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[無料公開中]「収益認識に関する会計基準」及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」の徹底解説 【第3回】

筆者:西田 友洋

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「収益認識に関する会計基準」及び

「収益認識に関する会計基準の適用指針」徹底解説

【第3回】

 

仰星監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

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6 【STEP2】履行義務の識別

収益認識基準等では、契約書単位ではなく、履行義務単位で会計処理(収益を認識)する。
【STEP2】では、契約の中に含まれている履行義務を識別する。

(1) 履行義務の識別

契約における取引開始日に、顧客との契約において約束した財又はサービスを評価し、以下の又はのいずれかを顧客に移転する約束のそれぞれについて履行義務として識別する(基準32、33、128)。

 別個の財又はサービス(又は別個の財又はサービスの束)

(※) 別個の財又はサービスの判定は下記(2)参照

 一連の別個の財又はサービス(特性が実質的に同じであり、顧客への移転のパターンが同じである複数の財又はサービス)

以下の(ⅰ)及び(ⅱ)の要件のいずれも満たす場合、顧客への移転のパターンが同じである。

(ⅰ) 一連の別個の財又はサービスのそれぞれが、基準第38項(【STEP5】(連載第6回)参照)における一定の期間にわたり充足される履行義務の要件を満たすこと

(ⅱ) 基準第41項及び第42項(【STEP5】参照)に従って、履行義務の充足に係る進捗度の見積りに、同一の方法が使用されること

●②は、例えば清掃サービス契約のように、同質のサービスが反復的に提要される契約等に適用できる。

(2) 別個の財又はサービス

別個の財又はサービスは履行義務として認識するが、「別個」として識別するための要件がある。

顧客に約束した財又はサービスは、以下の性質の観点及び契約の観点の要件のいずれも満たす場合には、別個のものとする(基準34、130、131、適用指針5、6、112)。

 【性質の観点】

財又はサービスから単独で顧客が便益を享受することができること(※1)、あるいは、財又はサービスと顧客が容易に利用できる他の資源(※2)を組み合わせて顧客が便益を享受することができること(すなわち、当該財又はサービスが別個のものとなる可能性があること(※3)

(※1) 財又はサービスから単独で顧客が便益を享受することができるかどうかの判定において、顧客が財又はサービスをどのように使用するかは考慮せず、財又はサービス自体の特性を考慮する。顧客が企業以外から容易に利用できる資源を獲得することが契約によって制限されていても、このような契約上の制限は考慮しない。

(※2) 容易に利用できる資源とは、企業又は他の企業が独立して販売する財又はサービスや顧客が企業から既に獲得した資源(企業が契約に基づき既に顧客に提供している財又はサービスを含む。)又は他の取引又は事象から既に獲得した資源である。

(※3) 顧客が以下の(ⅰ)又は(ⅱ)のいずれかを行うことができる場合、財又はサービスが別個のものとなる可能性がある。

(ⅰ) 財又はサービスの使用、消費、あるいは廃棄における回収額より高い金額による売却

(ⅱ) 経済的便益を生じさせる(ⅰ)以外の方法による財又はサービスの保有

 【契約の観点】

財又はサービスを顧客に移転する約束が、契約に含まれる他の約束と区分して識別できること(すなわち、財又はサービスを顧客に移転する約束が契約の観点において別個のものとなること)(区分して識別できないことを示す要因については、下記(3)参照)

(※4) 約束の性質が、契約において、財又はサービスのそれぞれを個々に移転するものか、又は、財又はサービスをインプットとして使用した結果生じる結合後のアウトプットを移転するものかを判断する。

(※5) 財又はサービスを移転する義務の履行に係るリスクが、他の約束の履行に係るリスクと区分できるかどうかが判断の基礎となる。

(3) 複数の約束が区分して識別できない場合

財又はサービスを顧客に移転する複数の約束が区分して識別できないことを示す要因として、例えば、以下のからがある(適用指針6、112、113)。

以下のような場合には、顧客に約束した財又はサービスは1つのもの(1つの履行義務)として結合する。言い換えると、以下のからに該当しない場合には、それぞれ別個の財又はサービス(別個の履行義務)として識別する。

