公開日: 2016/10/20 (掲載号:No.190)
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〔資産税を専門にする税理士が身に着けたい〕税法や通達以外の実務知識 【第1回】「土地の地積について」

筆者: 笹岡 宏保

〔資産税を専門にする税理士が身に着けたい〕

税法や通達以外実務知識

【第1回】

「土地の地積について」

税理士 笹岡 宏保

 

基本的な論点

土地の評価は、「単位×数量(地積)」により求められるものです。

この場合の「地積」は、評価実務においては何を基に算定することになるのでしょうか。土地の登記簿謄本上の地積(公簿地積)を使用すれば、それで良いのでしょうか。

これらの論点を実務上の目線から検討してみることにします。

 

解決への指針

(1) 評価実務における「地積」の考え方

財産評価基本通達(以下「評価通達」といいます)8(地積)の定めでは、「地積は、課税時期における実際の面積による」とされています。

ここで注目しておきたいのが、「実際の面積」と表現されていることで、「実測による面積」とは表現されていない点です。

この2つの用語の差異について、評価通達には注書き等による解説は示されていませんが、国税庁ホームページ上で公開されている質疑応答事例では「実際の地積」によることの意義について、要旨次の通りの考え方が示されています。

土地の地積を「実際の地積」によることとしているのは、台帳地積と実際地積とが異なるものについて、実際地積によることとする基本的な考え方を打ち出したものです。

したがって、全ての土地について、実測を要求しているのではありません。

実務上の取扱いとしては、特に縄延の多い山林等について、立木に関する実地調査の実施、航空写真による地積の測定、その地域における平均的な縄延割合の適用等の方法によって、実際地積を把握することとし、それらの方法によってもその把握ができないもので、台帳地積によることが他の土地との評価の均衡を著しく失すると認められるものについては、実測を行うこととなります。

(※) 国税庁・質疑応答事例「「実際の地積」によることの意義」より

そうすると、次に掲げるような土地については、実測による地積が容易に確認できると考えられますので、評価通達8に定める実際の面積は、実測による地積と一致すると認識する必要があるものと考えられます。

 分筆をしたことがある土地(ただし、分筆した土地の残地については、分筆の時期次第で当該残地部分に実測の必要性がなかった場合があり、この場合の当該残地部分を除きます。)

 実測精算により取得した土地

 相続等による取得後、実測精算により売却した土地

 土地区画整理事業に基づく換地(仮換地、本換地)処分により取得した土地

 最近測量した土地(例えば、保有資産額の確定や隣地との境界確認のため)

 相続税の納付のために物納をした土地(物納をする場合には、実測に基づく地積更正登記を行うことが求められます。)

 

(2) 地積を把握するために必要な資料

上記(1)を受けて、評価通達8(地積)に定める実際の面積を確認するための資料として、土地関係の資料として法務局に備えられており収集が可能とされる主な資料として、次のからに掲げるものが挙げられます。これらの資料の差異は主に、地図又は図面の精度の差異によるものとなります。

 不動産登記法第14条に規定する地図(通称:14条地図)

不動産登記法に規定する地図に該当するためには、三角点(国土地理院が確定させる国家基準点)を基礎にして測量法の諸規定によって境界を測定した一定水準の精度を担保しているものであることが必要とされています。

この地図は、不動産登記法第14条に規定されていることから、通称として「14条地図」と呼称されています。この14条地図をさらに区分すると、次の3つになります。

(イ) 法務局が作成した地図

(ロ) 国土調査の成果による地籍図

(注1) わが国では昭和26年から土地に関する記録(これを「地籍」といいます。)を明確にするために、国土調査法の規定に基づいて地籍調査が行われています。

(注2) 国土調査の成果による地籍図であっても、製作年度が古い等の理由から精度の低いものは、次の(ロ)に掲げる「公図(地図に準ずる図面)」として取り扱われます。

(ハ) 土地区画整理等の成果による土地所在図(例:土地区画整理所在図)

