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《速報解説》 政策保有株式の開示に関する改正開示府令が公布される~パブコメを受けガイドラインを一部修正~

《速報解説》 政策保有株式の開示に関する改正開示府令が公布される ~パブコメを受けガイドラインを一部修正~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025(令和7)年1月31日、官報号外第19号において「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第6号)が公布された。 これにより、2024年11月26日から意見募集されていた内閣府令(案)等が確定することになる。内閣府令(案)等に対するパブリックコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方も公表されている。コメントのNo.47に記載のコメントを受けて、企業内容等開示ガイドラインの文言が修正されている。 これは、政策保有株式の開示について改正するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 有価証券報告書及び有価証券届出書における「株式の保有状況」の開示に関して、当期を含む最近5事業年度以内に政策保有目的から純投資目的に保有目的を変更した株式(当事業年度末において保有しているものに限る)について、次の開示を求める。 また、企業内容等開示ガイドラインにおいて、次の規定を設け、「純投資目的」の考え方を明示する。 内閣府令(案)等に対するコメントのNo.11では、政策保有目的から純投資目的に変更後、5事業年度を経過すると開示対象から外れることとなる理解でよいかとのコメントに対して、ご理解のとおりですとの金融庁の考え方が示されている。 また、内閣府令(案)等に対するコメントのNo.13から15は、「保有目的の変更後の保有又は売却に関する方針」に関するコメントであり、次の考え方が金融庁から示されている。 内閣府令(案)等に対するコメントのNo.42、43は、企業内容等開示ガイドラインに関するものであり、「売却を妨げる事情」は「発行者との関係において」存在するものであることが重要であるとのことである。   Ⅲ 施行時期等 公布の日(2025(令和7)年1月31日)から施行する。 改正後の「企業内容等の開示に関する内閣府令」の規定は、2025(令和7)年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書及び有価証券届出書から適用する。 (了)

#阿部 光成
2025/02/04

プロフェッションジャーナル No.604が公開されました!~今週のお薦め記事~

2025年1月30日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.604を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2025/01/30

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例142(消費税)】 「「相続があった場合の納税義務の免除の特例」により、令和5年1月から課税事業者であったが、これに気付かず「2割特例」を適用して申告してしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例142(消費税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 ◆相続があった場合の納税義務の免除の特例 相続により被相続人の事業を承継した相続人の納税義務の有無については、相続があった年は、相続人又は被相続人の基準期間における課税売上高のうちいずれかが1,000万円を超えるかどうかにより判定し、相続のあった年の翌年及び翌々年は、相続人の基準期間における課税売上高と被相続人の基準期間における課税売上高の合計額が1,000万円を超えるかどうかにより判定する。 ◆簡易課税制度選択届出書の効力(消基通13-1-3の2) 被相続人が提出した「簡易課税制度選択届出書」の効力は、相続によりその被相続人の事業を承継した相続人には及ばない。したがって、その相続人が簡易課税制度の規定の適用を受けようとするときは、新たに「簡易課税制度選択届出書」を提出しなければならない。 なお、簡易課税制度の適用の有無を判定する場合の基準期間の課税売上高は、あくまで相続人の基準期間の課税売上高だけで判定する。 〈相続があった場合の判定に用いる基準期間の課税売上高〉 ◆適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)(平成28年改正法附則51の2①②) (1) 経過措置の内容 「2割特例」とは、インボイス発行事業者の令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった場合又は免税事業者が「課税事業者選択届出書」の提出により課税事業者となった場合には、仕入税額控除の金額を、特別控除税額(課税標準である金額の合計額に対する消費税額から売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除した残額の100分の80に相当する金額)とすることにより、納付税額をその課税標準に対する消費税額の20%とすることができる経過措置である。したがってインボイス発行事業者となる前から課税事業者である場合等には適用できない。 (2) 適用できる期間 「2割特例」を適用できるのは、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間である。このため、免税事業者である個人事業者が令和5年10月1日から登録を受ける場合には、令和5年分(10~12月分のみ)の申告から令和8年分の申告までの計4回の申告が適用対象となる。 (出典) 財務省「インボイス制度の負担軽減措置のよくある質問とその回答」 (3) 適用できない場合 次のような場合には「2割特例」の適用はできない。 (4) 適用を受けるための手続き 「2割特例」の適用に当たっては、事前の届出は必要ない。消費税の確定申告書に「2割特例」の適用を受ける旨を付記することにより、適用を受けることができる。       (了)

