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《速報解説》 ASBJ、「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い(案)」等を公表~基本はストック・オプション会計基準に準ずるも適用範囲等には注意~

筆者:阿部 光成

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《速報解説》

ASBJ、「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い(案)」等を公表

~基本はストック・オプション会計基準に準ずるも適用範囲等には注意~

 

公認会計士 阿部 光成

 

Ⅰ はじめに

2020年9月11日、企業会計基準委員会は、次のものを公表し、意見募集を行っている。

 「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い(案)」(実務対応報告公開草案60号。以下「実務対応報告案」という)

 「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準(案)」(企業会計基準公開草案第70号。企業会計基準第5号の改正案)

 「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針(案)」(企業会計基準適用指針公開草案第69号。企業会計基準適用指針第8号の改正案)

これは、「会社法の一部を改正する法律」(令和元年法律第70号)により、会社法202条の2 において、金融商品取引法2条16項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社が、取締役等の報酬等として株式の発行等をする場合には、金銭の払込み等を要しないと規定されたことを受けたものである。

基本的に、ストック・オプション会計基準に準じた会計処理を提案している。

意見募集期間は2020年11月11日までである。

文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅱ 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い(案)

1 適用範囲

実務対応報告案は、会社法202条の2に基づく、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引を対象とする(3項)。

ここで注意すべきことは、実務対応報告案は、いわゆる現物出資構成により、金銭を取締役等の報酬等とした上で、取締役等に株式会社に対する報酬支払請求権を現物出資財産として給付させることによって株式を交付する場合には適用されないことである(3項、25項)。

そして、適用範囲に含まれない取引に関して、これまでの実務で行われている会計処理及び開示に影響を与えることを意図してもいない(25項)。

2 事前交付型の会計処理

事前交付型とは、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引のうち、対象勤務期間の開始後速やかに、契約上の譲渡制限を付した株式の発行等を行い(会社法における割当日)、権利確定条件が達成された場合に譲渡制限が解除され、権利確定条件が達成されない場合には企業が無償で株式を取得する取引をいう(無償取得することが確定することを「没収」という。4項(7)(16))。

次のように、新株の発行により行う場合自己株式の処分により行う場合に分けて会計処理を規定している。

(1) 割当日における取扱い

【新株の発行により行う場合】

① 当初の割当日において新株を発行し発行済株式総数が増加する。

② 割当日には、資本を増加させる財産等の増加が生じていないので、払込資本を増加させない。

【自己株式の処分により行う場合】

当初の割当日において自己株式を処分するため、その時点で自己株式の帳簿価額を減額するとともに、同額のその他資本剰余金を減額する。

(2) 対象勤務期間における取扱い

【新株の発行により行う場合】

① 企業が取締役等から取得するサービスは、その取得に応じて費用として計上する。

② 各会計期間における費用計上額は、株式の公正な評価額のうち、対象勤務期間を基礎とする方法その他の合理的な方法に基づき当期に発生したと認められる額による。

③ 当該処理により年度通算で費用が計上される場合は、対応する金額を資本金又は資本準備金に計上し、年度通算で過年度に計上した費用を戻し入れる場合はその他資本剰余金から減額する。

④ 四半期会計期間においては、計上する損益に対応する金額はその他資本剰余金の計上又は減額として処理し、年度の財務諸表においては、③の処理に置き換える。

【自己株式の処分により行う場合】

各会計期間において報酬費用の認識と測定を行い、対応する金額をその他資本剰余金として計上する。

(3) 没収における取扱い

【新株の発行により行う場合】

没収により、企業が無償で株式を取得したときは、自己株式の無償取得として、自己株式の数のみの増加として処理する。

【自己株式の処分により行う場合】

没収により、企業が無償で株式を取得したときは、当初の割当日において減額した自己株式の帳簿価額のうち、没収により取得した部分に相当する額の自己株式を増額し、同額のその他資本剰余金を増額する。

3 事後交付型の会計処理

事後交付型とは、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引のうち、契約上、株式の発行等について権利確定条件が付されており、権利確定条件が達成された場合に株式の発行等が行われる(会社法における割当日)取引をいう(4項(8))。

次のように、新株の発行により行う場合自己株式の処分により行う場合に分けて規定しており、純資産の部の株主資本以外の項目に「株式引受権」が新設される。このため、「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準(案)」等において、株式引受権を新設する。

なお、2020年9月1日に、法務省から「会社法の改正に伴う法務省関係政令及び会社法施行規則等の改正に関する意見募集」が公表されており、会社計算規則改正案2条3項34号において、「株式引受権」が新たに定義されている。

(1) 対象勤務期間における取扱い

【新株の発行により行う場合】

各会計期間において報酬費用の認識と測定を行い、対応する金額を、新株の発行が行われるまでの間、貸借対照表の純資産の部の株主資本以外の項目に「株式引受権」として計上する。

【自己株式の処分により行う場合】

各会計期間において報酬費用の認識と測定を行い、対応する金額を、自己株式の処分が行われるまでの間、貸借対照表の純資産の部の株主資本以外の項目に「株式引受権」として計上する。

(2) 割当日における取扱い

【新株の発行により行う場合】

権利確定条件を達成した後の割当日に、株式引受権として計上した額を資本金又は資本準備金に振り替える。

【自己株式の処分により行う場合】

権利確定条件を達成した後の割当日に、自己株式の取得原価と株式引受権の帳簿価額との差額を、自己株式処分差額として、その他資本剰余金を増減させる。

4 注記

次の注記項目を定める(20項)。

 事前交付型について、取引の内容、規模及びその変動状況(各会計期間において権利未確定株式数が存在したものに限る)

 事後交付型について、取引の内容、規模及びその変動状況(各会計期間において権利未確定株式数が存在したものに限る。ただし、権利確定後の未発行株式数を除く)

 付与日における公正な評価単価の見積方法

 権利確定数の見積方法

 条件変更の状況

5 1株当たり情報

 事後交付型におけるすべての権利確定条件を達成した場合に交付されることとなる株式は、「1株当たり当期純利益に関する会計基準」(企業会計基準第2号)9項の「潜在株式」として取り扱い、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定において、ストック・オプションと同様に取り扱う。

 株式引受権は1株当たり純資産の算定上、「1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第4号)35項の期末の純資産額の算定にあたっては、貸借対照表の純資産の部の合計額から控除する。

6 関連当事者との取引

関連当事者との取引に関する開示は要しない(54項)。

7 適用時期等

 「会社法の一部を改正する法律」の施行日以後に生じた取引から適用する。

 適用については、会計方針の変更には該当しない。

(了)

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筆者紹介

  • 阿部 光成

    (あべ・みつまさ)

    公認会計士
    中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

    現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
    企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

    主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂版〕』(編著、商事法務)がある。

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