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〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第64話】「基礎的人的控除について」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第64話】 「基礎的人的控除について」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「・・・基礎的人的控除か・・・」 浅田調査官は、「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」を見ながら、呟く。 租税法のテキストには、「基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除及び扶養控除は、一括して『基礎的人的控除』といい、これらは本人及び家族の最低限度の生活を維持するために必要な部分は担税力を持たないということを理由とし、憲法25条の生存権の保障の租税法における現れである」と書かれている。 「・・・しかし、平成29年度の税制改正で、配偶者控除や配偶者特別控除には、納税者本人の収入制限が設けられ、更に、平成30年度の税制改正で、基礎控除は、所得金額2,400万円超から逓減し、2,500万円超で消失する仕組みが採られることになった・・・これを『逓減・消失型の所得控除方式』という・・・」 浅田調査官は、「基礎控除申告書の控除額の計算」と「配偶者控除等の申告書の控除額の計算」欄を見ながら、「・・・複雑だな・・・」と独りでものを言う。 そこに、中尾統括官がやって来る。 「何を真剣に見ているの?」 そう言いながら、浅田調査官の手に持っている書類を覗き込む。 「・・・年末調整の用紙か・・・君なんか・・・独身だから、記載は簡単だろう・・・」 中尾統括官は、笑いながら言う。 「・・・もちろん、それに、私なんか・・・給与は少ないですから・・・基礎控除の額は48万円と計算しなくても分かりますけど・・・」 浅田調査官は、苦笑いする。 「・・・しかし、配偶者控除等の申告書の控除額の計算は、ややこしいですね・・・」 浅田調査官は、配偶者控除等の申告書を見せる。 「本人である給与所得者の所得をABCの三段階(区分Ⅰ)に分け、次に、配偶者の所得金額(48万円超133万円以下)区分Ⅱによって、①、②、③、そして④(8区分)に分け、その組み合わせで、控除額の計算をします・・・そして、①(48万円以下かつ70歳以上)と②(48万円以下かつ70歳未満)は、配偶者控除で、③と④が配偶者特別控除になります・・・」 浅田調査官は、配偶者控除等の申告書を見ながら、説明する。 「もちろん、税務署の所得課税部門で働いている者にとっては、こんなのは難しくないけれども、一般の納税者は、何故、このようなややこしい計算をするのか、わからない人が多いと思うのです」 中尾統括官は、頷く。 「・・・確かに、この配偶者控除等申告書の矢印に従って計算すれば、自動的に控除額の額は算出できますが・・・」 と、浅田調査官は付け加える。 中尾統括官は、配偶者控除等の申告書を見直す。 「・・・例えば、給与所得者の合計所得金額が920万円で、その配偶者の合計所得金額が、110万円であった場合・・・」 そう言いながら、中尾統括官は、配偶者控除等の申告書に金額を入れていく。 「給与所得者の所得金額が920万円だからBに該当し、配偶者の合計所得金額が、110万円だから・・・④の『105万円超110万円以下』に該当し、そうすると、配偶者特別控除の額は、18万円になる・・・ざっと、1分で計算できる・・・」 中尾統括官は、満足そうな顔をする。 「・・・しかし・・・なんで・・・こんなに区分を細かくするんでしょうか・・・あまり、意味はないように思うのですが・・・」 浅田調査官は、中尾統括官の顔を見る。 「・・・例えば、本人の合計所得金額が960万円で、その配偶者の合計所得金額が132万円の場合、配偶者特別控除の額は1万円になる・・・この1万円は所得控除ですから、税額にすると数千円にしかなりません・・・」 浅田調査官は、不満そうに言う。 「・・・ということは・・・もっと、区分を簡略化したら良いということか?」 中尾統括官が尋ねる。 「ええ、区分Ⅱの④は、8区分にも分かれ、それを更に、区分ⅠのA、B、Cに分けて、控除額の計算をすることになっています・・・それに、基礎控除の額についても、給与所得者の合計所得金額が2,400万円以下であれば、48万円の控除額ですが、それを超え2,450万円以下であれば、32万円、更にそれを超え2,500万円以下であれば、16万円の控除額になっています・・・そんなに細分化する必要があるのでしょうか?」 