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会計事務所 “生き残り” 経営コンサル術 【第5回】「3年先5年先の経営計画書を作っている会社があるけれど、これって本当に役に立っているの」
会計事務所 “生き残り” 経営コンサル術 【第5回】 「3年先5年先の経営計画書を 作っている会社があるけれど、 これって本当に役に立っているの」 株式会社 経営ステーション京都 代表取締役 京セラ株式会社 元監査役 公認会計士・税理士 田村 繁和 私が開業して間もない頃、会計事務所業界では、経営計画シミュレーションの仕事が全国的に盛んになりました。 3年先5年先のP/L、B/Sを自動的に計算してくれるという商品です。 これからは記帳業務じゃなくて、経営計画シミュレーションの時代だと業界誌も書き立てました。 なにせコンピュータのソフトを含めた価格が1,000万円もしましたが、どんどんこれにのめり込んでいく事務所が増えたのでした。 販売会社は「リースにすれば月20万円ですから、月2件お客様をとれば元がとれます」と言って、全国の会計事務所に営業をかけていました。 私も他の事務所に負けないようにこれを買おうとしましたが、どうも変な予感がして、最終的には買いませんでした。 後日、上場会社の監査役を経験して、「買わなかったことは正解だった」と自信をもって言えるようになりました。 その理由としては、3年先5年先のP/L、B/Sまで、上場会社でも作っていなかったのです。 「なぜ作らないのですか」と私が質問しますと、「3年先5年先のことなんか、世の中の変化ですぐに変わってしまう。そんないいかげんなものを作ってどうするんだ。それよりも1年先の経営計画をしっかり作りあげることが大切じゃないのか」と言われました。 さらに続けて「1年先のしっかりした経営計画を作ろうと思えば、毎月の計画、毎日の計画を作って朝礼で発表していく。こんな地道なことが大切なんだ」と教えられたのです。 当時私は先輩から「とにかく5年先までのP/L、B/Sを付けて、製本してお客様に提出すれば100万円はもらえる。それに、金融機関もこんなすごい資料にびっくりするはずだ」と聞かされました。 そして、その先輩から「最後に君に成功のヒントをあげるよ。製本した資料はぶ厚ければ厚いほどお金になるんだ」と忠告されたものでした。 私がお世話になった会社では、1年先の経営計画は紙1枚でした。 しかし、それを実行するために、朝礼で毎日の計画を発表し、翌朝その結果を反省するというものでした。 このことを経験して、この商品は会計業界の中の机上の話として生まれてきたのかなあと、思わずにはいられませんでした。 会計業界の中には、現在でもこんな話がたくさんころがっています。 原理原則で考えていけば、私たちは会計事務所コンサルから学ぶのではなく、成長しているクライアントから学ぶべきです。 成長しているクライアントの中に、成長の秘訣がいっぱいあるのです。 (了)
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NPO法人 “AtoZ” 【第6回】「NPO法人の税務①」~NPO法人の収益事業~
NPO法人 “AtoZ” 【第6回】 「NPO法人の税務①」 ~NPO法人の収益事業~ 税理士 岩田 聡子 1 収益事業に該当する場合 NPO法人も、一般の法人と同様に、収益事業を行っている場合には、法人税の申告をしなければならない。 収益事業とは、特掲事業として定められた次の34業種で、継続して事業場を設けて行われるものをいう(法法2十三、法令5)。 NPO法人の行う事業が、NPO法人の本来の目的である特定非営利活動に係る事業であっても、特定非営利活動に係る事業以外の事業(その他の事業)であっても、この特掲事業に該当すれば、その事業に付随して行われる行為も含めて、法人税が課税される(法基通15-1-1)。 これは、NPO法人の行う事業のうち、一般の企業との競合性、公平性を考慮した法人税法特有の考えから規定されているものであり、それが特定非営利活動であるか否かは関係ない。 したがって、NPO法人が行っている事業が収益事業に該当するかどうかは、個別に判断しなくてはならないケースが多いこともあり、常に慎重な判断が求められる。 主な判断のポイントとしては、以下の要件が挙げられる。 2 収益事業から除外される場合 上記の要件に該当していても、収益事業から除外されるものがある。 (1) 個別の特掲事業から除外される場合 公益性、その他の事由で、法令等により個別に特掲事業から除外されるものである。 例としては、常設の美術館、博物館等の所蔵品の観覧等がこれに当たる(法基通15-1-52注)。 また、一定の条件を満たすチャリティー・ショー、アマチュア演劇等も除外される場合があるが、これらについては税務署長の確認を受けなければならない(法基通15-1-53)。 (2) 一定の条件を満たす公益法人等が行う特掲事業で特に社会福祉に貢献すると認められる場合 NPO法人が行う特掲事業のうち、その事業に従事する身体障害者、生活扶助者、知的障害者、精神障害者、65歳以上の者、寡婦等がその事業に従事する者の総数の半数以上を占め、かつ、その事業がこれらの者の生活の保護に寄与している事業がこれに該当する(法令5②二)。 3 法人税の申告をしていない場合 NPO法人の中には、最初に税務署へ行って相談したから安心、と思っている方も多くおられるようであるが、活動内容によっては、納税義務が生ずる場合もある。 例えば、イベントで物品販売をしたら、金額の多寡によらず、物品販売業(=収益事業)となってしまう等の場合である。 気付かずに収益事業を行っていた場合には、遡って申告をしなければならないケースもあり、その場合には、最悪、5年間分の確定申告をすることとなる。 また、利益が出ていないから、税金はない、と安心していてはいけない。 収益事業を行っていたら、利益は出ていなくても、県民税と市民税の均等割は必ず納付することとなる。 5年分であれば、自治体によって税額は違うのだが、おおむね均等割7万円×5年分=35万円と、資金基盤の脆弱なNPO法人にとっては、重い負担となってしまう。 今、行っている事業が、本当に収益事業に該当しないのか、しばらく確認していないNPO法人は、再度、見直してみることをお勧めする。 (了)
