《速報解説》
車体課税の見直し及び自動車製作者等の不正行為に伴う再発抑止策の強化
~令和5年度税制改正大綱~
公認会計士・税理士 菊地 弘
令和4年12月23日(金)に「令和5年度税制改正大綱」が閣議決定された。
大綱に示された自動車の車体課税等に関する主な改正事項等は次のとおりである。
1 車体課税等の見直し
(1) 自動車重量税(国税)
「自動車重量税のエコカー減税」(排出ガス性能及び燃費性能の優れた環境負荷の小さい自動車に係る自動車重量税の免税等の特例措置)について、現行制度を令和5年末まで据え置いた上で次のとおり見直し、その適用期限を合計3年延長する。
〇新型コロナウイルス感染症等を背景とした半導体不足等の状況を踏まえ、異例の措置として現行制度を令和5年12月31日まで据え置く。
〇次のとおり燃費基準の引上げ等の見直しを3年間で段階的に行い、その適用期限を令和8年4月30日まで延長する。
〇3年目に制度対象外となる令和12年度燃費基準75%~80%達成車について、1年間に限り本則課税(※)の適用対象とする経過措置(激変緩和措置)を講ずる。
① 乗用車(自家用・タクシー)
(注1) 電気自動車等:電気自動車、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド自動車、天然ガス自動車(以下、本稿内において同様)
(注2) ガソリン車・LPG車・ディーゼル車の減免対象は、令和2年度燃費基準達成車かつ平成30年排出ガス規制50%低減達成車に限る。
② 重量車(トラック・バス)
➡上記(①及び②の適用期限の延長を除く)の改正は、令和6年1月1日から施行する。
③ 自動車重量税の納付の事実の確認等の特例措置についての見直し
〇自動車重量税のエコカー減税の適用を受け、又は本則税率の適用を受けた自動車重量税について、自動車製作者等の不正行為に起因し納付不足額が発生した場合、その自動車製作者等が納付すべき自動車重量税の額は、その納付不足額に35%(現行:10%)を乗じて計算した金額を加算した金額とする。
〇上記の自動車製作者等が納付した自動車重量税の額は、その法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないこととする。
➡上記の改正は、令和6年1月1日以後に法定納期限が到来する自動車重量税について適用する。
(2) 自動車税環境性能割・軽自動車税環境性能割(地方税)
環境性能に応じた非課税又は税率の適用区分について、次の見直しを行う。
〇新型コロナウイルス感染症等を背景とした半導体不足等の状況を踏まえ、異例の措置として、現行の税率区分を令和5年12月31日まで据え置く。
〇自動車税(自:自家用乗用車、営:営業用乗用車)
(注) ガソリン車等の減免対象は、令和2年度燃費基準達成車に限る。
〇軽自動車税(自:自家用乗用車、営:営業用乗用車)
(注) ガソリン車等の減免対象は、令和2年度燃費基準達成車に限る。
〇自動車税、重量車(トラック・バス)
(注) ガソリン車等の減免対象は、令和2年度燃費基準達成車に限る。
(3) 自動車税種別割(地方税)
「種別割のグリーン化特例」〈種別割において講じている燃費性能等の優れた自動車の税率を軽減(軽課)し、一定年数を経過した自動車税の税率を重くする(重課)特例措置〉について、次の措置を講じる。
〇自動車税(自:自家用乗用車、営:営業用乗用車)
(注) ガソリン車等の減免対象は、令和2年度燃費基準達成車に限る。
〇現行のグリーン化特例(重課)の適用期限を3年延長する。
〇軽自動車税(自:自家用乗用車、営:営業用乗用車)
(注) ガソリン車等の減免対象は、令和2年度燃費基準達成車に限る。
(4) 自動車税・軽自動車税の賦課徴収の特例措置についての見直し
〇自動車製作者等の不正行為に起因し自動車税環境性能割等の納付不足額が発生した場合、その自動車製作者等が納付すべき自動車税環境性能割等の額は、その納付不足額に35%(現行:10%)を乗じて計算した金額を加算した金額とする。
〇上記の自動車製作者等が納付した自動車税環境性能割等の額は、その法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないこととする。
➡上記の改正は、令和6年1月1日以後に取得された自動車等に対して課する環境性能割並びに令和5年度分の令和6年1月1日以後に納税義務が発生した者に課する種別割及び令和6年度以後の年度分の種別割について適用する。
2 租税特別措置等
(国税)
[延長・拡充等]
〇車両安定性制御装置等を装備した貨物自動車等に係る自動車重量税率の特例措置
① 車両総重量が8tを超えるトラック(トレーラーを除く)のうち、側方衝突警報装置及び歩行者検知機能付き衝突被害軽減制動制御装置を装備したものについて、令和5年5月1日から令和6年4月30日までの間に新車に係る新規検査を受ける場合には、その新規検査の際に納付すべき自動車重量税の税率を50%軽減する。
② バス等又は車両総重量が3.5tを超えるトラック(トレーラーを除く)のうち、歩行者検知機能付き衝突被害軽減制動制御装置を装備したものについて、令和5年5月1日から令和8年4月30日までの間に新車に係る新規検査を受ける場合には、その新規検査の際に納付すべき自動車重量税の税率を25%軽減する。
(地方税)
[新設]
〈軽自動車税種別割〉
〇特定小型原動機付自転車(電動キックボード)に係る税率を2,000円とし、道路交通法の一部を改正する法律附則第1条第3号に定める日の属する年度の翌年度(同法の施行日が4月1日の場合には、同年度)分以後の軽自動車税種別割について適用する。
[拡充・延長等]
〈自動車税環境性能割〉
(1) 側方衝突警報装置を装備した自動車(新車に限る)に係る自動車税環境性能割の課税標準の特例措置について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
① 車両総重量が8tを超えるトラック(トレーラーを除く)で側方衝突警報装置及び歩行者検知機能付き衝突被害軽減制動制御装置を装備したものに係る自動車税環境性能割について、その自動車の取得が令和5年4月1日から令和6年4月30日までの間に行われたときに限り、その通常の取得価額から350万円を控除する。
② 車両総重量が8tを超えるトラック(トレーラーを除く)で側方衝突警報装置を装備したものに係る自動車税環境性能割について、その自動車の取得が令和5年4月1日から令和6年4月30日までの間に行われたときに限り、その通常の取得価額から175万円を控除する。
③バス等及び車両総重量が3.5tを超えるトラック(トレーラーを除く)で歩行者検知機能付き衝突被害軽減制動装置を装備したものに係る自動車税環境性能割について、その自動車の取得が令和5年4月1日から令和7年3月31日までの間に行われたときに限り、その通常の取得価額から175万円を控除する。
(2) 都道府県の条例で定める路線の運行の用に供する一般乗合用のバスに係る自動車税環境性能割の非課税措置の適用期限を2年延長する。
(3) 公共交通移動等円滑化基準に適合したノンステップバス及びリフト付きバス並びにユニバーサルデザインタクシー(新車に限る)に係る自動車税環境性能割の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(了)