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《速報解説》 JICPA、意見募集を経て「監査報告書に係るQ&A」の改正を確定~EDINETで提出する監査報告書関係のQ&Aも3問追加~

《速報解説》 JICPA、意見募集を経て「監査報告書に係るQ&A」の改正を確定 ~EDINETで提出する監査報告書関係のQ&Aも3問追加~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022年10月13日付けで(ホームページ掲載日2022年10月17日)、日本公認会計士協会は、監査基準委員会研究報告第6号「監査報告書に係るQ&A」を改正し、表題を「監査基準報告書700実務ガイダンス第1号「監査報告書に係るQ&A(実務ガイダンス)」」として公表した。 これにより、2022年8月9日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に対するコメントの概要及び対応も公表されている。 以下の事項に関するQ&Aを追加するなどの改正を行っている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 開示書類等において、監査報告書を開示せず、監査を受けている旨の記載を企業が行う場合の留意点 「Q1-9」として、「開示書類等において、監査報告書を開示せず、監査を受けている旨の記載を企業が行う場合の留意点」を追加している。 監査報告書は対象である財務諸表と一体となって利用されることが想定されているが、実務上、ディスクロージャー誌等の開示書類等において監査報告書を開示せず監査を受けている旨のみの記載が行われることがある。 そこで、「Q1-9」では、単に監査を受けている旨の記載のみがなされると監査意見の内容について利用者の誤解が生じるリスクがあることなどから、監査意見の内容や監査対象の財務諸表について利用者の誤解が生じないように、監査意見の類型の記載や監査対象の財務諸表に関する追加的な情報の記載を行うなど状況に応じた対応をとることが重要であるとしている。 状況例と起こり得る利用者の誤解について具体的に記載し、対応の方法を示している。   Ⅲ EDINETで提出する監査報告書関係のQ&A 次のQ&Aを追加している。 (了)

#阿部 光成
2022/10/18

《速報解説》 会計士協会、「監査事務所及び監査業務における品質管理並びに監査業務に係る審査に関するQ&A(実務ガイダンス)」案を公表~改正された品質管理基準報告書等の理解を支援する全6問を掲載~

《速報解説》 会計士協会、「監査事務所及び監査業務における品質管理並びに監査業務に係る審査に関するQ&A(実務ガイダンス)」案を公表 ~改正された品質管理基準報告書等の理解を支援する全6問を掲載~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022年10月17日、日本公認会計士協会は、「品質管理基準報告書第1号実務ガイダンス「監査事務所及び監査業務における品質管理並びに監査業務に係る審査に関するQ&A(実務ガイダンス)」」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、「監査事務所における品質管理」(品質管理基準報告書第1号)などに従って監査業務を実施するに際に、理解が必要と思われる事項について解説するものである。 意見募集期間は2022年11月23日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 品質管理基準報告書第1号のQ&A 1 品質管理システムの整備の期限と初回の評価基準日 公認会計士法上の大規模監査法人の場合には2023年6月30日までに、公認会計士法上の大規模監査法人以外の場合には2024年6月30日までに、品質管理システムをデザインし適用する。 個々の監査業務については、2023年7月1日(大規模監査法人以外の場合には2024年7月1日)以後開始する事業年度に係る財務諸表の監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用となる。 2 「最高責任」と「最終的な責任」の相違 「品質管理システムに関する説明責任を含む最終的な責任」は、監査事務所の最高責任者に限定された責任である。 これに対し、「品質管理システムに関する最高責任」は、監査事務所の最高責任者以外の者への割当てが可能であるという点において違いがある。 3 監査業務の検証において他の監査事務所を利用する場合の独立性の確認 監査業務の検証において他の監査事務所を利用する場合には、倫理規則実務ガイダンス●号「倫理規則に関するQ&A」400-3-1において、当該検証の実施者の独立性の保持について確認することが考えられ、当該検証において他の監査事務所を利用する場合には、当該監査事務所と検証の実施者の双方の独立性の保持について確認することが考えられるとされている。   Ⅲ 品質管理基準報告書第2号のQ&A 1 審査担当者の選任に関する責任者自身が審査担当者となること 審査担当者の選任に関する責任者自身が監査業務の審査担当者となることは禁止されていない。 ただし、審査担当者の選任に当たって、選任される者の適性及び能力を客観的に評価する必要があることに留意する。 2 審査担当者の適格性における適切な権限の留意点 監査責任者が上司で審査担当者が部下という関係がある場合においても、そのことだけで審査担当者としての適切な権限の要件を満たさないということにはならない。 ただし、このような関係がある場合には審査担当者としての権限が弱まることがあり得るため、審査担当者の権限に影響を与える他の事項を考慮の上、審査担当者の権限の適切性について十分な検討を行う必要がある。   Ⅳ 監査基準報告書220のQ&A サービス・プロバイダーは、「監査事務所における品質管理」(品質管理基準報告書第1号)16項(22)において、品質管理システム又は監査業務の実施において利用される資源を提供する監査事務所の外部の個人又は組織をいうと定義されている。 (了)

#阿部 光成
2022/10/18

《速報解説》 大規模監査法人以外の監査事務所の利用を想定した品質管理に関するツール(実務ガイダンス)の公開草案をJICPAが公表~品質管理システム構築に当たっての手順や文書、様式例等示す~