#No. 604(掲載号)
#齋藤 和助
2025/01/30

学会(学術団体)の税務Q&A 【第13回】「学会において決済代行会社を利用する場合の税務上の留意点」

  学会(学術団体)の税務Q&A 【第13回】 「学会において決済代行会社を利用する場合の税務上の留意点」   公認会計士・税理士 岡部 正義   ▲▼▲[解説]▲▼▲ 学会でセミナーや講習会を開催するにあたっては、決済代行会社を利用することがよくある。決済代行会社を利用する場合は、収入側(参加料収入)、支出側(決済代行手数料)に関して、それぞれ次の点に留意する必要がある。   1 収入側(参加料収入) (1) インボイスの代理交付 適格請求書発行事業者である学会においては、参加者に対してインボイスを交付する義務がある。 インボイスの交付に関しては、学会事務局で対応する方法も考えられるが、通常、決済代行会社を利用するケースは、参加人数が多いと思われるため、学会事務局で対応しようとすると事務負担が大きいと考えられる。そのため、決済代行会社を利用するような場合は、決済代行会社のシステム上において、インボイスが代理交付される形が望ましいといえる。 なお、インボイス制度開始後、多くの決済代行会社においては、インボイスの代理交付が可能なシステムを導入していると思われるが、その際は、決済代行会社のシステム上におけるインボイスの設定を確認し、インボイスの記載事項(学会の登録番号等)に漏れがないように留意する必要がある。 (2) インボイスの写しの保存 インボイスを交付した場合、その写しを保存する義務がある。不特定多数を対象としたセミナーや講習会の場合、仮に受講者の氏名を確認していたとしても、適格簡易請求書を交付することが可能である(【第1回】「セミナー受講料のインボイス対応」参照)。そして、適格簡易請求書の場合、インボイスの写しとしては、一覧表や明細表で問題ない(インボイスQ&A「適格請求書等の写しの範囲」)。そのため、セミナーや講習会のインボイスの写しに関しては、決済代行会社のシステムから出力された参加料の明細等を保存しておくことになる。 (3) 学会内の情報共有 学会のセミナーや講習会においては、学会事務局ではなく、セミナー等を担当する委員が、直接、決済代行会社を利用して参加料の管理をしているようなケースがある。この場合、決済代行会社のシステム上、インボイスの代理交付の設定が必要となる点やインボイスの写しを保存することが必要になる点について、学会事務局とセミナーを担当する委員との間で情報共有を図っておくことが重要となる。 (4) 学術集会で利用する場合 学術集会の参加料に関しては、単なるセミナーや講習会の参加料と異なり、会員か非会員かによって、課税区分が異なる(会員:不課税、非会員:課税)。 そのため、学術集会の参加料の場合は、会員か非会員かによって、決済代行会社のシステム上、交付する領収書の形式を変更する必要がある(【第3回】「学術集会の参加料のインボイス対応」参照)。 〈学術集会の参加者区分と交付する領収書〉   2 支出側(決済代行手数料) 決済代行会社を利用した場合、決済代行手数料を支払うことになる。決済代行手数料に関しては、システム利用料など課税取引となる取引内容と、クレジットカード決済に係る手数料など、消費税が非課税となる取引内容の両方が含まれているケースが多い。 すなわち、決済代行手数料に関しては、「一律、課税」又は「一律、非課税」というよりも、複数の課税区分が混在しているケースが多いため、課税区分にあたっては、決済代行会社からの請求明細の内容に従って、課税部分と非課税部分を区別することが重要となる。   (了)

#No. 604(掲載号)
#岡部 正義
2025/01/30

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第45回】「市街化調整区域のうち都市計画法34条12号の対象となる宅地は、「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することができないとされた事例」

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第45回】 「市街化調整区域のうち都市計画法34条12号の対象となる宅地は、「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することができないとされた事例」   税理士 菅野 真美   ▷地積規模の大きな宅地 「地積規模の大きな宅地」の評価は、平成29年度の税制改正大綱において相続税等の財産評価の適正化が明記され、従来から評価方法の1つとしてあった広大地の評価が廃止される代わりに設けられた評価方法である。 広大地の評価は、標準的な宅地の地積に比して著しく地積が大きな宅地について開発行為を行った場合、道路や公園のような「潰れ地」が生じることから、この部分を減額させるために正面路線価に広大地補正率と地積を乗じていた。しかし、この評価方法には問題があった。広大地に該当するか否かの判断が難しく、納税者と課税庁の見解が異なるケースが散見され、数多くの訴訟が行われた。 そこで新たに設けられたのが、地積規模の大きな宅地の評価である。この評価は、「戸建住宅用地として分割分譲する場合に発生する減価を反映させることを趣旨とするものであることから、戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能であり、かつ、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域に所在する宅地が対象となる。」(※1)と説明されている。 (※1) 国税庁ホームページ「「財産評価基本通達の一部改正について」通達等のあらましについて(情報)(平成29年10月3日付資産評価企画官情報第5号、資産課税課情報第17号)」4頁 このような趣旨であることから市街化調整区域においては、原則的には適用不可であるが、都市計画法34条10号又は11号に基づく地域は、戸建住宅用地としての分譲が法的に可能であること、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域であることから適用可能とした。それでは、同条10号及び11号以外の法令に基づく市街化調整区域について、地積規模の大きな宅地として評価はできるのだろうか。 今回は、市街化調整区域のうち都市計画法34条12号の対象となる宅地についても、地積規模の大きな宅地に準じて評価できるかで争われた事例を検討する。 なお、都市計画法34条12号(令和2年法律第43号による改正前のもの)は次のように定められていた。   ▷どのような事例か 納税者は、相続により取得した市街化調整区域のうち都市計画法34条12号の対象となる宅地について、財産評価基本通達(以下「評価通達」という)に基づいて宅地の価額を算定して相続税の申告をした。その後、地積規模の大きな宅地に準じて評価額を減額される土地に当たるとして、相続税の更正の請求をした。しかし、処分庁から更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けた。納税者はこの処分に不服であるとして、処分の全部取消しを求めて審査請求をしたのが本事例である。   ▷争点は この宅地が、地積規模の大きな宅地に該当するか否かである。   ▷審判所の判断は 審判所は、審査請求に理由がないとして請求を棄却した。市街化調整区域に所在する宅地であって、市街化調整区域のうち都市計画法34条10号又は同条11号の規定に基づき宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域(以下、それぞれを「10号区域」、「11号区域」という)に所在しないことから、評価通達20-2《地積規模の大きな宅地の評価》(以下「本件通達」という)の適用対象とならない。また評価通達5や、評価通達6の適用もない。よって、地積規模の大きな宅地に準じて評価することはできないとした。   ▷納税者の主張に対する審判所の判断は (※2) 前掲(※1)のあらまし *   *   * このように納税者の主張は全く認められなかった。一旦、評価通達に基づいて申告し、その後更正の請求を行う場合、受け入れられる可能性は低いといわれている。地積規模の大きな宅地は適用要件が明確化されたため、公式に当てはめれば、原則的には評価額が導かれる評価方法であるので、指定された法令以外の法令に基づいて、準じた方法で評価することは認めないということだろう。 (了)

