検索結果

詳細検索絞り込み

ジャンル

公開日

  • #
  • #

筆者

並び順

検索範囲

検索結果の表示

検索結果 10495 件 / 1911 ~ 1920 件目を表示

プラス思考の経済効果 【第11回】「初詣の経済効果」

プラス思考の経済効果 【第11回】 「初詣の経済効果」   関西大学名誉教授・大阪府立大学名誉教授 宮本 勝浩   1 はじめに 「初詣」は、日本における新しい年の最初のビッグイベントです。昔から全国の初詣の人出は非常に多い人数を記録していました。警察庁が2009年まで発表していた正月三が日の初詣の人数によると、2009年には全国で約9,939万人もの人々が初詣に出かけたとされています。2009年の日本の人口は約1億2,751万人でしたので、日本全体の約77.9%の人が初詣に出かけたという計算になります。しかし、コロナ禍以降、初詣の人数は減少傾向にあると想定されています。 今回は2023年の初詣の人出とその経済効果を分析しました。分析の結果、2023年の初詣の人出予想は約4,572万人、経済効果は約1兆2,344億円となりました。   2 初詣の人気ランキング 初詣は、健康、家内安全、世界平和、金運などを歳神様(家族を守ってくれる神様)にお願いするために出かける新年の恒例行事です。警察庁が2009年を最後に人数について発表しなくなったので、その後はそれぞれの寺社において発表される人数がマスコミで取り上げられています。ここでもそれらに従って、初詣の人数を紹介します。 【第1表】は株式会社MS-Japanのビジネスメディア「Manegy」が2019年2月7日に更新発表した新型コロナ前の2018年の初詣と、調査会社XYZが発表した新型コロナ禍の2020年の初詣人数のランキングです。やはり、コロナ禍の2020年は増加した寺社もありますが、全体としては落ちこんでいます。 【第1表】 初詣の人数トップ10   3 2023年の初詣の人出と消費額の推定値 2023年はどれだけの人が初詣に出かけるでしょうか。2023年の正月は行動制限も無くなり外出が増加すると予想する説と、新型コロナの第8波が高止まりしている状況から外出はまだまだ控えるでしょうと予想する説があります。 前述のように、警察庁発表のデータでは、2009年には日本全体の約77.9%の人が初詣に出かけたとされていますが、筆者はこの比率はかなり誇張された数値であると考えています。NHKは10年毎に「宗教に関する意識調査」(全国の18歳以上対象)を実施していますが、それによると、「初詣によく行く」と回答した人の割合は、1998年は56.1%、2008年は55.1%、2018年は53.9%となっています。そして、近年はコロナ禍で初詣に行く人の割合は減少してきていると考えられます。 株式会社日本マーケティングリサーチ機構が2022年1月7日に発表したデータ(全国の10~70代の男女対象にしたアンケートで有効回答は1,030人)によると、2022年に初詣に行った人の割合は40.1%であり、行かなかった人は59.9%でした。そして、2023年の初詣に行く予定の人の割合は44.27%、行かない予定の人は29.71%、不明の人が26.02%です。本報告書ではこの数値を参考にして計算を行うことにします。 (1) 10~70代の人口 総務省統計局が2022年11月21日に発表した人口推計では、10~70代の11月1日現在の人口の概算値は約1億328万人でした。もちろん、10歳未満や80歳以上の人も初詣に出かけますが、それらの人々の経費などは家族の人たちが負担しているか、ほとんどかからないと想定して本報告書の計算には算定しないことにします。 (2) 2023年の初詣の人数の推定値 これまでの計算から、2023年の初詣の人数は約4,572万人と予測されます。   4 2023年の初詣の総消費額(直接効果) 次に、初詣の1人当たりの消費額を推計します。国土交通省観光庁の2022年9月26日発表の「旅行・観光消費動向調査」の2021年1~12月期の資料によると、「観光・レクリエーション目的」の消費項目別消費単価は次のとおりです。 【第2表】 消費単価(万円/人) バスツアーなどで有名な神社やお寺に出かける一部の初詣のグループもありますが、ほとんどは家族や友人たちと出かけて、日帰りであると仮定します。初詣は参拝目的で、遊びに行くのではありませんので、娯楽等サービス費はほとんど消費しないと仮定します。 そうすると、1人当たりの消費額は、飲食費約4,000円(正月料金は高価である)、交通費は多くの人が日帰りなので、【第2表】の約5,000円の半額の約2,500円、そして買物代は約4,000円ではなく約6,000円(ほとんどの人が着飾って初詣をするので、晴れ着や洋服を新たに購入したり、衣装を借りたりします。また、破魔矢・お守り・おみくじなどを購入します)と仮定します。その結果、合計は約1万2,500円となります。 そうすると、初詣の総消費額は約5,715億円です。   5 経済効果 上記4で計算した初詣の総消費額約5,715億円を基にして、総務省内閣府が作成した最新の「全国産業連関表」(2019年に発表した2015年版の「産業連関表」の修正版)を用いて経済効果を推計すると、2023年の全国の初詣の経済効果は約1兆2,344億4,000万円となりました。 〈2023年の経済効果〉   6 2021年との比較 コロナ禍で一番初詣の人数の少なかったのは行動制限のあった2021年です。この年の初詣の人数と経済効果を2023年と比較してみましょう。 総務省統計局によると、2021年1月1日の10歳~79歳の人口は約1億423万人で、調査会社日本トレンドリサーチ(2021年1月5日発表)によると、2021年の初詣に行った比率は35.8%でした。その結果、初詣の人数は約3,731万人と推定されます。 そして、1人当たり消費単価が【第2表】のとおりだとすると、総消費額は約4,663億7,500万円となります。 この直接効果を用いて2023年と同じように経済効果を計算すると、約1兆73億7,000万円となりました。 〈2021年の経済効果〉   7 まとめ これまでの分析により、2023年の初詣の人出は約4,572万人、経済効果は約1兆2,344億円となります。これは、コロナ禍の2021年と比べて人数で約841万人、率にして約22.5%の増加、経済効果は約2,271億円、率にして約22.5%の増加になりました。 今後も新型コロナの影響、人口減少、物価の上昇、所得の減少などで初詣の人出がコロナ禍以前の水準に急速に戻るのは難しいかもしれませんが、2024年以後はワクチン接種や新薬の開発などにより新型コロナが沈静化され、日本の新年のスタートを飾る初詣の人出が以前の水準に戻ることを願っています。 (了)