《速報解説》 大規模監査法人以外の監査事務所の利用を想定した 品質管理に関するツール(実務ガイダンス)の公開草案をJICPAが公表 ~品質管理システム構築に当たっての手順や文書、様式例等示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022 年10 月17 日、日本公認会計士協会は、「品質管理基準報告書第1号実務ガイダンス「監査事務所における品質管理に関するツール(実務ガイダンス)」」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、2021年11月16日に改訂された「監査に関する品質管理基準」において求められている品質管理システムの構築に当たっての具体的な手順や文書等に関する実務ガイダンスである。様式例も示されている。 公認会計士法上の大規模監査法人以外の監査事務所の利用を想定して作成されている。 意見募集期間は2022年11月23日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主要な概念 1 対象範囲 実務ガイダンスは、1つの例示にすぎず、次の事項に注意が必要である。 2 リスク・アプローチ 監査事務所自らが、品質管理システムの項目ごとに達成すべき品質目標を設定し、当該品質目標の達成を阻害し得るリスクを識別して評価を行い、評価したリスクに対処するための方針又は手続を定め、これを実施するという、リスク・アプローチに基づく品質管理システムが導入されている。 3 品質管理システム 品質管理システムとは、以下の合理的な保証を提供するために監査事務所が整備及び運用するシステムである 4 品質管理システムの構成要素 品質管理システムは、以下の9項目の構成要素を対象としている。 5 品質目標の設定 品質目標とは、品質管理システムの構成要素について監査事務所が達成すべき成果である。 6 監査事務所のリスク評価プロセス 品質リスクを識別し評価する際、監査事務所は以下を実施しなければならない。 7 対応のデザインと適用 監査事務所は、品質リスクの評価の根拠に基づき、また当該根拠に応じた方法により、品質リスクに対処するための対応をデザインし適用しなければならない。 8 適用の柔軟性 各監査事務所の品質管理システムの設計は、特にその複雑性や組織化の点において多様なものとなる。   Ⅲ 品質管理システムの構築 各監査事務所は、品質管理システムを整備、運用し、その結果を評価するための体制づくり、審査への対応など様々な対応が求められる。 1 基本的計画の決定 品質管理システムに関する最高責任者は、社員会等の決定を踏まえて、品質管理システムを構築するための基本的計画を定める。 2 品質管理システムの整備状況の把握 品質管理システムの基本的計画が決定された後、監査事務所内では、監査事務所の性質及び状況並びに監査事務所が実施する業務の内容及び状況を踏まえて、特定の側面ごとに、品質目標を設定し、その達成を阻害し得るリスク(品質リスク)の識別と評価を行った上で、当該品質リスクに対処するための対応の整備状況を把握し、その結果を記録・保存する。 3 把握された不備への対応及び是正 品質管理システムの整備状況の把握の過程で把握された品質管理システムの不備には適切な対応が図られなければならない。 4 監査事務所を取り巻く内外の環境変化への対応 時間の経過とともに、想定していなかった監査事務所を取り巻く内外の環境変化によって、品質目標の追加、品質リスクや対応の追加又は修正の必要性が生じることがある。 (了)

#阿部 光成
2022/10/18

《速報解説》 監査役協会、「コーポレートガバナンス改革と監査役等スタッフの実態に関する考察」を公表~会社法の3つの機関設計の実務面での違いや監査役スタッフの役割等について研究~

《速報解説》 監査役協会、「コーポレートガバナンス改革と 監査役等スタッフの実態に関する考察」を公表 ~会社法の3つの機関設計の実務面での違いや監査役スタッフの役割等について研究~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022年8月4日付で(ホームページ掲載日は2022年10月13日)、日本監査役協会関西支部 監査役スタッフ研究会は、「コーポレートガバナンス改革と監査役等スタッフの実態に関する考察」を公表した。 これは、会社法の3つの機関設計(監査役会設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社)の実務面での違い、導入する企業数が増えた監査等委員会設置会社のガバナンス、監査役スタッフの役割について研究したものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 コーポレートガバナンス改革の流れ 会社法、監査役監査基準、コーポレートガバナンス・コード等の改正の変遷について、簡潔に記載している。 また、各機関設計の特徴や課題などについても簡潔に記載している。 2 監査役等の責任と期待 監査役等の法的責任について、適法性監査(取締役等の職務執行が法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守して行われているかどうか)だけなのか、それとも、妥当性監査(取締役等の職務執行が違法ではなくとも経営方針等に準拠して合理的・経済的・効率的・効果的であるか、すなわち経営判断として妥当かどうか)も含まれるのかどうかについて簡潔に論じたうえで、次のように記載している。 3 コーポレートガバナンス・コード コーポレートガバナンス・コードは法令ではないため、監査役の直接の監査対象ではないが、企業価値向上の観点から上場会社の監査役が注視しておくべき重要な原則である。 コーポレートガバナンス・コードの原則のうち、監査役に関連する主な原則が記載されている。 4 監査等委員会設置会社の実態 アンケート結果では、次の回答が見られた。 アンケートやヒアリングに関する分析結果を詳細に記載している。 また、「付録 監査等委員会設置会社への移行の実務(例)」も記載している。 5 監査役スタッフの職務 アンケートをもとに、監査役スタッフの独立性、業務内容、求められるスキルや、内部監査部門との連携、三様監査会議(監査役、内部監査部門、会計監査人)について記載している。 (了)

