〔業種別Q&A〕 労使間トラブル事例と会社対応 【第16回】 「フリーランサーに対するハラスメント防止義務」 〈情報通信業・IT〔Q5〕〉 弁護士法人 ロア・ユナイテッド法律事務所 パートナー弁護士 木原 康雄 【Q】 フリーランスのITエンジニアと業務委託契約を締結し、社内のエンジニア等と協働して作業してもらう場合があります。フリーランスに対しても、ハラスメントを防止する義務を負うのでしょうか。 【A】 フリーランスのITエンジニアとの業務委託契約にもフリーランス法が適用され、発注事業者は、セクハラ、マタハラ、パワハラ対策に係る体制を整備し、これらを防止する義務があります。 ▲ ▼ ▲ 解 説 ▲ ▼ ▲ 1 フリーランス法の適用 近年、フリーランスという働き方が、多様な働き方の一環として社会的に定着してきた。ただ、フリーランスは個人であり、組織である発注事業者と比べて立場や交渉力が弱く、不適正な取引を強いられたり、ハラスメントを受けたりといったトラブルも生じている。そこで、フリーランスとの間の取引の適正化、及び、フリーランスの就業環境の整備を目的として、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下、「フリーランス法」という)が制定された(令和6年11月1日施行)。 フリーランス法の適用対象に業種・業界の限定はなく、発注事業者からフリーランスに委託するすべての業務が対象となる。したがって、ITエンジニアに対し、プログラム等の情報成果物の作成や役務の提供を委託する業務委託契約も、同法の適用対象となる。 2 ハラスメント対策に係る体制整備義務 上記目的を前提に、フリーランス法14条1項は、フリーランスに対する言動がセクハラ、マタハラ及びパワハラに至ることのないよう、発注事業者はフリーランスからの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならないと規定している。 なお、報酬の支払期日までに報酬を支払わないというハラスメント、フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに報酬の額を減ずるというハラスメントは、同法4条(期日における報酬支払義務)や5条(禁止行為)にも抵触し得る。 整備すべき体制の内容としては、①ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化、方針の周知・啓発、②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対処するために必要な体制の整備、③ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応、④これらと併せて講ずべき措置(相談者・行為者等のプライバシー保護措置とその周知、相談や事実確認への協力、労働局への申出等を理由とする不利益取扱いの禁止とその周知)が挙げられる(令6・5・31厚労告212号「特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針」)。 これらは基本的に、セクハラ等の防止措置義務と同じ内容であるが、フリーランスは社外の者であるため、②については、業務委託契約書やメール、フリーランスが定期的に閲覧するイントラネット等に相談窓口の案内を記載するといった配慮が必要となる。 なお、従業員向けの相談窓口を、フリーランスも利用できるようにすることも可能である。 3 違反行為への対応 上記体制整備義務を前提に、フリーランス法は、フリーランスによる相談や事実確認への協力、労働局への申出を理由とした、業務委託契約の解除その他の不利益取扱いを禁止している(14条2項、17条3項・6条3項)。 また、労働局は、指導助言のほか(22条)、発注事業者が上記禁止及び前記2の体制整備義務に違反していると認めた場合、発注事業者に対し、勧告、命令、公表を行うことができるものとされている(18条~20条)。 4 カスハラについて 令和8年10月1日施行の改正労働施策総合推進法では、カスタマーハラスメント(カスハラ)防止措置が義務化されている。 この義務は、現時点では、事業主が雇用する労働者に対するカスハラが前提とされている。しかし、労働施策総合推進法等の一部を改正する法律の附則8条の2は、「政府は、フリーランスが受けた業務委託に係る業務において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該業務に関係を有する者の言動であって、業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものによりフリーランスの就業環境が害されることのないようにするための施策について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる」としている。 したがって将来的には、フリーランスに対するカスハラについても、防止措置の義務化が考えられる。 (了)