(注) からの要因は、相互に排他的なものではなく、複数が該当する可能性がある。

 財又はサービスをインプットとして使用し、契約において約束している他の財又はサービスとともに、顧客が契約した結合後のアウトプットである財又はサービスの束に統合するという重要なサービスを提供していること

➤財又はサービスの束に統合する重要なサービスとは、顧客に対する企業の約束の相当部分が、個々の財又はサービスを結合後のアウトプットに確実に組み込むことであり、個々の財又はサービスの移転に係るリスクを区分できないことを示している。例えば、著しい修正を伴わないソフトウェアの単純なインストール・サービス等は、重要な統合サービスには該当しない

➤重要な統合サービスによって生じる結合後のアウトプットは、必ずしも単一のアウトプットとなるわけではなく、複数の単位を有する場合がある。例えば、新製品の開発のために複数の試作品を実験結果に応じて設計を見直しつつ製造する契約では、アウトプットである試作品は複数生じるが、試作品の設計及び製造を統合するサービスは、すべてのアウトプットに関連する

 財又はサービスの1つ又は複数が、契約において約束している他の財又はサービスの1つ又は複数を著しく修正する又は顧客仕様のものとするか、あるいは他の財又はサービスによって著しく修正される又は顧客仕様のものにされること

 財又はサービスの相互依存性又は相互関連性が高く、当該財又はサービスのそれぞれが、契約において約束している他の財又はサービスの1つ又は複数により著しく影響を受けること

例えば、企業が財又はサービスのそれぞれを独立して移転することにより約束を履行することができないため、複数の財又はサービスが相互に著しく影響を受ける場合

【設例①】

当社は、ビルを建設する契約をX社と締結した。当社は、プロジェクトの全般的な管理に対する責任を負っている。

契約には、設計、現場の清掃、基礎工事、調達、建設、配管と配線、設備の据付け及び仕上げが含まれる。これらの財又はサービスの多くは、当社又は同業他社により、他の顧客に対しても日常的に提供されている。

当該契約について、履行義務をどのように識別するかについて、以下のように検討した。

(ⅰ) 約束した財又はサービスは、X社が当該財又はサービスから単独で又はX社が容易に利用できる他の資源と組み合わせて便益を享受することができる。また、X社が個々の財又はサービスから、それらの使用、消費、売却又は保有によって経済的便益を生み出すことができる。そのため、契約の中に含まれるそれぞれの財又はサービスの提供は、基準第34項(1)【性質の観点】からは、別個の履行義務であると判断した。

(ⅱ) 当社は、約束したそれぞれの財又はサービス(インプット)をX社が契約した目的であるビル(結合後のアウトプット)に統合する重要なサービスを提供するため、それぞれの財又はサービスを提供する約束は、基準第34項(2)【契約の観点】から他の約束と区分して識別できないと判断した。

(ⅲ) 上記の結果、基準第34項の両方の要件が満たされないため、契約に含まれるそれぞれの財又はサービスは別個の履行義務として認識するのではなく、契約で約束した財又はサービスのすべてを「単一の履行義務」として識別すると判断した。

【設例②】

当社は、複雑な特殊仕様の機械装置の複数のユニットを引き渡す契約をA社と締結した。機械装置のそれぞれのユニットは、他のユニットと独立して稼働させることができる。

契約には、ユニットを製造するための製造プロセスを確立することが含まれている。機械装置の仕様は、当社が自社の設計に基づく特殊なもので、装置を引き渡す契約とは別の契約に基づいて開発されたものである。

当社は、契約の全体的な管理に対する責任を負っていて、材料の調達、製造、組立及び試験を含むさまざまな活動を実施することやそれらを統合することが求められている。

当該契約について、履行義務をどのように識別するかについて、以下のように検討した。

(ⅰ) それぞれのユニットが他のユニットと独立して機能することから、A社はそれぞれのユニットから単独で便益を享受することができる。そのため、それぞれのユニットは基準第34項(1)【性質の観点】からは、別個の履行義務であると判断した。

