5 年度決算におけるポイント
(1) 表示の総復習ポイント
① 計算書類
② 有価証券報告書
(2) 注記の総復習ポイント
① 計算書類
② 有価証券報告書
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以下では参考となる注記事例を掲げる。なお、注記における下線は筆者が追記したものである。
◎重要な会計方針注記〔事例①〕
【キヤノンマーケティングジャパン(株) 2020年12月期 有価証券報告書】
(5)重要な収益及び費用の計上基準
当社及び連結子会社は、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 平成30年3月30日)及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第30号 平成30年3月30日)を適用しており、主要な事業における主な履行義務の内容及び収益を認識する通常の時点は以下のとおりであります。
当社グループは、キヤノン製品の販売・サービスに加え、ITソリューションや産業機器、ヘルスケア等の分野において製品・サービスの提供を行っております。顧客による検収を要しない製品の販売については、通常、製品の引渡時点において顧客が当該製品に対する支配を獲得することから、履行義務が充足されると判断しており、当該製品の引渡時点で収益を認識しております。サービスの提供は、主に製品のメンテナンス契約であり、顧客との契約内容によって一定期間にわたり均等に、または製品の使用量に応じて、契約に定められた金額に基づき収益を認識しております。
各報告セグメントにおける固有の状況につきましては、以下のとおりであります。なお、エンタープライズセグメントとエリアセグメントについては、同様の製品・サービスの提供を行っているため、まとめて記載しております。
(コンスーマ)
売上高は顧客との契約において約束された対価から値引き、売上に応じた割戻し等を控除した金額で測定しております。過去の傾向や売上時点におけるその他の既知の要素に基づいて見積りを行い、重要な戻し入れが生じない可能性が高い範囲で収益を認識しております。
(エンタープライズ・エリア)
製品の修理や設置等のその他のサービス役務に関しては、履行義務が充足される役務提供完了時点で収益を認識しております。
受託開発のソフトウェアに関しては、合理的な進捗度の見積りができるものについてはインプット法に基づき収益を認識しております。合理的な進捗度の見積りができない場合、進捗分に係る費用を回収できるものについては、原価回収基準に基づいて収益を認識しております。
(プロフェッショナル)
機器の性能に関して顧客検収条件を要する場合は、顧客による検収が完了した時点で、収益を認識しております。
◎重要な会計方針及び収益認識に関する注記のうち「収益を理解するための基礎となる情報」〔事例①〕
【住友林業(株) 2020年12月期 有価証券報告書】
(収益認識関係)
顧客との契約について、以下の5ステップアプローチに基づき、約束した財又はサービスの支配が顧客に移転した時点で、当該財又はサービスと交換に権利を得ると見込む対価の額で収益を認識しております。
ステップ1:顧客との契約を識別する
ステップ2:契約における履行義務を識別する
ステップ3:取引価格を算定する
ステップ4:契約における履行義務に取引価格を配分する
ステップ5:履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する
(1)商品の販売に係る収益
商品の販売に係る収益には、主に卸売、小売、製造・加工を通じた木材・建材等の販売、分譲住宅等の販売が含まれ、引渡時点において、顧客が当該商品に対する支配を獲得、履行義務が充足されると判断し、当該時点で収益を認識しております。
(2)工事契約に係る収益
工事契約に係る収益には、主に戸建住宅・集合住宅等の建築工事の請負が含まれ、履行義務を充足するにつれて、一定の期間にわたり収益を認識しております。なお、履行義務の充足に係る進捗率の見積りの方法は、主として発生原価に基づくインプット法によっております。
ただし、契約における取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い工事契約については、一定の期間にわたり収益を認識せず、引渡時点において履行義務が充足されると判断し、当該時点で収益を認識しております。
(3)サービス及びその他の販売に係る収益
サービス及びその他の販売に係る収益には、主に木材・建材等の代理取引に係る手数料、戸建住宅・集合住宅等の保証サービスに係る手数料、不動産の管理・仲介に係る手数料等が含まれ、これらの取引は契約上の条件が履行された時点をもって履行義務が充足されると判断し、当該時点で収益を認識しております。なお、一定の期間にわたり履行義務を充足する取引については、履行義務の充足に係る進捗度に応じて収益を認識しております。
◎重要な会計方針及び収益認識に関する注記のうち「収益を理解するための基礎となる情報」〔事例②〕
【(株)荏原製作所 2020年12月期 有価証券報告書】
(収益認識関係)
(売上収益)
顧客との契約について、当社グループは、次の5ステップアプローチに基づき、収益を認識しています。
ステップ1:契約の識別