税務
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monthly TAX views -No.4-「消費税率引上げと価格表示」
monthly TAX views -No.4- 「消費税率引上げと価格表示」 中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹 消費税率が上がる2014年4月、2015年10月に向けて、政府は、消費税の円滑で適正な転嫁を確保するため、転嫁拒否の行為を禁じたり、価格表示について、これまでとは異なる特別な措置を講じるための法整備を行う。 大規模小売業者のような優越的地位にあるものが、商品納入業者に対して買いたたきを行ったり、消費税の転嫁を拒否するような行為を禁じることについては、異論はない。 しかし、価格表示に関する規制については、すでに大手小売関係者が発言しているように、違和感を感じる部分がある。 政府は事業者に対し、消費税の転嫁を阻害する表示をしてはならないとして、次のような表示を禁止するという。 取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示、つまり「消費税は転嫁しません」、「消費税は当店が負担しています」等の表示である。また、「消費税率上昇分値引きします」「消費税還元セール」等の表示も、誤解を生むので禁止するという。 消費税はあくまで消費者が負担するので、その分値引きするという表示はおかしいということのようだ。 これらを実効あらしめるために、消費者庁が具体的ガイドラインを定め、転嫁を阻害する表示に対する勧告、指導等を行うことになる。 確かに、大企業が優越的な地位を利用して、下請会社に消費税を負担させることは禁じるべきだ。また、「消費税は当店が負担します」という表示は、意図的な間違いなので、問題だろう。 ここで取り上げたいのは、2004年に義務付けられ、それなりに定着してきた「総額表示」を、時限的にではあるが、「(税抜きであることが明示されておれば)税抜表示でもかまわない」とする点だ。 「価格が税込価格であると誤認されないための措置を講じているときに限り、税込価格を表示することを要しない」ということのようだが、2つの表示が並行することにより、消費者の混乱を招くことは間違いない。 総額表示は、消費者利便を考えて、2004年4月に導入されたものである。「税抜価格」のお店と「税込価格」のお店が混在することによる消費者の混乱を避けるために、消費税法63条で、総額表示を義務付けたのである。 フランス大蔵省の消費税担当課長と話した際、こんなことを言われたことがある。 フランスでは、消費税率引上げ時に、事業者が表示にこだわることはない。消費税率の引上げは、いろいろな原材料費や電気代・ガス代・人件費などが上がる中で、コスト増加の一要因にすぎないという認識が事業者には浸透している。したがって、消費税率引上げだけを考えて価格を改定することはしない。 消費税率が上がるということになると、そのほかのコストの状況を見ながら、売れ筋の商品は少しずつ値段を引き上げていく。売れないものは消費税率引上げ時にも価格を据え置かざるを得ない。 要は、「自らのマージンが確保されていればよい」というのが彼らの認識だ。消費税率の引上げの前日に徹夜して価格表示を書き換えるという話は、聞いたことがない、と。 そもそも消費税の納税額は、(売上げ×消費税率)-(仕入れ×消費税率)で計算するので、商品一つ一つに消費税率が対応しているわけではない。このことからも、商品一つ一つの表示を徹夜して貼り替えるという作業が、的外れのように感じられる。 電気代が上がる、円安で石油価格が上がる、原材料費も上がる、それらコスト変化のワンノブゼムとして、消費税率も上がる。コスト上昇を転嫁できるかどうかは、経済状況次第である。法律で「消費税は消費者が負担」といっても、相手側がその値段で買ってくれなければ転嫁できないわけだ。 さまざまなコストの変化を見通しながら、ものによっては、価格を据え置いて販売数量を増加させるという戦略も考えられる。最大関心事は、自らのマージンをいかに確保するか、そのために商品一つ一つにいかなる価格を付けるのがいいのかということのはずだ。 今回の消費税率の二度にわたる引上げは、このような、消費税と価格の関係を考える絶好のチャンスであった。それを、時限的にせよ法律で縛ることで、潰してしまったことは大変残念に思う。 (了)
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海外で依頼した通訳等の対価の源泉所得税・消費税の取扱い
海外で依頼した通訳等の対価の 源泉所得税・消費税の取扱い 税理士 郭 曙光 【問】 当社は、中国視察の際に、現地で甲氏に通訳を含めたコーディネートを依頼しました。甲氏は日本人ですが、2年前から中国の大学に留学しています。 この場合、当社(日本)から甲氏に対して支払うコーディネート料に関する日本の源泉所得税や消費税はどのような取扱いとなるのでしょうか。 【回答(要旨)】 1 所得税法上の取扱い 2年前から中国の大学に留学していることから、甲氏は日本の非居住者に該当すると推定される。非居住者に対しては、日本の国内源泉所得にのみ所得税が課税されることとなる。 甲氏が行った通訳等のコーディネートは、現地(中国)で行われていることから、日本の国内源泉所得には該当しない。 このため、貴社が甲氏に対して支払うコーディネート料については、日本の所得税の源泉徴収をする必要はない。 (1) 甲氏が日本の居住者に該当するか否か 日本の所得税法は、日本における住所又は居所の有無に基づいて、個人の納税義務者を「居住者」と「非居住者」に区分している。 