浅田調査官の声は、高くなっている。 「・・・思うに、区分Ⅱの④については、8区分にせず、その真ん中の『110万円超115万円以下』の額、すなわち、Aは21万円、Bは14万円、Cは9万円と、一本化すれば良いと思います」 浅田調査官は、言葉を続ける。 「また、基礎控除については、合計所得金額が2,400万円超であれば・・・32万円、16万円と細分化せず、2,500万円超と同様に、基礎控除の額を『ゼロ』にすれば良いと思います・・・」 浅田調査官は、饒舌になる。 「しかし、もともと・・・高額所得者の基礎控除の額をなくするということについては、(最低生活費を考慮した基礎的人的控除は、所得の多寡を問わず、全ての納税者に等しく適用されなければならないという)憲法25条の要請からみても妥当でないという意見もある・・・」 中尾統括官が反論する。 「ただ、高額所得者は、基礎控除を受けなくても、税引き後の所得で、十分な生活水準を維持できるのですから・・・基礎控除について、全ての納税者に等しく適用されなければならないということもないと思います・・・」 浅田調査官は、中尾統括官の顔を見る。 「・・・確かに、合計取得金額が2,400万円を超える人にとっては、基礎控除の額などはあまり関心がないのかもしれないが・・・しかし、そもそも、高額所得者は、多額の税負担をしているし・・・」 中尾統括官は、腕を組みながら、思案する。 (つづく)
#501(掲載号)
#八ッ尾 順一
2023/01/05
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《速報解説》 暗号資産の保有に係る期末時価評価課税に係る見直しについて~令和5年度税制改正大綱~

《速報解説》 暗号資産の保有に係る期末時価評価課税に係る見直しについて ~令和5年度税制改正大綱~   弁護士 下尾 裕   1 税制改正の背景 現行の法人税法61条2項は、法人が事業年度末において活発な市場を有する暗号資産(資金決済法上の暗号資産。同条1項参照)を保有する場合には、一律に、当該暗号資産につき事業年度末で時価評価を行い、直近の帳簿価格との間で評価損益を認識することを定めている。 しかしながら、企業が資金調達等のためにトークンを発行するケースでは、将来の資金調達のため又はトークンのベースである分散型プロトコルに対する議決権を有するトークン(ガバナンストークン)を維持するため、一定数のトークンを第三者に交付せず、手元に残すケースが多いところ、現状の金融実務においては、企業(法人)が発行するトークンは将来的に暗号資産の定義に該当する可能性がある限り、発行段階においても広く資金決済法上の暗号資産に該当しうるものとして取り扱われており、その結果、上記未交付のトークンまでが一定の交換価値を有するに至った段階で「活発な市場を有する」ものとして期末時価評価(期末時価評価課税)の対象になる可能性があった。 このような背景のもと、トークンでの資金調達等を志向するブロックチェーン企業においては、日本を避けて、海外でトークン発行を行う例が散見され、国内におけるブロックチェーン技術を活用した起業や事業開発を阻害しているとの指摘がなされていた(例えば、令和3年11月8日付日本経済新聞朝刊「酷税に失望、デジタル頭脳去る 暗号資産の調達に法人税、『日本では戦えない』」。これを受け、自由民主党政務調査会デジタル社会推進本部が公表した「デジタル・ニッポン2022~デジタルによる新しい資本主義への挑戦~」68頁以下においても指摘がなされていた。)。 これを踏まえ、経済産業省からは、「法人が発行した暗号資産のうち、当該法人以外の者に割り当てられることなく、当該法人が継続して保有しているものを対象として、期末時価評価課税の対象外とする」との税制改正要望(39-1)が出されていた。   2 税制改正案の内容 令和4年12月23日(金)に閣議決定された「令和5年度税制改正大綱」54頁においては、経済産業省からの税制改正要望を踏まえ、暗号資産のうち、以下の要件をいずれも充足するものについては、期末において時価評価すべき暗号資産から除外する旨の改正案が盛り込まれた。 これらの要件のうち、「譲渡制限」に係る技術的措置又は信託の具体的内容については令和5年度税制改正大綱においては記載がなく、今後明らかにされる具体的な税制の内容を確認する必要がある また、これらと併せて、以下の改正も盛り込まれることとなっている。 今回の改正により、当初の問題意識であった国内におけるトークン発行の場面での税務上の問題点は一定程度解消されることになる。 