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〔会計不正調査報告書を読む〕 【第164回】「2024年における調査委員会設置状況」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第164回】 「2024年における調査委員会設置状況」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   本連載では、個別の会計不正に関する調査報告書について、その内容を検討することを主眼としているが、本稿では、「第三者委員会ドットコム」が公開している情報をもとに、各社の適時開示情報を参照しながら、2024年において設置が公表された調査委員会について、調査の対象となった不正・不祥事を分類するとともに、調査委員会の構成、調査報告書の内容などを概観し、その特徴を検討したい。 第三者委員会ドットコムが公開しているデータを集計したところ、2024年において、調査委員会の設置を公表した会社は77社であり、2021年の61社、2022年の57社及び2023年の71社を大きく上回っている。77社のうち、複数の調査委員会設置を公表した会社が以下のとおり4社あったため、設置が公表された調査委員会の数は82となる。 これらの4社については、会社数としてはそれぞれ「1社」とカウントする一方、委員会の構成については委員会ごとに、不正・不祥事の分類はその区分ごとに集計しているため、一部、合計数が合わないことをお断りしておく。 設置が公表された82の調査委員会のうち26の委員会は、本稿執筆時点において、まだ調査報告書(その概要を含む)を公表していない。このうち9つの調査委員会については、設置そのものが11月下旬以降であり、まだ調査が終わっていない可能性が高い。   【市場別分類】 市場別分類では、東証プライム上場会社が38社と全体の約49%を占めた(複数市場に上場している会社は東証の市場区分に含めている)。上場会社数は2024年12月31日現在。 東京証券取引所以外では、名古屋証券取引所(中部水産株式会社)及び札幌証券取引所(株式会社エコノス)の単独上場会社が各1社、調査委員会の設置と調査報告書を公表している。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   【会計監査人別分類】 会計監査人別の分類では、いわゆる大手4大監査法人の監査を受けていた会社が53社、中堅以下の監査法人の監査を受けていた会社が24社となり、2023年と同じく、大手監査法人のクライアントの比率が高くなっている。 大手4大監査法人のなかでは、EY新日本有限責任監査法人のクライアントで調査委員会の設置を公表した会社が16社と最も多く、有限責任監査法人トーマツと有限責任あずさ監査法人のクライアントが各14社、PwC Japan有限責任監査法人のクライアントが9社となっている。 なお、中堅以下の監査法人で複数のクライアントが調査委員会を設置したのは、Mooreみらい監査法人、RSM清和監査法人、UHY東京監査法人、アーク有限責任監査法人、監査法人アリア及びBDO三優監査法人で各2社となっている。   【調査委員会の構成による分類】 一部、委員名を非公表としている委員会を含めた調査委員会の構成ごとの分類では、日本弁護士連合会が2010年に公表した「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に準拠していると明言している調査委員会及び明言はしないまでもその趣旨に沿って外部の委員のみを選定していると認められる調査委員会は35であった。 また、2018年から続いていた、調査委員会の構成や委員名について、非公表とする傾向については、2024年も7社が「非公表」としており、このうち3社は、調査報告書も公表していない。なお、12月26日に「原因究明・内部統制強化チームを発足させる」ことを公表したオイシックス・ラ・大地株式会社については、本稿執筆時点では「未設置」と判断している。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   【調査委員会を設置することとなった不正・不祥事の分類】 調査対象となった不祥事別にこれを分類すると次表のとおりとなる。なお、分類上、経営者や従業員の不正であっても、決算修正等、公表している決算報告書に影響を及ぼす可能性のあるものについては、「会計不正」としている。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   【会計不正の態様】 次いで、「会計不正」に分類された56件について、次表でそれぞれの不正の態様を見ておきたい(赤字は本連載で取り上げた報告書)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 なお、表中の「レーザーテック株式会社」については、外部のInvestigative reportによる疑義の指摘に対して、社外取締役2名と外部有識者からなる特別調査委員会を設置して調査したものであるが、同委員会は、調査結果の結論を次のようにまとめて、疑義を否定している。 (了)

#No. 602(掲載号)
#米澤 勝
2025/01/16

〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2024年12月】

〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2024年12月】   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024年12月1日から12月31日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。   Ⅱ 企業内容等開示関係 次のものが公表されている。 〇 「記述情報の開示の好事例集2024(第2弾)」(内容:サステナビリティに関する考え方及び取組の開示②(気候変動関連等)に関する好事例集。金融庁)   Ⅲ 法務省令関係 次のものが公表されている。 〇 会社計算規則の一部を改正する省令案(内容:「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」(実務対応報告第46号)を受けたものなど。意見募集期間は2025年1月17日まで) (了)

