《速報解説》
一部の相続人から更正の請求があった場合の他の相続人に係る除斥期間の見直し
~令和5年度税制改正大綱~
税理士 齋藤 和助
本稿では、令和4年12月23日に閣議決定された令和5年度税制改正大綱に示された、「一部の相続人から更正の請求があった場合の他の相続人に係る除斥期間の見直し」について解説する。
1 除斥期間とは
除斥期間とは、一定の権利について、その権利を行使しない場合の権利の存続期間をいい、権利を行使しないまま一定期間が経過すると、権利が消滅するという制度である。国税における更正決定等の賦課権の期間制限には、この除斥期間の制度が採用されている。
2 現行の相続税の除斥期間(国税通則法70条)
相続税の更正決定等の除斥期間は、法定申告期限から5年を経過する日までとされている。ただし、除斥期間が満了する日以前6ヶ月以内に、一部の相続人から更正の請求があった場合には、その一部の相続人に係る更正又はその更正に伴って行われる加算税の賦課決定の除斥期間については、その更正の請求があった日から6か月を経過する日まで延長される。
3 現行制度の問題点
現行制度においては、除斥期間が満了する日以前6ヶ月以内に、一部の相続人から相続税の更正の請求があった場合、更正の請求をした相続人に対しては、請求があった日から6ヶ月を経過する日まで除斥期間が延長されるが、他の相続人は延長されないため、他の相続人の課税価格・税額の是正が必要になっても、更正決定等が間に合わない場合がある。
4 改正の内容
除斥期間が満了する日以前6ヶ月以内に一部の相続人から相続税の更正の請求がされた場合において、その請求に係る更正に伴い、他の相続人に係る課税価額等に異動を生ずるときは、他の相続人の相続税に係る更正決定又はその更正決定等に伴う加算税の賦課決定の除斥期間についても、その請求があった日から6ヶ月を経過する日まで延長することとする。
ただし、その更正の請求が、他の相続人の本来の除斥期間満了日以前にあった場合に限られる。また、上記改正とあわせて、同日までは修正申告書等の提出も可能とする。
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(出典) 「自由民主党税制調査会資料」(令和4年11月29日)より筆者一部加工
5 適用時期
上記改正は、令和5年4月1日以後に申告書の提出期限が到来する相続税について適用する。
(了)