しかしながら、業界団体からは、「Web3.0のエコシステムを形成、発展させる上では、技術開発会社、法人のユーザー又はベンチャーキャピタルなど暗号資産の発行者以外の法人が長期投資目的、発行体へのサービス提供の対価、ガバナンス目的又はステーキング目的で暗号資産を保有することが想定され、未実現利益に課税されると納税資金や事業用資金の確保が困難となる現状がある」として、より一歩進めて、期末時価評価課税の対象を短期売買目的の市場暗号資産に限定すべきだとの指摘もなされており(一般社団法人 日本暗号資産取引業協会及び一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会による2022年7月28日付「2023年度税制改正に関する要望書」17頁等)、暗号資産の期末の時価評価の範囲については今後も議論の対象となる可能性がある。   3 適用時期 上記改正案の適用時期については、明らかにされていない。 (了)
#下尾 裕
2022/12/28
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《速報解説》 中小企業向け設備投資減税に係る対象資産の見直し及び延長等~令和5年度税制改正大綱~

《速報解説》 中小企業向け設備投資減税に係る対象資産の見直し及び延長等 ~令和5年度税制改正大綱~   Profession Journal編集部   令和5年度の税制改正大綱(令和4年12月23日閣議決定)では中小企業関連税制として既報のとおり資本金1億円以下の中小企業に対する軽減税率が延長されたほか、令和5年3月31日に適用期限を迎える設備投資に係る税制措置について、下記の改正案が示された。 まず中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却(30%)又は税額控除(7%)(措法42の6))は、適用期限が令和7年3月31日まで2年延長されるとともに、対象資産について次の見直しが行われる。 次に中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却(即時償却)又は税額控除(7%又は10%)(措法42の12の4))についても適用期限が令和7年3月31日まで2年延長され、対象資産(特定経営力向上設備等)について次の見直しが行われる。 また、中小企業防災・減災投資促進税制(特定事業継続力強化設備等の特別償却(措法44の2))は、昨今の激化する自然災害への事前対策を強化するため、対象に「耐震装置」を追加し適用期限が令和7年3月31日まで2年延長される一方で、令和3年度改正に続き段階的に特別償却率の引下げが行われる。 なお中小企業技術基盤強化税制(措法42の4④)、いわゆる中小企業向けの研究開発税制の見直し等については後日公開の別稿を参照されたい。 最後に新設制度として、資本金1億円以下等の税制上の要件を満たす中小企業が市町村から認定を受けた「先端設備等導入計画」(労働生産性が年平均3%以上向上する等)に記載された一定の機械・装置等の固定資産税について、課税標準を最初の3年間、2分の1(同計画に一定の賃上げ表明に関する記載がある場合は取得時期に応じ最初の5年又は4年間、3分の1)とする特例措置が令和7年3月31 日まで講じられる。 【参考】 (※) 経済産業省「令和5年度(2023年度)経済産業関係 税制改正について」P44より (了)
#Profession Journal 編集部
2022/12/27
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《速報解説》 金融庁から「監査法人のガバナンス・コード」の改訂案が公表される~会計監査の更なる品質確保のため、組織体制や透明性の確保等の考え方・指針を見直す~

《速報解説》 金融庁から「監査法人のガバナンス・コード」の改訂案が公表される ~会計監査の更なる品質確保のため、組織体制や透明性の確保等の考え方・指針を見直す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 令和4(2022)年12月26日、監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会は、「「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード)(案)」を公表し、意見募集を行っている。 これは、令和3年11月に「会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)」で取りまとめた論点整理や、令和4年1月に「金融審議会公認会計士制度部会」で取りまとめた報告書などを受けて検討したものである。 