常識としてのビジネス法律
【第28回】
「知的財産権入門(その1)」
弁護士 矢野 千秋
1 知的財産権の流れ
(1) 知的財産権とは
知的財産権とは、アメリカで使われているIntellectual Propertyの訳語である。そして昨今の新聞、雑誌等をにぎわせている言葉であるが、知的財産権という用語を正確に定義している例は少ない。
一般には、「知的財産権」という用語を、特許権、実用新案権、意匠権、商標権を含む産業財産権(工業所有権)と、それ以外の著作権等の権利の漠然とした総称として使っている例が多い。
要は、人間の幅広い知的創造活動の成果について、その創作者に一定期間の権利保護を与えるものが知的財産権制度である。
知的財産権は2種に分けられる。まず「産業財産権」であるが、これには特許権、実用新案権、意匠権、商標権が含まれ、特許庁が所管している。他方、産業財産権に含まれない人間の精神的創造物に対して認められる「独占的排他権」で、著作権、パブリシティーの権利、不正競争行為差止請求権、半導体チップに対する回路配置利用権等がある。
(2) 知的財産権の関連法
我が国における知的財産権に関する主な法律としては以下のものがある。
① 特許法、実用新案法、意匠法、商標法(産業財産権法)
② 著作権法
③ 不正競争防止法(商品等表示、商品形態、トレードシークレット)
④ 商法(商号)
⑤ 半導体集積回路の回路配置に関する法律
⑥ 種苗法
本稿では上記①乃至③について解説する。
2 特許権と実用新案権
A 実用新案権
(1) 基礎知識
実用新案法は「物品の形状、構造又は組合せに係る考案の保護及び利用を図ることにより、その考案を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする」(実用新案法1条)。そして考案とは「自然法則を利用した技術的思想の創作をいう」(実用新案法2条1項)。特許法の発明と比べると、「高度」という要件が抜けており、登録を受けられる対象が「物品の形状、構造又は組合せ」に限られている。したがって、方法、物質、一定の形状を有さないもの等の考案は保護対象にならない。
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