(ⅱ) 今回の約束の性質は、当社と契約した特殊仕様の機械装置の複数のユニットを製造して提供することである。そして、当社の責任は、契約の全体的な管理と、さまざまな財又はサービス(インプット)を全体的なサービス及びその成果物である機械装置(結合後のアウトプット)に統合する重要なサービスの提供である。そのため、機械装置の引き渡し及び当該装置を製造するためのさまざまな財又はサービスを提供する約束は、基準第34項(2)【契約の観点】から、契約に含まれる他の約束と区分して識別できないと判断した。

(ⅲ) 当社が提供する製造プロセスは、A社との契約特有のものである。そして、当社の約束に対する履行とさまざまな活動の重要な統合サービスの性質は、装置を製造する当社の活動のうちの1つが変化すると、複雑な特殊仕様の機械装置の製造に要する他の活動に重要な影響を与える。そのため、当社の活動は相互依存性及び相互関連性が非常に高いと判断した。

(ⅳ) 上記の結果、基準第34項の両方の要件が満たされないため、当社が提供する財又はサービスは別個のものではないと判断し、契約で約束した財又はサービスのすべてを「単一の履行義務」として識別すると判断した。

【設例③】

ソフトウェア開発会社である当社は、Y社に対してソフトウェア・ライセンスを移転するとともに、インストール・サービスを行った。また、ソフトウェア・アップデート及びオンラインや電話によるテクニカル・サポートを2年間提供する契約を締結した。

当社は、ソフトウェア・ライセンス、インストール・サービス及びテクニカル・サポートを独立して提供している。インストール・サービスには、利用者の使用目的(例えば、販売、在庫管理、情報技術)に応じてウェブ画面を変更することも含まれる。なお、ソフトウェアは、ソフトウェアのアップデートやテクニカル・サポートがなくても機能する。

また、契約には、インストール・サービスにより、ソフトウェアはY社仕様のものに修正され、Y社が使用している他のY社仕様のソフトウェア・アプリケーションとのインターフェースを可能とする大幅な新機能の追加が含まれている。なお、当社が提供するインストール・サービスは、同業他社も提供できるものである。

当該契約について、履行義務をどのように識別するかについて、以下のように検討した。

(ⅰ) ソフトウェアは他の財又はサービスが提供される前に引き渡され、ソフトウェア・アップデートやテクニカル・サポートがなくても機能する。また、Y社は、ソフトウェア・ライセンスと組み合わせることにより、その後のソフトウェア・アップデートから便益を享受することができる。したがって、Y社は財又はサービスのそれぞれから単独で又はY社が容易に利用できる他の資源と組み合わせて便益を享受することができる。そのため、それぞれのサービスは基準第34項(1)【性質の観点】からは、別個の履行義務であると判断した。

(ⅱ) 財又はサービスを顧客に移転する約束について、契約に含まれる他の約束と区分して識別できることを求める基準第34項(2)【契約の観点】の要件が満たされているかどうかを判定するために、以下のことを考慮した。

・契約には、インストール・サービスの履行によって、ライセンスを供与したソフトウェアを既存のソフトウェア・システムに統合する重要なサービスを提供することが含まれている。つまり、当社は、ソフトウェア・ライセンスとインストール・サービスを、契約に定められた結合後のアウトプット(機能的かつ統合されたソフトウェア・システム)を生み出すためのインプットとして使用している。

・ソフトウェアはインストール・サービスにより著しく修正され、Y社仕様のものである。

・ソフトウェア・アップデートは、Y社がライセンス期間中にソフトウェア・ライセンスを使用して便益を享受する能力に著しい影響を与えない。また、当初のソフトウェア・ライセンスを移転する約束を、ソフトウェア・アップデート又はテクニカル・サポートを提供する約束と独立して履行することができ、かつ、ソフトウェアとこれらのサービスは互いに著しい影響を与えないため、相互依存性及び相互関連性は高くないと判断した。

(ⅲ) 上記(ⅱ)の結果、ソフトウェア・ライセンスとインストール・サービスは、基準第34 項(2)【契約の観点】の要件を満たさず、別個のものではないと判断した。一方、ソフトウェア・アップデートとテクニカル・サポートは、別個のものであると判断した。

(Ⅳ) 以上から、以下のように3つの履行義務を識別した。

・ソフトウェア・カスタマイズ(ソフトウェア・ライセンスとインストール・サービス)