居住者については、日本の国内及び国外で生じたすべての所得に対して課税されるが、非居住者については、日本の国内源泉所得に対してのみ課税される(所法2①三・五、7①)。 このため、所得税法上は、居住者と非居住者の区分が課税所得の範囲を決める重要なポイントとなる。 国の内外にわたって居住する場所が異動する者の住所が日本国内にあるかどうかの判定に関しては、次のとおり、所得税法施行令15条1項(国内に住所を有しない者と推定する場合)において推定規定が設けられている。 この推定規定は、職業に従事する者に関する規定となっているが、学術、技芸の習得のために国外に居住することとなった者についても、同様の取扱いとなる。 所得税基本通達3-2(学術、技芸を習得する者の住所の判定)では、次のとおりとされている。 また、継続して1年以上であるかどうかについては、所得税基本通達3-3(国内に居住することとなった者等の住所の推定)において、次のとおりとされている。 すなわち、職業に従事するため、又は、学術、技芸の習得のために国外に居住することとなった者については、国外における在留期間が契約等によってあらかじめ1年未満であることが明らかな場合を除き、国外において継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合に該当するものとされて、日本国内に住所を有しない非居住者となると推定される。 ご質問の場合は、甲氏が2年前から中国の大学に留学していることから、甲氏は日本の非居住者に区分されることになる。 (2) コーディネート料が日本国内源泉所得に該当するか否か 非居住者が日本で課税を受ける所得は、日本の国内源泉所得に限られる。国内源泉所得について、所得税法161条(国内源泉所得)においては、次のように規定している。 甲氏が行った通訳等のコーディネート(人的役務の提供)は、日本ではなく、現地(中国)で行われているため、上記の所得税法161条2号に掲げられている日本の国内源泉所得には該当しない。 ご質問の場合には、甲氏は日本の非居住者に区分され、また、コーディネート料は日本の国内源泉所得に該当しないことから、日本で所得税の課税を受けることとはならない。 よって、貴社は甲氏より所得税の源泉徴収を行う必要はない。 2 消費税法上の取扱い ご質問のコーディネート料に関しては、役務の提供が行われた場所が現地(中国)であるため、消費税法上、国外取引に該当し、消費税の課税対象とはならない。 消費税法4条1項(課税の対象)においては、次のように規定されている。 また、資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定について、消費税法4条3項では、次のとおりとされている。 上記のとおり、役務の提供が国内において行われたかどうかの判定に関しては、その役務の提供地によって判定するものとされている。 ご質問の場合は、甲氏が行ったコーディネートという役務提供が現地(中国)で行われているため、貴社が甲氏に支払ったコーディネート料は、この消費税法4条1項の規定に該当せず、日本の消費税の課税対象外となる。 (了)
国税通則
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企業不正と税務調査 【第7回】「従業員による不正」 (1)経理部門社員による横領
企業不正と税務調査 【第7回】 「従業員による不正」 (1) 経理部門社員による横領 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 今回から3回にわたって、従業員による不正について、横領事件を中心に見ていきたい。 本連載【第1回】で引用した事例が2例とも従業員による横領であったように、税務調査をきっかけにして、経営者・顧問税理士・会計監査人が気付かなかった従業員不正が発覚することは少なくない。 また、犯人とされた従業員は、概してまじめで、休みも少なく、業務に精通しており、周囲からの信頼が厚い場合が多い。 彼らは、どのようにして不正への道に足を踏み入れ、いかに巧妙な隠蔽工作をし、にもかかわらず、国税調査官が発見できたのはなぜか。 具体的な手口を見る前に、まず、こうした不正がどのような犯罪を構成するか、刑法の条文で確認したい。 従業員による不正で成立する犯罪は、詐欺又は業務上横領であり、それぞれ次のように規定されている。 従業員が勝手に、会社に帰属する金銭などの資産を私的に流用してしまった場合は、詐欺か横領の罪名で刑事告訴されることになり、今回取り上げる経理担当者による不正は、上記の「電子計算機使用詐欺」に問われることもあるわけだが、本稿では、犯罪の構成要件を解説することが目的ではないので、こうした私的流用行為を広く「横領」として記述する。 1 経理部担当者による横領の特徴 ここでは、昨年10月に発覚した文具製造会社の事例を参照したい。 本連載【第1回】で紹介した【事例2】のケースとまったく同じ手口であり、どちらも中堅以上の企業でありながら、経理部門における内部統制に関してはいかにも手薄であるとの印象を持つのだが、共通しているのは、 の2点である。 この「単独犯」であること、換言すれば、1人で不正が完結できることが、経理部門担当者による不正の大きな特徴である。 〔経理担当者による不正の流れ〕 経理部門、特に出納業務担当者の不正が多発する原因は、以下のようにまとめることができる。 (1) 経理部門の業務は属人的になりやすい 長引く不況の影響もあり、管理部門社員の数を減らしてコスト削減に取り組んできた企業は多い。 本来であれば、複数の担当者を置き、相互牽制機能により、ミスを防止し、不正ができない仕組みを構築すべきことは分かっていても、コスト面から、経理担当者を1人しか置けない、場合によっては、管理部門の社員が1人だけというケースもあるかもしれない。 この段階で、不正のトライアングルにおける「機会」が生じてしまう。 ただし、本連載【第2回】で見たように、これだけでは不正は発生しない。本事例は、「遊興費」を必要とする「動機」が存在していた。