#No. 504(掲載号)
#宮本 勝浩
2023/01/26

《速報解説》 上場会社等監査人登録制度に係る規定の整備等行う「公認会計法等改正に係る政令・内閣府令等」が公布される~施行は2023年4月1日から~

《速報解説》 上場会社等監査人登録制度に係る規定の整備等行う 「公認会計法等改正に係る政令・内閣府令等」が公布される ~施行は2023年4月1日から~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023(令和5)年1月25日、「公認会計士法施行令等の一部を改正する政令」(政令第15号)、「公認会計士法施行規則等の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第9号)等が公布された。 これにより、2022(令和4)年10月21日から意見募集されていた案が確定することになる。「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」も公表されている。 これは、2022(令和4)年5月11日に成立した「公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律」(令和4年法律第41号)の施行に伴い、関係政令・内閣府令等の規定の整備を行うものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 令和4年公認会計士法等改正に係る政令・内閣府令関係 1 上場会社等監査人登録制度に係る規定の整備 2 監査法人の社員の配偶関係に基づく業務制限に係る規定の整備 監査法人の社員が被監査会社等の役員等と配偶関係を有する場合に、監査法人の業務が制限されることとなる社員の範囲等を定める。 3 その他 4 施行期日等 政令は、2023(令和5)年4月1日から施行される。 内閣府令及び告示は、ガイドライン等と併せて、2023(令和5)年4月1日から施行・適用される。 公認会計士法施行規則の一部改正に伴う経過措置が規定されている。 「公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」(政令第14号)は、公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律の施行期日は、令和5年4月1日とするとしている。   Ⅲ 日本公認会計士協会の「公認会計士法改正に関連する協会制度変更要綱」 1 主な内容 2022年12月2日、日本公認会計士協会は、「公認会計士法改正に関連する協会制度変更要綱」を公表している。 これにより、2022年10月21日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。「「公認会計士法改正に関連する協会制度変更要綱案」(公開草案)に対するコメントの概要及び対応について」も公表されている。 これは、公認会計士法の改正による改正項目のうち、日本公認会計士協会の会則等を変更する必要のあるものに関して、「令和4年公認会計士法等改正に係る政令・内閣府令案等」を踏まえ、取りまとめたものである。 次の項目を取り上げている。 なお、公開草案からの変更に関しては、例えば、上場会社等監査人登録制度に係る制度変更において、「適格性確認のためのレビュー」の用語を「登録の審査のためのレビュー」へ変更するなど、一部の記載については趣旨の明確化を目的とした字句修正を行っているとのことである。 2 適用時期等 2022年改正公認会計士法は、公布の日(2022年5月18日)から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。変更規定は、経過措置を含め法令の施行に従う。 (了)