#No. 604(掲載号)
#菅野 真美
2025/01/30

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第60回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第60回】   東洋大学法学部准教授 泉 絢也   ウ 紙片を発行せずに振替式を利用する定めのある外国信託も含まれるとする見解②(社債等振替法に係る振替受益権との関係) (ア) 信託法と社債等振替法 社債等振替法の適用がある振替受益権に関する考察を手掛かりとして、「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」には、少なくとも社債等振替法の振替制度に類似した振替式を採用し、(電磁的方式により)受益権を発行する定めのある外国信託も含まれるというような解釈を採用することに一定の合理性を認める見解も考えられる。 現在では、社債等振替法によって、有価証券に表示される権利全般について、権利の移転等に関して、ペーパーレス化を通じて、その流通の円滑化が図られている(高橋康文編著=尾崎輝宏『逐条解説 新社債、株式等振替法』28頁(金融財政事情研究会、2006)参照)。 受益権を表示する紙片を発行しないで社債等振替法を適用する振替受益権に係る信託であっても、信託法185条3項の受益証券発行信託として法人税法2条29号ハの特定受益証券発行信託に該当しうる。 会社法が株券の不発行を原則としているのに対し(会社214)、信託法上の受益証券発行信託は、受益権について受益証券の発行を原則としている。つまり、株式会社の株式と比較すると原則と例外が逆転している。この点は、投資信託の受益権と受益証券も同様である(投信法6②)(小島新吾編著『逐条解説 投資信託約款』94頁(金融財政事情研究会、2019)参照)。 特定受益証券発行信託とは信託法185条3項の受益証券発行信託のうち一定のものであるところ、受益証券発行信託の受益権は社債等振替法による振替制度の対象となっている。 社債等振替法は、社債、株式その他の有価証券に表示されるべき権利の振替に関し、振替を行う振替機関及び口座管理機関、振替に関する手続き並びに権利を有する者の保護を図るための加入者保護信託その他の必要な事項を定めることにより、社債、株式その他の有価証券に表示されるべき権利の流通の円滑化を図ることを目的としている(社債等振替1)。 社債等の有価証券に表示されるべき権利は有価証券によって流通の円滑化が図られているが、同法は、その権利関係を振替口座簿の記録により定まることとする振替制度を創設して、社債等の発行、譲渡及び償還を迅速に行うことを可能にし、かつ、物理的な券面(有価証券)の受渡しに伴う費用やリスクをなくそうとするものである。振替制度の対象となるものは、「社債、株式その他の有価証券に表示されるべき権利」であり、具体的には同法2条1項の社債等である(高橋=尾崎・前掲書28頁参照)。 この社債等の中には、投信法上の投資信託や外国投資信託の受益権、信託法上の受益証券発行信託の受益権が含まれている(社債等振替2①八、十、十一)。 まず、信託法では、信託行為においては、同法8章の定めるところにより、1又は2以上の受益権を表示する証券(受益証券)を発行する旨を定めることができるとされている(信託185①)。ただし、その信託行為において一部の受益権(特定の内容の受益権)については受益証券を発行しない旨を定めることもできる(信託185②)。上記の受益証券を発行する定めのある信託は受益証券発行信託と呼ばれる。 この受益証券発行信託においては、信託の変更によって上記各定めを変更することはできず、また、上記の受益証券を発行する定めのない信託においては、信託の変更によって上記各定めを設けることはできない(信託185③④)。受益証券発行信託の受託者は、信託行為の定めに従い、遅滞なく、その受益権に係る受益証券を発行しなければならない(信託207)。 次に、社債等振替法では、上記の受益証券発行信託の受益権(ただし、上記の特定の内容の受益権について受益証券を発行しない旨の定めのある受益権を除く)で振替機関が取り扱うものを振替受益権と呼び、この振替受益権についての権利の帰属は、同法6章の2の規定による振替口座簿の記載又は記録により定まるものとされている(社債等振替127の2①)。 振替制度を利用するためには、信託受益権の発行者は、「信託行為の定めにより」、あらかじめ振替機関で取り扱うことについての同意をしておかなければならない(社債等振替13①、127の2②)。この振替受益権については、原則として、受益証券を発行することができない(社債等振替127の3①)。振替受益権に関する信託法の規定の適用については、振替受益権は、「受益証券発行信託の受益権」とみなされる(社債等振替127の30)。 受益証券は発行されないものの、受益証券発行信託の受益権は存在していることになる。 要するに、振替制度では受益権について受益証券が発行できないが、受益証券がなくとも受益証券発行信託の受益権として信託法185条以下の適用があることが明確にされていることになる(高橋=尾崎・前掲書299頁参照)。 このような振替制度を利用する場合、信託法185条の受益証券の発行があったものとみなされたり、振替受益権が同条の受益証券とみなされたりする建付けにはなっていないものの、そうであるからといって信託法185条3項の受益証券発行信託に該当する可能性が遮断されるわけではない。 受益証券発行信託の受益権には、次の4種類があり、それぞれ規律される内容が異なる(道垣内弘人『信託法〔第2版〕』353~354頁(有斐閣、2022))。 補足すると、振替制度を利用する場合、発行された受益証券が振替受益権になるのではなくて、受益証券は発行されることがないまま、振替受益権が発生するという仕組みがとられること、受益証券は発行されないものの受益証券発行信託には該当するので信託法上の受益証券発行信託の特則もすべてそのまま適用されることになる。 法律の規定に照らし合わせると、次のように整理される(能見善久=道垣内弘人『信託法セミナー(4) 信託の変更・終了・特例等』205頁(有斐閣、2016)、弥永真生『条解 信託法』〔道垣内弘人編著〕851頁(弘文堂、2017)参照)。 (イ) 法人税法 法人税法の規定に視線を移してみると、同法2条29号ハ柱書は、「信託法185条3項に規定する受益証券発行信託」のうち一定のものを特定受益証券発行信託と定義付けしている。受益権を表示する証券を発行する信託という表現はとられていないことから、紙片を発行しない振替受益権であっても、信託法185条3項の受益証券発行信託に当たるのであれば、特定受益証券発行信託に該当する可能性は排除されない。 信託法では、信託行為においては、同法第8章の定めるところにより、1又は2以上の受益権を表示する証券(受益証券)を発行する旨を定めることができ(信託185①)、このように信託法第8章に基づいて受益証券を発行する旨の定めのある信託が受益証券発行信託と定義されている(信託185③)。上記のとおり、振替制度を利用する場合に信託行為において、「①受益証券を発行する、②受益権は振替機関において取り扱う」と定められるのであれば、信託法第8章の定めるところにより受益権を表示する証券(受益証券)を発行する旨が定められているといえるため、信託法185条3項の受益証券発行信託に該当する。 このように整理されるのであれば、仮に、法人税法において、特定受益証券発行信託の前提として、受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託であることを求める表現が採用されたとしても、紙片を発行しない振替受益権がそのような信託に該当する可能性は排除されない。 このように、振替制度を利用することにより、受益権の流通の円滑化が図られている場合に、受益権を表示する紙片を発行するか否かによって、課税上の取扱いが変わらないことは、特定受益証券発行信託を集団投資信託に追加した趣旨(本連載第58回参照)に照らして、合理性がある。 紙片を発行せずに振替制度を採用する信託が、特定受益証券発行信託の要件を満たさない場合には、「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」(法法2二十九の二イ)に該当するかを検討することになるが、振替受益権について、上記のとおり、実際には受益証券は発行しないものの、信託行為においては「受益証券を発行する」と記載されるのであれば、少なくとも形式上は、「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」に該当することになる。 他方、受益権を表示する「紙片」を発行する旨の定めがない信託は「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」に含まれないという見解を採用した場合には、本信託のように、紙片を発行せず(電磁的方式による)振替制度を採用する外国信託の場合には、信託契約等に紙片を発行する旨の定めがないことにより、「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」に該当しないということが起こりうる。 このような比較が示すバランスの悪さを考慮すると、「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」には、少なくとも社債等振替法の振替制度に類似した振替式を採用し、(電磁的方式により)受益権を発行する定めのある外国信託も含まれるというような解釈を採用することに一定の合理性を認めることができる。   (了)

