[子会社不祥事を未然に防ぐ]
グループ企業における内部統制システムの再構築とリスクアプローチ
【第10回】
「グループ企業への具体的な関与(その4)」
~監査機能の課題と重要性②~
公認会計士 松藤 斉
(2 不正リスク対応の監査体制の課題)
③ 会計監査人
▷ 精神的独立性
会計監査人、監査事務所に対しては、昨今の巨額不正会計の続発を受け、国内外から監査品質について疑問視され、ますます厳格な監査の実施を期待されている状況である。不正リスク対応監査においては、監査基準の厳格化や当局指導を受け、監査手続強化、所内研修、審査機能強化の流れの中で不正の端緒を発見する機会も徐々に増えているようである。また、監査事務所への告発を契機に実態調査に発展する事例もある。
しかし、報酬を支払う監査先に対する精神的独立性の問題があるのは事実である。確かに、会社法改正によって会計監査人の選任・解任等の議案の決定権が監査役会に与えられ、取締役の職務執行を監査する監査役(会)との関係がすっきりした。一方、監査対象である取締役及びその他の役職員との相互関係性、コミュニケーションによって現場の監査が成り立っており、翌期の監査でいきなり厳しい態度で臨むのも難しいものである。
仮に監査事務所ローテーション制度が日本で導入された場合でも同様であるが、形式は独立、実質は遠慮とならぬよう、監査役(会)、監査委員(会)とのコミュニケーションの質、量を相当増やして、執行側、取締役(会)、監査役(会)とのバランスを保ち不正対応監査を進めるべきである。
▷ 不正リスク対応監査
次に、監査現場が持つ課題としては、監査先とのコミュニケーション不足、増える一方の監査手続及び文書化、品質管理のための工数に比しての予算や対応の不足が挙げられよう。
また、筆者の現役時代と比べると、内部統制監査、四半期監査を含め、監査対象データ、監査対象取引の複雑性などが膨大に増えている中で、それらを克服できるだけの技術革新が必ずしも得られているとも言えない現状があるのではないか。
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