また、不正を「正当化」する何らかの社内事情もあって、結果的に巨額の業務上横領に至ったものである。 経理部担当者の「正当化」としては、経営者の野放図な支出、コスト削減による給料・残業代のカット、営業部門社員との待遇の差など、経理担当者しか知り得ない社内事情に基づくものが多い。 (2) 不正を防止又は発見するための仕組みがない 不正が長期間にわたり繰り返される理由はただ一つ。不正を防止し、又は発見するための仕組みがないからである。 たとえ業務を担当者任せにせざるを得なかったとしても、経営者が事後的に支払内容を確認し、請求書と照合する手間を惜しまなければ、被害が巨額になる前に発見でき、従業員を犯罪者にすることも防げたのではないか。 「監視されている」という思いを抱かせるだけで、抑止効果はある。 (3) 犯罪者は勤勉である 不正を発見するための仕組みの一つが、経理担当者にまとまった有給休暇を取らせ、その間に業務内容をチェックするという手法であるが、往々にして犯罪者は勤勉であり、有給休暇は取らず、休日出勤は当たり前で残業時間も多い。 管理部門の人員削減を進めてきた経営者は、経理担当者が多忙な責任の一端を感じ、ますます信頼感を高めかねないが、実は、不正の隠蔽工作の多くは、残業時間に行われていることが多い。 2 経理担当者の不正が税務調査により発覚するパターン (1) 銀行調査 上記の事例では、経理担当者は、自分名義の口座に振込みを繰り返していたらしく、国税調査官が取引銀行の入出金履歴を調査すれば、すぐに発覚する手口であった。 通常、企業が支払いをする相手は法人であることが多いため、そこに個人名が混在し、かつ、それが経理担当者と一致していたような場合に、国税調査官が見破れないわけはない。 (2) 反面調査 さらに、架空の、又は変造された請求書を使用していた場合には、その請求書を発行している取引先に対し反面調査を行うことにより、架空又は変造の事実をつきとめることとなる。 (3) 従業員も自白の機会をうかがっている 不正を繰り返してきた経理担当者からしても、不正に得た金額が雪だるま式に膨らみ、とうてい返済し得ないことは分かっている。とはいえ、自分から経営者に事実を打ち明ける勇気もない。経理担当者にとって、税務調査は、願ってもない自白のチャンスでもある。 * * * 次回は、従業員による不正のうち、経理部門以外の社員(営業部門・購買部門)による不正事例を参考に、税務調査による不正発見手法を検討したい。 (了)
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組織再編税制における不確定概念 【第7回】「適格合併における繰越欠損金の利用①」
組織再編税制における不確定概念 【第7回】 「適格合併における繰越欠損金の利用①」 公認会計士 佐藤 信祐 平成13年度税制改正により組織再編税制が導入され、適格合併に該当した場合には、繰越欠損金の引継制限が課されない限り、被合併法人の繰越欠損金を合併法人に引き継ぐことが可能になった。 そのため、繰越欠損金を引き継ぐために適格合併を行うということを検討する場面も多く、租税回避行為に該当するか否かが議論になることも少なくない。 そこで、第7回目と第8回目の2回に分けて、適格合併により繰越欠損金を引き継ぐ行為について、租税回避行為として認定されるか否かについて解説を行う。 1 支配関係が生じてから5年経過するまで待つ場合 平成13年度税制改正により、適格合併に該当した場合には、被合併法人の繰越欠損金を合併法人に引き継ぐことが可能になった(法法57②)。そのため、繰越欠損金を利用することを目的とした合併というのも想定される。一般的な合併は事業目的が主目的ではあるが、そのような場合であっても、被合併法人に繰越欠損金がある場合には、当該繰越欠損金を意識した組織再編成になることが多い。 このように、適格合併による繰越欠損金の引継ぎについては租税回避行為に繋がりやすいことから、支配関係が生じてから合併事業年度開始の日まで5年を経過しておらず、かつ、みなし共同事業要件を満たさない場合には、繰越欠損金の引継制限が課されることとされている(法法57③)。 そのため、支配関係が生じてから合併事業年度開始の日まで5年経過するまで待ってから、適格合併を行うというケースが考えられる。 これに対し、繰越欠損金は9年間の繰越しが認められていることから、最後の4年間の時間差を利用して、繰越欠損金を利用するという租税回避行為が考えられる。 このようなケースについては、合併という行為が、会社法上に規定されている行為であり、登記も必要となるため、合併期日が仮装であるという認定は不可能であるし、仮装する必要性すらない。 すなわち、これを否認するためには、包括的租税回避防止規定(法法132の2)によらざるを得ないであろう。 しかしながら、このような5年という形式要件が定められているものについて、その隙間をついたからといって、包括的租税回避防止規定を適用するのは無理があるし、そうであるならば、支配関係が生じてから合併事業年度開始の日まで9年を経過していない適格合併について、繰越欠損金の引継制限を課せばよかっただけの話である。 さらに、このような“5年待つ”という単純な行為については、少なくてもその5年間は合併法人において繰越欠損金を利用することができなかったのであるから、そのような納税者の行為について、異常性を認定することは困難であり、包括的租税回避防止規定(法法132の2)を適用すべきではないと考えられる。 ※なお、上記のように5年待つという行為に対して、財務省主税局で法人税法の立法に関与されていた佐々木浩氏(税理士法人プライスウォーターハウスクーパース勤務)は、「5年となったのは、もともとは欠損金の繰越期間に合わせたということにはなっています。」(『企業組織再編税制及びグループ法人税制の現状と今後の展望』(仲谷修・栗原正明・中村慈美・佐々木浩・武井一浩著、一般財団法人大蔵財務協会、59頁)とした上で、「欠損金の繰越期間が7年に延長されたときも特定資本関係は5年で判定するということで延長していません。