国際課税レポート

【第26回】
「トランプ関税劇場の第3幕」
~最高裁判決後に浮上した301条・強制労働リスク~
税理士 岡 直樹
(公財)東京財団名誉フェロー
7月24日、10%の122条関税が終了する。この関税は、2026年2月20日、米連邦最高裁が、国際緊急経済権限法(IEEPA)は大統領に関税を課す権限を与えていないと判断したことを受け、急遽導入されていたものだ。判決により、第二次トランプ政権の看板政策「トランプ関税」のうち、2025年の「相互関税」などIEEPAに基づく措置は法的根拠を失った。122条関税の延長には議会による立法が必要だが、本稿執筆時点で、延長に向けた具体的な動きはみられない。
2月の最高裁判決後、米税関・国境警備局(CBP)は2026年4月20日に還付手続きを開始し、5月にはIEEPA関税の還付金の支払いが始まった(JETROビジネス短信2026年5月28日)。赤澤亮正経済再生担当相が2025年4月から7月にかけて8回訪米し、関税引下げ交渉の対象として知られた「相互関税」の終了は、日本企業にとっては吉報、トランプ政権にとっては打撃となっていた。
もっとも、これで自らを“タリフマン”と呼ぶ「トランプ関税劇場」の幕が下りるわけではない。
緊急事態を理由に広範な関税を一挙に課す手法は行き詰まったが、政権は既存の通商法に基づく複数の制度へと関税政策を組み替えつつある。しかも、その過程で、これまで関税問題の陰に隠れていた強制労働などが新たな争点として浮上した。嵐が去るどころか、暴風域が広がったともいえる。
以下では、第一次トランプ政権の対中関税、第二次トランプ政権のIEEPA関税に続く“トランプ関税第3幕”についての現状と展望を紹介する。
(注) IEEPAに基づくトランプ関税導入と裁判の経緯について詳しくは、本連載【第20回】「「トランプ関税」と「ピラー2」~米・欧2つの最高裁審査~」参照
米最高裁がIEEPA関税(相互関税)を否定
トランプ大統領は2025年、米国の恒常的な貿易赤字や、合成麻薬・不法移民の流入を「国家緊急事態」と位置付け、IEEPAを根拠に広範な追加関税を導入した。IEEPAは、国家緊急事態に際して外国との経済取引を規制する法律であるが、歴代大統領が同法を根拠に関税を課した例はなかった。
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