#阿部 光成
2022/10/17

《速報解説》 国税庁が「令和5年1月からの国外居住親族に係る扶養控除等Q&A」を公表~令和2年度税制改正の見直しに対応した全45問を掲載~

 《速報解説》 国税庁が「令和5年1月からの国外居住親族に係る扶養控除等Q&A」を公表 ~令和2年度税制改正の見直しに対応した全45問を掲載~   令和4年10月12日、国税庁は「令和5年1月からの国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)」(以下単に「Q&A」という)を公表した。 居住者が、国外居住親族について扶養控除、配偶者控除、障害者控除又は配偶者特別控除(以下「扶養控除等」という)の適用を受けるためには、給与等又は公的年金等の支払者に「親族関係書類」「送金関係書類」の提出又は提示をする必要がある。 上記制度につき令和2年度税制改正において適用要件が見直されており、令和5年1月からは扶養控除の対象となる国外居住親族は、扶養親族(居住者の親族のうち、合計所得金額が 48 万円以下である者)のうち、①年齢16歳以上30歳未満の者、②年齢70歳以上の者、③年齢30歳以上70歳未満の者のうち、次の要件のいずれかに該当する者に限ることとされている。 また、上記③に該当する国外居住親族につき、扶養控除の適用を受けようとする居住者は、給与等又は公的年金等の支払者に「親族関係書類」「留学ビザ等書類」「送金関係書類」又は「38 万円送金書類」の提出又は提示をする必要がある(Q&A[Q1])。 上記の見直しについては、令和5年1月以後に支払われる給与等及び公的年金等、並びに令和5年分以後の所得税に適用され、今回公表されたQ&Aはこの見直しに対応した内容が記載されている。 Q&Aは3部構成となっており、[Q1]~[Q17]については(共通)の項目として、制度の概要[Q1]や適用を受けるための手続概要[Q2]といった基本事項をはじめ、確認書類(親族関係書類・留学ビザ等書類・送金関係書類・38 万円送金書類)の定義([Q8]~[Q11])などについて取り上げている。 [Q18]~[Q31]については(親族関係書類・留学ビザ等書類)として、これら書類に関する項目が取り上げられており、例えば[Q20]では、「親族関係書類」が旧姓で記載されている場合の対応や[Q28]においては、親族に応じて必要となる「親族関係書類」の組合せを、図表も用いて明らかにしている。 また、[Q32]~[Q45]では、(送金関係書類・38 万円送金書類)に関する項目が取り上げられ、[Q33]では、国外居住親族への送金に関する金額基準、[Q37][Q38]では、「送金関係書類」の該当性などを示すなど、令和5年1月以降の適用にあたって参考となる事項が全45問にわたって取りまとめられているため、確認しておきたい。   (了)

#Profession Journal 編集部
2022/10/14

プロフェッションジャーナル No.490が公開されました!~今週のお薦め記事~

2022年10月13日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.490を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2022/10/13

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第112回】「節税商品取引を巡る法律問題(その6)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第112回】 「節税商品取引を巡る法律問題(その6)」   中央大学法科大学院教授・法学博士 酒井 克彦   Ⅴ 消極的説明義務 1 税理士への説明行為の委任 節税商品は「節税」を売り物とするものであるから、商品内容の説明に当たっては本体契約の説明に加えて課税上の取扱いに係る説明もなされなければならないし、課税上のリスクに係る説明もなされなければならないと考える。ところが、先に述べたとおり、金融機関や保険会社の販売担当者などが税制上の説明を行うには専門的知識の欠如という問題が惹起されるし、また、個別具体的に課税上の取扱いに係る説明を行うことは、税理士法に抵触することにもなりかねない。 この点について、森田章同志社大学名誉教授は、「従来の保険業法では、銀行員が保険の募集を行うことを想定していなかったので、保険外務員であれば顧客に開示すべきことであっても、銀行員なら何も開示しなくてもよく、むしろ説明を行うと保険業法に違反するという考え方すら存在して、変額保険の販売による被害を増大させたともいえよう」と分析される(森田章「変額保険」民商114巻4=5号731頁(1996)、同「金融サービス法」法時70巻10号26頁(1998))。 