#No. 602(掲載号)
#阿部 光成
2025/01/16

従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第5回】「解雇と裁判手続(労働審判・仮処分・通常訴訟)及び解決金額の目安」

従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第5回】 「解雇と裁判手続(労働審判・仮処分・通常訴訟)及び解決金額の目安」   弁護士 柳田 忍   1 はじめに 解雇された労働者が解雇処分に対して不満を抱く場合であっても、いきなり裁判手続を選択することは少なく、まずは合意での紛争解決を目指して会社に対して交渉が持ちかけられることが多いが、会社との交渉が決裂した場合等において、被解雇者が裁判手続を選択することがある。本稿では、被解雇者が解雇の効力を争う場合に会社に対してなされる請求の概要と、これを実現するために被解雇者が採用する可能性がある主な裁判手続の概要及び注意点などを説明する。   2 被解雇者の会社に対する請求 被解雇者が解雇の効力を争う場合に、会社に対してなされる可能性のある主な請求は以下のとおりである。 (1) 労働契約上の地位の確認請求 解雇が無効であれば、被解雇者は引き続き従業員としての地位を有することになるので、その地位を確認するための請求がなされる可能性がある。 被解雇者が他の会社等に再就職している場合、元の会社における就労意思を放棄したとみなされて地位確認請求が認められない場合があるが、被解雇者においても生活のために再就職せざるを得ないという事情があることから、単に再就職したという事実があるだけで必ず就労意思が否定されるわけではないことに注意が必要である。 (2) 金銭的請求 ① 未払賃金請求 解雇がなされるとその時点からの賃金が支払われなくなるが、解雇が無効であれば、被解雇者は解雇時点以降も引き続き従業員としての地位を有することになるので、その間、支払われるべき賃金が支払われなかったことになる(被解雇者は、解雇時点以降労務を提供していないが、それは会社が被解雇者による労務提供を不当に拒絶したためであるということになるから、会社は賃金支払義務を負うことになる・民法536条2項)。 ② 損害賠償請求 被解雇者が復職を希望せず、地位確認請求を行わない場合、解雇時点以降の労働契約上の地位が確認されないことになるため、その間の未払賃金支払債務も認定されないことになる。このようなケースでは、被解雇者から会社に対して損害賠償請求(違法な解雇がなされなければ得られたであろう賃金相当額の逸失利益の請求)がなされることがある。 ③ 慰謝料請求 解雇に伴う精神的苦痛について損害賠償請求(慰謝料請求)がなされることがある。労働者にとって解雇されることは一般に精神的な苦痛を伴うものではあるが、解雇が無効であるからといって慰謝料請求が認められるわけではなく、解雇の違法性が著しいような例外的場合に限って認められる傾向にある。 ④ その他 被解雇者が解雇の効力を争う場合、実は上司からパワハラを受けており、被解雇者の勤務成績や勤務態度が不良であったのは上司からのパワハラが原因で本来のパフォーマンスを発揮できなかったためである、といった主張がなされるとともに、パワハラを理由とした損害賠償請求がなされる場合がある。また、サービス残業を強要されていた、支払われるべき賞与が支払われなかった、等の主張や支払請求などが併せてなされる場合もある。 これらについては、実際にパワハラやサービス残業の強要の事実があり、被解雇者は従業員としての地位が認められる間は地位を失うことを恐れてそのような主張をしなかったものの、解雇されたことを契機に主張することがあり得るので、事実確認を行ったうえで対処する必要がある。   3 裁判手続 解雇された労働者が選択し得る主な裁判手続としては、労働審判、仮の地位を定める仮処分及び通常訴訟があり、それぞれの手続の概要は以下のとおりである(詳細は拙稿「ハラスメント発覚から紛争解決までの企業対応」【第8回】及び【第9回】ご参照)。 被解雇者がどの手続を選択するかについては、以下のような傾向が見られるように思われる。   4 解決金の額 会社にとって最大の関心事の1つは、合意により解決する場合、解決金の額がどれくらいになるか、という点であろう。 使用者には、雇用する高年齢者について、65歳までの雇用確保措置が義務づけられていることから(高年齢者雇用安定法9条)、仮に労働契約上の地位が認められる場合、期間の定めのない雇用契約については、他に解雇事由や退職事由が認められなければ、65歳まで雇用が継続される合理的な期待があることになる。よって、被解雇者側の解決金の希望額の最大値は解雇時から65歳までの賃金相当額ということになるが、このような最大値をベースに解決金額を検討してしまうと、解決金額が著しく高額になることになる(実際、他の法律事務所の弁護士が、依頼者に対して定年までの賃金相当額をベースに解決金額として数千万円単位の金額をアドバイスしたのを目撃したことがある)。 しかし、実務上はそこまで高額な解決金を支払わなくても解決に至る場合がほとんどである。 例えば、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)の統計(※)によると、令和2年から3年までの2年間に、労働審判手続における調停・労働審判(785件)及び労働関係民事通常訴訟上の和解(282件)で終局した解雇等紛争事案の解決金額については以下のとおりであり、解決金の額を検討する上で参考になると思われる。 (※) 独立行政法人労働政策研究・研修機構「労働審判及び裁判上の和解における雇用終了事案の比較分析」(労働政策研究報告書No.226・2023年) なお、筆者の経験上、裁判手続に移行する前は上記よりも低額の解決金で解決に至るケースが多い。 (了)