(注3) 上記に該当するものであっても、製作年度が古い等の理由から精度の低いものは、次の(ハ)に掲げる「公図(地図に準ずる図面)」として取り扱われます。

 公図(地図に準ずる図面)

地図に準ずる図面とは、土地の区画を明確にした不動産登記法所定の地図(14条地図)が備え付けられるまでの間、これに代わるものとして備え付けられている図面で、土地の位置及び形状の概略を記載したものをいい、通称、これを「公図」と呼称しています。

この地図に準ずる図面をさらに区分すると、次の3つになります。

(イ) 旧土地台帳附属地図

(ロ) 国土調査の成果による地籍図のうち、製作年度が古い等の理由から精度の低いもの

(ハ) 土地区画整理等の成果による土地所在図(例:土地区画整理所在図)のうち、製作年度が古い等の理由から精度の低いもの

 地積測量図

地積測量図とは、地積の変更(例として、地積更正登記を行う場合)や分筆(分筆登記を行う場合)に当たって、新たな地積を記載して登記申請を行うための添付資料として法務局へ提出することが義務化されている図面をいいます。

(注) 地積測量図面であっても、製作年度が古いものは正確性を担保していると認定できないものもありますので、留意する必要があります。すなわち、昭和53年12月31日までは地積測量図の作成に当たって、隣地所有者の立会制度の規定がなかったこともあり、このような状況下で作成された地積測量図の正確性を巡って、後日、トラブルになる事例も少なくなかったようです。

 

ポイント

  • 法務局にどのような土地の地積に関する資料が存在するのか確認してみましょう!!

(了)

この連載は不定期の掲載となります。

〔資産税を専門にする税理士が身に着けたい〕

税法や通達以外実務知識

【第1回】

「土地の地積について」

税理士 笹岡 宏保

 

基本的な論点

土地の評価は、「単位×数量(地積)」により求められるものです。

この場合の「地積」は、評価実務においては何を基に算定することになるのでしょうか。土地の登記簿謄本上の地積(公簿地積)を使用すれば、それで良いのでしょうか。

これらの論点を実務上の目線から検討してみることにします。

 

解決への指針

(1) 評価実務における「地積」の考え方

財産評価基本通達(以下「評価通達」といいます)8(地積)の定めでは、「地積は、課税時期における実際の面積による」とされています。

ここで注目しておきたいのが、「実際の面積」と表現されていることで、「実測による面積」とは表現されていない点です。

この2つの用語の差異について、評価通達には注書き等による解説は示されていませんが、国税庁ホームページ上で公開されている質疑応答事例では「実際の地積」によることの意義について、要旨次の通りの考え方が示されています。

土地の地積を「実際の地積」によることとしているのは、台帳地積と実際地積とが異なるものについて、実際地積によることとする基本的な考え方を打ち出したものです。

したがって、全ての土地について、実測を要求しているのではありません。

実務上の取扱いとしては、特に縄延の多い山林等について、立木に関する実地調査の実施、航空写真による地積の測定、その地域における平均的な縄延割合の適用等の方法によって、実際地積を把握することとし、それらの方法によってもその把握ができないもので、台帳地積によることが他の土地との評価の均衡を著しく失すると認められるものについては、実測を行うこととなります。

(※) 国税庁・質疑応答事例「「実際の地積」によることの意義」より

そうすると、次に掲げるような土地については、実測による地積が容易に確認できると考えられますので、評価通達8に定める実際の面積は、実測による地積と一致すると認識する必要があるものと考えられます。

 分筆をしたことがある土地(ただし、分筆した土地の残地については、分筆の時期次第で当該残地部分に実測の必要性がなかった場合があり、この場合の当該残地部分を除きます。)

 実測精算により取得した土地

 相続等による取得後、実測精算により売却した土地

 土地区画整理事業に基づく換地(仮換地、本換地)処分により取得した土地

 最近測量した土地(例えば、保有資産額の確定や隣地との境界確認のため)