7年だとあまりに長すぎるといった声もありましたし・・・。これで欠損金の繰越期間との関係はあまり言われなくなったのですが、ところが、いろいろな実態を聞くと、本当に大丈夫なのかなと。たぶん皆さんのような立派な会社でそんなことはないんですけれども、5年を超せばフリーでいいですよねというのも、どうなのかなということをおっしゃる方もいます。」(前掲書59頁)と書かれており、問題意識を持たれている。 2 みなし共同事業要件を形式的に充足させる場合 前述のように、適格合併に該当した場合には、被合併法人の繰越欠損金を合併法人に引き継ぐことが可能になった(法法57②)。 しかし、支配関係が生じてから合併事業年度開始の日まで5年を経過しておらず、かつ、みなし共同事業要件を満たさない場合には、繰越欠損金の引継制限が課されることになる(法法57③)。 したがって、みなし共同事業要件を形式的に充足させるという行為が考えられる。 とりわけ、経営参画要件の充足については、被合併法人の社長を合併法人の副社長、専務取締役又は常務取締役に就任させることで可能となるため、実務上も、問題になることが多い。 しかしながら、被合併法人の社長を合併法人の副社長、専務取締役又は常務取締役に就任させるような場合において、副社長、専務取締役又は常務取締役としての権限・責任が与えられている場合には問題にならないが、単なる名目上の副社長、専務取締役又は常務取締役に就任させ、副社長、専務取締役又は常務取締役としての権限が全く無いような場合に、経営参画要件を満たすか否かという点が問題になりやすい。 この点については、副社長、専務取締役又は常務取締役とは、会社法において制度化されたものではなく、定款等の規定又は総会もしくは取締役会の決議等により副社長、専務取締役又は常務取締役としての職制上の地位が付与された役員であるとしていることから、単なる名目だけの副社長、専務取締役又は常務取締役については、実質的に職制上の地位が付与された副社長、専務取締役又は常務取締役ではないと考えられるため、このような場合には、経営参画要件を満たすことができないと考えられる。 このように、経営参画要件を満たすためだけに副社長、専務取締役又は常務取締役に就任させる場合には、包括的租税回避防止規定によるまでもなく、実質的に、副社長、専務取締役又は常務取締役に該当するのか否かの事実認定により否認が行われることになると考えられる。 そのため、税務調査においては、定款等の規定又は総会もしくは取締役会の決議等により副社長、専務取締役又は常務取締役としての職制上の地位が与えられているか否かが調査の対象となるため、定款、株主総会議事録及び取締役会議事録をそれぞれ整備しておく必要がある。 さらに、経営参画要件を満たすためだけに、被合併法人の社長を合併法人の副社長、専務取締役又は常務取締役に就任させる場合には、 などのようなことを検討することが多いが、このような行為を行った場合には、このような名目だけの副社長、専務取締役又は常務取締役については特定役員として認めるべきではなく、経営参画要件を満たすことができないと考えられる。 すなわち、税務調査においては、取締役会、経営会議等の会議の出席状況、与えられている権限や職責の状況、部下や秘書についての他の役員との比較などを行うことにより、副社長、専務取締役又は常務取締役としての職制上の地位が与えられているか否かの事実認定が行われることになると考えられるため、そのような税務調査に耐えられるだけの証拠資料を整備しておく必要があると考えられる。 ※ヤフー株式会社がソフトバンクIDCソリューションズ株式会社との合併について租税回避行為として否認された事例(平成22年6月30日、ヤフー株式会社によるプレスリリースより)は、支配関係発生日前に、合併法人であるヤフー株式会社の代表取締役社長が被合併法人であるソフトバンクIDCソリューションズの取締役副社長に就任したという行為について、経営参画要件を満たすためだけの行為として、包括的租税回避防止規定(法法132の2)が適用された事例である。 国税当局は、包括的租税回避防止規定を適用することにより否認を行っているが、本事案のポイントは、合併前に、被合併法人であるソフトバンクIDCソリューションズにおける取締役副社長としての実態を備えていたか否かという点にあることから、包括的租税回避防止規定ではなく、取締役副社長としての実態を備えていたか否かという事実認定と特定役員の定義についての条文解釈により解決されるべき問題であったと考えられる。 (了)
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法人税の解釈をめぐる論点整理 《寄附金》編 【第5回】
法人税の解釈をめぐる論点整理 《寄附金》編 【第5回】 弁護士 木村 浩之 (前回はこちら) 7 資本等取引と寄附金 法人税法上、資本等取引によって損益は生じないとされ(法法22②③)、損益取引と区別されているが、資本等取引であっても現実に経済的利益の移転の効果が生じる場合があることから、何らかの形で寄附金税制が関係する場面があり得ると解される。 そこで、《寄附金》編の最終回となる今回は、資本等取引に関係する寄附金税制の適用につき、関連する課税上の問題と併せて整理・検討することとしたい。 (1) 低額出資 株式会社が特定の株主に時価よりも著しく低い価額で株式を発行する場合には、その株式を引き受けた株主は、時価と発行価額との差額に相当する経済的利益を得ることになる。しかしながら、会社からすれば、株主に経済的利益を得させたとしても、自己にとっては株式発行という資本等取引をしたにすぎないことから、法人税法上、損益は発生せず、寄附金の問題は生じないことになる。 もっとも、株式の有利発行については、他の株主の負担において特定の株主の利益を図るものともみることができるのであり、それが著しいものであって株主間における利益移転とみなされる場合には、会社そのものではなく、その株主に対して寄附金税制の適用がなされる可能性がある。 