税理士法違反や保険業法違反を理由として自らが販売する商品の説明や商品に係るリスク説明を放棄することが許されるのであろうか。 投資者の自己決定権侵害を招来するおそれを考慮に入れると、販売者による自己完結的な説明義務履行の不能をもって当該説明義務を免責することは妥当でない。また、銀行と顧客との間の投資勧誘契約の不存在を前提として、銀行の説明義務に否定的見解を展開する論者の反論があるのも事実である。 そこで、販売者が自らの義務履行を税理士に委任(代理権授与)することが考えられよう。つまり、販売者と税理士との委嘱契約の締結により、税理士が節税商品の課税上の取扱いに係る説明を投資者に対して行うことができれば、税理士による説明が販売者に法的に効果帰属するため、販売者の説明義務の履行完結が可能となろう。 2 消極的説明義務 ところで、販売者と税理士との委嘱契約の締結は販売者の選択的一方策を提示するにとどまるのか。ここで、いわゆる紀陽銀行事件として有名な大阪地裁堺支部平成7年9月8日判決(判時1559号63頁)及びその後のいくつかの変額保険訴訟において支持されている「消極的説明義務」を概観したい。 大阪地裁堺支部事案の概要は次のとおりである。 原告Xは、平成元年7月、Y1銀行の支店長代理、Y2保険会社の募集人の訪問を受け、変額保険の加入を勧誘され、これに加入したが、かかる保険解約に伴い損害を被った。Xは、Y1、Y2の従業員の変額保険加入についての説明義務違反を理由に、Y1、Y2の使用者責任を追及した。これに対して裁判所は、Y1、Y2双方の担当者に、変額保険の危険性についての説明義務違反を肯認した。すなわち、Y1銀行の支店長代理の勧誘が本件保険加入の動機になっている点を考慮して、Y1銀行の担当者としては、少なくとも、Y2保険会社の担当者の説明により顧客が損はしないと誤解しているのに、これを正す説明をしなかったとして、消極的説明義務違反があったと判示した。銀行の説明義務違反を肯定した大阪地裁堺支部は、保険業法により変額保険についての説明が制限されている銀行も、その内容について顧客が誤解している場合には、誤解を解くための説明を自らするか保険会社に説明を促すべき消極的説明義務があるとして、銀行の責任を肯定した。 同支部は、保険契約と融資契約は法律上別個であり、保険募集の取締に関する法律(当時)で銀行が保険の募集をすることは業法上できないから、銀行員には、変額保険の内容について積極的な説明をする義務はないとしたものの、「少なくとも、保険会社担当者Aの説明によって、原告Xが変額保険の内容について誤解している時は、誤解を解くための説明を自らするか、Aに再度の正確な説明を促すべきであるという消極的な説明義務が生じうるというべきである」と判示したのである。 3 専門的知識の欠如した者及び税理士でない者に係る消極的説明義務 消極的説明義務を肯定する論旨は、投資顧問契約やそれに類似した契約を前提とした法的構成ではなく、保険募集を特定の者に限定する保険業法の下で、保険会社の説明を促す間接的な義務として銀行の法的責任を認める。税理士法も保険業法と同様の一種の業法であるが、個別具体的な課税上の取扱いの説明を税理士に限定する税理士法の下で、税理士の説明を促す間接的な義務を措定する根拠として、節税商品取引における説明義務者の法的責任論にこの議論を援用することは不可能ではないと思われる。 上記大阪地裁堺支部の判示内容に沿って考えると、専門的知識の欠如や税理士法抵触の問題があるため、販売者が「誤解を解くための説明を自らする」ことが不可能であるとすると、「(専門家に)正確な説明を促すべきであるという消極的説明義務」の履行のみが販売者の採り得る説明義務の履行手段となる。 説明義務者の説明が未完結のままであるとすると、この放置は投資者の自己決定権侵害に繋がることとなるため、この危難を漫然と傍観することは違法となるとする法的構成の採用は十分にあり得る。 松本恒雄一橋大学名誉教授は、「消極的説明義務」の本質を不作為の違法性論において論じられる「先行行為に基づく作為義務」の一種であるとし、自己の積極的行為によって相手方を危難に陥れた者は、漫然とそれを傍観していると違法になる場合があるとする法的構成を採用する判決として大阪地裁堺支部判決を支持される(松本恒雄「融資金の使途先に関する融資者の責任」自正47巻10号27頁(1996))。 (続く)