#No. 604(掲載号)
#泉 絢也
2025/01/30

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第64回】「国際裁判官の恩給課税取消請求事件(地判令5.3.16)(その2)」~所得税法35条、ICJ規程32条等~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第64回】 「国際裁判官の恩給課税取消請求事件(地判令5.3.16)(その2)」 ~所得税法35条、ICJ規程32条等~   税理士 青木 幹     6 裁判所の判断 ICJ規程32条8は、租税を免除されなければならない対象を、「salaries, allowances, and compensation」として規定する。その他ICJ規程32条には、同条1で規定する「annual salaries」、同条2で規定する「special annual allowance」、同条3で規定する「special allowance」、同条4で規定する「compensation」がそれぞれ用いられており、これらが、ICJ規程32条8に照らして、免税となることに疑いはない。他方、同条7において用いられている「retirement pensions」と同一の文言は、32条8には用いられていない。かかるICJ規程32条8の規定ぶりに照らせば、ICJ規程32条8が免税の対象とする「salaries, allowance, and compensation」には、同条7に規定する「retirement pensions」は含まれないと解するのが、条約法条約による用語の解釈として自然なものである。 原告は「allowances」 は、フランス語正文では(allocations)と表記されており、英語及びフランス語の辞書の複数で、すべての報酬の意味も含むとされており、「retirement pensions」が、免税を規定している同条8の直前に置かれている上、「The above」が、「salaries, allowances, and compensation」を指し示しており、「retirement pensions」もICJ規程32条8の免税に含まれると主張する。 しかし、前述のとおり、「salaries」、「allowances]、「compensation」のそれぞれの文言が、ICJ規程32条1ないし6において現れた後に、同条8において「salaries、allowances、compensation」を免税の旨定める同条の文脈に照らせば、ここでいう「allowances」とは、社会通念上「allowances」の語句に相当するような金銭一般を意味するのではなく、同条2及び3で「allowances」(「special annual allowance」及び「special allowance」)と規定された具体的金銭を指しているとするのが自然である。「retirement pensions」が「allowances」の一種という説明が辞書に記載されていることから直ちにICJ規程32条8にいう「allowances」に含まれると解することはできない。 加えて、同条1から7の一連の規程がICJ裁判官及び書記に対する報酬の種別、決定主体及び法定手続についての国連組織内におけるいわば内部的な法律を定めているものと解されることからすると、同条7と同条8の順序を入れ替えることは規定ぶりの並びにおいてやや不自然であるともいえ、同条8の位置からその租税免除対象に同条7の「retirement pensions」が含まれる(その解釈を避けたかったのであれば同条7と同条8を入れ替えれば足りたはずである)との原告の主張は、その前提においていささか無理があるといわざるを得ない。ICJ規程32条8の免税に「retirement pensions」が含まれないことは、「The above」の文言があることによっても左右されるものではない。 英国において、ICJ規程32条8に規定する「retirement pensions」が租税免除の対象となる「emoluments」(報酬)に含まれるとして課税していないとして、ICJ規程32条8の免税の対象に含まれると主張するが、条約法条約上、ある条約の解釈に当たり他国の慣例が考慮されるのは、それが「条約の適用について後に生じた慣行であって、条約解釈についての当事国の合意を確立するもの」に該当する場合であるところ、外務省が2000年以降にICJ裁判官を輩出した国のうち、「retirement pensions」を非課税と解している国が2ヶ国、課税と解している国が6ヶ国であり、フランス及びオランダの最上位の裁判所判決も課税するとしていることから、「retirement pensions」を課税しない慣行は確立していないといえる。 原告は、外務省調査が英国の事例を載せていないので信頼性がなく参照する価値はないと主張するが、非課税とする国も載せており、仮に英国の例を載せても、原告の主張するような当事国の合意を確立するような慣行にまで至っていないとみることができる。フランス及びオランダの裁判例は、書記(Registrar)に関するもので裁判官の受ける「retirement pensions」にはあてはまらない旨主張するが、ICJ規程32条7は、裁判官と書記が受ける「retirement pensions」に特段差異を設けた規定ぶりとなってない以上、裁判所書記に対する判決は、裁判官にも当てはまると解するのが自然である。   7 判例についての考察 ICJは、United Nations Charter(国連憲章)で、国連の主要な司法機関と定められおり、「Annex Statute(附属規程)」に従って機能を果たすとされている(※1)。また、Convention on the Privileges and Immunities of the United Nations(国際連合の特権及び免除に関する条約(国際連合特権免除条約)において、国際連合が支払った給与及び手当に対する課税を免除することとなっている(※2)。United Nations Charter(国連憲章)のAnnex Statute(附属規程)であるICJ規程は、条約に該当するとして、Vienna Convention on the Law of treaties(条約法条約)(※3)を解釈のよりどころとして、判示していると考えられ、被告が証拠として提出した規程制定の経緯やフランス及びオランダの最高裁判所の判示、外務省の調査結果からも、判決には共感できる。