この点、株式会社が著しく有利な価額による第三者割当増資を行った事案において、株主間の合意によって会社の資産価値という利益を移転したものとして、株主に対する寄附金税制の適用を肯定した裁判例がある(最判平成18年1月24日・判時1923号20頁参照)。 なお、いずれにしても、著しく低い価額で株式を引き受けた株主の側では、時価との差額について受贈益を認識することになると考えられる(その場合の株式の取得価額は時価となる(法令119①四参照))。 (2) 高額出資 (1)とは逆に、著しく高い価額で株式を引き受ける場合、その株主は、会社(又は他の株主)に経済的利益を移転するものとして、時価との差額の部分について寄附金税制が適用されることになる(法法37⑧。この場合も株式の取得価額は時価となる)。 他方、会社としては、その価額が著しく高額であったとしても、自己にとっては資本等取引になることから、損益は発生せず、受贈益の認識をすることもない。 もっとも、他の株主においては、何らの対価なくして自己の保有する株式の価値が増加することになるので、その増加部分について受贈益の認識が必要であるか否かが問題となり得る。この点、資産価値の増加部分については、資産の譲渡時に譲渡益として課税される現行法の仕組みでは、株式を実際に譲渡するまでは、益金としての認識をする必要はないものと解される。 (3) 自己株式の取得 会社が自己株式を取得するに当たり、その買取価格が株式の時価を著しく上回る場合(高額取得)には、株主が経済的利益を得ることになるが、その会社にとっては資本等取引になるので、(1)と同様、損益は発生せず、寄附金の問題は生じない(もっとも、株主間の寄附金とみなされる可能性はある)。他方、株主にとっては損益取引であり、みなし配当となる部分を除き、譲渡損益(通常は譲渡益)を認識することになる。 逆に、その買取価格が株式の時価を著しく下回る場合(低額取得)には、株式を売却した株主としては低額譲渡をしたことになるので、時価との差額について寄附金税制が適用されることになる。他方、会社にとっては資本等取引になることから、(2)と同様、損益は発生せず、受贈益の認識をすることもない。 以上の(1)ないし(3)の課税関係を整理すると、次のようになる。 (4) 現物配当 会社が現金の代わりに現物資産で配当をする場合、その資産の含み損益に相当する部分については、譲渡損益が計上され、時価での配当がなされたものとして取り扱われることになる。 したがって、会社としては、損益取引と資本等取引が混合した形になるが、株主との関係では配当という資本等取引にほかならず、損益は発生せず、寄附金の問題は生じない。株主としても、資産の簿価ではなく時価で配当がなされたものとして、益金に計上することになる。 (5) DES(デット・エクイティ・スワップ) DESによって取得する株式の取得価額については、通常の場合、債権の券面額ではなく債権の評価額(時価)と解されていることから、債権者が出資した債権の評価額が券面額を下回るとすれば、その差額について寄附金となるとも考えられる。 しかしながら、債務整理手続の一環としてDESが活用される場合など、債権発生後に券面額としての価値が失われ、DESによってその損失が現実化したと認められる場合には、その損失は債権者の支配の及ばない外的要因によって生じたものであることから、貸倒損失として寄附金には該当しない(【第2回】4参照)。 他方、債権の現物出資を受けた法人としては、額面額で債務が消滅することになるので、出資を受けた債権の評価額との差額を債務免除益として益金に計上することになる。なお、民事再生等の債務整理手続におけるDESについては、期限切れ欠損金の損金算入など、債務免除益の取扱いについて一定の緩和措置が規定されている(法法59)。 8 おわりに 以上5回にわたって、寄附金税制に係る主要な論点について整理してきた。 課税庁においては、少しでも不合理(無償又は低廉)にみえる取引について、すぐに寄附金の問題を持ち出す傾向にあるといえる。 しかしながら、実際には、一見不合理(無償又は低廉)にみえたとしても、子細に取引全体をみれば、相当な対価性があり、寄附金に該当しないと考えられる場合が実に多いことがわかる。また、対価性のない取引であったとしても、営業費用として損金算入が認められる場合、貸倒損失等として損金算入が認められる場合があるので、その点も十分に検討する必要がある。 このように、寄附金該当性をめぐっては、多角的な観点からの検討を要するが、本稿がその検討の際の一助となれば幸いである。 (《寄附金》編 終了)
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税務判例を読むための税法の学び方【9】 〔第4章〕条文を読むためのコツ(その2)
税務判例を読むための税法の学び方【9】 〔第4章〕条文を読むためのコツ (その2) 自由が丘産能短期大学専任講師 税理士 長島 弘 (前回はこちら) 4 主文の主要素を見極める方法 この主文の主要素を見極める方法としては、以下のような方法がある。 では、所得税法第10条を用いて、これらのいくつかを見ていこう。その前に、まず所得税法第10条(見出しは「障害者等の少額預金の利子所得等の非課税」となっている)の全文は以下のとおりである。 前回に書いたように、まず括弧を外してみよう。また、漢数字は算用数字に置き換えた方が分かりやすくなるので、ここで置き換える。すると次のようになる。 ① 同一用語の併置に着目して整理する まずはこれらの中で、同一用語の併置に着目して整理する方法について見ていこう。 この条文の冒頭に「国内に住所を有する個人で、身体障害者福祉法第15条第4項の規定により身体障害者手帳の交付を受けている者、国民年金法第37条の2第1項に規定する遺族基礎年金を受けることができる妻である者、同法第49条第1項に規定する寡婦年金を受けることができる同項に規定する妻である者その他これらの者に準ずる者として政令で定めるものが、」とある。この中には、「妻である者」という語が併置されている。 そこで、この2つの「妻である者」の修飾語を含めて並列関係であることが分かる。