#No. 490(掲載号)
#酒井 克彦
2022/10/13

谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第7回】「国税通則法8条(~9条の3)」-国税の連帯納付義務についての民法の準用-

谷口教授と学ぶ 国税通則法の構造と手続 【第7回】 「国税通則法8条(~9条の3)」 -国税の連帯納付義務についての民法の準用-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   国税通則法8条(国税の連帯納付義務についての民法の準用)   1 連帯債務と連帯納付義務 連帯債務とは、「同一内容の給付(=可分給付)について複数の債務者が各自独立した全部給付義務を負担し、かつ、債務者中の誰かの全部給付によつて総債務者の債務が消滅する、という複数主体の債務」(西村信雄編『注釈民法(11)債権(2)』(有斐閣・1965年)48頁[椿寿夫執筆])をいうが、税法は一定の場合(税通9条、9条の2、税徴33条後段、自税4条1項後段・2項、登税3条後段、印税3条2項、輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律20条・関税13条の3)についてこれを「連帯納付義務」として定め、国税通則法8条はこれについて民法の連帯債務に関する規定の一部を準用する旨を定めている。 国税の連帯納付義務について、次のように説かれることがある(品川芳宣『国税通則法講義-国税手続・争訟の法理と実務問題を解説-』(日本租税研究協会・2015年)10頁。下線筆者)。 つまり、「民法上の連帯債務は、当事者が契約を締結することによる当事者の意思によって生じるのであるが、税法上は、そのような意思とは関係なく、一定の法律関係にある者が第三者の国税の納付義務について連帯債務を負うことになる」(品川芳宣『現代税制の現状と課題(租税手続編)』(新日本法規出版・2017年)14頁)ので、国税の連帯納付義務者は、予測可能性及び法的安定性の点で民法上の連帯債務者に比べて更に不利な立場に立たされることになるといってもよかろう。 前記の囲み内の引用文で例として挙げられている民法432条の準用だけでなく民法の連帯債務の規定の準用は、一般に、国(国税債権者)にとって国税債務の履行確保のために有利に働く(同引用文の表現を借りれば「極めて都合のいい」)措置である。国税通則法8条のこのような性格づけは、同条の次のような沿革からみても、的確なものである。 国税通則法8条は、同法制定前の国税徴収法30条の規定を承継したものであるが、この規定は昭和34年改正国税徴収法(昭和34年4月20日法律第147号)において、「[従来]国税徴収法の逐条通達では、税法で連帯納付義務の内容について明文の規定がないので、一般私法すなわち民法の連帯債務の内容を、特に租税債務の性質が許さないものがあれば別ですが、そうでない限りは、類推適用するのだという考え方」(租税法研究会編『租税徴収法研究(上)』(有斐閣・1959年)148頁[桃井直造発言])に基づく取扱いを、「徴税の合理化」の一環として(租税徴収制度調査会「租税徴収制度調査会答申」(昭和33年12月)12頁、15頁参照)、立法的に明確化したものである(中川一郎=清永敬次編『コンメンタール国税通則法』(税法研究所・加除式[1989年追録第5号加除済])D367頁[北野弘久・吉良実執筆]参照)。 このように、国税の連帯納付義務の制度は、昭和34年国税徴収法改正で「徴税の合理化」のために拡充された第二次納税義務制度(租税徴収制度調査会・前掲「答申」12-15頁参照)と同じく、国税債務の履行確保ないし国税徴収の確保のための制度である。ただ、両制度は義務の法律構成を次のとおり異にする。 連帯納付義務は、連帯債務と同じく複数主体が義務を連帯して負うものであるが、その義務が納付義務(前回3参照)である以上、複数主体が租税実体法上の(成立した)納税義務及びこれに係る申告義務等の租税手続(納税義務の確定・履行[納付・徴収]手続)上の義務を連帯して負うものであるのに対して、第二次納税義務は、成立し確定した納税義務について滞納処分後に当該納税義務者と一定の関係を有する者に対して租税徴収手続上補充的に負担せしめる義務である。このように法律構成を異にするからこそ、両義務は併存し得るのである(税徴33条後段参照)。   2 連帯納付義務と連帯納付責任 国税の連帯納付義務については、共有物等に係るもの(税通9条)は「1つの課税物件が2人以上に帰属しているような場合」(武田昌輔監修『DHCコンメンタール国税通則法』(第一法規・加除式)843頁、志場喜徳郎ほか共編『国税通則法精解〔令和4年改訂・17版〕』(大蔵財務協会・2022年)202頁)に課されるという考え方が示されているところ、この考え方は、租税実体法上の(成立した)納税義務を基礎とする義務としての納付義務の法律構成(前回3参照)に適合するものである。というのも、そのような場合には、2人以上の者について同一内容の納税義務の成立を観念すること(納税義務の成立に関するいわば「観念的競合」)ができるからである。他の連帯納付義務についても、上記の考え方が基本的には妥当するといえよう。 これに対して、1つの課税物件が2人以上の者に分割されて帰属することになる場合には、上記のような考え方は妥当しない。このような場合について、税法は、連帯納付義務とは異なり、連帯納付責任を定めることがある。国税通則法9条の3は、法人の分割(分社型分割を除く)の場合にその分割承継法人がその分割法人の分割前の国税について、その分割法人から承継した財産の価額を限度として、連帯納付責任を負うことを定めているが、そのほか、相続税法34条が相続・贈与財産の取得者・贈与者の連帯納付責任を、地価税法29条が土地等の受贈者等の連帯納付責任を、一定の限度額(受益額等)の下で定めている。また、法人税法152条は通算法人の連帯納付責任を限度額なしに定めている。 連帯納付責任は、相続による国税の納付義務の承継の場合の相続人の納付責任(税通5条3項)と類似した性質を有する(志場ほか共編・前掲書207頁参照)。この場合の相続人の納付責任は、前回3でもみたとおり、「もともと被相続人の全財産を引当てとし、そのいずれに対しても滞納処分をすることができたのに、相続の開始によってこの引当財産が切り離され、資力のない相続人に相続されたために被相続人の国税の徴収が困難になることを防止しようとするもの」(志場ほか共編・前掲書175頁)である。 そうすると、連帯納付責任は、国税の徴収確保のための人的有限責任(通算法人については人的無限責任)の性格をもつものとみてよかろう(相税34条について金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂・2021年)696頁参照)。法人税法152条が通算法人の連帯納付責任を限度額の定めのない無限責任としたのは、「連結納税制度同様、一部の法人に財産を集中させることにより徴収を回避することも可能となること等を考慮し」(財務省「令和2年度 税制改正の解説」1003頁)、法人税の徴収確保をより徹底したためである。 