・ソフトウェア・アップデート

・テクニカル・サポート

【設例④】

当社は、設備Wの販売と設置サービスを提供する契約をT社と締結した。設備WはT社独自仕様のものではなく、それ単独で稼働させることができる。また、設置サービスは複雑なものではなく、同業他社も当該設置サービスを提供することができる。

当該契約について、履行義務をどのように識別するかについて、以下のように検討した。

(ⅰ) T社が、設備Wの使用又は廃棄における回収額より高い金額で設備Wを売却することにより、単独で又はT社が容易に利用できる他の資源(例えば、当社以外の企業から購入できる設置サービス)と組み合わせて便益を享受することができると判断した。また、T社は、既に当社から取得した他の資源と組み合わせることにより、設置サービスから便益を享受することができるため、設備Wと設置サービスはそれぞれ基準第34項(1)の要件【性質の観点】を満たしていると判断した。

(ⅱ) 今回の契約では、設備Wを引き渡し、その後に設置することを約束している。そのため、設備Wを引き渡す約束を、その後に設備を設置する約束とは別に履行できるため、重要な統合サービスを提供していない。つまり、当社の約束は、設備Wの引き渡しと設置サービスを結合後のアウトプットに統合することではない。
 また、設置サービスは、設備Wを著しく修正する又は顧客仕様のものとするものではない。
 さらに、T社は、設備Wに対する支配を獲得した後にのみ設置サービスから便益を享受することができるが、当社は、設備Wを引き渡す約束を、設置サービスを提供する約束とは別に履行できるため、設置サービスは設備Wに著しい影響を与えない。したがって、設備Wの引き渡しと設置サービスは、互いに著しい影響を与えないため、相互依存性及び相互関連性は高くない。

(ⅲ) 上記(ⅱ)の結果、設備Wを引き渡す約束と設置サービスを提供する約束は、基準第34項(2)【契約の観点】に従って、別々の履行義務として識別すると判断した。

(ⅳ) 以上から、以下のように2つの履行義務を識別した。

・設備Wの販売

・設置サービス

(4) 履行義務の識別(代替的な取扱い等)

① 重要性が乏しい場合

約束した財又はサービスが、顧客との契約の観点で重要性が乏しい場合には、当該約束が履行義務であるのかについて評価しないことができる。言い換えると、重要性が乏しい場合、履行義務として別に認識する必要がないということである。

顧客との契約の観点で重要性が乏しいかどうかの判定は、約束した財又はサービスの定量的及び定性的な性質を考慮し、契約全体における約束した財又はサービスの相対的な重要性を検討する(適用指針93)。

② 契約を履行するための活動

契約を履行するための活動は、当該活動により財又はサービスが顧客に移転する場合を除き、(別個の)履行義務ではない。例えば、サービスを提供する企業が契約管理活動を行う場合、当該活動によりサービスが顧客に移転しないため、当該活動は履行義務ではない(適用指針4)。

③ 支配獲得後の出荷及び配送活動

顧客が商品又は製品に対する支配(※)獲得後に行う出荷及び配送活動は、当該商品又は製品の移転とは別の履行義務として識別される。しかし、実務におけるコストと便益を比較衡量し、顧客が商品又は製品に対する支配獲得後に行う出荷及び配送活動は、商品又は製品を移転する約束を履行するための活動(上記②参照)とし、履行義務として識別しないことができる(適用指針94、167)。

(※) 資産に対する支配とは、当該資産の使用を指図し、当該資産からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力(他の企業が資産の使用を指図して資産から便益を享受することを妨げる能力を含む)をいう(基準37)。

- 支配の移転は、財又はサービスを提供する企業、又は財又はサービスを受領する顧客のいずれの観点からも判定でき、企業が支配を喪失した時、又は顧客が支配を獲得した時のいずれかとなる。通常、両者の時点は一致するが、企業が顧客への財又はサービスの移転と一致しない活動に基づき収益を認識することがないように、顧客の観点から支配の移転を検討する(基準132)。

- 資産からの便益とは、例えば、以下の方法により直接的又は間接的に獲得できる潜在的なキャッシュ・インフロー(又はキャッシュ・アウトフローの節減)である(基準133)。