ただしその直前に「身体障害者福祉法第15条第4項の規定により身体障害者手帳の交付を受けている者」があり、また続く「その他これらの者に準ずる者として政令で定めるもの」が内容的に前2者に並列していることから、下記のような4者が並列していることが分かる。なお「妻である者」は2つの選択肢にしかないが、「者」は4つの選択肢に含まれおり、この点からも4つが並列していることが分かる。 すなわちこの場合は、「妻である者」を手掛かりとして、4つの「者」が併置されていることが分かるのである。 なお、4番目の選択肢「その他これらの者に準ずる者として政令で定めるもの」は、「者」を含む「もの」であるが、「者」と「もの」の違いについては、後で述べる。 また、詳細は後述するが、このように「A、Bその他C」とは、ABCの3つが並列的に示されている場合とされており(この場合は「A、B、Cその他D」で4つが並列的に示されている)、この点からも、この部分はこの4者が並列していることが分かる。 ② 並列的内容の事項の併置に着目して整理する 次に、並列的内容の事項の併置に着目して整理していこう。 上記①に続く部分は、「金融機関その他の預貯金の受入れ若しくは信託の引受けをする者、金融商品取引業者又は登録金融機関で政令で定めるものの営業所、事務所その他これらに準ずるものにおいて預貯金、合同運用信託、公募公社債等運用投資信託又は有価証券の預入、信託又は購入をする場合において、政令で定めるところにより、その預入等の際その預貯金、合同運用信託、特定公募公社債等運用投資信託又は有価証券につきこの項の規定の適用を受けようとする旨、その者の氏名、生年月日及び住所並びに障害者等に該当する旨その他必要な事項を記載した書類を提出したとき」とある。 この中で、並列的内容の事項に着目して整理すれば次のようになる。 「*1」は、「その他の」となっているため、金融機関は「預貯金の受入れ若しくは信託の引受けをする者」の例示となる。詳細は後述するが、「A、Bその他C」と異なり「A、Bその他のC」の場合は、ABはCの例示とされ、内容的にCに含まれる。 なお、さらに「*1」の箇所は「又は」と「若しくは」の関係、「*2」の箇所は「及び」と「並びに」の関係をおさえておかなければ分からない点であるが、この点は次回以降説明する。 (了)
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〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載17〕 会社分割によりデリバティブ契約を移転する場合の税務処理
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載17〕 会社分割により デリバティブ契約を移転する場合の 税務処理 公認会計士・税理士 有田 賢臣 1 一般的なデリバティブ契約の税務処理 平成12年度税制改正前の制度においては、デリバティブ契約は、その決済が行われるまで損益を認識しないものとされていたが、これを利用した租税回避が問題とされていた。 そこで、平成12年度税制改正により、企業会計にてデリバティブ契約が時価評価されることになったことに併せて、法人税においても、デリバティブ契約を時価評価して、その評価損益を毎期の所得に反映させることとなった。 具体的には、内国法人が締結したデリバティブ契約のうち、事業年度終了の時に未決済のものについては、決済したものとみなし、それによって算出される利益の額又は損失の額(=みなし決済損益額)を益金の額又は損金の額に算入する(法法61の5①)。 当期の益金の額又は損金の額に算入したみなし決済損益額は、翌期において損金の額又は益金の額に算入することにより戻入処理が行われる(法令120①)。 戻入処理の時期について、条文上は明記されていないが、以下で説明するように適格組織再編時(期中)にもみなし決済損益の計上が行われることから、みなし決済損益が計上された直後に戻入処理が行われると考えざるを得ない。つまり、事業年度末でみなし決済損益を計上する通常の場合においては、戻入処理は期首に行われる。 なお、繰延ヘッジ処理を適用している場合には、そのヘッジが有効である限り、デリバティブ契約のみなし決済損益額は、各期の益金の額又は損金の額に算入しないこととなる。 2 適格分割でデリバティブ契約を移転する場合の税務上の取扱い (1) 分割法人 移転するデリバティブ契約に係る適格分割の日の前日におけるみなし決済損益の額は、分割法人の分割事業年度において益金の額又は損金の額に算入される(法法61の5②)。 適格組織再編では、組織再編時に損益は計上されないものと認識されているが、デリバティブ契約を移転する場合には損益が計上されるので注意が必要である。 また、当該みなし決済損益の額は、分割承継法人の分割事業年度において戻入処理が行われるため、分割法人の分割事業年度の翌事業年度では戻入処理が行われない。 (2) 分割承継法人 分割法人の分割事業年度に計上されたみなし決済損益の額について、分割承継法人の分割事業年度において戻入処理が行われる(法令120②)。 以下の設例を用いて、会社分割時の税務上の仕訳を説明する。 〈税務上の仕訳〉 ① 分割法人(P社) まず、移転するデリバティブ契約について、みなし決済損益額を認識する。 次に、みなし決済損益額の認識によって計上されたデリバティブ資産についても、他の移転資産・負債と同様に移転の処理を行う(法法62の3①)。 適格分社型分割により交付を受けた分割承継法人(S社)の株式の取得価額は、当該適格分社型分割の直前の移転資産の帳簿価額から移転負債の帳簿価額を減算した金額となる(法令119①七)。この「移転資産の帳簿価額」には、移転するデリバティブ契約の価値も含まれる。 ② 分割承継法人(S社) 適格分社型分割により移転を受けた資産・負債の取得価額は、当該適格分社型分割の直前の分割法人における帳簿価額となる(法令123の4)。 資本金等の額については、分割法人の当該適格分社型分割の直前の移転資産の帳簿価額から移転負債の帳簿価額を減算した金額だけ増加する(法令8①七)。