24 会計基準の今後
① ASBJの今後の対応
「収益認識に関する会計基準」第96項では、基準の実務への適用を検討する過程で、基準における定めが明確であるものの、これに従った処理を行うことが実務上著しく困難な状況が市場関係者により識別され、その旨がASBJに提起された場合には、公開の審議により、別途の対応を図ることの要否をASBJにおいて判断するとされている。
そのため、平成30年8月28日にASBJより「「収益認識に関する会計基準」の公表後の対応に関する手順」が公表された。この公表物では、以下のことが記載されている。
- 今後、市場関係者からの提起が行われた場合、ASBJは基準に従った処理を行う場合に実務上著しく困難な状況が認められるかどうか及び代替的な取扱いの要否等について検討する。
- 必要に応じて、公開の審議において当該市場関係者から提起された状況の説明を受ける。
- 検討の結果、適用指針(設例を含む)の改正が必要と判断した場合には、公開草案を公表し、公開草案に寄せられた市場関係者からの意見を踏まえ、最終的な改正の要否について判断する。
今後、市場関係者からの提起によっては、適用指針又は設例が改正される可能性もあるので留意が必要である。
② 業界団体の動向
スマートフォンゲームにおける課金について、いつの時点又はどの期間で収益を認識するかは意見がわかれるところである。
そのため、平成30年5月29日に一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラムより「スマートフォンゲーム等における収益認識基準に関するガイドラインの作成に向けて」が公表されている。
公表を予定しているガイドラインは、スマートフォンゲームにおけるゲーム内アイテム等に関する収益認識について、主要なパターンに応じたガイドラインを作成することを予定している。そして、このガイドラインは、企業の過度な負担を防止し、より適正な会計処理ができることを目的としている。
収益認識基準等の適用に当たっては、多くの問題・課題が生じる可能性がある。また、日本の会計実務では、具体的な会計処理について一般にその情報がオープンとなることはない。そのため、各社の収益認識基準等の適用に対する取組みの本気度により、同じ業界内でも会社ごとに会計処理が大きく異なってくる可能性がある。そのため、このようなガイドライン等が公表され、会計実務が一般にオープンになり、より良い会計実務につながることを期待したい。
「企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」等の公表」
〔凡例〕
・ASBJ・・・企業会計基準委員会
・IASB・・・国際会計基準審議会
・FASB・・・米国財務会計基準審議会
・基準・・・企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」
・適用指針・・・企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」
・収益認識基準等・・・企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」
・設例・・・企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」設例
・対応・・・企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」等に対するコメント 5.主なコメントの概要とその対応
・意見募集・・・「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」
・工事基準・・・企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」
・工事指針・・・企業会計基準適用指針第18号「工事契約に関する会計基準の適用指針」
・ソフトウェア実務報告・・・実務対応報告第17号「ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱い」
・リース基準・・・企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」
・遡及基準・・・企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」
(了)
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