このように、国税の連帯納付義務と連帯納付責任とは法的性格を異にすることから、「これらの連帯納付責任について法8条をそのまま適用することは妥当ではなく、一種の特別規定として解釈しなければならない。」(志場ほか共編・前掲書207頁)と考えられている。例えば、相続財産取得者の連帯納付責任(相税34条1項)の確定手続について、最判昭和55年7月1日民集34巻4号535頁は次のとおり判示した(この判決では「連帯納付義務」という表現が用いられている。同様の用語法については金子・前掲書694-698頁参照)。   3 連帯納付責任をめぐる法的諸問題 ところで、国税の連帯納付責任も、連帯納付義務と同じく、本来の納税者と一定の関係を有する者に対する税法の規定に基づく負担であることから、その者(連帯納付責任者)は、自己の意思に基づいて連帯債務を負う者(民法上の連帯債務者)に比べて予測可能性及び法的安定性の点で更に不利な立場に立たされることになる。この問題は、次の指摘(金子・前掲書696頁=①。そこでいう「主張」の1つとして前掲最判の伊藤正己裁判官補足意見=②参照)にみられるように、特に相続税・贈与税の連帯納付責任(相税34条)について議論がされてきた。 上記①の引用文にいう「主張」は「適正手続の保障の観点から」(金子・前掲書698頁)されてきたものであり、これに対応する改正が平成23年度(6月)税制改正(財務省「平成23年度 税制改正の解説」430-432頁参照)や平成24年度税制改正(財務省「平成24年度 税制改正の解説」417-420頁参照)でされたところであるが(金子・前掲書697-698頁参照)、そもそも、相続税・贈与税の連帯納付責任については、実体論の観点からも、次のような問題の指摘(同696頁。下線筆者)がされてきた。 確かに、相続税・贈与税の連帯納付責任は、「今日の法思想」、さらにいえばこれの基礎にあると考えられる近代法の基本原理である個人主義の思想からすると、まさに「異例」の制度といわざるを得ないであろう。したがって、これを戦前の我が国の「家」制度の遺物としてみる見解も一概に不当とはいえないように思われる。そのような見解に基づき、相続税法34条1項が個人の尊厳と人格尊重の理念を定めた憲法13条に違反する無効な規定である旨の主張に対して、大阪地判平成15年1月12日[未公刊・LEX/DB文献番号28091735]は次のとおり判示し(下線筆者)、これを認めなかった(控訴審・大阪高判平成16年2月20日[未公刊・LEX/DB文献番号28091734]もこれを是認した)。 この判示の中の下線部の「思想」は、「この[相続税法34条1項の]連帯納付の義務は、連帯納税義務ではなく、他の相続人の納税義務に対する一種の人的責任であるが、その基礎にある思想は、一の相続によって生じた相続税については、その受益者が共同して責任を負うべきであるという考え方である。」(金子・前掲書695頁)として述べられている「思想」と同じであり、しかもこの「思想」が前記引用文の中の「今日の法思想」(同696頁)との関係について特段の留保ないし限定もなく同一書物の隣接頁で述べられていることからすると、この「思想」はそこでは「今日の法思想」と親和的なものと考えられていると解し得るであろう。 そうすると、この「思想」は、相続人相互の関係を、「家」制度にみられたような家族的身分共同体関係としてではなく、(構成員の自由意思に基づく合意によって各構成員の受益割合・方法等が決定される)利益共同体関係として捉えた上で、「一の相続によって生じた相続税については、その受益者が共同して責任を負うべきであるという考え方」を措定するものと解され、その限りにおいては、個人主義に基礎を置く「今日の法思想」と親和的なものといえよう。 もっとも、そのような「思想」は、贈与税の連帯納付責任(相税34条4項)についてはその正当根拠として援用することはできないように思われる。というのも、贈与者と受贈者の関係は、上記のような相続人間の利益共同体関係とは異なり、一方的な受益関係であるからである。では、この連帯納付責任はどのような考え方によって正当化することができるのであろうか。この点について、東京高判平成19年6月28日判タ1265号183頁は次のとおり判示した。 この判決でも説示されている昭和22年創設の贈与税のように、受贈者の受益に着目して受贈者に連帯納付責任を負わせるのであれば、贈与税の徴収確保を正当根拠として援用することに十分に合理性を認めることができよう。しかし、贈与者は、贈与により財産を手放しその財産が示す担税力を減少させたのであるから、贈与税の徴収確保を理由に贈与者の連帯納付責任を正当化することはかなり困難であるように思われる(武田昌輔監修『DHCコンメンタール相続税法』(第一法規・加除式)2765頁も参照)。 前掲東京高判は、贈与税の徴収確保の必要性を強調するために、「受贈者がもともと財産がない場合」や「受贈者が当該取得した財産を他に処分して無資力者となった場合」を取り上げているが、前者はどのような場合を問題にしているか必ずしも明らかでなく(受贈財産の価額の合計額が贈与税の基礎控除[相税21条の5・税特措70条の2の4]及び配偶者控除[相税21条の6]の合計額を下回る場合を問題にしているのであれば、そもそも贈与税の徴収確保を問題にする余地はない)、後者も詐害行為取消権(税通42条)や第二次納税義務(特に税徴39条)によって対処可能な場合であることが多いであろうから、それらの場合について贈与税の徴収確保のために贈与者に連帯納付責任を負担せしめる必要性は特にないように思われる。 そうすると、贈与税の連帯納付責任については、前掲東京高判も勘案する「立法の沿革」に照らして、その正当根拠を理解するしかないように思われる。前掲東京高判が説示するように、昭和22年の贈与税創設当時は、「贈与は、いわば遺産の前渡しであり、担税力を前渡しの遺産に求めるべきとの考え」から、贈与者課税方式及び受贈者の連帯納付責任が採用されていたが、その「考え」は、贈与税創設以前における一定の贈与に対する相続税の課税、すなわち、「推定相続人等の特定の者に高額な動産などを贈与した場合に、相続が開始したものとみなして相続税を課税するという特殊な形態」(菊地紀之「相続税100年の軌跡」税大ジャーナル1号(2005年)35頁、39頁。下線筆者)に由来するのではないかと考えられる。 つまり、相続税法34条4項は、贈与税の連帯納付責任に関しては、受贈者を「推定相続人」とみた上で、贈与者と受贈者との関係を家族的身分共同体関係として捉え、贈与したとはいえなお「家族内」に留まっている財産の一定価額を限度として贈与者に、家族的身分共同体関係を基礎とする人的責任を負担せしめたものと解されるのである。 このように考えてくると、贈与税の連帯納付責任こそが、個人主義に基礎を置く「今日の法思想」に馴染まず、憲法13条違反を問われるべきであろう。 (了)