#No. 602(掲載号)
#柳田 忍
2025/01/16

〈Q&A〉税理士のための成年後見実務 【第14回】「成年後見開始の審判の取下げ」

〈Q&A〉 税理士のための成年後見実務 【第14回】 「成年後見開始の審判の取下げ」   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   【Q】 顧問先企業の創業者の方が認知症を患われたので、成年後見開始の審判申立てを家庭裁判所にしました。候補者は後継者でもある創業者の息子さんです。 しかし、創業者の資産が多額であることなどから息子さんが成年後見人にはなれない可能性が出てきました。専門家が成年後見人に選任されると、家族の方が何かとやりにくくなるのではないかと心配しています。申立てを取り下げれば成年後見制度は開始しないのでしょうか。 【A】 成年後見開始の申立てをすると、取下げには家庭裁判所の許可が必要になります。希望していた候補者が成年後見人に選任されないからといって、申立人側で勝手に取下げを行うことはできません。申立てをするにあたっては慎重な判断が必要となります。 ● ● ● ● 解 説 ● ● ● ● 1 身内は成年後見人になれない? 成年後見開始の審判申立てにあたっては、申立人において候補者を立てることができます。筆者の経験上、身内を成年後見人の候補者とすることを希望される方が多いですが、最終的に誰を成年後見人とするかは家庭裁判所が決定することになります。申立人が希望した候補者が成年後見人になるのではなく、司法書士等の専門家が選任されることも多いといえます。 どのような場合に専門家が選任されるかについては、明確な基準が示されているわけではありませんが、以下のような事情がある場合には専門家が選任される傾向にあるようです。 (※) 成年後見開始の審判の申立てには、本人について成年後見制度を開始すること及び候補者についての親族の意見書を添付するため、親族間に争いがあるかが家庭裁判所にも分かることになります。 ご相談の事例のように、企業の創業者と後継者という関係では、例えば自社株の承継にあたって創業者から後継者へ贈与が行われるなど利益相反関係が生じる可能性があります。よって専門家が選任される可能性は高く、申立てにあたっては希望する候補者以外が選任される可能性もしっかりと説明しておく必要があったといえます。   2 申立ての取下げは家庭裁判所の許可が必要 成年後見制度は認知症等を患った本人の保護のために利用される制度です。成年後見開始の審判が申し立てられたということは、保護を必要だと考えられている人が存在しているということであり、申立てを受け付けた家庭裁判所としてもしっかりと判断をする必要があります。そのため、一旦された申立てを取り下げるためには家庭裁判所の許可が必要とされているのです。 成年後見人に希望した候補者が選任される可能性が低いことが分かったため、申立てを行った後に取り下げたいという要望が寄せられることは実際にあるようです。成年後見制度が開始すると本人の財産管理のあり方も大きく変わることになるため、しっかりと顧客にも理解してもらったうえで申立てを行う必要があります。 (了)