とりわけ、ICJ規程32条8の文言「The above salaries, allowances, and compensation shall be free of all taxation」には、文脈から「retirement pensions」を含まないと解釈することは、自然と考えられるが、課税していない国も存在する(※4)。 (※1) United Nations Charter, Chapter XIV: The International Court of Justice Article 92: The International Court of Justice shall be the principal judicial organ of the United Nations. It shall function in accordance with the annexed Statute, which is based upon the Statute of the Permanent Court of International Justice and forms an integral part of present Charter. (※2) Convention on the privileges and immunities of the United Nations, Section 18. Officials of the United Nations shall: b.be exempt from taxation on the salaries and emoluments paid to them by the United Nations; (※3) Vienna Convention on Law of Treaties: SECTION 3 INTERPRETAION OF TREATIES, Article 31 General rule of interpretation, 1 A treaty shall be interpreted in good faith in accordance with the ordinary meaning to be given to the terms of treaty in their context and in the light of its object and purpose.  Article 32 Supplementary means of interpretation, Recourse shall be supplementary means of interpretation, including the preparatory work of the treaty and the circumstances of its conclusion, in order to confirm the meaning resulting from the application of article 31, or to determine the meaning when the interpretation according to article 31: (a) leaves the meaning ambiguous or obscure; or (b) leads to a result which is manifestly absurd or unreasonable. (以下、和訳) 条約に関するウィーン条約(条約法条約) 第3節 条約の解釈 第31条 解釈に関する一般的な規則 1 条約は、文脈によりかつその趣旨及び目的に照らして与えられた用語の通常の意味に従い、誠実に解釈するものとする。 第32条 解釈の補足的な手段 前条の規定の適用により得られた意味を確認するため又は次の場合における意味を決定するため、解釈の補足的な手段、特に条約の準備作業及び条約の締結の事情に依拠することができる。 (a) 前条の規定の解釈によっては意味があいまい又は不明確である場合 (b) 前条の規定の解釈により明らかに常識に反した又は不合理な結果がもたらせられる場合 (※4) 黒神直純「国際裁判官の恩給に対する課税免除」ジュリスト1597号(令和5年度重要判例解説、2024年)268頁において、ICJ規程32条8の免税規程に恩給を含める慣行も含めない慣行も未だ確立しているとは言えないから、「租税免除を享受しない者からすれば、不満がくすぶり続けるわけであり、1日も早く国連として統一的な指針がうちだされることが望まれる。」との意見が国際法学者から表明されている。 一方で、この裁判では争われなかったが、Convention on the Privileges and Immunities of the United Nations Article V OFFICIALS Section 18 Officials of the United Nations shall: b. be exempt from taxation on the salaries and emoluments paid by the United Nations. (国際連合の特権及び免除に関する条約(国際連合特権免除条約)第5条第18項:国際連合の職員は、(b)国際連合が支払った給料及び手当に対する課税を免除される)とICJ規程32条8の規程とが一致していないことに触れておきたい。 国際連合特権免除条約は、ICJ規程32条8のように、免税範囲を「salaries, allowance, and compensation」としておらず、単に職員に国際連合から支払われる「salaries and emoluments」を免税と規定している。「emoluments」の意味は広く報酬を意味し、退職金や年金も含むとの解釈も十分にあり得ると考えられる。「emoluments」の一般的な用語の意味の手がかりとしては、「Cambridge Dictionary」では「payment for work in the form of money or something else of value」と定義され、用例として「The emoluments of the highest-paid director totalled £382,000, including pension contributions」とあり、年金拠出金などすべての報酬という解釈もあり得ると考えられる。 英国でのICJ裁判官の恩給を非課税とする取扱いは、使用している用語が「emoluments」であり、この用語は国際連合特権免除条約18条の用語であることから、ICJ規程ではなく、国際連合特権免除条約18条が非課税の根拠となっている可能性があると考えられる。同条約とICJ規程の射程が明確になるような改正や統一的な解釈の合意が国際連合で図られることが望まれる。   (了)