意見募集期間は2023年1月31日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 監査法人が果たすべき役割 上場企業等の監査を行う監査法人には、その規模にかかわらずより一層高い会計監査の品質を確保するための組織的な体制整備が求められる。 また、法人の構成員による職業的懐疑心が十分発揮されるよう、適切な動機付けを行う人材育成の環境や人事管理・評価等に係る体制の整備に留意する。 グローバルネットワークへの加盟や他の法人等との包括的な業務提携等については、会計監査の品質の確保への効果が期待される反面、監査法人の意思決定に影響を与え得ることなどにより、会計監査の品質の確保やその持続的向上に支障をきたすリスクを生じさせる可能性もあるとしている。 指針において次のことが記載されている。 2 組織体制 上場企業等の監査を担う監査法人は、無限責任監査法人や有限責任監査法人といった法人形態その他の形式的又は実質的な違いにかかわらず、会計監査の品質の確保及びその持続的向上を図る観点から実効的な経営機能を有することが必要である。 例えば、監督・評価機関を設け、独立性を有する外部の第三者の知見を活用することが記載されている。 指針において次のことが記載されている。 3 透明性の確保 指針において、監査法人は、品質管理、ガバナンス、IT・デジタル、人材、財務、国際対応の観点から、規模・特性等を踏まえ、以下の項目について説明することを示している。 また、グローバルネットワークに加盟している監査法人や、他の法人等との包括的な業務提携等を通じてグループ経営を行っている監査法人は、以下の項目について説明することを示している。 (了)
#阿部 光成
2022/12/27
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《速報解説》 金融庁、監査報告書の記載事項に公認会計士等が被監査会社から受領する報酬に関連する事項を追加する内閣府令の改正案等を公表

《速報解説》 金融庁、監査報告書の記載事項に公認会計士等が被監査会社から受領する報酬に関連する事項を追加する内閣府令の改正案等を公表   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 令和4(2022)年12月23日、金融庁は、「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表し、意見募集を行っている。 これは、監査報告書の記載事項に公認会計士又は監査法人が被監査会社から受領する報酬に関連する事項を追加するものである。 意見募集期間は2023年1月31日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 監査証明を受けようとする会社その他の者を「被監査会社等」と規定する。 「「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」の取扱いに関する留意事項について(監査証明府令ガイドライン)」も改正する。 1 監査報告書の記載事項の追加 監査報告書の記載事項として、次の規定を設ける(「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」4条1項1号リとして追加)。 2 記載不要となる報酬関連事項 報酬関連事項は、次の有価証券届出書・有価証券報告書に係る監査報告書には記載不要となる。 3 省略できる報酬関連事項 次の場合には、参照文言を記載することなどの要件を満たすことにより、報酬関連事項の記載を省略できる。   Ⅲ 施行期日等 パブリックコメント終了後、所要の手続を経て公布、施行(2023(令和5)年4月1日)の予定である。 経過措置に注意する。 (了)
#阿部 光成
2022/12/27
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《速報解説》 NISAの抜本的拡充と恒久化~令和5年度税制改正大綱~

 《速報解説》 NISAの抜本的拡充と恒久化 ~令和5年度税制改正大綱~   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   令和4年12月23日(金)に閣議決定された「令和5年度税制改正大綱」では、家計の資産を貯蓄から投資へと積極的に振り向け、資産所得倍増につなげるため、NISAの抜本的拡充と恒久化が示された。新たな制度は、令和6年1月から適用される。 改正のポイントは、次の3点である。 以下、解説を行う。   【1】 制度の恒久化 若年期から高齢期に至るまで、長期・積立・分散投資による継続的な資産形成を行えるよう、非課税保有期間を無期限化するとともに、口座開設可能期間について期限を設けず、NISA制度は恒久的な措置とされる。   