#No. 490(掲載号)
#谷口 勢津夫
2022/10/13

〈徹底分析〉租税回避事案の最新傾向 【第1回】「はじめに」

〈徹底分析〉 租税回避事案の最新傾向 【第1回】 「はじめに」   公認会計士 佐藤 信祐     1 はじめに 令和4年4月19日、同月21日と最高裁判決が立て続けに下された。平成28年2月29日の最高裁判決(ヤフー・IDCF事件)を含めると、租税回避に対する最高裁の考え方が概ね示されたと考えられる。令和4年4月19日及び同月21日の最高裁判決に係る調査官解説もいずれ公表されると思われるが、今後、クライアントからの節税の相談に応じる際には、これらの最高裁判決を理解しておく必要がある。 平成28年2月29日の最高裁判決を参考にすると、組織再編成に係る包括的租税回避防止規定(法法132の2)の適用については、①法人の行為又は計算が不自然なものであるかどうか、②税負担減少目的以外の事業目的が十分に認められるかどうか、③税負担減少の意図があったかどうか、④制度趣旨に反するかどうか、の4点により検討されることになる。その後のTPR事件(東京高判令和元年12月11日)及びPGM事件(国税不服審判所令和2年11月2日裁決)でも同様の検討がされていることから、上記4点により包括的租税回避防止規定の適用が検討されるという理解で差し支えがないと思われる。 ここで問題となるのが、③の「税負担減少の意図」である。最近の税務調査では、メールを閲覧したり、反面調査をしたりすることで、税負担減少の意図を探ろうとする試みが見受けられる。ただし、「税負担減少の意図」を「税負担が減少することを知っていた」と解するのであれば、組織再編成を行うに際し、租税法上の検討を行わないということはあり得ないため、法人税の負担が減少する組織再編成のすべてに「税負担減少の意図」があるといえてしまう。このようなものについてまで、「税負担減少の意図」があったことを理由に租税回避として認定すべきでない。 「組織再編成を行うに際し、税負担を減少させようとした」と解するのであれば、租税回避に該当する余地があるのかもしれない。ただし、例えば、不採算の子会社を清算する場合において、当該子会社の清算により、親会社において子会社整理損失が計上されたり(法基通9-4-1)、子会社の繰越欠損金が引き継がれたりすることがある(法法57②)。不採算の子会社であれば、事業を廃止し、会社を清算することに、十分な事業目的が認められるはずであるが、親会社の法人税の負担が減少することが分かれば、それを意識した子会社の清算にならざるを得ない。このような場合であっても、「税負担減少の意図」があるものと考えるべきなのだろうか。 広辞苑によると、「意図」とは、「あることを(実現)しようと考えること。また、考えた事柄。もくろみ。ねらい。」と定義されている。すなわち、上記のような子会社の清算については、法人税の負担を減少させることが主目的だったとはいえないものの、日本語を素直に読めば、「税負担減少の意図」があったと解さざるを得ない。そのため、税務調査においても、税負担減少の意図があったと認定しようとしてくるのかもしれない。 ただし、平成28年2月29日の最高裁判決では、①法人の行為又は計算が不自然なものであるかどうか、②税負担減少目的以外の事業目的が十分に認められるかどうか等の事情を考慮したうえで、「当該行為又は計算が、組織再編成を利用して税負担を減少させることを意図したものであって、組織再編税制に係る各規定の本来の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用を受けるもの又は免れるものと認められるか否か」を検討すべきであるとしている。 すなわち、「組織再編成を利用して税負担を減少させることを意図したもの」とは、不自然な行為又は計算が行われ、かつ、税負担減少目的以外の事業目的が十分に認められないことが前提となっている。そして、調査官解説でも「組織再編成を利用して税負担を減少させることを意図したものであること(租税回避の意図)」(※1)と表記されていることから、最高裁判決における「税負担減少の意図」は「租税回避の意図」のことを意味し、一般的な「税負担減少の意図」とは明らかに異なるものである。本稿では、一般的な用語としての「税負担減少の意図」と区別するために、租税回避に該当する「税負担減少の意図」のことを「税負担減少の意図(租税回避の意図)」と表記するものとする(※2)。 (※1) 徳地淳・林史高「判解」法曹時報69巻5号300頁(平成29年)。 (※2) 本稿公表前における著者の文献及び講演資料では、一般的な用語としての「税負担減少の意図」をそのまま使用してしまったため、「税務調査において税負担減少の意図を否定することは難しい」と説明していたが、ここでいう「税負担減少の意図」とは「税負担減少の意図(租税回避の意図)」とは異なるものである点にご留意されたい。すなわち、組織再編成を行うに際し、租税法上の検討を行わないということはあり得ないことから、税務調査において「税負担減少の意図」を否定することは難しいが、経済合理性や事業目的が十分に認められることを説明すれば、「税負担減少の意図(租税回避の意図)」を否定することはできるのである。 このように、「税負担が減少することを知っていた」という程度では租税回避と認定することはできず、「組織再編成を行うに際し、税負担を減少させようとした」としても、事業目的が十分に認められるのであれば、租税回避として認定することはできない。すなわち、前述のように、法人税の負担が減少する組織再編成のすべてに「税負担減少の意図」があると認められるものの、事業目的も十分に検討したうえで組織再編成を行うことから「税負担減少の意図(租税回避の意図)」も認められる事案は稀である。 換言すると、法人の行為又は計算が不自然なものであり、かつ、税負担減少目的以外の事業目的が十分に認められない場合に限り、「税負担減少の意図(租税回避の意図)」があったといえることから、包括的租税回避防止規定の検討では、(A)法人の行為又は計算が不自然なものであるかどうか、(B)税負担減少目的以外の事業目的が十分に認められるかどうか、(C)制度趣旨に反するかどうかの3つを中心に、包括的租税回避防止規定の適用を検討すべきであり、一般的な意味としての「税負担減少の意図」があったかどうかについては、さほど重要ではないはずである。   2 租税法律主義 前述のように、最近の税務調査や税務訴訟では、過度な節税に対して厳しい対応がなされているが、これは時代の流れであるように思われる。かつては認められていたものが、法律や慣習の変化により認められなくなってくることは様々な産業で起きており、最近の事案だと節税のための保険商品が挙げられる。 租税法律主義についても同じことがいえる。もともと、租税法律主義は、国王が法律に基づかずに税を徴収することを防ぐために、西洋諸国で導入されたものである(※3)。我が国でも、日本国憲法において租税法律主義が定められており(憲法84)、租税回避の範囲を安易に広げることは、法的安定性の観点から問題がある。 (※3) 下村芳夫「現代における租税の意義について-租税法律主義の歴史的考察を中心として-」税大論叢5号1-31頁(昭和47年)参照。 これに対し、令和4年4月19日の最高裁判決では、「本件購入・借入れのような行為をせず、又はすることのできない他の納税者と上告人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反する」と判示された。すなわち、節税のために税理士に高い報酬を支払うことのできる富裕層とそれができない中間層との間に著しい不公平があることから、過度な節税に対して厳しい対応をすべきであるということだと思われる。 自由主義国家という観点からは、明確な法律の規定に基づかずに、租税回避であることを理由として更正処分を行うことは望ましくはないのかもしれない。これに対し、福祉国家という観点からは、富裕層が税理士に高い報酬を支払って、税負担を減らそうとすることも望ましくはないはずである。本最高裁判決を見る限り、自由主義国家の観点からではなく、福祉国家の観点から租税法律主義を捉えようとしており、従来の租税法律主義の考え方とは異なる可能性がある。 そうなると、租税法規が予定していたものなのか、制度趣旨に反してはいないのかという点を常に検討せざるを得ないし、もし、租税法規が予定したものではなく、かつ、制度趣旨にも反しているものの、経済合理性や事業目的が十分に認められる場合には、それを税務調査及び税務訴訟で説明できるようにしておく必要があるということがいえる。 (了)