#No. 604(掲載号)
#青木 幹
2025/01/30

有価証券報告書における作成実務のポイント 【第10回】

有価証券報告書における作成実務のポイント 【第10回】   史彩監査法人 パートナー 公認会計士 西田 友洋   今回は、有価証券報告書のうち、【経理の状況】の【注記事項】(追加情報)から(連結キャッシュ・フロー計算書関係)までの作成実務ポイントについて解説する。 なお、本解説では2024年3月期の有価証券報告書(連結あり/特例財務諸表提出会社/日本基準)に原則、適用される法令等に基づき解説している。   1 追加情報 連結財務諸表規則で特に定めている注記のほか、連結財務諸表提出会社の利害関係人が企業集団の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する適正な判断を行うために必要と認められる事項があるときは、当該事項を注記する。この注記を追加情報という。 追加情報は、追加情報として独立して記載する場合と、関連する他の注記と同じ箇所に記載する場合がある。そのため、投資家がわかりやすいように記載することが考えられる。 例えば、以下のような場合には、追加情報として注記することを検討する必要がある。 【事例:(株)プレサンスコーポレーション 2024年9月期の有価証券報告書】 【事例:(株)SHIFT 2024年8月期の有価証券報告書】 【事例:ヤマトホールディングス(株) 2024年3月期の有価証券報告書】 【事例:山一電機(株) 2024年3月期の有価証券報告書】   2 連結貸借対照表関係 連結貸借対照表関係注記では、連結貸借対照表に関係する注記を記載する。例えば、以下を記載する。なお、以下を注記する場合は、連結で注記する必要があるため、各子会社の情報も入手する必要がある。 【事例:萩原工業(株) 2024年10月期の有価証券報告書】 【事例:(株)ティア 2024年9月期の有価証券報告書】 【事例:アイビーシー(株) 2024年9月期の有価証券報告書】 【事例:浜松ホトニクス(株) 2024年9月期の有価証券報告書】 【事例:(株)進和 2024年8月期の有価証券報告書】   3 連結損益計算書関係 連結損益計算書関係注記では、連結損益計算書に関する注記を記載する。例えば、以下を記載する。なお、以下を注記する場合は、連結で注記する必要があるため、各子会社の情報も入手する必要がある。 【事例:(株)アトラエ 2024年9月期の有価証券報告書】 【事例:三洋貿易(株) 2024年9月期の有価証券報告書】 【事例:ニシオホールディングス(株) 2024年9月期の有価証券報告書】   4 連結包括利益計算書関係 連結包括利益計算書関係注記では、連結包括利益計算書に関する以下の注記を記載する。なお、連結で注記する必要があるため、各子会社の情報も入手する必要がある。 【事例:KNT-CTホールディングス(株) 2024年3月期の有価証券報告書】   5 連結株主資本等変動計算書関係 連結株主資本等変動計算書関係注記では、連結株主資本等変動計算書に関する以下の注記を記載する。 【事例:(株)イチネンホールディングス 2024年3月期の有価証券報告書】   6 連結キャッシュ・フロー計算書関係 連結キャッシュ・フロー計算書関係注記では、連結キャッシュ・フロー計算書に関する注記を記載する。例えば、以下を記載する。なお、連結で注記する必要があるため、各子会社の情報も入手する必要がある。 【事例:(株)ミツウロコグループホールディングス 2024年3月期の有価証券報告書】 【事例:(株)九電工 2024年3月期の有価証券報告書】 (了)