-連載開始にあたって- 2026年1月に施行された改正下請法(取適法)は、対象となる事業者の適用範囲を拡大するとともに、親事業者(委託事業者)による禁止行為も拡充するなどして、実務への影響は小さくない。施行に伴いすでにしっかりと対応を行っている事業者もいる一方で、改正事項に対する具体的な実務対応のイメージが定まらず、十分な対応ができていない事業者もいると思われる。 そこで本連載では、事業者が注意しておきたい改正事項を具体事例に当てはめ、Q&A形式にて改正内容及び実務対応のポイントを数回にわたって解説する。 なお、まず改正の全体像を把握したいということであれば、下記の過去の拙稿もご覧いただきたい。 * * * ▼ ▼ ▼ 解説 ▼ ▼ ▼ 1 従業員基準の追加 改正前の下請法の適用の有無は、①取引事業者の規模の要件(資本金基準)と、②委託取引内容の要件(委託取引基準)という2つの要件から判断されてきたが、取適法においては、①の規模の要件として、従来の資本金基準に加え、新たに従業員基準が追加されることとなった。具体的には、資本金基準を満たさない場合であっても、常時使用する従業員の数が300人を超える事業者が、常時使用する従業員の数が300人以下の事業者に対して製造委託等をする場合(役務提供委託等では100人が基準)には、取適法の適用対象となる。 「常時使用する従業員」には、正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイト、1ヶ月を超えて引き続き使用される日雇い労働者などが含まれ(テキスト26頁)、「常時使用する従業員の数」は、当該事業者の賃金台帳の調整対象となる対象労働者の数によって算定される(運用基準「第2、2、(2)」)。 また、従業員数は、「製造委託等をした時点」を基準として判断される。そのため、継続的な取引について取引基本契約を締結している場合であっても、取引基本契約の締結時ではなく、個々の個別契約の発注時を基準として都度判断される(パブコメ40)。製造委託等の発注から委託業務の完了までに一定の期間を要する場合、発注時において従業員基準を満たしていれば、委託業務の完了までの間に従業員数が変動し、従業員基準を満たさなくなった場合であっても、当該製造委託等に係る取引については、取適法が適用される(テキスト27頁)。 2 委託先の従業員数の確認方法 取適法は、委託事業者(発注者)に対して、委託先の従業員数を確認する法的な義務まで課しているわけではない(テキスト27頁)。したがって、発注者は、委託先に賃金台帳を開示させてこれを確認することまで求められているわけではないが、取適法違反のリスクを回避するためには、委託先の従業員数を把握しておく必要がある。 もっとも、資本金の額であれば会社の登記簿謄本によって客観的に確認することができるが、従業員数は一般的に公表されるものではなく、常時変動する可能性もあることから、いかにして委託先の従業員数を把握するかは実務上悩ましい問題となる。 上述のとおり、従業員数は発注時を基準として判断されることから、望ましい対応としては、発注の都度、委託先の従業員数を確認するプロセスを組み込むことが有益である(あるいは、従業員数の算定の基礎となる賃金台帳は毎月編成されることから、1ヶ月に1回の頻度で委託先に対して従業員数を確認することが望ましい)。 例えば、委託先から提出してもらう見積書の備考欄に「従業員数100人以下」「従業員数100人超300人以下」「従業員数300人超」といったチェックボックスを設けて確認する方法などが考えられる(テキスト28頁)。なお、確認方法は、書面や電子メールなど記録に残る方法が推奨されている(テキスト28頁)。 委託先の数が多数に上るなど、すべての委託先との間で発注の都度従業員数の確認を行うことが事実上困難である(事務的な負担が大きい)ような場合には、確認の頻度を減らし(例えば1年に1回)、閾値をまたぐ可能性が高い委託先(従業員数が300人前後の委託先)についてのみ確認の頻度を増やすなど、リスクの軽重に応じた対応も実務上は検討に値するものと思われる。 (了)
〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例115】 株式会社桜井製作所 「当社株式の上場廃止の決定及び整理銘柄の指定に関するお知らせ」 (2026.4.15) 公認会計士/開志創造大学大学院事業創造研究科教授 鈴木 広樹 1 今回の適時開示 今回取り上げる開示は、株式会社桜井製作所(以下「桜井製作所」という)が2026年4月15日に開示した「当社株式の上場廃止の決定及び整理銘柄の指定に関するお知らせ」である。主文の記載は次のとおりであり、東京証券取引所(以下「東証」という)における上場廃止が決まったという内容である。 「上場廃止及び整理銘柄指定について」の中の「理由の詳細」の記載は次のとおりであり、上場維持基準に適合しなかったため、上場廃止になるとされている。 東証の市場区分が2022年4月4日にプライム市場・スタンダード市場・グロース市場へ移行し、上場維持基準も新たなものになったが、移行基準日(2021年6月30日)に新市場区分の上場維持基準に適合していない場合、「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」を開示することにより、当分の間、本来の上場維持基準よりも緩和された上場維持基準の適用を受けることができた(本連載【事例69参照】)。しかし、そうした経過措置終了までに、桜井製作所は、結局、本来の上場維持基準に適合せず、上場廃止が決まったのである。 2 流通株式時価総額基準に不適合 桜井製作所は、上場維持基準のうち流通株式時価総額基準に適合しなかったため、上場廃止が決まった(2026年3月31日開示「当社株式の監理銘柄(確認中)指定に関するお知らせ」)。