#No. 490(掲載号)
#佐藤 信祐
2022/10/13

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第1回】「グラクソ事件(最判平21.10.29)(その1)」~租税特別措置法66条の6、日星租税条約7条1項、ウィーン条約法条約32条~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第1回】 「グラクソ事件(最判平21.10.29)(その1)」 ~租税特別措置法66条の6、日星租税条約7条1項、ウィーン条約法条約32条~   税理士 中野 洋     1 事件の背景 本件は、英国における移転価格課税を回避するためにグループ内で行った資金捻出スキームが、日本での租税特別措置法66条の6に規定するタックス・ヘイブン対策税制(以下「CFC税制」)の適用へと発展した事案である。 〈図1〉参考 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 P社は昭和54年にシンガポールにおいて設立された胃潰瘍薬の製造販売業を営む法人であり、X社は平成3年4月からP社の発行済株式の90%を保有する日本法人である。X社は英国のA社に発行済株式の100%を保有されており、いずれも英国の世界的な製薬企業であるPグループに属している。A社は、英国歳入庁から、P社から受け取るロイヤリティ-が少なすぎるとの指摘を受けており、Pグループにはグループ全体の問題として、P社からA社への巨額の資金決済が必要となっていた。P社はシンガポールのグループ法人に事業を譲渡することで巨額の資金を準備したが、平成10年に至っても英国歳入庁との間で具体的な協議がまとまっていなかった。   2 事件の概要 P社は、平成10年3月に保有するグループ法人の株式を譲渡等し、約8億シンガポールドル(約560億円)の株式譲渡益を計上した。ところが、株式譲渡益非課税の同国においてはこれが課税所得に含まれず、実質的な税負担割合は約4.32%となり、CFC税制に規定するトリガー税率を大きく下回ることとなった。P社は株式譲渡の翌年度にA社へ追加ロイヤリティーを支払ったが、株式譲渡で得た巨額の資金は支払時までコマーシャルペーパーで運用していた。 そこで、日本の課税庁は、P社の平成10年1月1日から同年12月31日の事業年度を基礎に、X社の平成11年1月1日から同年12月31日の事業年度に係る法人税についてCFC税制を適用した。一審(東京地判平成19年3月29日)、二審(東京高判平成19年11月1日)ともにX社の請求が棄却され、X社が上告した。 〈図2〉概要図 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 本件の主要な争点が、CFC税制が日星租税条約7条1項の事業所得条項(以下、単に「7条1項」)に抵触するか否か、というCFC税制の根幹を揺るがすテーマであるが、CFC課税に発展した直接の原因は“期ズレ”の問題である(上記〈図2〉参照)。 そもそも、本件では、株式譲渡(平成10年)とロイヤリティーの確定・支払(平成11年)年度がズレたことが原因であり、移転価格課税を回避するための資金捻出スキームがCFC課税へと発展してしまった事案である。同一の事業年度に株式譲渡益とロイヤリティーが生じていれば、CFC税制が適用されることはなかった。   3 X社の主張(7条1項は経済的二重課税を禁止する) X社の主張は、7条1項が「企業の利得を対象とした規定であり、一方の締約国(シンガポール)の企業の利得に対しては、他方の締約国(日本)は、その内国法人に対する課税という形であっても、課税することができないことを定めたものであるところ、CFC税制は、外国法人の利得に対し、我が国に恒久的施設がないにもかかわらず課税するものであるから、7条1項に違反する」(括弧書き筆者)というものである。   4 判示1(7条1項は法的二重課税を禁止するにとどまる) 最高裁は7条1項について、「いわゆる『恒久的施設なくして課税なし』という国際租税法上確立している原則を改めて確認する趣旨の規定とみるべきであるところ、企業の利得という課税物件に着目する規定の仕方となっていて、課税対象者については直接触れるところがない。しかし、同項後段が、B国(日本)に恒久的施設を有するA国(シンガポール)の企業に対する課税について規定したものであることは文理上明らかであり、これは同項後段を受けた規定であるから、同項前段も、また、A国の企業に対する課税について規定したものと解するのが自然である。すなわち、同項は、A国の企業に対するいわゆる法的二重課税を禁止するにとどまる」(下線、括弧書き筆者)とした。   5 検討 判示は、7条1項前段について「課税対象者については直接触れるところがない」と前置きしながらも、A国企業に対する課税について規定したものであるから、同項が「課税対象者」に対する規定であるとしている。一方で、「企業の利得という課税物件に着目する規定の仕方」と述べている点からは、文言通りに読めば同項が「課税対象物」に対する規定と読めることも示唆している。 7条1項は、源泉地国における居住地国の課税権を制限するものであるが、本件においては、制限の対象が「物」なのか「者」なのかが争われている。判示は、同項後段が課税対象「者・」に対する規定であることから、同項前段も課税対象「者・」に対する規定であると結論付けている。しかし、同項後段について、課税対象「者・」について規定したものと断言できるのであろうか(※1)。源泉地国の企業の利得のうち、居住地国が課税できる範囲を定めているに過ぎないと読めるように思われる(※2)。 (※1) 税務訴訟資料259号 順号11302、28頁。「その主語が『企業の利得』であるという点からも明らかなように・・・・・同項は、『納税義務者』に着目した定めではなく、『企業の利得』という課税物件に着目した定めなのである」 (※2) 宮塚久・北村導人「近時のタックス・ヘイブン対策税制に係る裁判例の分析・検討〈国際課税の裁判例分析3〉」租税研究、725号(2010年)324頁。 わが国の憲法構造によると、租税条約(7条1項)と国内法(CFC税制)が抵触する場合、租税条約の規定が優先する(※3)ことから、7条1項に抵触する限りにおいてCFC税制の規定が制限される。7条1項が企業の利得という「課税対象物」について規定しているとすれば、同項の規制の対象が経済的二重課税にまで及び、CFC税制が7条1項に抵触する可能性が生じる。これに対し、同項を課税対象「者」に対する規定と解する立場からは、日本の親会社に対するCFC課税は同項に抵触しない。最高裁は、同項が「課税対象者」に対する規定であると解することにより、法的二重課税を禁止するにとどまると判示した。 (※3) 条約の誠実順守義務(憲法98条2項) 〈図3〉目線の違い ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   6 7条1項が争点となった理由 X社が7条1項とCFC税制の抵触関係を争点とした背景については、平成14年6月28日のフランス国務院判決において、フランスのCFC税制がフランス・スイス租税条約に違反するとの判断が示されたことが影響している。中里教授は「当時のフランスのCFC税制は我が国の当時のCFC税制と類似するものであるから、我が国のそれもフランスと同様、租税条約に抵触する」(※4)と述べている。 (※4) 中里実「タックスヘイブン対策税制」税研、124号(2005年)75頁。 しかし、フランスにおいては国際的二重課税排除の方式として国外所得免除方式が採用されている。これに対して、わが国は国外源泉所得を課税対象に取り込んだ上で、外国税額控除方式により二重課税を調整する(全世界所得課税)方式である。国外源泉所得を課税対象から除外するフランスとは二重課税排除の方式が根本的に異なる。このような点から、フランスにおいては租税条約等の締結に際して、特段の配慮が必要なところそれがなされていなかったのが原因であり(※5)、このような中里教授の見解に対しては反対意見が多く見受けられる。 (※5) 「フランスの国外所得免除方式の立場からは、租税条約の締結に際して、CFC税制が租税条約に違反しない旨を定めておかなければならない」(駒宮史博「いわゆるCFC税制である租税特別措置法66条の6第1項による課税は、日星租税条約に反するか」判例時報、2081号(平成22年9月)など) ((その2)へ続く)

#No. 490(掲載号)
#中野 洋
2022/10/13
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