#No. 604(掲載号)
#西田 友洋
2025/01/30

〈ベテラン社員活躍のための〉高齢者雇用Q&A 【第7回】「65歳以上の雇用(70歳までの就業機会確保措置)」

〈ベテラン社員活躍のための〉 高齢者雇用Q&A 【第7回】 (最終回) 「65歳以上の雇用(70歳までの就業機会確保措置)」   Be Ambitious社会保険労務士法人 代表社員 特定社会保険労務士 飯野 正明   ― 解 説 ― 1 70歳までの就業機会確保措置 70歳までの「就業機会の確保措置」として挙げられているのは、以下の5つです。 ご質問にある通り、これらは現在「努力義務」となっており、65歳までの雇用確保ができていれば、法的には問題ありません。 ちなみに、65歳までの雇用確保措置が「努力義務」とされたのが2000年です。その後、2004年に「義務化」されました(施行日は2006年4月1日)。ただし、この時は、対象者を限定することが可能となっており、2012年改正により、経過措置がありながらも希望者全員が対象となりました(施行日は2013年4月1日)。そして、この経過措置が終了するのが2025年3月31日となっています。 努力義務から義務化まで13年、経過措置の終了を合わせると25年かかって完全に適用されることになります。70歳までの「就業機会の確保措置」が努力義務となったのは、2021年です。先の例から見ても、義務化にはまだ少し時間がかかると考えます。   2 在職老齢年金 65歳以上も引き続き働くとなると、気になるのは、「働きながら年金をもらう場合には、どれくらい調整されるのか」ということでしょう。 「賃金+老齢厚生年金」が50万円を超えると、老齢厚生年金の支給調整が始まり、その額は、賃金上昇額の2分の1相当額が支給停止となります。 (※) 執筆時点では、「50万円」を「62万円」に引き上げる方向で調整が進められています。 なお、ここでいう「賃金」とは、「総報酬月額相当額」のことで、毎月の給与にボーナスも含めた1年間の賃金額を12分割したものとなります。また、老齢年金には、「老齢基礎年金」(国民年金)と「老齢厚生年金」があり、支給調整の対象となるのは、「老齢厚生年金のみ」となっています。 在職中は、70歳までは、老齢厚生年金をもらいながら、厚生年金保険料を負担することとなります。70歳まで加入した分は、退職後再計算され、年金額に反映されることとなります。なお、「老齢基礎年金」については、賃金との調整はありませんので、働きながらでも満額支給されます。65歳以降の加入期間については、毎年9月1日においてその年の8月までの加入期間を加えて再計算し、10月分の年金から改定されます。なお、改定は在職中であっても行われます(2022年4月より法改正)。 厚生労働省が出している「平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))」の2024年度の給付水準は、約23万円です。ここには、夫婦2人分の老齢基礎年金13.6万円が入っていますので、厚生年金の額はざっと10万円ほどとなります。したがって、給与が40万円を超えてくると、もらえる老齢厚生年金の額が調整され始めるというイメージとなります。 【図表1】令和6年度の年金額の例(昭和31年4月2日以後生まれの方の場合) ※1 令和6年度の昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額)は、月額67,808円です。 ※2 平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。 (出所) 日本年金機構「令和6年4月分からの年金額等について」 つまり、賃金が年収ベースで見て480万円程度なら、老齢厚生年金の受給に影響はなさそうです。今の60歳以上の賃金水準からすれば、支給調整の対象になる方はそう多くはないでしょう。   3 65歳以降の雇用の現状 実際、70歳までの就業確保措置を導入している企業は、徐々に増えている状況にあり、全体では31.9%となっています。ただし、301人以上の企業が25.5%となっているのに対して、それ以下の企業(21~300人)は32.4%となっています。人数規模が小さい方が、実施率は高くなっています。これは、規模が小さい企業の方が、人材確保が難しくなってきており、在職中のシニア世代のベテラン社員の活用を図っていることが考えられます。 積極的にシニア世代の社員の活用を図るのであれば、法的に義務化される前に、早めに手は打っておいた方がよさそうです。 では、具体的にはどうすればよいのでしょうか。下図を確認すると、実際に、定年制の廃止(3.9%)、定年の引上げ(2.4%)を選択している企業は数少なく、やはり、65歳を超えても継続雇用制度を適用している企業(25.6%)が多くなっています。 【図表2】就業確保措置の内訳 (出所) 厚生労働省「令和6年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します」   4 65歳以降の雇用をどのように考えるか 65歳を超える社員に継続雇用制度を適用する場合、以下の3つのケースが考えられます。 ①のケースにおいては、定年退職時に賃金を引き下げていることを前提に考えると、賃金を下げたまま60歳以降、最長10年間もそのままの状況が続くこととなります。これは改善したいところです。 賃金が下がればモチベーションも下がるのが常。モチベーションが下がったままの社員を長く雇用することは得策とはいえません。また、昨今は若年層の大幅な賃金アップの情報が増えています。新卒の賃金が30万円を超えている企業も少なからずあるようです。定年後再雇用者の賃金が低いとなると、気持ち良く働く環境にあるとはいえないでしょう。再雇用制度の賃金を見直したうえで、導入すべきであると考えます。 ②、③については、そもそも定年年齢を65歳に延長するための準備が必要です。定年延長については【第5回】をご参照ください。 そのうえで希望者全員を対象者とするか、会社側が対象者の選択権を持つかが問題となります。筆者とお付き合いのある社長の多くは、会社側が選択権を持ちたいと言います。なぜなら、シニア世代の方には、「個人差」があるからとのことです。会社にとって必要な能力や経験、資格を持っている方には働き続けてほしいが、そうでない方については雇用継続を控えたいというのが本音のようです。 筆者としても、今は会社側に選択権があった方がよいのではないかと考えます。体力面でも個人差はあるため、一律で65歳を超えて雇用するというのは、もう少し先になってから検討してもよいのではないでしょうか。 *  *  * いずれにしろ、人手不足の折、65歳以降も就労意欲がある労働者は多くいるようです。また、実際就業者数も増加傾向にあります。一定の年齢が来た時点で一律に退職してもらうのではなく、会社にとって貴重な戦力には働いてもらい、そして、できるだけ多くの社員が、会社にとって貴重な戦力となるように働き方を整備することが求められています。 (連載了)