この「移転資産の帳簿価額」には、移転を受けたデリバティブ契約の価値も含まれる。 分割法人にて益金の額に算入したみなし決済損益額は、分割承継法人にて損金の額に算入することにより戻入処理が行われる。この戻入処理は、移転資産・負債の受入仕訳を計上するのと同時に行われる。 なお、上記の仕訳では、移転するデリバティブの価値を便宜的に「デリバティブ資産」と表現しているが、法人税法上、デリバティブ契約について個別の資産・負債を認識する規定はない点に注意が必要である。 3 非適格分割でデリバティブ契約を移転する場合の税務上の取扱い 分社型分割により完全子会社を新設する場合には、適格要件を満たすことが多いと思われるが、会社分割後に分割承継法人の株式を譲渡することが予定されているような場合には、非適格分割となる。 (1) 分割法人 移転するデリバティブ契約についても他の移転資産・負債と同様に、時価で譲渡したものとして、移転する事業の譲渡損益を分割法人の分割事業年度に計上する(法法62①)。 (2) 分割承継法人 時価でデリバティブ契約の移転を受けるが(法法62①)、デリバティブ契約は資産・負債としては計上されない。期末の時価評価と戻入処理の「手法」としてデリバティブ資産・負債を認識することはあっても、期中の取引によりデリバティブ契約の移転を受けた場合にまでデリバティブ資産・負債を計上することは想定されていない。 この点は、デリバティブ資産・負債が税務上の引当金に類似していると整理すれば理解できる。例えば、貸倒引当金は適格組織再編では引き継がれるが、非適格組織再編では引き継がれない。デリバティブ資産・負債も貸倒引当金と同様に、非適格組織再編では引き継がれないのである。 仮に、デリバティブ契約を個々の資産・負債として計上した場合、非適格組織再編に伴うデリバティブ資産・負債の計上に対応した戻入処理規定が用意されていないことから、デリバティブ契約の評価損益が通期で通算してもゼロにならなくなってしまう。 このことからも、デリバティブ税制は、非適格組織再編に伴うデリバティブ資産・負債の計上を想定して作られたものではないといえる。 先ほどの設例を用いて、税務上の仕訳を説明する。 〈税務上の仕訳〉 ① 分割法人(P社) 適格分割と異なり、みなし決済損益額の認識は行わない。時価評価が適正に行われるとすれば、交付される分割承継法人株式の時価には、移転するデリバティブ契約の時価が反映されているため、デリバティブ契約の評価損益は譲渡損益として認識される。 ② 分割承継法人(S社) 非適格分社型分割により移転を受けた資産・負債の取得価額は、当該非適格分社型分割時の時価となる。一方、移転を受けるデリバティブ契約については資産・負債として計上されることはなく、分割時においてはオフバランスとなる。 資本金等の額については、分割法人に交付した分割承継法人株式の当該非適格分社型分割時の時価だけ増加する(法令8①七)。時価評価が適正に行われるとすれば、分割法人に交付した分割承継法人の株価には、移転を受けるデリバティブ契約の分割時の時価が反映されている。 結果として、移転を受けるデリバティブ契約の含み損益相当額について借方差額又は貸方差額が生じる。借方差額となる場合は資産調整勘定で処理され、貸方差額となる場合は差額負債調整勘定で処理される(法法62の8)。 以上の処理により、移転を受けるデリバティブ契約の評価損益は、適格分割であれば、戻入処理により即時に益金の額又は損金の額となるが、非適格分割であれば、資産調整勘定又は差額負債調整勘定を通して60ヶ月で益金の額又は損金の額となる。 なお、分割事業年度期末におけるみなし決済損益の計上額及び翌事業年度の戻入処理額は、適格・非適格にかかわらず同額となる。 (了)
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経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第4回】退職給付会計①「退職一時金制度」─退職給付費用の計上及び退職金の支払い
経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第4回】 退職給付会計① 「退職一時金制度」 ─退職給付費用の計上及び退職金の支払い 仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋 〈事例による解説〉 退職給付債務の計算を依頼している受託機関からの報告によると、期首の退職給付債務は5,000で、当期に発生する勤務費用は500です。 当社で計算した利息費用は100で、利息費用の計算に用いた割引率は2%です。また、従業員に退職金を200支払っています。 当社の退職金制度は、非積立型の退職一時金制度であるため、年金資産はありません。 なお、税効果会計は適用していません。 〈会計処理〉 1 退職給付費用の計上 2 退職金の支払い 〈会計処理の解説〉 1 退職給付費用の計上 退職給付費用は、会社が従業員へ支払うべき退職金等のうち、当期に発生した金額を計上することになります。したがって、退職金等を支払ったとき(現金主義)ではなく、発生主義に基づいて費用計上を行います。 基本的には、退職給付費用は、以下の「①+②-③」の合計により計算されます(退職給付に係る会計基準三)。 本事例では、勤務費用は500です。また、利息費用は期首の退職給付債務5,000×割引率2%=100です。さらに、非積立型の退職一時金制度のため、年金資産はないことから、期待運用収益はゼロです。そのため、退職給付費用は600となります。 なお、年金資産がある場合、期待運用収益相当額は「期首の年金資産×期待運用収益率」により計算されます。 また、退職給付費用の相手の勘定科目は、「退職給付引当金」となります(退職給付に係る会計基準四)。 2 退職金の支払い 退職金を従業員に支払った場合、退職給付債務が減少します。そのため、「退職給付引当金」を取り崩します。 (了)