#阿部 光成
2023/01/26

《速報解説》 IASB、第2の柱モデルルール課税に係る繰延税金の会計処理からの一時的な救済措置を提案~影響下の企業に対しての的を絞った開示要求等の導入を記載~

《速報解説》 IASB、第2の柱モデルルール課税に係る繰延税金の会計処理からの一時的な救済措置を提案 ~影響下の企業に対しての的を絞った開示要求等の導入を記載~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023年1月9日、国際会計基準審議会(IASB)は、「国際的な税制改革-第2の柱モデルルール IAS第12号の修正案」を公表し、意見募集を行っている。原題は、“International Tax Reform―Pillar Two Model Rules Proposed amendments to IAS 12”である。 これは、経済協力開発機構(OECD)が公表した第2の柱モデルルールの間近に迫った適用から生じる繰延税金の会計処理からの一時的な救済措置を取り扱うものである。 企業会計基準委員会から上記公開草案の和訳が公表されており、本稿は、基本的に、当該和訳をもとに記載している。 公開草案に対するコメントは、2023年3月10日までである。 IASBは、公開草案に対するコメントを条件として、修正を2023年第2四半期に完了させることを目指している。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 1 第2の柱モデルルール 第2の柱モデルルール(Pillar Two model rules)は、2021年12月に、経済協力開発機構(OECD)が公表したルールであり、経済のデジタル化から生じる課税上の課題に対処するための2つの柱からなる解決策の1つである。 第2の柱モデルルールは次のようなものである。 2 法人所得税の会計処理への影響 IASBは、第2の柱モデルルールによる法人所得税の会計処理に与える潜在的な影響があると考えており、特に、利害関係者は当該ルールから生じる繰延税金の会計処理に関する不確実性に関して、懸念を示している。 公開草案はこれに応えるものであり、また、いくつかの法域では当該ルールの適用が間近に迫っており、緊急性のある内容である。 公開草案における提案は、次のことを導入するものである。詳細な内容は公開草案をお読みいただきたい。   Ⅲ 企業会計基準委員会の審議 2022年12月16日に政府税制調査会から公表された「令和5年度税制改正大綱」では、グローバル・ミニマム課税に関する法人税法の改正について記載されている。 「説明資料〔国際課税〕(令和4年11月4日(金)財務省)」では、第2の柱(グローバル・ミニマム課税)の考え方として「国際的に最低限の実効税率(15%)を定めた上で、それを下回る国(=軽課税国)における最低税率での課税を確保」すると記載されている。 「グローバル・ミニマム課税に関する改正法人税法への対応」については、2022年12月26日開催の第493回企業会計基準委員会で審議しており、これに関連する法人税法の改正がなされた場合、次の会計基準等の改正等が必要となる可能性があるものと考えられると記載されている(審議事項(3)-1、4項)。 グローバル・ミニマム課税に関する法人税法の改正が2023年3月31日までに国会において可決、成立した場合、現行の会計基準等によれば、成立日以降に決算日を迎える企業の財務諸表において、改正後の税法に基づき税効果会計の適用を行う必要がある。 税制改正大綱において、改正後の税法の適用は2024年4月1日以後とされているが、成立日以降に決算日を迎える企業の会計処理について何らかの会計基準上の対応をすることが必要か否かを検討する必要があるものと考えられると記載されている。 (了)

#阿部 光成
2023/01/24

《速報解説》 信託契約終了により帰属権利者が取得した被相続人の居住用家屋等について空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除は不適用~東京国税局からの文書回答事例~