 相続税の納付のために物納をした土地(物納をする場合には、実測に基づく地積更正登記を行うことが求められます。)

 

(2) 地積を把握するために必要な資料

上記(1)を受けて、評価通達8(地積)に定める実際の面積を確認するための資料として、土地関係の資料として法務局に備えられており収集が可能とされる主な資料として、次のからに掲げるものが挙げられます。これらの資料の差異は主に、地図又は図面の精度の差異によるものとなります。

 不動産登記法第14条に規定する地図(通称:14条地図)

不動産登記法に規定する地図に該当するためには、三角点(国土地理院が確定させる国家基準点)を基礎にして測量法の諸規定によって境界を測定した一定水準の精度を担保しているものであることが必要とされています。

この地図は、不動産登記法第14条に規定されていることから、通称として「14条地図」と呼称されています。この14条地図をさらに区分すると、次の3つになります。

(イ) 法務局が作成した地図

(ロ) 国土調査の成果による地籍図

(注1) わが国では昭和26年から土地に関する記録(これを「地籍」といいます。)を明確にするために、国土調査法の規定に基づいて地籍調査が行われています。

(注2) 国土調査の成果による地籍図であっても、製作年度が古い等の理由から精度の低いものは、次の(ロ)に掲げる「公図(地図に準ずる図面)」として取り扱われます。

(ハ) 土地区画整理等の成果による土地所在図(例:土地区画整理所在図)

(注3) 上記に該当するものであっても、製作年度が古い等の理由から精度の低いものは、次の(ハ)に掲げる「公図(地図に準ずる図面)」として取り扱われます。

 公図(地図に準ずる図面)

地図に準ずる図面とは、土地の区画を明確にした不動産登記法所定の地図(14条地図)が備え付けられるまでの間、これに代わるものとして備え付けられている図面で、土地の位置及び形状の概略を記載したものをいい、通称、これを「公図」と呼称しています。

この地図に準ずる図面をさらに区分すると、次の3つになります。

(イ) 旧土地台帳附属地図

(ロ) 国土調査の成果による地籍図のうち、製作年度が古い等の理由から精度の低いもの

(ハ) 土地区画整理等の成果による土地所在図(例:土地区画整理所在図)のうち、製作年度が古い等の理由から精度の低いもの

 地積測量図

地積測量図とは、地積の変更(例として、地積更正登記を行う場合)や分筆(分筆登記を行う場合)に当たって、新たな地積を記載して登記申請を行うための添付資料として法務局へ提出することが義務化されている図面をいいます。

(注) 地積測量図面であっても、製作年度が古いものは正確性を担保していると認定できないものもありますので、留意する必要があります。すなわち、昭和53年12月31日までは地積測量図の作成に当たって、隣地所有者の立会制度の規定がなかったこともあり、このような状況下で作成された地積測量図の正確性を巡って、後日、トラブルになる事例も少なくなかったようです。

 

ポイント

  • 法務局にどのような土地の地積に関する資料が存在するのか確認してみましょう!!

(了)

この連載は不定期の掲載となります。

連載目次

筆者紹介

笹岡 宏保

(ささおか・ひろやす)

税理士

東京税理士会等、全国の税理士会での統一研修会および民間の研修会などで数多くの資産税研修の講師として活躍。

【主な書籍・DVD】
・『平成31年3月改訂 詳解 小規模宅地等の課税特例の実務
・『ケーススタディ 相続税財産評価の税務判断
・『平成30年3月改訂 これだけはおさえておきたい相続税の実務Q&A
・『具体事例による 財産評価の実務
・『[DVD]どう使う!?「小規模宅地等の課税特例制度」』
・『[DVD]わかりやすい土地評価の実務【基礎編】
・『[DVD]わかりやすい土地評価の実務【応用編】』(以上、清文社)
・『難解事例から探る 財産評価のキーポイント』(ぎょうせい)
ほか多数
  

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