同社はスタンダード市場に上場しているが、スタンダード市場における上場維持基準のうち流通株式時価総額基準は10億円であるのに対して、同社の2025年3月末時点の流通株式時価総額は7.9億円だった。 同社が2021年12月27日に開示した「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」の中の「上場維持基準の適合に向けた取組の基本方針、課題及び取組内容」の記載は、次のとおりである。業績を回復させ、株価を高めることによって、流通株式時価総額基準に適合する計画であるとしていた。 3 なぜ不適合に? 「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」によると、2021年3月末時点の桜井製作所の流通株式時価総額は9億円だった。しかし、上述のとおり、2025年3月末時点の流通株式時価総額はさらに低下し、7.9億円となっていた。業績がさらに悪化し、株価もさらに低下したのだろうか。 実は、同社の業績は、波があるものの、回復傾向にあり、2021年3月期の連結の売上高が3,414百万円、最終利益が△372百万円(2021年5月13日開示「2021年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)」)であったのに対して、2025年3月期の連結の売上高は4,964百万円、最終利益は211百万円だった(2025年5月14日開示「2025年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)」)。株価もさらに低下しているというわけではない。 同社の流通株式時価総額低下の主たる原因は、株価の低下ではなく、流通株式数の減少である。「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」によると、2021年3月末時点の同社の流通株式数は17,926単位(1単位は100株)で、流通株式比率は44.8%だった。しかし、同社が2025年6月26日に開示した「上場維持基準の適合に向けた計画に基づく進捗状況(改善期間入り)及び計画書の更新(計画期間の変更)について」によると、2025年3月末時点の流通株式数は14,642単位に減少し、流通株式比率も36.6%に低下していた。 このように同社の流通株式数が減少したのは、この間、同社が自己株式を取得し続けたからである(開示の数がとても多いため、具体的な開示事例には触れない)。自己株式取得による株価上昇を狙ったと考えられなくもないが、流通株式時価総額を高めるためには、株価上昇を相殺するほど流通株式数を減らしているため、むしろ逆効果であったといえる。 4 本当に上場を維持したかったのか? 桜井製作所は、上述のとおり「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」では、業績を回復させ、株価を高めることによって、流通株式時価総額基準に適合する計画であるとしていた。「上場維持基準の適合に向けた計画に基づく進捗状況(改善期間入り)及び計画書の更新(計画期間の変更)について」においても同様に、「上場維持基準に適合していない項目のこれまでの状況を踏まえた今後の課題と取組内容」に次のように記載し、業績を回復させ、株価を高めることによって、流通株式時価総額基準に適合する計画であるとしていた。 しかし、同社は、本当に流通株式時価総額基準に適合し、上場を維持したかったのだろうか。自己株式を取得し続け、流通株式数を減らしているところを見ると、むしろ上場廃止を望んでいたかのように見える。本当は上場廃止を望んでいるのに、上場を維持しようとしているかのような開示を行っていたのならば、それは虚偽開示である。今回の開示の主文の中の「このような決定を受ける事態となりましたことを、株主及び投資家の皆様をはじめ、取引先及び関係者の皆様に深くお詫び申し上げます。」も、本心に基づくものなのだろうか。 なお、桜井製作所と同じ2026年4月15日にネポン株式会社(以下「ネポン」という)と株式会社光陽社(以下「光陽社」という)も上場廃止が決まっている(ネポンは2026年4月15日に「東京証券取引所における当社株式の上場廃止の決定及び整理銘柄の指定に関するお知らせ」を、光陽社も2026年4月15日に「東京証券取引所における当社株式の上場廃止の決定及び整理銘柄の指定に関するお知らせ」を開示)。 しかし、両社とも東証は上場廃止になるが、ネポンは福岡証券取引所にも(2025年9月2日開示「福岡証券取引所本則市場への上場(重複上場)のお知らせ」)、光陽社は名古屋証券取引所にも上場しており(2025年5月30日開示「名古屋証券取引所メイン市場への重複上場承認に関するお知らせ」)、それらの市場で引き続き取引が可能である。東証での上場を維持できない場合に備えて、他市場に上場していたのだと思われる。桜井製作所は、そうした対策を行っていなかっただけでなく(他市場上場以外にも、他社による買収や、MBO(経営陣による買収)、他の上場会社による合併や株式交換などの対策が考えられたはずだが)、自己株式を取得して流通株式数を減少させ、自ら流通株式時価総額を低下させていたのである。 (了)