【2】 年間投資上限額の拡充 資金に余裕があるときに集中的な投資を行えるよう、年間の投資上限額が拡充される。 具体的には、一定の投資信託を対象とする長期・積立・分散投資の枠である「つみたて投資枠」と上場株式への投資が可能な「成長投資枠」の2つの枠組みが用意され、投資上限額は次のとおりとなる。   【3】 生涯非課税限度額の設定 高所得者層への際限のない優遇とならないよう、生涯にわたる非課税限度額として1,800万円が設定される。そのうち、成長投資枠の限度額は1,200万円である。 *  *  * 上記【1】~【3】から、2つの新しい投資枠を備えたNISAについてまとめると、次のとおりとなる。 (※) NISAは、安定的な資産形成を目的とする制度であることから、整理銘柄や、高レバレッジ型、信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託等は対象から除外される。 (注) 年齢についての改正はないことから、いずれの制度も18歳以上が対象となる。   【4】 現行NISAの取扱い 現行のNISA(一般及びつみたて)については、令和5年末で買付を終了することとされ、非課税口座内にある商品については、新制度の外枠で現行の非課税措置が継続される(※)。 (※) 現行制度から新制度へのロールオーバーは不可 (了)
#篠藤 敦子
2022/12/27
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《速報解説》 車体課税の見直し及び自動車製作者等の不正行為に伴う再発抑止策の強化~令和5年度税制改正大綱~

 《速報解説》 車体課税の見直し及び自動車製作者等の不正行為に伴う再発抑止策の強化 ~令和5年度税制改正大綱~   公認会計士・税理士 菊地 弘   令和4年12月23日(金)に「令和5年度税制改正大綱」が閣議決定された。 大綱に示された自動車の車体課税等に関する主な改正事項等は次のとおりである。 1 車体課税等の見直し (1) 自動車重量税(国税) 「自動車重量税のエコカー減税」(排出ガス性能及び燃費性能の優れた環境負荷の小さい自動車に係る自動車重量税の免税等の特例措置)について、現行制度を令和5年末まで据え置いた上で次のとおり見直し、その適用期限を合計3年延長する。 ① 乗用車(自家用・タクシー) (注1) 電気自動車等:電気自動車、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド自動車、天然ガス自動車(以下、本稿内において同様) (注2) ガソリン車・LPG車・ディーゼル車の減免対象は、令和2年度燃費基準達成車かつ平成30年排出ガス規制50%低減達成車に限る。 ② 重量車(トラック・バス) ③ 自動車重量税の納付の事実の確認等の特例措置についての見直し (2) 自動車税環境性能割・軽自動車税環境性能割(地方税) 環境性能に応じた非課税又は税率の適用区分について、次の見直しを行う。 〇自動車税(自:自家用乗用車、営:営業用乗用車) (注) ガソリン車等の減免対象は、令和2年度燃費基準達成車に限る。 〇軽自動車税(自:自家用乗用車、営:営業用乗用車) (注) ガソリン車等の減免対象は、令和2年度燃費基準達成車に限る。 〇自動車税、重量車(トラック・バス) (注) ガソリン車等の減免対象は、令和2年度燃費基準達成車に限る。 (3) 自動車税種別割(地方税) 「種別割のグリーン化特例」〈種別割において講じている燃費性能等の優れた自動車の税率を軽減(軽課)し、一定年数を経過した自動車税の税率を重くする(重課)特例措置〉について、次の措置を講じる。 〇自動車税(自:自家用乗用車、営:営業用乗用車) (注) ガソリン車等の減免対象は、令和2年度燃費基準達成車に限る。 〇軽自動車税(自:自家用乗用車、営:営業用乗用車) (注) ガソリン車等の減免対象は、令和2年度燃費基準達成車に限る。 (4) 自動車税・軽自動車税の賦課徴収の特例措置についての見直し   2 租税特別措置等 (国税) [延長・拡充等] (地方税) [新設] 〈軽自動車税種別割〉 [拡充・延長等] 〈自動車税環境性能割〉 (了)
#菊地 弘
2022/12/26
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《速報解説》 一部の相続人から更正の請求があった場合の他の相続人に係る除斥期間の見直し~令和5年度税制改正大綱~