《速報解説》 信託契約終了により帰属権利者が取得した被相続人の居住用家屋等について空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除は不適用 ~東京国税局からの文書回答事例~   税理士 菅野 真美   令和4年12月20日(ホームページ公表は令和5年1月10日)に東京国税局が、 事前照会を受けた信託契約終了により帰属権利者が取得した被相続人の居住用家屋及びその敷地(以下「居住用家屋等」)について空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除(以下「空き家控除」)(措法35③)の適用可否について、適用できないという回答を行った。この件について今回は検討する。   ▷どのような事案か 乙は母甲との間で、母の所有する居住用家屋等を信託財産とする信託契約を締結した。委託者兼受益者は母で、受託者は乙である。受益者の死亡により信託は終了し、居住用家屋等は帰属権利者の乙と乙の弟丙に帰属した。 乙と丙はこの居住用家屋等を相続のあった年の翌年に譲渡したが、この譲渡について、空き家控除の適用があるかについて甲が東京国税局に照会を行った。   ▷乙の見解はどのようなものか 乙はこの譲渡について、空き家控除の要件である「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」をした相続人に該当するから、空き家控除の適用はあると考えた。 なぜなら、この居住用家屋等は、信託の終了により遺贈により取得したものとみなされ(相法9の2④)、帰属権利者が居住用家屋等の所有者であった甲の相続人である。そして、乙や丙の状況は、相続人が相続又は遺贈により被相続人の財産を取得した相続人と同様に、適正な管理の責任を負うことになるためだからである。   ▷東京国税局の回答は 東京国税局は、次のような理由から空き家控除の適用がないと回答した。 信託の終了による財産の移転は「相続」や「遺贈」に該当せず、空き家控除の条文には相続税法の規定により遺贈等による財産の取得とみなされる場合を対象に含むとは規定されていない。また、帰属権利者は権利を放棄することができるから(信託法183③)、残余財産の取得を相続又は遺贈による財産の取得と同様に取り扱うことはできない。   ▷相続財産である株式の譲渡のみなし配当特例や相続税額の取得費加算の特例とどこが違うのか 空き家控除が、空き家問題の解消のための制度であるならば、信託を利用した場合は適用ができないとすることは不合理であると考える。 被相続人の死亡により相続人が信託の受益者となり、信託終了後に信託財産であった非上場株式を発行会社に譲渡した場合のみなし配当特例(措法9の7)や、相続税額の取得費加算の特例(措法39)は認められるという質疑応答事例がある。空き家控除の規定と異なり、これらの条文に「相続又は遺贈による財産の取得とみなされるものを含む」が規定されている。なぜ、空き家控除だけ規定されていないのだろうか。速やかな条文改正により、この問題が解決されることを期待する。 (了)

#菅野 真美
2023/01/20

《速報解説》 監査役協会、改正倫理規則を踏まえた監査役等の実務に関するQ&A集を公表~「報酬」及び「非保証業務の提供」を中心とした実務への影響を想定して取りまとめ~