#No. 602(掲載号)
#北詰 健太郎
2025/01/16

《速報解説》 電子帳簿等保存制度(電子取引データの保存制度)の見直し~令和7年度税制改正大綱~

 《速報解説》 電子帳簿等保存制度(電子取引データの保存制度)の見直し ~令和7年度税制改正大綱~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   1 はじめに 令和6年12月20日に与党より公表された「令和7年度税制改正大綱」(以下「大綱」と略称する)は、その後閣議決定された。本稿では、「納税環境整備」の1つとして大綱に記載された「電子帳簿等保存制度の見直し」について、その概要をまとめたい。 なお、「電子帳簿等保存制度の見直し」は、令和9年1月1日以降に適用される。   2 電子帳簿等保存制度の見直し まず、見直し内容を確認するため、大綱より次のとおり該当箇所を取り上げる(括弧書き等一部省略。大綱100頁)。   3 見直しの目的と背景 (1) 現行の電子申告データ保存制度 現行制度では、所得税、法人税及び消費税における電子取引を行った場合には、一定の要件に従って、電子取引データを送受信・保存しなければならず、こうした電子取引データは、複製・改竄等が容易であるという特性があり、電子取引データに関連する隠蔽・仮装行為については、重加算税を10%の割合で加重することとしている(電帳法8⑤)。 (2) 現在の電子帳簿保存をめぐる課題と改正による効果 経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合(第1回)に財務省が提出した説明資料「税務手続のデジタル化」において、デジタル社会にふさわしい仕組みとしてのデジタルシームレスの構築を必要とする背景が次のように説明されている。 資料では、現在、取引発生時に書面やPDFで取引データがやり取りされていることに基因して、手作業による会計処理が主流になっている実務に、デジタルデータによるシームレスな会計処理を行うことによって、事業者に見込まれる効果を次のように説明している。 さらに、税務行政に対して見込まれる効果は次のとおりである。 そして、資料では、事業者や税務当局のみでなく税理士、支援機関、金融機関などが連携してデジタル化を進めていくことで、社会全体として効率化が進んでいくのではないかとまとめている。 こうした状況を背景に、国税庁長官が定める基準に適合するデータ連携可能なソフトを使用し、かつ、一定の要件に従った保存が行われている電子取引データについては、重加算税の10%加重の対象から除外するとともに、所得税の青色申告特別控除の控除額65万円の適用要件である、①優良な電子帳簿の保存又は②電子申告の利用のほかに、一定の要件を満たすシステムの利用と電子取引データの保存を行っている者に適用できるよう、改正を行うものである。   4 まとめ 以上のポイントをまとめると、次のとおりとなる。 なお、本改正は、令和9年1月1日以後に適用することとされている。     (了)

#米澤 勝
2025/01/15

《速報解説》 法人課税信託に係る所得税の課税の適正化~令和7年度税制改正大綱~

 《速報解説》 法人課税信託に係る所得税の課税の適正化 ~令和7年度税制改正大綱~   税理士 中尾 隼大   自由民主党及び公明党により令和6年12月20日に「令和7年度税制改正大綱」が公表され、その後閣議決定されている。今回の大綱には、いわゆる法人課税信託に係る所得税の課税の適正化について盛り込まれたため、本稿ではそのポイントを解説したい。   (1) 従来の問題点 現在は、法人課税信託、つまり受益者等の存しない信託を設定した後、受益者等が指定された場合において、その受益者等は受託法⼈から信託財産の帳簿価額(簿価)を引き継ぐこととされており、かつ、その引継ぎにより⽣じた経済的利益について課税されないとされている(所法67の3①②)。 この規定により、①役員等の個人が法⼈課税信託に⾦銭を信託し、②受託者が新株予約権を購⼊した後、③受託者が権利⾏使をして取得した株式を、④役員等を受益者に指定して(この時点で法人課税信託ではなくなる)、⑤役員等の個人に株式を交付することにより、税負担の軽減を行うことができていた。つまり、受益者となった役員は、交付を受けた株式を譲渡時まで課税を繰り延べると同時に、分離課税を適⽤することができていた。 〈問題点のイメージ〉 (※) 「自由民主党税制調査会資料」(令和6年12月12日)より抜粋の上、一部加工   (2) 税制改正大綱に盛り込まれた内容 次の要件を満たす信託を「特定法人課税信託」と呼び、その信託財産に属する一定の株式について、受益者が指定されて法人課税信託に該当しないこととなった時の価額により取得したものとみなしてその受益者が株式を取得した日の属する各年分の各種所得を計算するものとされた。なお、その株式の帳簿価額に相当する金額は、その各種所得の計算上、総収入金額に算入しない。 〈株価のイメージ〉 (※) 「自由民主党税制調査会資料」(令和6年12月12日)より抜粋   (3) 適用時期 今回の大綱に盛り込まれた内容には適用時期が明記されていないため、今後の法案等で示される時期に注目したい。 (了)