・財の製造又はサービスの提供のための資産の使用

・他の資産の価値を増大させるための資産の使用

・負債の決済又は費用の低減のための資産の使用

・資産の売却又は交換

・借入金の担保とするための資産の差入れ

・資産の保有

(5) 履行義務の識別(従来との相違点等)

① 従来との相違点

[収益認識基準等]

契約における取引開始日に、顧客との契約において約束した財又はサービスを評価し、顧客に移転する約束のそれぞれについて履行義務として識別する。

そして、顧客との契約において複数の履行義務を識別した場合、各履行義務に契約の取引価格を配分し(【STEP4】参照)、履行義務ごとに収益を認識(【STEP5】参照)する。

[従来]

1つの契約を履行義務ごとに分割して会計処理する一般的な定めはない。

工事契約や受注制作のソフトウェアに関しては、認識の単位として、工事契約において当事者間で合意された実質的な取引の単位に基づくとされていて、実質的な取引の単位を反映するように契約書上の取引を分割することが必要となる場合がある(工事基準7、43)。

ソフトウェア取引の複合取引については、収益認識時点が異なる複数の取引が1つの契約とされていても、財又はサービスの内容や各々の金額の内訳が顧客との間で明らかにされている場合には、契約上の対価を適切に分割する。
また、内訳金額が明らかでない場合でも、管理上の適切な区分に基づき分割することができる。
なお、財とサービスの複合取引であっても、一方の取引が他方の主たる取引に付随して提供される場合には、その主たる取引の収益認識時点に一体として会計処理することができる(ソフトウェア実務報告3)。

② 影響がある取引(例示)

  • 商品等の提供とその後の一定期間にわたる付随的サービスの提供が1つの契約に含まれる取引等、収益の認識時点が異なる複数の財又はサービスを一体で提供する取引に影響が生じる可能性がある(意見募集49)。
  • 具体的には、機械の販売と据付サービスや保守サービス、ソフトウェア開発とその後のサポート・サービス等がある(意見募集49)。特に、ソフトウェア取引においては、その契約の中にさまざまなサービス(ライセンス供与、インストール・サービス、テクニカル・サポート・サービス、アップデート・サービス等)があることから、注意が必要である。
  • 機械やソフトウェアの販売とセットで保守サービスを提供する場合、その保守サービスが標準的なもの(他社でも提供できるようなもの)であれば、機械やソフトウェアの販売とは別の履行義務になる可能性が高く、その保守サービスが非常に専門的なものであり、自社にしかできないものであれば、機械やソフトウェアの販売と単一の履行義務になる可能性が高いと考えられる。

③ 適用上の課題

  • 履行義務を識別する際の「性質の観点」及び「契約の観点」の要件判断を行うために、業務プロセスの新規追加が必要となる可能性がある(意見募集47)。
  • 契約書単位ではなく、履行義務単位で会計処理するため、契約書単位でのシステム入力だけでなく、履行義務単位でのシステム入力が必要となる可能性がある。そのため、このような入力ができるようにシステムの変更が必要となる可能性がある。
  • 履行義務単位で会計処理することで、従来と比較し、収益の認識時期が異なることにより、業績管理及び予算管理に影響が生じる可能性がある。この結果、人事評価にも影響する可能性がある。

④ 財務諸表への影響

  • 従来では、工事契約とソフトウェア取引以外では取引を分割すること(履行義務単位で会計処理すること)は求められていない。また、工事契約とソフトウェア取引についても収益認識基準等で定められている履行義務の識別の方法と同一の方法で分割することは求められていない。
  • そのため、履行義務を識別し、その履行義務単位で会計処理を行った場合、従来と比べて収益の認識時期が異なる可能性がある(意見募集46)。

〔凡例〕

・ASBJ・・・企業会計基準委員会

・IASB・・・国際会計基準審議会

・FASB・・・米国財務会計基準審議会

・基準・・・企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準

・適用指針・・・企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針

・収益認識基準等・・・企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」

・設例・・・企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」設例

・対応・・・企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」等に対するコメント 5.主なコメントの概要とその対応

・意見募集・・・「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集

・工事基準・・・企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準

・工事指針・・・企業会計基準適用指針第18号「工事契約に関する会計基準の適用指針

・ソフトウェア実務報告・・・実務対応報告第17号「ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱い

・リース基準・・・企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準

・遡及基準・・・企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

連載目次

「収益認識に関する会計基準」及び
「収益認識に関する会計基準の適用指針」の徹底解説

(全14回)