〈執筆:編集X〉 書く論 第5回 「なぜ枝葉がとれない」 法律の話は、とても細かく、奥が深い。実務家の方なら皆さん知っておられることです。 そして、その法律に関する書籍(原稿)を書くという場合、どこまで解説するかが大きな問題になります。 以前この連載の【第2回】では、具体的な読者の方を想定すれば、その線引きが明確になるとお伝えしました。 今回はこのお話をもう少し掘り下げてみましょう。 もし具体的な読者の方が想定でき、そのレベル感を把握できたとしても、やっぱり指(筆)が動かない(動きが鈍ってしまう)ケースがあります。 大変恐縮ながら、それはその著者の方が、これから書こうとする内容に関し、実は精通していないおそれがあります。 若い編集者や若い著者の方が、「従前の実務書は分かりづらい!」と声を上げ、何らかのテーマについて、基本的な内容のみ、一般の方に広く、分かりやすく解説する本を世に出したいというご意見をよく見聞します。 その後、「この人に届けたい」という具体的な読者の方を想定できたとしても、結局、詳しく書きすぎてしまい、想定読者の心に響かないものになることが意外と多いのです。 冒頭申し上げた通り、法律の話、税法の話は、細かく深く、一般の方向けに分かりやすく解説しようとすればするほど、法律上の正確な表現から乖離し、さらに、法律全体のうち解説できない部分が増えます。 そしてそれは、読者に誤った解釈を与えるリスクが増えるという見方もできます。 勢いよく船出した(企画した)若い編集者や若い著者の方は、ある時このようなリスクに気づき、 「この表記は正確ではない」 「この部分が載っていない」 読者からそういう指摘を受けるのではないかと、不安になります。 このような不安から、本来であれば想定読者が知る必要のない部分まで解説してしまい、「説明が不足しているのでは」と補足として大量の注書きを載せ、税法では頻出の「等」を必要のない箇所にまで付けてしまう(※)。さらに税務図書の場合、サービス精神から(または出版社側の要請で)細かい税制改正事項を注書き等で各所に書き加えることで、いたずらに書籍全体のレベルを上げてしまう。 (※) 税法上の「等」や括弧書きは、削除すると語彙の意味ごと変えてしまうものもあるので、慎重に判断する必要があります。 編集者側にその不安を解消できるような(もろもろ決断できるような)知見があればよいのですが、実際のところ手練れの編集者でなければなかなか難しい。 結果として情報過多、ページ数過多、価格過多、様々な面から、想定していた読者に届かない書籍が出来上がってしまうのです。 「この読者層には、このような表記で、ここまで伝えれば大丈夫。」 そういう確たる自信があれば、このような揺らぎは起こらないのですが、先ほどお伝えした通り、『これから書こうとする内容に真の意味で精通していない』と、そのテーマの根幹をつかんでいない(枝葉がどこか分からない)ことから、自信が揺らぎがちなのです。 もしそのような状況に陥っているとお感じになられたら、一度、書こうとするテーマをより深く理解することに取り組まれると、判断が容易になるかもしれません。 編集Xも過去、同じような苦い経験をしてきて、 『基本的な内容ほど、「どれだけ書かないか」という判断が各所で試されるので、書くのが難しい』 という認識を持っています(高度な専門書であれば、情報を漏れなく整備することだけに集中できるので(もちろん後述のような工夫は必要)、意外と迷わないのです)。 編集Xが尊敬する先生は、執筆される著作ごとに明確な読者レベルを設定し、揺るぎなく「この読者層には、このような表記で、ここまで伝えれば大丈夫」を長年決断されています。「枝葉末節は書かない」そのスタンスは、現在もぶれることがありません。「決断する勇気は確かな経験と知識に裏打ちされたものである」と、勉強させていただきました。 ちなみに、若い編集者や若い著者の方が、基本的かつ分かりやすい書籍が作れないというわけではありません。このようなハードルをしっかり越え、感性を存分に発揮し、成果を上げているものもたくさんあります。 最後に、『分かりやすい』=『基本的な内容』とは限らないという点についてお伝えしておきます。 高度な専門書であっても、そのレベル感の想定読者にとって理解しやすいものであれば、それは「分かりやすい本」といえます。それには、目次の構成や解説の順序、見出しの付け方、図表の工夫と配置、本文と図表の連動性、事例の追加、文字の大きさ、書体、色、様々な要素を工夫することで、目標に近づくことができます(言わずもがな、編集者の領域(責任)も大きいです)。 もちろんその場合であっても、『これから書こうとする内容に真の意味で精通していない』と実現が難しい(法律の条文をそのまま文章にする傾向があります)。 文字のしっかり詰まった、相当なページ数の高度な専門書でも、明確な決断と工夫を凝らした書籍は、『分かりやすい本』(いわば名著)として、読者の方にしっかり手に取っていただけるのです。 (注)この連載に書かれている内容は筆者の私見であり、所属する組織とは一切関係ありません<(_ _)> (つづく)
《速報解説》 会計士協会が「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」の改正に関する公開草案を公表 ~会員からの相談に対応し、報酬依存度算定に関する設問を新設~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2026年5月22日、日本公認会計士協会は、「倫理規則実務ガイダンス第1号「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」の改正に関する公開草案(報酬依存度及び支配関係)」を公表し、意見募集を行っている。 これは、報酬依存度に関する会員からの相談が多く寄せられていることに対応するものである。 意見募集期間は2026年6月22日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 倫理規則では、社会的影響度の高い事業体(Public Interest Entity: PIE)の監査において2年連続で報酬依存度が15%を超える場合の開示、5年連続で報酬依存度が15%を超える場合の辞任規定などが規定されている。 報酬依存度に関する会員からの相談が多く寄せられていることに対応して、次のQ&Aの見直し・新設を行う。 (了)