《速報解説》 一部の相続人から更正の請求があった場合の他の相続人に係る除斥期間の見直し ~令和5年度税制改正大綱~   税理士 齋藤 和助   本稿では、令和4年12月23日に閣議決定された令和5年度税制改正大綱に示された、「一部の相続人から更正の請求があった場合の他の相続人に係る除斥期間の見直し」について解説する。   1 除斥期間とは 除斥期間とは、一定の権利について、その権利を行使しない場合の権利の存続期間をいい、権利を行使しないまま一定期間が経過すると、権利が消滅するという制度である。国税における更正決定等の賦課権の期間制限には、この除斥期間の制度が採用されている。   2 現行の相続税の除斥期間(国税通則法70条) 相続税の更正決定等の除斥期間は、法定申告期限から5年を経過する日までとされている。ただし、除斥期間が満了する日以前6ヶ月以内に、一部の相続人から更正の請求があった場合には、その一部の相続人に係る更正又はその更正に伴って行われる加算税の賦課決定の除斥期間については、その更正の請求があった日から6か月を経過する日まで延長される。   3 現行制度の問題点 現行制度においては、除斥期間が満了する日以前6ヶ月以内に、一部の相続人から相続税の更正の請求があった場合、更正の請求をした相続人に対しては、請求があった日から6ヶ月を経過する日まで除斥期間が延長されるが、他の相続人は延長されないため、他の相続人の課税価格・税額の是正が必要になっても、更正決定等が間に合わない場合がある。   4 改正の内容 除斥期間が満了する日以前6ヶ月以内に一部の相続人から相続税の更正の請求がされた場合において、その請求に係る更正に伴い、他の相続人に係る課税価額等に異動を生ずるときは、他の相続人の相続税に係る更正決定又はその更正決定等に伴う加算税の賦課決定の除斥期間についても、その請求があった日から6ヶ月を経過する日まで延長することとする。 ただし、その更正の請求が、他の相続人の本来の除斥期間満了日以前にあった場合に限られる。また、上記改正とあわせて、同日までは修正申告書等の提出も可能とする。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 (出典) 「自由民主党税制調査会資料」(令和4年11月29日)より筆者一部加工   5 適用時期 上記改正は、令和5年4月1日以後に申告書の提出期限が到来する相続税について適用する。 (了)
#齋藤 和助
2022/12/26
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《速報解説》 会計士協会が「倫理規則に関するQ&A」として、監査法人監査における監査人の独立性に関する実務ガイダンス案を公表~監査法人の計算書類を対象とする監査業務における倫理規則適用上の留意点など示す~

《速報解説》 会計士協会が「倫理規則に関するQ&A」として、 監査法人監査における監査人の独立性に関する実務ガイダンス案を公表 ~監査法人の計算書類を対象とする監査業務における倫理規則適用上の留意点など示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022年12月23日、日本公認会計士協会は、「倫理規則実務ガイダンス「倫理規則に関するQ&A-監査法人監査における監査人の独立性について-(実務ガイダンス)」(公開草案)」を公表し、意見募集を行っている。 これは、2022年7月25日付けで倫理規則が改正されたことに伴い、監査法人の計算書類を対象とする監査業務における倫理規則の適用上の留意点などを示すものである。 現行の「職業倫理に関する解釈指針-監査法人監査における監査人の独立性について-」は廃止する予定である。 意見募集期間は2023年1月23日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 監査法人監査における監査人の独立性 有限責任監査法人は、公認会計士法により、その作成する計算書類について、特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人の監査報告書を添付することが求められている。 有限責任監査法人の計算書類の監査証明業務を受嘱しようとする公認会計士又は監査法人は公認会計士法施行令23条及び同法施行規則70条(以下「関係施行令等」という)の規定を遵守しなければならないことなどが記載されている。 2 監査人である監査法人と監査を受ける有限責任監査法人とが業務上の提携関係にある場合 一般的に業務上の提携関係にある場合には、倫理規則第520.3 A2項で挙げられている場合と同様に、監査事務所間に重要な金銭的利害が生じる可能性が高いと考えられるので、業務上の提携関係にある有限責任監査法人の監査業務の契約締結は避けるべきものと考えられる。 