《速報解説》 監査役協会、改正倫理規則を踏まえた 監査役等の実務に関するQ&A集を公表 ~「報酬」及び「非保証業務の提供」を中心とした実務への影響を想定して取りまとめ~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023年1月18日、日本監査役協会 会計委員会は、「日本公認会計士協会「倫理規則」の改正を踏まえた監査役等の実務に関するQ&A集」を公表した。 日本公認会計士協会の「倫理規則」は公認会計士の職業倫理に関する自主規制規範である。 その中には、「報酬」及び「非保証業務の提供」を中心に、監査役等の実務への影響が想定される事項が含まれているので、日本監査役協会は、今般、Q&A集として取りまとめている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 Q&A集は表紙を含めて32ページに及ぶものであるので、以下では主な内容について解説する。 1 倫理規則の改正と監査役等との関係(1-2) 日本公認会計士協会の倫理規則の改正により、主に次の2点において、監査役等の実務に大きな影響を及ぼすことが考えられる。 2 改正倫理規則による規律の対象(1-4) 今回の改正における監査役等にとって影響の大きい規定は、「社会的影響度の高い事業体」(Public Interest Entity:PIE)を主たる規律の対象とするものである。 PIEは、①公認会計士法上の大会社等、及び②会計事務所等が追加的に社会的影響度の高い事業体として扱うこととした事業体が該当する。 国内上場会社はすべて対象となる。ただし、報酬に関しては一部PIEでない場合の規律も追加となっている。 3 報酬に関する改正の概要(2-1、2-2) 監査役等に関連する主要な改正内容は次のとおりである。 改正後の倫理規則では、依頼人がPIEである場合、監査報酬、非監査報酬それぞれについて、監査人から監査役等に対してコミュニケーションを行うべき旨、並びにその内容が明示されている。 4 報酬関連情報の開示に関する改正(2-6) 会社がPIEである場合、次の事項についての開示が要求される。 5 非保証業務に関する改正の概要(3-1、3-8) 監査業務の依頼人である会社がPIEである場合に、監査人である会計事務所等は、当該会社、その子会社又は親会社等に非保証業務を提供する場合には、監査役等に対して情報提供を行った上で、事前に了解を得なければならない。 業務の量的又は質的な重要性にかかわらず、監査人により提供可能と判断されたすべての非保証業務が監査役等の事前の了解の対象となる。 6 非保証業務と非監査業務(3-2) 「非保証業務」と「非監査業務」の範囲は異なる。 保証とは、「誰かが一定の規準で作成した情報に対して、別の利用者のために信頼性を付与すること」である。 「監査業務」、即ち財務諸表監査、内部統制監査は、保証業務の一環という位置付けになる。 一方、例えば、サステナビリティや温室効果ガスに関する実績や記述等に対する保証は、非監査業務である保証業務であり、提供に際して事前の了解が求められる対象ではないということになる。 7 事前の了解に関するプロセス(3-4) 「事前の了解」を行うプロセスについては、全体にわたる画一的なルールは存在しないものの、趣旨を踏まえつつ監査役等と監査人の間でプロセスを事前に構築することが求められている。 プロセスとして定めることが想定される要素には次のものがあり、監査人側において、合意されたプロセスに基づいて到達した結論等について文書化することが求められている。 8 包括的な事前の了解の可否(3-7) 包括的な事前の了解の可否については、一定の考慮要素に基づく範囲で、包括的な事前の了解に基づく非保証業務の提供が可能とされている。 ただし、包括的な事前の了解を行うためには、監査役等と監査人との間で、その範囲等を中心としたプロセスを事前に構築する必要がある。 9 提供可能な業務と提供不可能な業務(3-13) 会社がPIEである場合、自己レビューという阻害要因が生じる可能性がある業務の提供が全面的に禁止される。 従来、重要性の判断やセーフガード(非保証業務に従事した者を監査業務に関与させない等)によって提供が認められていた業務も、自己レビューという阻害要因が生じる可能性がある場合には禁止となる。 (了)

#阿部 光成
2023/01/20

《速報解説》 改正倫理規則のセーフガードの定義見直しを踏まえた監査基準報告書等の改正がJICPAより公表される

《速報解説》 改正倫理規則のセーフガードの定義見直しを踏まえた 監査基準報告書等の改正がJICPAより公表される   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023年1月12日付けで(ホームページ掲載日は2023年1月18日)、日本公認会計士協会は、「倫理規則の改正に伴う監査基準報告書及び監査基準報告書実務指針の改正」を公表した。 これにより、2022年12月15日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に寄せられたコメントの概要とその対応も公表されている。 これは、倫理規則(2022年7月25日変更)の公表に伴い、所要の見直しを行うものである。 監査基準報告書200「財務諸表監査における総括的な目的」、監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」など多くのものが改正の対象となっている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 セーフガードの定義の見直し改正前の倫理規則では、阻害要因を除去又は許容可能な水準にまで軽減するものをセーフガードとしていた。 改正倫理規則では、阻害要因に対処するための対応策を「阻害要因を許容可能な水準にまで軽減するために講じる対応策」と「阻害要因を生じさせている状況を除去するための対応策」に分け、前者をセーフガードとして定義している。 公開草案では、本改正の適用を改正倫理規則の適用と併せて、2023年4月1日から適用(早期適用可)としていた。 本改正では、2022年12月23日付けで公表された「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」に示された適用時期(同附則2条)に鑑みて、次のとおり修正している。内閣府令(案)は、倫理規則の改正に関連した監査報告書の記載事項の改正(報酬関連事項)に関するものである。 本報告書(2022年10月13日及び2023年1月12日)のうち、倫理規則に関する事項は、2023年4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表の監査から適用する。 ただし、本報告書を、倫理規則(2022年7月25日変更)と併せて2023年4月1日以後終了する事業年度に係る財務諸表の監査から早期適用することを妨げない。 (了)