2026年5月21日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.669を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
日本の企業税制 【第151回】 「カリフォルニア州の税制改正に対する懸念」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 魚住 康博 国際課税を巡って昨年、アメリカで報復措置としての899条が議論になったことはまだ記憶に新しい。2025年6月28日にG7がグローバル・ミニマム課税に関する共同声明を公表したことで、米国連邦議会に提出された税制改正法案であるOne Big Beautiful Bill Act(OBBBA)に当初盛り込まれた報復措置が撤回された。 最終的には、147ヶ国・地域で構成されるOECD/G20のBEPS包摂的枠組み(Inclusive Framework)が、今年1月5日、「共存システム(side-by-side system)」を含むデジタル化・グローバル化した経済環境におけるグローバル・ミニマム課税制度の協調的運用に向けた道筋を示すパッケージに包括的に合意したことを公表した。これにより、報復措置の再燃懸念は払拭され、日本や欧州をはじめとするアメリカでビジネスを展開する多国籍企業にとっての予見可能性が確保されたと考えられる。 ところが、最近、カリフォルニア州における税制改正を巡る新たな問題の発生が懸念されている。すでに現地においては、同州の経済界や各国政府を巻き込んだ対応が展開されているほか、ワシントンDCに拠点を置く経済団体も動き出す事態へと発展している。 〇税制改正法案「AB-1790」 具体的には、カリフォルニア州議会に提出された税制改正法案「AB-1790 Corporations Tax Law: water's-edge election: global intangible low-taxed income」が、4月27日の州議会下院歳入税制委員会で可決されたことから、法案の成立可能性が高まっていることが背景にある。 当該法案は、今年2月10日に民主党のDamon Connolly州下院議員らの連名で州議会に提出され、「water's-edge election(水際選択方式)」を段階的に廃止し、2028年以降、カリフォルニア州で事業を行う多国籍企業に対し、全世界の連結報告(合算申告方式)の採用を義務付けるものである。 現行制度においては、企業の選択により、カリフォルニア州の州境(water's-edge)の外側にあると指定した収益に対する課税を回避することで抜け穴が生じており、その額は毎年約30億ドルに及ぶとの指摘が出ていた。州財政における財源確保策としての見方もあることから、上記歳入税制委員会の採決では、民主党議員4名の賛成、共和党議員2名の反対、民主党議員1名の棄権という結果となっている。 賛成派からは、州財政の逼迫状況や抜け穴をふさぐ目的などから税法改正を支持する意見が強い。一方、反対派は、既に多国籍企業は高額の税金を支払っていること、本法案が成立すれば企業は二重課税が生じるなど増税に加えて新たな仕組みに適合するためのコストも生じること、他国政府からの報復措置の導入も考えられること、州の歳入不足は企業だけでなく広く負担すべきであることなどを指摘している。 〇幅広い懸念の声 欧州においても問題の発生を懸念する声が出ている。報道によると、4月下旬開催の欧州理事会税務問題ハイレベル作業部会の会合において本件が議論されており、欧州委員会は、同法案が一方的な第1の柱のアプローチと同様に機能し、二重課税のリスクを生じさせる可能性があるほか、第1の柱に関連する税収がシリコンバレーに流れ込む可能性もあると述べたとされている。 また、アメリカで事業展開する多国籍企業の声を代表する経済団体であるGlobal Business Allianceは、カリフォルニア州下院歳入税制委員会のMike Gipson委員長宛に、同法案の成立によって生じる問題を伝える書簡を送付している。 当該法案の目的は国外への所得流出に対処することにあるものの、実際には、世界中に拠点を置き、カリフォルニア州に投資している多国籍企業に対して、不当な二重課税を課すような域外課税制度を導入してしまうことを問題視している。また、過去に、真の水際選択方式制度を導入せずに全世界合算報告の義務化を図ろうとした州に対し、外国政府が報復措置を講じてきたとも警告している。加えて、カナダ、ドイツ、アイスランド、アイルランド、日本、韓国、ウクライナ、イギリスの各国政府も連名で懸念を伝える書簡を送付している。 カリフォルニア州の地元では、California Chamber of Commerceをはじめ同州で活動する28の商工会議所が、当該法案に対して明確に反対の意思を表明している。