【第1回】(「収益認識に関する会計基準」等の概要) ★無料公開中★

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はじめに

1 「収益認識に関する会計基準」等の公表までの流れ

2 開発に当たっての基本的な方針

(1) 基本的な方針

(2) 連結財務諸表における開発の方針

(3) 個別財務諸表における開発の方針

3 連結財務諸表を作成している場合の「収益認識に関する会計基準」等の適用対象

4 「収益認識に関する会計基準」等の概要

(1) 収益認識基準等の適用範囲

(2) 収益認識基準等の構成

(3) 収益認識のための5つのステップ

(4) 適用時期

(5) 会計方針の取扱い

① 適用に関する留意事項

② 当期の決算状況の説明

【第2回】(【STEP1】契約の識別) ★無料公開中★

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5 【STEP1】契約の識別

(1) 識別要件の充足の有無(契約であるかどうかの検討)

(2) 契約の識別要件を満たさない場合の会計処理

(3-1) 契約の結合

(3-2) 契約の結合(代替的な取扱い)

① 複数の契約を結合しなくても良い場合

② 工事契約及び受注制作のソフトウェアのみ認められている取扱い

(3-3) 契約の結合における従来との相違点等

① 従来との相違点

② 影響がある取引(例示)

③ 適用上の課題

④ 財務諸表への影響

(4-1) 契約の変更

(4-2) 契約の変更における従来との相違点等

① 従来との相違点

② 影響がある取引(例示)

③ 適用上の課題

④ 財務諸表への影響

【第3回】(【STEP2】履行義務の識別) ★無料公開中★

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6 【STEP2】履行義務の識別

(1) 履行義務の識別

(2) 別個の財又はサービス

(3) 複数の約束が区分して識別できない場合

(4) 履行義務の識別(代替的な取扱い等)

① 重要性が乏しい場合

② 契約を履行するための活動

③ 支配獲得後の出荷及び配送活動

(5) 履行義務の識別(従来との相違点等)

① 従来との相違点

② 影響がある取引(例示)

③ 適用上の課題

④ 財務諸表への影響

【第4回】(【STEP3】取引価格の算定)

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7 【STEP3】取引価格の算定

(1-1) 第三者のために回収する額

(1-2) 第三者のために回収する額(従来との相違点等)

① 従来の相違点

② 影響がある取引(例示)

③ 適用上の課題

④ 財務諸表への影響

(2-1) 変動対価

① 変動対価の識別

② 変動対価の見積り

③ 収益の著しい減額が発生しない可能性が非常に高い部分

④ 顧客から受け取った又は受け取る対価がある場合

(2-2) 変動対価(従来との相違点等)

① 従来との相違点

② 影響がある取引(例示)

③ 適用上の課題

④ 財務諸表への影響

(3-1) 契約における重要な金融要素

① 金融要素の識別

② 金利相当分の影響の調整

(3-2) 契約における重要な金融要素(従来との相違点等)

① 従来との相違点

② 影響のある取引(例示)

③ 適用上の課題

④ 財務諸表への影響

(4) 現金以外の対価

① 時価を合理的に見積ることができない場合

② 変動対価

(5-1) 顧客に支払われる対価

① 会計処理

(5-2) 顧客に支払われる対価(従来との相違点等)

① 従来との相違点

② 影響のある取引(例示)

③ 適用上の課題

④ 財務諸表への影響

【第5回】(【STEP4】履行義務への取引価格の配分)

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8 【STEP4】履行義務への取引価格の配分

(1) 独立販売価格に基づく配分

① 直接観察可能かどうか

② 独立販売価格が直接観察可能な場合、

③ 独立販売価格が直接観察可能ではない場合

(2-1) 値引きの特定の履行義務への配分

(2-2) 独立販売価格に基づく配分・値引きの特定の履行義務への配分(従来との相違点等)

① 従来との相違点

② 影響がある取引(例示)

③ 適用上の課題

④ 財務諸表への影響

(3) 変動対価の配分

(4) 取引価格の変動

① 変動対価の事後的な変動

② 事後的な契約変更

【第6回】(【STEP5】履行義務の充足による収益の認識)