#中尾 隼大
2025/01/14

プロフェッションジャーナル No.601が公開されました!~今週のお薦め記事~

2025年1月9日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.601を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2025/01/09

monthly TAX views -No.143-「続く「103万円の壁」議論、カギは税収弾性値と自然増収」

monthly TAX views -No.143- 「続く「103万円の壁」議論、カギは税収弾性値と自然増収」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   今年は、衆議院予算委員会で令和7年度予算が通過する2月下旬頃に大きな政治的イベントが予想されている。103万円の壁問題について、国民民主党は178万円を目指して政府案の123万円からさらなる引上げを求めるが、日本維新の会の教育無償化と両天秤にかける自民党がどう対応するのか、夏の参議院選挙も見据え、ギリギリの駆け引きが行われる。 国民民主党の玉木代表は、自らのX(旧Twitter)や高橋洋一氏との対談でおおむね次のようなことを語っており、それが178万円まで引き上げる財源の根拠となっている。 玉木氏が「財源」と主張するのは、当初予算の税収見積もりと実績との差額で、一般に「自然増収」とか「税収の上振れ」と呼ばれるものだ。筆者が予算書などで調べた結果は以下の表のとおりである。確かに、玉木氏の言う2021年度以降の数字はおおむね正しい。 しかし、2019年度は4.1兆円のマイナス、2020年度は2.7兆円のマイナスであることには対談では言及していない。おそらく意図的に触れなかったのであろう。 筆者が財務省主税局で税収見積もりの実務責任者を務めた経験から言うと、税収見積もりに際し担当者がまず考えることは、赤字(当初見積もりより下振れ)を出さないということである。赤字の規模が大きければ歳入欠陥となる。したがって先行き見通しが不透明な時期は、見積もりはどうしても慎重になり、その結果、税収の上振れが出やすい。 また年度後半に補正予算が組まれることが常態化しており、その時の財源として税収の上振れ分も期待されるので、さらに慎重になる。最近では、防衛予算のスキームに「決算剰余金の活用」が入れられたため、あらかじめ剰余金を出すような当初の税収見積もりをするプレッシャーは一層増加しているのではと考えたりする。 つまり、自然増収とか税収の上振れと呼ばれるものの実態は、このような要因が積み重なった結果として生じるもので、過去の実績を見るとプラスもあればマイナスもあり、恒久財源ではありえない。これがあるから恒久的に7~8兆円の減収を生じさせる178万円の引上げが可能だとする議論はあまりにも実態とかけ離れている。 もう1つは税収弾性値だ。これはGDPが1%伸びると税収が何%伸びるかという比率だが、玉木氏は、「過去28年間の税収弾性値の平均は2.7程度」としている。しかし、これも信頼性に欠ける発言だ。 税収の内訳を見ると、消費税収が31.8%、法人税収が24.5%、所得税収が29.7%(令和7年度予算)となっている。消費税は消費支出を課税ベースとし、法人税は法人所得を課税ベースとする比例税率で、消費支出や法人所得は基本的に経済成長に連動するので、税収弾性値は1程度と見積もることになる。 一方所得税は累進税率なので、インフレによるブラケットクリープを見込めば、1を上回り、1.5程度にはなる可能性があるが、その税収に占める割合は30%弱だ。税収全体を平均すると、税収弾性値は1を若干上回る程度と考えることが常識である。過去の2とか3といった数値は、名目成長率の低いデフレ時代の異常値というべきだろう。 ちなみに財務省の税収見積もりでは、税収弾性値は用いていない。各税目ごとに前年度税収を基に、政府経済見通しで示される生産、消費、所得の見通しを踏まえ、企業ヒアリングなども行いつつ積算している。 *  *  * 予算審議の過程で、上述のような数値(エビデンス)に基づいた議論が行われることを望みたい。 (了)