ステップ2:履行義務の識別
ステップ3:取引価格の算定
ステップ4:履行義務への取引価格の配分
ステップ5:履行義務の充足による収益の認識
当社グループは、ポンプやコンプレッサなどの回転機械を中核とした風水力事業、都市ごみ焼却施設をはじめとする環境プラント事業、半導体製造装置に関わる機器・装置を製造する精密・電子事業の各分野にわたり製造、販売、工事、保守等を行っています。
(ⅰ)風水力事業
風水力事業においては、主にカスタム及び標準ポンプ、コンプレッサやタービン、冷凍機や冷却塔及び関連システム、その他送風機や、電気、情報通信、エネルギーなどの制御設備の製造、販売、工事、保守サービスを行っています。
風水力事業における製品の製造及び販売については、製品に対する法的所有権、物理的占有、所有に伴う重大なリスクと経済価値の顧客への移転状況及び顧客から支払いを受ける権利といった支配の移転に関する指標を総合的に判断した結果、製品に対する支配を顧客に移転して履行義務を充足するのは主として製品の引渡または検収時点であると当社は判断しています。
風水力事業における工事請負契約及び保守契約については、主として、次の要件のいずれかに該当し、製品又は役務に対する支配が一定期間にわたり移転するため、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識しています。
① 顧客が履行によって提供される便益を、履行するにつれて同時に受け取って消費する。
② 履行が、資産を創出するか又は増価させ、顧客が当該資産の創出又は増価について支配する。
③ 履行が、他に転用できる資産を創出せず、かつ、現在までに完了した履行に対する支払いを受ける強制可能な権利を有している。
これらについては、履行義務の結果を合理的に測定できる場合は、報告期間の末日において測定した履行義務の充足に係る進捗度に応じて、工事期間にわたって売上高を認識します。進捗度は、見積総原価に対する実際原価の割合で算出し(インプット法)、履行義務の結果を合理的に測定できないが、当該履行義務を充足するコストを回収すると見込んでいる場合は、発生したコストの範囲でのみ売上高を計上することにより、当社グループの履行を忠実に描写しています。
(ⅱ)環境プラント事業
環境プラント事業においては、廃棄物処理施設に関連した製造、販売、工事、保守サービスを行っています。
環境プラント事業における製品の製造及び販売については、製品に対する法的所有権、物理的占有、所有に伴う重大なリスクと経済価値の顧客への移転状況及び顧客から支払いを受ける権利といった支配の移転に関する指標を総合的に判断した結果、製品に対する支配を顧客に移転して履行義務を充足するのは主として製品の引渡または検収時点であると当社は判断しています。
環境プラント事業における工事請負契約及び保守契約については、主として、次の要件のいずれかに該当し、製品又は役務に対する支配が一定期間にわたり移転するため、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識しています。
① 顧客が履行によって提供される便益を、履行するにつれて同時に受け取って消費する。
② 履行が、資産を創出するか又は増価させ、顧客が当該資産の創出又は増価について支配する。
③ 履行が、他に転用できる資産を創出せず、かつ、現在までに完了した履行に対する支払いを受ける強制可能な権利を有している。
これらについては、履行義務の結果を合理的に測定できる場合は、報告期間の末日において測定した履行義務の充足に係る進捗度に応じて、工事期間にわたって売上高を認識します。進捗度は、見積総原価に対する実際原価の割合で算出し(インプット法)、履行義務の結果を合理的に測定できないが、当該履行義務を充足するコストを回収すると見込んでいる場合は、発生したコストの範囲でのみ売上高を計上することにより、当社グループの履行を忠実に描写しています。
(ⅲ)精密・電子事業
精密・電子事業においては主にドライ真空ポンプ及びCMP装置の製造、販売、保守サービスを行っています。
精密・電子事業における製品の製造及び販売については、製品に対する法的所有権、物理的占有、所有に伴う重大なリスクと経済価値の顧客への移転状況及び顧客から支払いを受ける権利といった支配の移転に関する指標を総合的に判断した結果、製品に対する支配を顧客に移転して履行義務を充足するのは主として製品の引渡または検収時点であると当社は判断しています。
売上高は顧客との契約において約束された対価から、値引き、遅延損害金等を控除した金額で測定しています。変動性がある値引き等を含む変動対価については、合理的に利用可能なすべての情報を用いて対価の金額を見積り、重大な戻入が生じない可能性が非常に高い範囲でのみ売上高を認識しています。また、当社グループでは、契約開始時に、顧客に財またはサービスを移転する時点と顧客が対価を支払う時点までの期間が1年以内であると見込まれるため、対価に係る金利要素について調整を行っていません。
《注記事項のまとめ》
【参考】 ASBJホームページ
- 企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」
- 企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」
(連載了)