算入されるかどうかです。子会社の貸借対照表上は債務超過であり、事実上破産状態であることから、債権放棄を行って経営を立て直すのは親会社して合理的な経営判断であると考えられますが、税務署は、子会社の有する土地を時価評価すれば債務超過ではないとして、当該債権放棄は時期尚早であり、その金額は寄附金として扱われ、損金に算入されない金額が一部生ずると主張しております。税務署のやり方は土地の評価額に関し客観性の欠ける手法を用いており、恣意的な課税方法であると思いますが、税法上どのように考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例88】

「親会社の貸倒引当金計上を回避するために行われた
子会社に対する債権放棄の損金性」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、近畿地方のとある県庁所在地に本社を置き、旅客自動車運送事業を営む株式会社X(資本金5,000万円で3月決算)において、経営企画部長を務めております。

わずか数年前は、わが国のインバウンド向け観光業(運輸、宿泊、飲食業など)はコロナ禍で深刻な打撃を受け、青色吐息でしたが、コロナ禍明け後は急速に回復し、わが社のテリトリーである近畿地方でもここ数年は非常に好調に推移しております。わが社の主力事業は、乗車定員10人以下の自動車を貸し切って旅客を運送する一般乗用旅客自動車運送事業、いわゆるタクシー事業です。現在のわが国におけるタクシー事業を取り巻く環境は、政府・国土交通省がいうところの、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスである、モビリティのサービス化(Mobility as a Service, MaaS)や自動運転分野の発展を背景に目まぐるしく変化しており、また、乗務員の不足感が強まっていることから、いかにその確保を行うかが厳しい業界内競争を勝ち抜く上でのカギとなっております。

さて、そのような中、わが社は先日から定例の税務調査を受けております。そこで現在問題となっているのは、経営不振の子会社に対して有する債権を放棄した場合、その金額が損金に算入されるかどうかです。子会社の貸借対照表上は債務超過であり、事実上破産状態であることから、債権放棄を行って経営を立て直すのは親会社して合理的な経営判断であると考えられますが、税務署は、子会社の有する土地を時価評価すれば債務超過ではないとして、当該債権放棄は時期尚早であり、その金額は寄附金として扱われ、損金に算入されない金額が一部生ずると主張しております。税務署のやり方は土地の評価額に関し客観性の欠ける手法を用いており、恣意的な課税方法であると思いますが、税法上どのように考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~50】

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『新版 修正申告と更正の請求の対応と実務』(2025年・清文社)
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

           

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