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家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第11回】「家族信託に関する専門家の活用」

筆者:荒木 俊和

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家族信託による

新しい相続・資産承継対策

【第11回】

「家族信託に関する専門家の活用」

 

弁護士 荒木 俊和

 

前回までは家族信託に関する「よくある質問」について解説してきたが、今回は実際に財産を持っている方が家族信託を活用しようとした場合に、どのように専門家を活用すればよいか、専門家に委託すべき業務、スキーム策定、信託契約書作成にあたっての弁護士・税理士・司法書士・行政書士等の専門家の活用、専門家の選び方について解説する。

 

1 家族信託の組成において必要となる事項

(1) 信託契約書の作成

家族信託を組成するにあたってまず必要となるのは、信託契約書の作成である。

信託の組成にあたっては、遺言による信託(信託法第3条第2号)、自己信託(信託宣言、同条第3号)による方法もあるが、家族信託においてこれらの方法を取ることはまれであると思われる。

また、これまで述べてきたとおり、信託契約の内容は通常、オーダーメイドで作られるため、信託契約の内容を確定させる前提として、専門家によるコンサルティングを受けることが望ましい。

(2) タックス・プランニング

信託を設定することによって直接的に節税効果が発生することはない反面、信託と税務の関係性を十分に理解していないと、思わぬところで税負担が発生する恐れがあるため、注意が必要である。

信託の設定時、受益権の移転時、信託の終了時等の権利変動のあるタイミングにおける課税の有無はもちろん、信託継続中において、誰が、いかなる税金を支払う必要があるのかも把握しておく必要がある。

筆者が不動産についての家族信託設定時に意外と多く受ける質問であるが、依頼者から「固定資産税は誰が支払うのか。」と訊かれることがある。

回答としては、「不動産の所有者たる受託者が納税義務者になるが、信託財産から支払うことができるため、個人財産としての負担はない。」というものになると思われるが、専門家としては、依頼者側からするとこのような部分まで気になることがあるという点に留意が必要である。

(3) 登記・登録

信託契約により、対象財産は信託財産となるが、登記・登録制度がある財産は、信託の登記・登録をしなければ第三者に対抗できないとされている(信託法第14条)。

ここで第三者との対抗関係が生じる典型的な場面としては、受託者固有の債務について、信託財産に対して強制執行がなされるような場合であり、登記・登録がなければ第三者たる債権者に対して異議を述べることができない。

信託財産について登記・登録を行う典型的な場面としては、不動産についての信託登記が挙げられる。しかし、これまで行われてきた信託登記の大半はいわゆる商事信託であり、家族信託による信託登記は必ずしも一般的ではないのが現状である。

その他の場面としては、非公開株式を信託する場合の株主名簿への記載が挙げられる(会社法第154条の2)。

(4) その他

上記の他、公正証書で信託契約書を作成する場合には、公証人への依頼が必要となる。

また、信託設定に付随して受益権を譲渡する場合には受益権譲渡契約書が必要となるし、信託財産以外について遺贈を行うような場合には遺言を併用することもある。

さらに、信託監督人や受益者代理人への就任を専門家に依頼する場合もある。

 

2 各専門家が対応できる「独占業務」

家族信託の組成にあたっては上記のような各事項への対応が必要となるが、一方で、弁護士、税理士、司法書士、行政書士等には各業法で定められた独占業務というものが存在する。

例えば、弁護士であれば「訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務」(弁護士法第3条)であり、税理士であれば「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」等(税理士法第2条)、司法書士であれば「登記又は供託に関する手続について代理すること」等(司法書士法第3条)である。

このように各士業においてその職分範囲が定められているため、依頼者としてはそれぞれの範囲において依頼しなければならないし、各士業としてはそれぞれの範囲を超える業務を行ってはならないという規制が設けられている。

 

3 相談の窓口

このような事情を踏まえると、家族信託を検討している依頼者としては、「まず誰に相談すればよいか」ということに悩まれるのではないだろうか。

実際に家族信託を設定するにあたっては、これらの士業に依頼して対応してもらうことが通常であろうと思われるが、士業にいきなり相談しに行くことがはばかられるという方も多いものと思われる。

そこで必要とされているのが、「コーディネーター」としての役割を持つ業種の存在である。

例えば、不動産業者、生命保険のセールスパーソン、ファイナンシャルプランナー、金融機関の担当者、介護福祉施設の担当者等、依頼者からすると日常的な接点があり、気軽に相談のできる関係の方である。

これらの方々において、依頼者から家族関係、財産関係、資産承継に関する問題点や希望を聞き取り、その情報をまとめて各士業に伝えることが、スムーズな進め方の1つではないかと思われる。

 

4 各専門家間の連携の必要性

依頼者からコーディネーターを経由し、又は直接に各士業のところに持ち込まれた相談については、上記で記載した内容を網羅的に検討する必要がある。

このとき、相談を受けた各士業が、自分の専門分野だけにおいて分析・検討し、スキームを策定することにはリスクが存在するといえる。

すなわち、弁護士や行政書士が契約書の作り込みだけを検討していたのでは税務リスクが回避できないし、税理士が税務リスクの回避だけを目的にスキームを作ると契約上の問題が生じるような恐れがある。

また、家族信託は未だ完全に定着している制度ではないため、それぞれの士業といえども、信託に関する知識やノウハウが十分でない専門家も多く存在する。

このため、家族信託の実効性確保のためには、各士業が適切な人員を集め、アライアンスを構築することが望ましく、依頼者側からすると、家族信託の組成実績やアライアンスの有無等を考慮要素として選択する必要があるのではないかと考えられる。

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

連載目次

家族信託による
新しい相続・資産承継対策

▷総論

▷よくある質問・留意点

▷外部専門家等の活用

▷家族信託におけるリスク・デメリット

▷信託契約作成上の留意点

▷家族信託の活用事例~不動産編~

▷家族信託の活用事例~株式編~

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筆者紹介

  • 荒木 俊和

    (あらき・としかず)

    弁護士・札幌弁護士会所属

    アンサーズ法律事務所
     http://answerz-law.com

    つなぐ相続アドバイザーズ
     http://www.tsunagu-s.jp

    昭和57年 三重県生まれ
    平成17年 一橋大学法学部卒業
    平成20年 東京大学法科大学院修了
     同 年 司法試験合格
    平成21年 司法修習修了(新62期)、弁護士登録
    平成22年 森・濱田松本法律事務所入所
    平成24年 札幌みずなら法律事務所(現・みずなら法律事務所)入所
    平成26年 アンサーズ法律事務所設立
         株式会社つなぐ相続アドバイザーズ設立 取締役就任

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