3 共同で監査業務を行っている有限責任監査法人の計算書類の監査業務契約を締結する場合 倫理規則第520.3 A2項の共同事業は事業体との間の事業であり、監査業務とは必ずしも合致しない点はあるが、共同監査によって生じる独立性に対する自己利益などの阻害要因を識別し、その阻害要因の水準を評価することになることなどが記載されている。 4 有限責任監査法人同士が相対で監査業務を提供し合う場合 有限責任監査法人同士が相対で監査業務を提供し合うことについて、倫理規則上具体的な規定はないが、自らが一方の有限責任監査法人の監査人の立場になると同時に、当該一方の有限責任監査法人から監査を受ける立場となり、相互に擁護することにより、擁護という阻害要因を生じさせる可能性があることなどが記載されている。 5 親族が監査業務の依頼人となる有限責任監査法人に就職している場合 次の場合について具体的に記載されている。 6 監査人である監査法人の社員のうちに監査業務の依頼人となる有限責任監査法人の社員であった者がいる場合 過去に有限責任監査法人に在籍した社員が就職している他の監査法人が、当該有限責任監査法人の監査人となる場合、関係施行令等では、監査法人の社員のうちに、本人又はその配偶者(配偶者の場合、本人が公認会計士法施行令23条2号イからへまでに掲げる者である場合に限る)が、過去1年以内に、監査関与先となる有限責任監査法人の社員であった場合を特別な利害関係と規定しているので、当該社員が「過去1年以内」に監査業務の依頼人となる有限責任監査法人の社員であった場合には、当該監査法人は当該有限責任監査法人の監査人となることができない。 7 監査人である監査法人の社員のうちに監査業務の依頼人となる有限責任監査法人の被監査事業体における監査役である者がいる場合 監査役を兼務している場合について、図解を用いて具体的に記載されている。 (了)
#阿部 光成
2022/12/26
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《速報解説》 ストックオプション税制の見直し~令和5年度税制改正大綱~

《速報解説》 ストックオプション税制の見直し ~令和5年度税制改正大綱~   太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太   令和4年12月16日公表の「令和5年度税制改正大綱」(与党大綱)において、ストックオプション税制の見直しが行われることが明らかとなった。本稿ではその概要について解説を行う。   1 現行制度 (1) ストックオプション税制 ストックオプション税制(特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税制度(措法29の2))は、権利行使時における経済的利益(取得株式の時価と権利行使価額との差額)に対する課税を繰り延べる制度で、株式を譲渡したときに売却対価と権利行使価額との差額を譲渡所得としてまとめて課税するものである。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (出典) 経済産業省「令和5年度税制改正に関する経済産業省要望【概要】」より筆者一部加工 (2) ストックオプション税制の適用要件 (1)の制度が適用できる「税制適格ストックオプション」の要件は以下のとおりである(措法29の2①一~八)。   2 改正の背景 経済産業省は、ストックオプションの利便性・魅力を向上させ、スタートアップ企業の人材獲得に寄与するように、ディープテックなど事業化まで時間を要するスタートアップや、グローバル展開を含め長時間をかけて大きな成長を目指すスタートアップを想定して、現行の権利行使期間の延長を求めていた。 これを受け「令和5年度税制改正大綱」において、ストックオプション税制の見直しが盛り込まれた。   3 令和5年度税制改正大綱の内容 大綱に盛り込まれた改正案の内容は、次の通りである。 スタートアップの事業展開を後押しする観点から、ストックオプション税制の適用要件のうち、上記1(2)①の「新株予約権の行使は、付与決議の日後2年を経過した日から10年を経過する日までの間に行わなければならないこと」を、一定の株式会社(※)が付与する新株予約権については、付与決議の日後「15年」を経過する日までの間に行うこととするほか、所要の措置が講じられる。 (※) 「一定の株式会社」とは、設立の日以後の期間が5年未満の株式会社で、金融商品取引所に上場されている株式等の発行者である会社以外の会社であることその他の要件を満たすものをいう。   4 適用時期 上記改正案の適用時期については、税制改正大綱では明らかにされていない。 (了)
#川瀬 裕太
2022/12/26
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