#No. 601(掲載号)
#森信 茂樹
2025/01/09

令和6年分 確定申告実務の留意点 【第2回】「定額減税の適用における同一生計配偶者・扶養親族のチェックポイント」

令和6年分 確定申告実務の留意点 【第2回】 「定額減税の適用における同一生計配偶者・扶養親族のチェックポイント」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   本連載第1回で解説したとおり、今回の定額減税の減税額は、納税者本人と同一生計配偶者及び扶養親族の数に応じて算出される。ただし、減税額計算の人数に含める納税者本人、同一生計配偶者及び扶養親族は、いずれも居住者であることが要件とされている(措法41の3の3②)。 以下、定額減税の適用における同一生計配偶者及び扶養親族に関するチェックポイントを解説する。   【1】 同一生計配偶者に関するチェックポイント 減税額を計算するときの人数に含める配偶者は、同一生計配偶者(居住者のみ)である(措法41の3の3②)。同一生計配偶者とは、納税者と生計を一にする合計所得金額48万円以下の配偶者(青色事業専従者等は除く)をいう(所法2①三十三)。 合計所得金額については、2ヶ所以上から給与等の支払いを受けている場合にはすべてを合計した給与所得により判定し、複数の所得がある場合にはすべてを合計して判定する。 〈減税額計算の人数に含める配偶者〉 同一生計配偶者の定義には、納税者本人の所得に関する要件はない。よって、納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超えるため、同一生計配偶者について配偶者控除の適用を受けることができない場合でも、その配偶者が居住者であれば減税額計算の人数に含まれることとなる。 なお、令和6年の中途で死亡した配偶者の場合には、死亡時の現況で同一生計配偶者に該当するかどうかを判定する。   【2】 扶養親族に関するチェックポイント 減税額計算の人数に含める親族は、扶養親族(居住者のみ)である(措法41の3の3②)。扶養親族とは、納税者本人と生計を一にする合計所得金額48万円以下の配偶者以外の親族(青色事業専従者等は除く)をいう(所法2①三十四)。 合計所得金額については、2ヶ所以上から給与等の支払いを受けている場合にはすべてを合計した給与所得により判定し、複数の所得がある場合にはすべてを合計して判定する。 〈減税額計算の人数に含める親族〉 扶養親族の定義には、親族の年齢に関する要件はない。よって、扶養控除の対象とならない年齢16歳未満の扶養親族も減税額計算の人数に含まれることとなる。 なお、令和6年の中途で死亡した親族の場合には、死亡時の現況で扶養親族に該当するかどうかを判定する。 *  *  * 次回(第3回)は、定額減税を中心に、確定申告実務に関する留意点をQ&A方式で解説する予定である。   (了)   