歳入の変動可能性や経済的損害、貿易相手国との関係悪化、報復リスクや合憲性に関する訴訟リスク、国際的に異質な事業環境による競争上の不利益、生活費の高騰、現行制度の適切性といった課題を指摘して州議員の理解を求めている。 ここでは日系企業を代表する北加日本商工会議所(JCCNC:Japanese Chamber of Commerce of Northern California)と南カリフォルニア日系企業協会(JBA:Japan Business Association of Southern California)も同調して対応を進めている。 JCCNCは、日米のビジネス促進と友好関係の発展、アメリカにおける日本企業とその関係者が円滑に機能できるよう支援し、会員間の親睦を深める目的で1950年に結成され、翌1951年にカリフォルニア州法に基づく非営利団体として正式に認可された団体である。日系アメリカ人と日系企業によって設立され、日系人・日本人だけでなく、北カリフォルニアで日本と関係のあるビジネスを行っている企業や団体も会員として参加しており、共同で活動を続けている全米でもユニークな団体である。 JBAは、南カリフォルニアと日本との相互理解を深め、ビジネスと人の交流を促進するために、1960年に設立された非営利の経済団体で、現在、南カリフォルニアで事業を営む日系企業を中心とする会員企業約430社で構成され、事業環境の整備及び改善を図ることを目的としている。 〇今後の展開 今後、5月下旬に開催される下院本会議で審議されるほか、8月頃の会期末までに上院の関係委員会や本会議での審議も想定されることから、これからの展開には注視が必要である。 加えて、最終的に成立しなかったものの、東部のメイン州でも今年1月に同趣旨の税制改正法案が提出されており、今後、他の州でも追随する動きが出てくることも考えられるため、各州の動向も無視できないと考えられる。 (了)
税理士が押さえておきたい「社宅」の税務と周辺知識 第2回 従業員用の借上げ社宅② ~社会保険料・更新料・基本的注意点~ 公認会計士・税理士 桝井康弘 〇社会保険料の負担について (※) 1畳=1.65㎡ 【表1:現物給与価額(1畳当たり・月額)(一部抜粋)】 都道府県名 1人1月当たりの住宅の利益の額 (畳一畳につき)(単位円) 1 北海道 1,110 ... 13 東 京 2,830 ... 27 大 阪 1,780 28 兵 庫 1,580 29 奈 良 1,310 ... (出典) 日本年金機構「令和7年4月から現物給与の価額が改正されます」より一部抜粋 【図:間取り図例】 (出典) 日本年金機構「令和7年4月から現物給与の価額が改正されます」より一部抜粋 (※) 社会保険の現物給与は、給与の締日にかかわらず、その月の末日までの現物給与額を、その月に金銭で支払う給与と合算した額が標準報酬となります。 【表2:厚生年金保険料額表(抜粋)】 (※) 固定的賃金の変動により、変動月から3か月の報酬月額の平均額に基づく標準報酬月額が2等級以上の変動 【随時改定】 〇更新料の会計処理と損金算入時期 〇注意すべきポイント 【その他の注意点】 (次回に続く)
相続税の実務問答 【第119回】 「教育資金贈与の特例に係る贈与者が令和8年4月1日以降に亡くなった場合」 税理士 梶野 研二 [答] 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例は、令和8年3月31日の適用期限をもって終了しましたが、同日以前に贈与を受けた者については、引き続き同特例が適用されます。 あなたが祖父から贈与を受けた教育資金1,000万円のうち、祖父の相続開始時における残額400万円は、あなたが祖父から相続等により取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例 教育資金管理契約(注)を締結する日において30歳未満の者が、平成25年4月1日から令和8年3月31日までの間に、①その直系尊属(父母、祖父母などが該当します)と受託者との間の教育資金管理契約に基づき信託の受益権を取得した場合、②その直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭を教育資金管理契約に基づき国内にある銀行等の営業所等において預金若しくは貯金として預入をした場合又は③教育資金管理契約に基づきその直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭等で金融商品取引業者の営業所等において有価証券を購入した場合には、その信託の受益権、金銭又は金銭等(以下「信託受益権等」といいます)の価額のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、贈与税の課税価格に算入しないこととされていました。この特例が「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例」(以下本稿において「教育資金の非課税特例」といいます)です。ただし、その個人の信託受益権等を取得した日の属する年の前年分の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、この非課税の特例は適用できません(措法70の2の2①)。 (注) 教育資金管理契約とは、受贈者の教育に必要な教育資金を管理することを目的とする契約であって次に掲げるものをいいます。 2 教育資金の非課税特例制度と令和8年度税制改正 教育資金の非課税特例制度は、租税特別措置法第70条の2の2に定められていますが、同条は信託受益権等の取得時における贈与税を非課税とすることのみを定めたものではなく、その後の管理の方法、教育資金管理契約に係る贈与者に相続が開始した場合の課税関係、同契約の終了事由や同契約が終了した場合の課税関係など同制度に係る一連の課税関係等について定めています。 教育資金の非課税特例は、令和8年3月31日までに行われた信託受益権等の取得に対する贈与税に適用されることとなっており、令和8年度税制改正において、この期限は延長されませんでしたので、この特例を同日後の贈与に適用することはできませんが、この特例について定めた租税特別措置法第70条の2の2の規定自体が廃止されたわけではありません。 すなわち、令和8年3月31日までに教育資金の非課税特例に係る贈与者に相続が開始したときの課税関係、教育資金管理契約の終了事由やその場合の課税関係などについては、これまでと同様に扱われることとなります。 3 教育資金の非課税特例に係る贈与者に相続が開始した場合の課税 信託等があった日から教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合には、その贈与者に係る受贈者については、管理残額(原則として、贈与者が死亡した日における非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額)がその贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされて(2名以上の者から贈与により取得した教育資金がある場合には、当該死亡した贈与者の信託受益権等に対応する金額に限られます)、その管理残額は、相続税の課税対象になります(注)(措法70の2の2⑫⑬、措令40の4の3㉑)。〔詳細は、措通70の2の2-9参照〕 (注) 次のいずれかに該当し、かつ、死亡した贈与者から相続又は遺贈により財産を取得したすべての者の相続税の課税価格の合計額が5億円以下の場合には、管理残高は相続税の課税対象とはなりません(令和5年3月31日以前に信託受益権等を取得した場合には、相続税の課税価格の合計額が5億円を超えていても①、②又は③のいずれかに該当すれば、管理残高は相続税の課税対象とはなりません(令和5年改正法附則51②))。 ① 受贈者が23歳未満である場合 ② 受贈者が学校等に在学している場合 ③ 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合 なお、令和3年3月31日以前に信託受益権等を取得した場合には、原則として管理残高は相続税の課税対象とはなりません(令和3年改正法附則75③)。 4 教育資金管理契約の終了と終了時の課税 教育資金管理契約は次の場合に、次に掲げる日に終了しますが、同契約が終了した場合(受贈者が死亡したことにより終了した場合(④の場合)を除きます)において、その教育資金管理契約に係る非課税拠出額から教育資金支出額(上記3により相続又は遺贈により取得したものとみなされた管理残額を含みます)を控除した残額があるときは、その残額をその終了の日において贈与により取得したものとみなして、相続税法その他贈与税に関する法令の規定が適用され、その残額が贈与税の課税対象となります(措法70の2の2⑯⑰、措令40の4の3㉖)。〔詳細は、措通70の2の2-13参照〕 5 ご質問の場合 教育資金の非課税特例を適用することのできる贈与は、令和8年3月31日までの贈与ですが、同特例を定めた租税特別措置法第70条の2の2が廃止されたわけではありませんので、同日以前に贈与を受け、同特例の適用により贈与税が非課税とされた者については、引き続き同特例を定めた同条が適用されることとなります。 一定の要件を満たす場合には、贈与者の相続開始時に相続税の課税はされません(上記3の(注)参照)。しかしながら、あなたは祖父の相続開始時に24歳であり、学校等に在学しておらず、かつ教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講してはいないと思われますので、あなたが祖父から教育資金として贈与を受けた1,000万円のうち祖父の相続開始時における管理残額である400万円は、あなたが祖父から遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります。 (了)
〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第96回】 「国際興業事件(混合配当に関する事案)-プロラタ計算違法判決-(地判平29.12.6、高判令元.5.29、最判令3.3.11)(その1)」 ~法人税法23条1項1号・23条の2第1項・24条1項3号・61条の2第1項・61条の2第17項、法人税法施行令23条1項3号・119条の9第1項~ 公認会計士・税理士 西川 浩史 1 はじめに 本件は、外国子会社から資本剰余金と利益剰余金の双方を原資とする剰余金の配当(以下「混合配当」ともいう。)を受けた納税者が、資本剰余金を原資とする部分は資本の払戻し(法人税法24条1項3号[現4号:以下省略])とし、利益剰余金を原資とする部分は剰余金の配当(法人税法23条1項1号)として申告したところ、課税庁から、配当の全額が資本の払戻しに該当するとして更正処分を受けた事案である。 