#No. 604(掲載号)
#飯野 正明
2025/01/30

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例101】株式会社クシム「取締役1名に対する辞任勧告の決議および社内調査委員会設置に関するお知らせ」(2024.11.25)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例101】 株式会社クシム 「取締役1名に対する辞任勧告の決議および社内調査委員会設置に関するお知らせ」 (2024.11.25)   公認会計士/事業創造大学院大学教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる開示は、株式会社クシム(以下「クシム」という)が2024年11月25日に開示した「取締役1名に対する辞任勧告の決議および社内調査委員会設置に関するお知らせ」である。同社の取締役である田原弘貴氏(以下「田原氏」という)に対して、取締役の辞任を勧告することを決定したという内容である。   2 辞任勧告の理由 その開示の「辞任勧告の理由」の記載は次のとおりである。田原氏はクシムの未公表の会社情報(インサイダー情報)を漏洩していた可能性が非常に高いため、辞任勧告を受けることとなった。また、その情報漏洩等について詳細に調べるため、社内調査委員会の設置も決定されている。 なお、2025年1月9日に開示された「社内調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」添付の調査報告書(以下「調査報告書」という)の記載によると、田原氏がインサイダー情報を漏洩したとされる「意見交換会」が開催された「2024年11月上旬」は2024年11月5日であり、また、弁護士による田原氏に対するヒアリング等の事前調査が行われた「2024年11月下旬」は2024年11月22日である。   3 インサイダー情報の内容 2024年11月5日開催の意見交換会において田原氏が漏洩したとされるインサイダー情報とは、クシムと株式会社フィスコの経営統合であった。調査報告書に詳細な記載があるが、その前の2024年12月2日に開示された「当社取締役のインターネット上の投稿に関するお知らせ」に既に次のように記載されていた。 田原氏は、インターネット上への投稿において、その時点で未公表のクシムと株式会社フィスコの経営統合(その検討は中止されたとのことだが)に言及しているとのことである。同氏は上場会社の取締役であるのに、インサイダー取引規制や適時開示についてまったく知らないようである。社内調査委員会の結果を待つまでもなく、これをもって、2024年11月5日開催の意見交換会において田原氏がインサイダー情報を漏洩したことは事実であり、それ以前に漏洩していた可能性も高いと言えるだろう。   4 なぜこのタイミングで 田原氏に対する辞任勧告と社内調査委員会設置は急遽2024年11月25日に決定されたように見える。社内調査委員会設置を決定したといっても、まだそのメンバーは決まっていなかったようである。2024年12月9日に「(経過開示)社内調査委員会設置に関するお知らせ」を開示して、そこでメンバーを明らかにしている。 田原氏は2023年1月開催の定時株主総会で選任されており(2022年12月22日開示「代表取締役の異動および経営体制の内定に関するお知らせ」)、辞任しなくても、2ヶ月後の2025年1月開催予定の定時株主総会終結時に任期満了となる。普通ならば、そのときをもって退任ということで終わらせそうである。しかし、そうではなく、なぜあえて辞任勧告を決定して、同氏によるインサイダー情報漏洩についても公表したのだろうか。 クシムは、当初、田原氏によるインサイダー情報漏洩について公表し、同氏に対して辞任勧告を行おうとも、また、社内調査委員会を設置しようとも考えていなかったのではないだろうか。「事前調査の結果、田原氏によって情報漏洩が継続的になされていた可能性が非常に高く」とされているが、調査報告書には、2024年11月22日に行われた弁護士によるヒアリングにおいて「情報漏洩が継続的になされていた可能性」が確認されたとする記載はない。本当は「事前調査の結果」ではなく別の事情によって2024年11月25日の決定に至ったのではないだろうか。 クシムは今回の開示と同日に「株主提案に関する書面受領のお知らせ」を開示している。1.78%の議決権を有する株主である田原氏による株主提案に関する書面を2024年11月22日に受領したというのである。おそらくその株主提案があったため、田原氏に対する辞任勧告と社内調査委員会設置を急遽2024年11月25日に決定したのではないだろうか。   5 株主提案の内容 その株主提案は、田原氏を含む6名の取締役選任を2025年1月開催予定の定時株主総会に付議するというものである。その6名に田原氏以外の現任の取締役は含まれていないため、彼らの退陣を求めるもののようである。田原氏からこうした株主提案がなされたため、クシムは同氏に対する辞任勧告と社内調査委員会設置を決定することにしたのだろう。また、その株主提案に反対するためにも、田原氏によるインサイダー情報漏洩について公表する必要があったのだろう(後の2024年12月24日に「株主提案に対する当社取締役会の反対意見に関するお知らせ」を開示)。 そうだとすると、田原氏は、自身のインサイダー情報漏洩を暴露されてしまう原因を自身で作ってしまったことになる。しかも、それはきちんと準備されたものではなく、急ごしらえのものだったようである。取締役候補者のうち3名はクシムの完全子会社の代表取締役や監査役である。クシムとしては、当然、彼らに対して考えを聞くことになるが、「株主提案に対する当社取締役会の反対意見に関するお知らせ」によると、彼らは株主提案について事前に承諾しておらず、田原氏は勝手に彼らを取締役候補者にしたとのことである。   6 最低の情報管理体制 当然の結果だが、調査報告書は、田原氏が、2024年11月5日開催の意見交換会においてインサイダー情報を漏洩していた事実を認めている(それ以前において漏洩していたことまでは認めていないが、その可能性は否定できないとしている)。 この事例は、田原氏に端を発するドタバタ劇のようにも見えるが、それだけでは片付けられないだろう。そもそもそうした人物を取締役に据えて、きちんと監督できていなかったことが問題であり、クシムの情報管理体制は最低水準と言える。インサイダー取引規制や適時開示についてまったく知らない人物を上場会社の取締役に据えることにどのようなリスクがあるかを学ぶ上では有益な事例と言えるだろう(そうした取締役は他にも多く存在するのかもしれないが)。 なお、クシムの業績は厳しく、2023年10月期は赤字であるだけでなく、売上総利益がマイナス、すなわち「売上総損失」という通常見られない状態に陥っている。2024年10月期第3四半期も依然として売上総損失であり(2024年12月20日に「2024年10月期決算発表の延期のお知らせ」を開示し、本稿執筆時において2024年10月期決算短信は未開示)、今回の騒動が致命傷にならなければいいのだが。 (了)

#No. 604(掲載号)
#鈴木 広樹
2025/01/30
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