#阿部 光成
2023/01/19

《速報解説》 JICPA、改正監基報600「グループ監査における特別な考慮事項」を公表~「グループ監査チーム」の概念を廃止し、新たに「グループ監査人」を設置~

《速報解説》 JICPA、改正監基報600「グループ監査における特別な考慮事項」を公表 ~「グループ監査チーム」の概念を廃止し、新たに「グループ監査人」を設置~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023年1月12日付けで(ホームページ掲載日は2023年1月18日)、日本公認会計士協会は、「改正監査基準報告書600「グループ監査における特別な考慮事項」を公表した。 これにより、2022年10月18日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に対するコメントの概要及び対応も公表されている。 これは、2022年4月に国際監査・保証基準審議会(IAASB)から公表された、International Standard on Auditing 600(Revised), Special Considerations- Audits of Group Financial Statements(Including the Work of Component Auditors)に対応するためのものである。 適合修正対象として、監査基準報告書220「監査業務における品質管理」などの多くの報告書が改正されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 適用範囲 本報告書は、構成単位の監査人が関与する状況を含む、グループ財務諸表の監査(以下「グループ監査」という)に関して、特に考慮すべき事項を中心に実務上の指針を提供するものである(1項)。 グループ財務諸表は、連結プロセスを通じて作成された複数の企業又は事業単位の財務情報を含む財務諸表である(14項(11))。 このように「グループ財務諸表」の定義を具体化し、個別財務諸表監査であっても複数の事業単位(例えば、支店又は部門)が存在する場合、グループ監査の対象になり得ることを明確化している(14項(11))。 2 グループ監査人 現行監基報600の「グループ監査チーム」を廃止し、「グループ監査人」を新設している。 グループ監査人とは、グループ監査責任者及び監査チームのメンバー(構成単位の監査人を除く)をいう。(14項(8))。 3 構成単位の監査人 構成単位の監査人とは、グループ監査の目的で構成単位に関連する監査の作業を実施する監査人をいう(14項(3))。 4 品質管理への積極的な取組み グループ監査人が、グループ財務諸表に対する重要な虚偽表示リスクを識別及び評価し、評価したグループ財務諸表に対する重要な虚偽表示リスクに基づいて、リスク対応手続を決定することがより強調されている(13項(2))。 重要な構成単位の概念は廃止されている。 監査の作業を実施する構成単位の決定の柔軟性の確保とともに(5項及び22項(1))、適用指針において、決定に影響する要素の例示として、事業単位における資産、負債及び取引の規模並びに内容が含まれている(A51項)。 5 重要性 現行の「構成単位の重要性の基準値」に代えて、構成単位の財務情報の監査手続を立案及び実施する際に適切な「構成単位の手続実施上の重要性」の決定を要求している(35項)。 6 コミュニケーションの強調 グループ監査人と構成単位の監査人の双方向のコミュニケーションの重要性を強調している(8項)。 7 職業的懐疑心の重要性の強調 グループ監査人の職業的専門家としての懐疑心を行使することの重要性を強調している(9項)。 8 構成単位の監査人の作業の妥当性の評価 グループ監査人は、構成単位の監査人の作業がグループ監査人の目的に照らして十分ではないと結論付けた場合、どのような追加的な監査手続を実施すべきか、及びその追加的な監査手続を構成単位の監査人又はグループ監査人のいずれが実施すべきかを決定しなければならないとしている(48項)。 9 適用の柔軟性 本報告書は、規模や複雑さを問わず、すべてのグループ監査を対象としている(10項)。 ただし、本報告書の要求事項は、各グループ監査の性質又は状況に照らして適用されることを意図している。   Ⅲ 適用時期等 2024年4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表の監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用する(12項)。 公認会計士法上の大規模監査法人以外の監査事務所においては、2024年7月1日以後に開始する事業年度に係る財務諸表の監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用する。 ただし、それ以前の決算に係る財務諸表の監査及び中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用することを妨げない。 適用時期等が詳細に規定されているので、注意が必要である。 (了)