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9 【STEP5】履行義務の充足による収益の認識

(1) 一定の期間にわたり充足する履行義務かどうか

① 企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受すること

② 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、資産が生じる又は資産の価値が増加し、当該資産が生じる又は当該資産の価値が増加するにつれて、顧客が当該資産を支配すること

③ 義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じ、かつ、義務の履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有していること

(ⅰ) 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じること

(ⅱ) 企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること

(2) 一定の期間にわたり充足する履行義務(進捗度の測定)

① アウトプット法の留意点

② インプット法の留意点

③ 進捗度を合理的に見積ることができない場合

(ⅰ) 原価回収基準

(ⅱ) 契約初期段階の会計処理

④ 進捗度の測定値の見直し

⑤ 代替的な取扱い

(ⅰ) 工事完成基準

(ⅱ) 船舶による運送サービス

(3) 一時点で充足される履行義務

① 資産に対する支配

② 代替的な取扱い

(4-1) 一定の期間にわたり充足される履行義務(従来との相違点等)

① 従来との相違点

② 影響がある取引(例示)

③ 適用上の課題

④ 財務諸表への影響

(4-2) 一時点で充足される履行義務(従来との相違点等)

① 従来との相違点

② 影響がある取引(例示)

③ 適用上の課題

④ 財務諸表への影響

【第7回】(個別論点総論、本人か代理人か、財又はサービスに対する保証)

⇒詳しい内容を表示

10 個別論点総論

11 本人か代理人か

(1) 本人か代理人か

① 本人か代理人かの判定

② 本人か代理人かの判定に当たっての具体的な指標

③ 本人か代理人かの判定のその他の留意点

④ 会計処理

(2) 本人か代理人かの判定における従来の相違点等

① 従来との相違点

② 影響がある取引(例示)

③ 適用上の課題

④ 財務諸表への影響

12 財又はサービスに対する保証

(1) 財又はサービスに対する保証

① 財又はサービスに対する保証に当該財又はサービスが合意された仕様に従っていると
いう保証に加えて、保証サービスが含まれているかどうかの判定

② 合意された仕様に従っているという保証のみである場合の会計処理

③ 保証サービスを含む場合の会計処理

(2) 財又はサービスに対する保証における従来との相違点等

① 従来との相違点

② 影響がある取引(例示)

③ 適用上の課題

④ 財務諸表への影響

【第8回】(返品権付き販売、追加的な財又はサービスに対する顧客のオプション)

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13 返品権付き販売

(1) 返品権付き販売

(2) 返品権付き販売(従来との相違点等)

① 従来との相違点

② 影響がある取引(例示)

③ 適用上の課題

④ 財務諸表への影響

14 追加的な財又はサービスに対する顧客のオプション

(1) 追加的な財又はサービスに対する顧客のオプション

① 独立販売価格

② 収益の認識時期

(2) 追加的な財又はサービスに対する顧客のオプション(従来との相違点等)

① 従来との相違点

② 影響がある取引(例示)

③ 適用上の課題

④ 財務諸表への影響

【第9回】(顧客により行使されない権利(非行使部分)、返金が不要な契約における取引開始日における顧客からの支払、ライセンスの供与)

⇒詳しい内容を表示

15 顧客により行使されない権利(非行使部分)

(1) 顧客により行使されない権利(非行使部分)

① 会計処理

(2) 顧客により行使されない権利(非行使部分)(従来との相違点等)

① 従来との相違点

② 影響がある取引(例示)

③ 適用上の課題

④ 財務諸表への影響

16 返金が不要な契約における取引開始日における顧客からの支払

(1) 返金が不要な契約における取引開始日における顧客からの支払

① 顧客からの支払が約束した財又はサービスの移転を生じさせるものか、又は将来の財又はサービスの移転に対するものかどうかの判断

② 会計処理

(2) 返金が不要な契約における取引開始日における顧客からの支払(従来との相違点等)

① 従来との相違点

② 影響がある取引(例示)

