〔時系列でみる〕
出産・子を養育する社員への
対応と運営のヒント
【第1回】
「出産・育児に関する制度の全体像」
社会保険労務士 佐藤 信
1 はじめに
少子高齢化の進行に伴い、労働力人口は今後減少していくことが見込まれている。
企業による有能な人材の獲得競争は、ますます激しくなっていくであろう。
こうした状況の変化のなかで企業が人材を確保し、活用・定着を図っていくためには、従来の働き方や職場環境を見直し、従業員の仕事と家庭の両立を支援(以下、当連載では「両立支援」とする)するための取組みが不可欠といえる。
つまり、企業による両立支援の取組みは、一部の従業員を優遇するための福利厚生としてではなく、「重要な人的資源の活用のための経営戦略の一環」として実施する必要がある。
働く意欲のある女性が増えているなかで、出産を機に会社を辞めざるを得ないというのは、社員にとってだけではなく、会社にとっても大きな損失である。
当連載では、妊娠・出産・育児をする従業員に対し企業がすべきこと(又はしてはいけないこと)、仕事と家庭との両立を実現しやすくする支援策、企業が有能な人材を確保・活用していく際のヒントを、「妊娠」→「出産」→「育児」→「職場復帰」といった時系列で触れていくこととする。
「子ども・子育て白書」
◆50年後の人口推移
2010年から2060年にかけての人口推移の見通しは、次のとおりである(「平成24年版子ども・子育て白書」概要版P35)。
・年少(0~14歳)・・・1,684万人→791万人(総人口に占める割合13.1%→9.1%)
・生産年齢人口(15~64歳)・・・8,174万人→4,418万人(同63.8%→50.9%)
・高齢者人口(65歳以上)・・・2,948万人→3,464万人(同23.0%→39.9%)
2 各時期に応じ企業がすべきこと
従業員による妊娠・出産・育児のそれぞれの時期に応じて、企業がすべきこととされるものを掲げると、以下のようになる(一部は努力規定とされ、義務化されていないものもある)。
まずは全体像を把握していただき、詳細は次回以降に触れていくこととしたい。
(1) 妊娠中の労働者に対する企業の対応
女性労働者が妊娠中に実施すべき主なものとしては、次の事項がある。
なお、下記「妊産婦の」とあるものは、産後にも継続して適用される。
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