本件の納税者は、当時、経営再建中のため海外資産を売却して早期に資金を回収する必要があったものと思われる。そこで、平成21年度税制改正で企業の海外利益還流を促進する目的で導入された外国子会社受取配当益金不算入制度(外国子会社からの受取配当の95%を益金不算入とする制度)を利用するだけでなく、さらに資本の払戻しを組み込むことにより多額の株式譲渡損失計上による節税策を行った。 地裁、高裁、最高裁ともに納税者勝訴となったが、混合配当に関する規定適用の考えが各判決において異なっている。高裁は、納税者同様、資本剰余金を原資とする配当は資本の払戻しとし、利益剰余金を原資とする配当は剰余金の配当に該当するとした。一方、地裁及び最高裁では、課税庁同様、配当の全額が資本の払戻しに該当するとした。 また、最高裁は、法人税法施行令23条1項3号[現4号:以下省略](株式対応部分金額のプロラタ計算を定めた規定)について、本件のような場合に限れば、法人税法の趣旨に適合するものではなく、同法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効というべきであると判示した。 2 事案の概要 (1) 納税者(A社、原告、被控訴人、被上告人)の処理 内国法人A社は、平成24年11月14日に、100%子会社B社(米国デラウェア州LLC法に基づき組成された法人)から資本剰余金及び利益剰余金を原資とする剰余金の配当512億444万円(6億4,400万ドル、以下「本件配当」という。)を受けた。このうち、資本剰余金を原資とする部分79億5,100万円(1億ドル、以下「本件資本配当」という。)を資本の払戻し(法人税法24条1項3号)として、また、利益剰余金を原資とする部分432億5,344万円(5億4,400万ドル、以下「本件利益配当」という。)を剰余金の配当(法人税法23条1項1号)として平成25年3月期の連結事業年度の申告を行った。 なお、A社は、事前にB社に対し、B社及びその子会社から資金をA社に還流させることを企図して、税務上の取扱いも踏まえた上で、総額6億4,400万ドルを「資本の払戻し」としての1億ドルと「利益の分配」としての5億4,400万ドルとに切り分けて分配を行うべき旨等を連絡していた。B社は、自社では配当の財源が乏しいため、その子会社であるC社から、利益の配当として6億4,400万ドルの送金を受け、更にこれをA社に還流するため、平成24年11月12日付けで、LLC法に基づき、A社との間で同意書及び各決議書を取り交わした。 上記同意書は、その効力発生日を同日として採択することに同意することを内容とするものであり、各決議書は、B社に対し、資本金の額を減少させ、その減少額を追加払込資本に振り替えた上で、追加払込資本の払戻しとしてA社に対して1億ドルの分配を行うこと、留保利益からA社に対して5億4,400万ドルの分配を行うこと等の権限を付与することをその内容とするものであった。なお、追加払込資本は我が国の会社法上の資本剰余金に、留保利益は同じく利益剰余金にそれぞれ該当する。 (2) 課税庁(被告、控訴人、上告人)の処分 課税庁は、A社に対し、本件資本配当及び本件利益配当のそれぞれの効力発生日が同一であること等から、本件配当の全額6億4,400万ドルが法人税法24条1項3号の資本の払戻しにより交付を受けた金銭に該当するとして本件更正処分をした。 (図表1)本件配当の流れ (図表2)B社の税務上の簿価純資産の推移 (3) 納税者の処理と課税庁の処分の比較(※1) (※1) 地裁判決文の別紙(別表2-1~別表4-2)等を参考に作成した。円金額は億円単位としているが、仕訳の貸借金額が一致するよう調整を行っている(以下同様)。 ① 受取金額の内容 (注1) 減少資本剰余金金額:1億ドル > 簿価純資産価額:9,768万ドル(*1) (*1) 前期末簿価純資産価額から資本の払戻し直前までの資本金等の額の増減及び利益積立金額の増減(組織再編等による増減で当期所得分は除く)を調整した金額で、今回の場合は 図表2の③利益積立金減少後の金額 施行令規定割合=減少資本剰余金金額/簿価純資産価額は1を超える⇒∴1 株式対応部分金額=直前資本金等の額×1=2億1,106万ドル×為替レート@79.51(*2)=168億円 (*2) 平成24年11月12日のTTM 資本の払戻しは79億円のため、株式対応部分金額は79億円まで引き戻される。 みなし配当:資本の払戻し79億円-株式対応部分金額79億円=0億円 (注2) 株式対応部分金額168億円までの計算は上記(注1)と同じ。 資本の払戻しは512億円のため、株式対応部分金額は168億円となる。 みなし配当:資本の払戻し512億円-株式対応部分金額168億円=344億円 ② 株式譲渡損益 (注3) 株式譲渡原価:株式帳簿価額209億円×施行令規定割合1=209億円 ③ 税務仕訳 ④ 課税所得への影響額 3 裁判所の判断 (1) 本件の争点及び高裁と最高裁の判断 (注) 判決文では、「法人税法23条1項1号及び法人税法24条1項3号の『資本剰余金の額の減少に伴うもの』の意義等はどのようなものか。」と記載されている。 (2) 最高裁の判決に基づく処理 最高裁の判決に基づく税務仕訳は以下のようになり、納税者のもの(2(3)③参照)と下記2点の違いはあるが、課税所得に与える影響額は同額になった。 ((その2)へ続く)