21 請求済未出荷契約
(1) 請求済未出荷契約
請求済未出荷契約とは、企業が商品・製品について顧客に対価を請求したが、将来において顧客に移転するまで企業が当該商品・製品の物理的占有を保持する契約である(適用指針77)。
① 収益の認識時点
商品・製品を移転する履行義務をいつ充足したかを判定するにあたっては、顧客が当該商品・製品の支配をいつ獲得したかを考慮する(適用指針78)。具体的には、請求済未出荷契約では、一時点で充足される履行義務の規定(【STEP5】参照、基準39、40)を適用したうえで、以下の(ⅰ)から(ⅳ)の要件(請求済未出荷契約の支配要件)のすべてを満たす場合、顧客が商品・製品の支配を獲得しているといえるため(適用指針79)、その時点で収益を認識する。
(ⅰ) 請求済未出荷契約を締結した合理的な理由があること(例えば、顧客からの要望による当該契約の締結))
(ⅱ) 当該商品・製品が、顧客に属するものとして区分して識別されていること
(ⅲ) 当該商品・製品について、顧客に対して物理的に移転する準備が整っていること
(ⅳ) 当該商品・製品について、使用する能力や他の顧客に振り向ける能力を有することができないこと
② 残存履行義務
請求済未出荷の商品又は製品の販売による収益を認識する場合には、残存履行義務(例えば、顧客の商品又は製品に対する保管サービスに係る義務)を有しているかどうかを、【STEP2】(基準32~34)に従って判断する(適用指針160)。残存履行義務がある場合、履行義務に取引価格を配分する必要がある。
(2) 請求済未出荷契約(従来との相違点等)
① 従来との相違点
[収益認識基準等]
➤請求済未出荷契約では、一時点で充足される履行義務の規定を適用したうえで、請求済未出荷契約の支配要件のすべてを満たす場合、顧客が商品・製品の支配を獲得しているといえるため、その時点で収益を認識する。
➤残存履行義務がある場合、履行義務として識別する。
[従来]
➤一般的な定めはない。
② 影響がある取引(例示)
- 顧客に請求しているが、商品・製品はまだ、倉庫から出荷されていない取引(納品が終了していない取引)に影響がある。
③ 適用上の課題
- 顧客が商品・製品の支配を獲得しているかどうかの要件を満たしているかどうかを判定するために業務プロセスの新規追加が必要となる可能性がある。
- 残存履行義務がないか検討する必要がある。
- 従来と収益認識基準等で収益の認識時期が異なる可能性があるため、業績管理及び予算管理に影響が生じる可能性がある。この結果、人事評価にも影響する可能性がある。
④ 財務諸表への影響
- 収益認識基準等の請求済未出荷契約の支配要件を満たす時期と従来の収益認識時点が異なる場合、収益の認識時点が異なる可能性がある。