③ 適用上の課題

④ 財務諸表への影響

17 ライセンスの供与

(1) ライセンスの供与

① ライセンスの供与は他の財又はサービスと別個のものであるかの判断

② ライセンスを供与する約束が別個のものでない場合の会計処理

③ ライセンスを供与する約束が別個のものである場合の会計処理(総論)

④ ライセンスを供与する約束の会計処理

(ⅰ) アクセスする権利か使用する権利かの判定

(ⅱ) ライセンスを供与する約束の会計処理

(2) ライセンスの供与(従来との相違点等)

① 従来との相違点

② 影響がある取引(例示)

③ 適用上の課題

④ 財務諸表への影響

【第10回】(買戻契約、有償支給取引、委託販売契約、請求済未出荷契約、工事損失引当金)

⇒詳しい内容を表示

18 買戻契約

(1) 買戻契約

① 先渡取引及びコールオプションの場合

② プット・オプションの場合

(ⅰ) 買戻価格と当初の販売価格の比較

(ⅱ) 買戻価格が当初の販売価格以上の場合

(ⅲ) 買戻価格が当初の販売価格より低い場合

(2) 買戻契約(従来との相違点等)

① 従来との相違点

② 影響がある取引(例示)

③ 適用上の課題

④ 財務諸表への影響

19 有償支給取引

(1) 有償支給取引

① 支給品を買い戻す義務の有無の判断

② 企業が支給品を買い戻す義務を負っていない場合

③ 企業が支給品を買い戻す義務を負っている場合

(2) 有償支給取引(従来との相違点等)

① 従来との相違点

② 影響がある取引(例示)

③ 適用上の課題

④ 財務諸表への影響

20 委託販売契約

(1) 委託販売契約

① 収益の認識時点

(2) 委託販売契約(従来との相違点等)

① 従来との相違点

② 影響がある取引(例示)

③ 適用上の課題

④ 財務諸表への影響

21 請求済未出荷契約

(1) 請求済未出荷契約

① 収益の認識時点

② 残存履行義務

(2) 請求済未出荷契約(従来との相違点等)

① 従来との相違点

② 影響がある取引(例示)

③ 適用上の課題

④ 財務諸表への影響

22 工事損失引当金

(1) 工事損失引当金

(2) 工事損失引当金の表示(適用指針106)

(3) 従来との相違点

【第11回】(表示及び注記、会計基準の今後)

⇒詳しい内容を表示

23 表示及び注記

(1) 表示

① 貸借対照表項目

② 損益計算書項目

(2) 注記

(3) 会社計算規則の改正

① 収益認識に関する注記の改正

② その他の改正

③ 適用時期

(4) 財務諸表等規則の改正

① 収益認識に関する注記の改正

② その他の改正

③ 表示に関する金融庁の考え方

(ⅰ) 貸借対照表項目

(ⅱ) 損益計算書項目

④ 適用時期

24 会計基準の今後

① ASBJの今後の対応

② 業界団体の動向

【第12回】(税務(前半))

⇒詳しい内容を表示

25 税務

(1) 会計と法人税法の相違点

① 貸倒れ及び買戻し

② ポイント引当金

③ 返品調整引当金の廃止

【参考】返品調整引当金の経過措置

(ⅰ) 経過措置の概要

(ⅱ) 収益認識基準等との関係

(ⅲ) 経過措置後

④ 長期割賦販売等に係る延払基準の廃止

【参考】経過措置

(ⅰ) 対象法人

(ⅱ) 平成35年3月31日までに開始する事業年度

(ⅲ) 繰延割賦利益額の処理

【第13回】(税務(後半))

⇒詳しい内容を表示

(2) 消費税法

(3) 会計、法人税、消費税の差異の設例

① 自社ポイントの付与

② 契約における重要な金融要素

③ 割戻を見込む販売(変動対価)

④ 返金権付き販売

⑤ 商品券等

⑥ 消化仕入(本人か代理人か)

【第14回】(まとめ)

⇒詳しい内容を表示

26 まとめ

〇収益認識基準等を検討する際のチェック・リスト

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筆者紹介

  • 西田 友洋

    (にしだ・ともひろ)

    公認会計士

    2007年に、仰星監査法人に入所。
    法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。
    その他、日本公認会計士協会の中小事務所等施策調査会「監査専門部会」専門委員に就任している。
    2019年7月退所。

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