#阿部 光成
2023/01/19

《速報解説》 『経団連ひな型』が株主総会資料の電子提供制度開始等に向けて更新される~電子提供措置事項記載書面への記載省略不可事項の縮減を反映~

《速報解説》 『経団連ひな型』が株主総会資料の電子提供制度開始等に向けて更新される ~電子提供措置事項記載書面への記載省略不可事項の縮減を反映~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023年1月18日、日本経済団体連合会 経済法規委員会企画部会は、「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」(改訂版)を更新した。 これは、2019年12月の会社法改正に伴い、既存の株式会社で2023年3月以降に開催される株主総会において株主総会資料の電子提供制度が始まることなどに対応し、令和4(2022)年12月26日、「会社法施行規則等の一部を改正する省令」(法務省令第43号)が公布されたことを反映したものである。 経団連のホームページの「「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」(改訂版)公表にあたって」の末尾に新旧対照表が掲載されている。また、経団連ひな型の紹介ページにおいて、更新履歴も記載されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な更新点 (了)

#阿部 光成
2023/01/19

プロフェッションジャーナル No.503が公開されました!~今週のお薦め記事~

2023年1月19日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.503を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2023/01/19

日本の企業税制 【第111回】「令和5年度税制改正大綱における電子帳簿等保存制度の見直し」

日本の企業税制 【第111回】 「令和5年度税制改正大綱における 電子帳簿等保存制度の見直し」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴   電子帳簿等保存制度に関しては、令和4年度税制改正で電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存について猶予措置が講じられたが、令和5年度税制改正大綱ではさらに一歩進んで、新たな猶予措置を講ずるとともに、他者から受領した電子データとの同一性が確保された電磁的記録の保存を推進する観点から検索機能の確保の要件が緩和されるなど、さらに実務に配慮した改正が行われることとなった。 また、優良な電子帳簿に係る電子帳簿等保存制度・スキャナ保存制度についても、適用要件の緩和など制度利用促進に向けた措置が講じられている。   ○電子取引の取引情報 令和3年度税制改正における電子帳簿保存法の改正により、従前、認められていた電子取引の取引情報に係る電磁的記録の出力書面等の保存をもって、その電磁的記録の保存に代えることができる措置が廃止されたが、令和4年度税制改正においては、その電磁的記録の保存要件への対応が困難な事業者の実情に配意し、その出力書面等の保存措置の廃止を事実上延長するための措置(宥恕措置)が講じられていたところである(令和5年12月31日まで)。 令和5年度税制改正大綱では、上記の宥恕措置については令和5年12月31日の適用期限をもって廃止した上で、令和6年1月1日以後に行う電子取引につき、取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存することができなかったことについて、納税地等の所轄税務署長が相当の理由があると認め、かつ、その電磁的記録のダウンロードの求め及び出力書面の提示・提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができるという新たな猶予措置が設けられる。 もっとも、本来の電磁的記録の保存要件に従った保存ができるようになることが望ましいため、今回の改正では、従前、実務上の難点として指摘されていた検索要件の緩和が行われることとなった。 具体的には、次の対象者については、質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索要件のすべてが不要となる。 このほか、電磁的記録の保存者等に関する情報を確認できるようにしておく要件も廃止される。   ○優良な電子帳簿 国税関係帳簿に関し優良な電子帳簿としての保存要件を満たして、修正申告等に係る過少申告加算税の軽減を受ける場合の軽減措置の対象となる申告所得税及び法人税に係る優良な電子帳簿の範囲が、限定列挙されることとなった。この改正は令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用される。 対象となる帳簿は次の通りである。 (1)(2)が対象となるのは当然のこととして、(3)は貸借対照表と損益計算書に直結する事項に限定されているのがわかる。特に(3)⑧のかっこ書きで、経理システムとは別系統で管理されている賃金台帳等が除外された点も、実務上注目される。   ○スキャナ保存 国税関係書類に係るスキャナ保存制度の要件が緩和される。この改正は令和6年1月1日以後に保存される国税関係書類について適用される。 具体的には次の3点である。 (了)

#No. 503(掲載号)
#小畑 良晴
2023/01/19
#