#No. 601(掲載号)
#篠藤 敦子
2025/01/09

〈令和6年度税制改正〉更正の請求による仮装隠蔽行為の重加算税賦課・消費税受還付犯の適用

〈令和6年度税制改正〉 更正の請求による仮装隠蔽行為の重加算税賦課・消費税受還付犯の適用   公認会計士・税理士 大橋 誠一   令和6年度税制改正において、納税環境整備の適正化の一環として、以下の内容が盛り込まれた。 上記①②ともに「更正の請求による」とあるところ、更正請求書は納税申告書の範囲に含まれておらず、納税申告書の提出がなければ、行政罰である重加算税も刑事罰である不正受還付の懲役刑・罰金刑も科すことができなかった。 今般の税制改正によって、仮想隠蔽行為に基づく更正請求書の提出及び虚偽の更正請求書の提出による消費税等の不正受還付については、納税申告書を提出した場合と同様の制裁を科すことが可能となった。   1 更正の請求による仮装隠蔽行為の重加算税賦課 (1) 従前の規定 国税通則法第68条(重加算税)第1項は、重加算税の課税要件として、「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」と規定していた。 ここでいう納税申告書とは、国税通則法第2条(定義)第6号において「申告納税方式による国税に関し国税に関する法律の規定により次(略)に掲げるいずれかの事項その他当該事項に関し必要な事項を記載した申告書」をいう旨規定しており、同法第23条(更正の請求)第3項に規定する「更正請求書」はこれに該当しない。 そのため、従前は、納税者が事実を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき更正請求書を提出していたときには、重加算税を賦課することができなかった。 (2) 税務行政を取り巻く環境 平成23年12月の国税通則法の改正により、更正の請求期間が1年から5年に延長されたことに伴い、その改正前と比べて更正の請求の処理件数が増加しており、隠蔽・仮装に基づく更正請求書が含まれる可能性が認識されていた。 一方、税務当局では限られた人員等で効果的・ 効率的な税務調査の運営を行うこととなり、更正の請求の全件に対して、反面調査を行う等の実地調査と同等の事務量を投下した調査を行うことには限界があることから、隠蔽・仮装に基づく更正の請求による納税義務違反の発生を調査により未然防止することが困難な事例が把握されるようになった。 そのため、こういった税務行政の環境の変化に対応し、更正の請求に係る仮装隠蔽行為を未然に抑止するための制度上の対応が課題とされていた。 (3) 問題提起 税額を確定させるための手続である納税申告書の提出と税額を減少させるための手続である更正請求書の提出の違いは、少なくとも仮装隠蔽行為をした場合におけるペナルティの水準として取扱いに差を設ける必要はなく、むしろ、申告秩序を維持する観点からは、納税申告書の提出と同様に、更正請求書の提出においても重加算税の賦課の対象とする必要があるという議論が政府・与党においてなされていた。 (4) 税制改正内容 国税通則法第68条第1項及び第2項に規定する重加算税の適用要件に、「隠蔽し、又は仮装したところに基づき更正請求書を提出していたとき」という趣旨の文言が追加された。 また、地方税法第71条の15(利子割に係る納入金の重加算金)をはじめとする地方税法の各条文に規定されている重加算金の適用要件に、「隠蔽し、又は仮装した事実に基づいて更正請求書を提出したとき」という趣旨の文言が追加された。 (5) 適用時期 上記(4)の改正は、例えば、国税については、令和7年1月1日以後に法定申告期限等が到来するものについて適用され、同日前に法定申告期限等が到来したものについては従前どおりである。 したがって、例えば、通常、所得税については令和6年分から、法人税については10月決算法人の場合には令和6年10月決算期分から、それぞれ適用される場面が生じ得る。   2 更正の請求による消費税受還付犯の適用 (1) 従前の規定 消費税法第64条第1項第2号は、「偽りその他不正の行為により第52条(仕入れに係る消費税額の控除不足額の還付)第1項又は第53条(中間納付額の控除不足額の還付)第1項若しくは第2項の規定による還付を受けた者」を10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処する旨を規定するとともに、同条第2項は、この未遂、すなわち、還付を受けずとも申告書を提出した段階において罰する旨をそれぞれ規定している。 消費税法制定時は「5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金」であったところ、平成22年6月1日以後の違反行為から現行の量刑となり、また、平成23年8月30日以後の違反行為から未遂罪が追加された。 ここでいう「偽りその他不正の行為」は、国税通則法、所得税法及び法人税法において用いられているそれと同義であるとされている。 なお、従来の懲役刑と禁錮刑を一本化して「拘禁刑」を創設する改正刑法が令和7年6月1日に施行される予定である。 (2) 問題提起 消費税法第52条第1項及び同法第53条第1項は、それぞれ「申告書の提出があった場合において」と規定しており、国税通則法第23条第3項に規定する更正請求書の提出はこれに該当しない。 そのため、従前は、納税者が偽りその他不正の行為に基づき更正請求書を提出していたときには、罰則を科すことができなかった。 しかし、税額を確定させるための手続である申告書の提出と税額を減少させるための手続である更正請求書の提出の違いは、少なくとも偽りその他不正の行為をした場合におけるペナルティの水準として取扱いに差を設ける必要はなく、むしろ、申告秩序を維持する観点からは、納税申告書の提出と同様に、更正請求書の提出においても罰則の対象とすることが必要であるという議論が政府・与党においてなされていた。 (3) 税制改正内容 消費税法第64条第1項第2号に規定する受還付犯の罰則の対象に、「偽りその他不正の行為により、更正の請求に基づく更正により還付を受けた場合」という趣旨の文言が追加された。 また、受還付未遂犯の対象についても、「更正の請求書の提出に基づく場合」という趣旨の文言が追加された。 (4) 適用時期 上記(3)の改正は、税制改正法が公布された令和6年3月30日から起算して10日を経過した日である令和6年4月9日以後にした違反行為について適用され、同日前にした違反行為については従前どおりである。 国民に不利益を与える法律、特に刑罰を科する法律などは、原則として、即日施行にしないようにし、周知等のために必要な日数を確保しているところ、罰則を早期に実効ならしめる趣旨から、その日数は最低限度の10日間と設定されたものと考えられる。 (了)

#No. 601(掲載号)
#大橋 誠一
2025/01/09
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